ボードゲーム購入評定 番外編 『クトゥルフゲームの選び方』を好き勝手に考えてみた

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『クトゥルフゲームの選び方』を好き勝手に考えてみた

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【登場人物】

与力藩の買掛担当。クトゥルフはTPRGでやる程度にたしなんでいる。

奉行藩の決裁担当。ボードゲームに触発されて、挫折した本家から読み直そうかなと考えている。

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クトゥルフを主題にしたゲームは多い

奉行先日、その方の存知よりと共に、初めて『マンション・オブ・マッドネス』を遊ばせてもらったな。

与力はい。それがし3年越しで初勝利を挙げることができました。これも全てお奉行のご威光によるものと感謝の念に堪えませぬ。

奉行ははは、左様か。苦しゅうない、もっと褒めよ。しかし随分と勝っておらんかったのじゃな。

与力なかなかプレイする機会が無かったもので。はい。

奉行まあそれはそれとしてだ。

与力はっ。

奉行クトゥルフを主題にしたゲームというのは、まこと幾つもあるものじゃのう。

与力はい、特にアメリカではかなり多くのゲームが制作されているように聞き及びます。最近は欧州でもそれっぽいゲームが出版されているとかいないとか。

奉行その中でも代表格と言えば…

与力左様ですな。人によって意見の相違はあろうかとは存じますが、日本においては、入手のしやすさを考えると、おそらくアメリカの『ファンタジー・フライト・ゲームズ』社から発売されている3作品であろうかと思われます。

今回、与力の挙げる3作品

  1. 『エルダーサイン』(以下『ES』)
  2. 『エルドリッチホラー』(以下『EH』)
  3. 『マンション・オブ・マッドネス』(以下『MoM』)

これらはファンタジー・フライト・ゲームズから発売され、日本ではアークライトゲームズが日本語版を取り扱っています。

与力他にも幾つかあるのですが、この3作品はテーマの再現性などで群を抜いているのではなかろうかと思います。

奉行ふむ。

与力それと、どれも「協力型ゲーム」であるところが共通しておりますな。

奉行そういえばそうだな。どれも皆で力を合わせて…といった形の遊び方をするのう。

与力『MoM』だけはちょっと変則ですが、プレイヤー間の協力がゲームの大きな要素になっていることは違いありませんね。

奉行しかしどれも異なった味わいを持っておったように思う。

与力そうですね。そこで今日は3つのゲームの特徴を挙げてみて、どのゲームがどんな人と場面に向いているのか考えてみたいかと。

奉行「あなた様にはこちらの旧支配者などお似合いでございますよ」などとやるのか? いやじゃのう。

与力それはちょっと違います。

ライトなダイスゲーム『エルダーサイン』

このゲームの舞台は博物館です。館内の部屋、展示物などを探索し、「エンシェントワン」の復活を阻止するために必要な「エルダーサイン(古き印)」を集めるのが目的となります。
プレイヤーの行動ごとに時間が経過し、一定の時間ごとに状況は深刻化しますから、プレイヤーは協力してできるだけ早く「エルダーサイン」を集めきらなければなりません。

奉行探索場所となる札が6枚並べてあって、そこに描いてある賽の目と同じになるように、賽を振って目を合わせていく、という形であったかな。

与力そうですね。基本的には「解決したいクエストカードを選び」「サイコロを振る」だけです。解決できればこのゲームの鍵となる「エルダーサイン」ふくめ、探索に有利になるアイテムなどが手に入り、失敗すればダメージなどのペナルティを受ける、と。

奉行あまり深く考えることはないな。

与力そうですね。クエストによっては放置しておくとモンスターが登場してきたりするものや、ダイスの数を減らしてくるような効果を持つものもありますから、そういった厄介な感じのクエストカードを上手く潰していけるように、解決順を考えるという辺りが、頭の使いどころでしょうか。

奉行最終的には賽の目次第であるしな。

与力そうですね。アイテムなどでコントロールできるとはいえ、最終的には完全にダイス次第です。

奉行お主が今回挙げておる三つは、全て賽の目で事の成否が決まるとはいえ…

与力『ES』は、なにせダイスゲームですからね。ダイスにかかるウェイトは大きいですよ。

【クトゥルフ的な要素は…】

奉行まあまあ、かな?

与力一応「エンシェントワン」も登場しますし、クトゥルフ神話から出てきたアイテムなどもあります。

奉行しかし博物館の中を歩き回っている感じは…

与力あまり無いですね。きちんと前兆から始まって、少しずつ真実に迫っていくというような、クトゥルフらしいストーリーも感じづらいです。

奉行やることが見えているのは見通しがよくて好きだがな。

与力総じて手軽ですね。メーカー公称のプレイ時間は60から90分ですが、慣れてくれば45分くらいで終わるかもしれません。どう終わるかは保証の限りではありませんが。

奉行賽の目合わせは初心者にもわかりやすいし、単純なお化け屋敷探検と考えてもらえば、くとぅるふに造詣や関心がない者でも、入りやすいかもな。

与力逆に、その辺の単純さがヘビーなクトゥルフマニアには物足りなく感じられるかもしれませんね。

拡張も出てるよ。イベント満載の『エルドリッチホラー』

『エルドリッチホラー』については宜しければこちらをご参照ください。(開封記事プレイ記事
「クトゥルフゲームの最高峰」という勢いで、これでもかと山のように要素を詰め込んだ『アーカムホラー』のルールを、見通し良く再整理し、舞台をクトゥルフマニアにおなじみの都市「アーカム」から全世界に広げたのが、『EH』ということになります。
『アーカムホラー』の要素を残しつつ、新たな舞台で「エンシェントワン」との戦いに挑める本作は、クトゥルフ神話好きにとっては、非常に馴染みやすいゲームです。

奉行『EH』については、概ねは以前申し述べた通りであるな。

与力はい。『ES』との比較をいたしますと、世界地図ボード上のあちこちで発生する不可解な現象に挑むというスタイルは、物語が世界規模で展開していることを想起させ、大きなストーリーラインが自然と見えてくるような効果を生んでいると思います。特にクトゥルフ神話に造詣が深い人ほど。

奉行うむ。その点で原作を知っているか知らないかが、『EH』を面白く感じるかどうか左右する、と申したよな。

与力いかにも、のめり込める度合いが変わりますから。

奉行知らぬものであれば、『EH』を皮切りに、少しその世界に触れてもらえると嬉しいであろう。

与力はい。ただまあ主題とゲームシステムがしっかりと絡んで、クトゥルフ要素がより色濃く出ているだけに、全然知りませんし興味もないです、という人が協力ゲームをやりたいという理由だけで『EH』を選ぶのは、勿体ない気はしますねえ。

奉行協力型に興味があるんですけど…という者には、『パンデミック』こそお勧めじゃな。

与力奉行も私も大好きですからね、パンデミック。

奉行そうそう、単純に一回遊ぶだけでもかなり時がかかるな。

与力そうですね。一回当たり標準で2時間から3時間。割と遊び甲斐のあるゲームでも2回くらいできちゃうんじゃないかな?という時間を費やす必要があります。

奉行その間、だれずに盤を囲んでいられねばならぬゆえに…

与力それだけに、次々と現れるクトゥルフ要素に一喜一憂できるかどうかは大きいと思うんですよ。

【クトゥルフ的な要素は…】

奉行そういう訳であるからな。

与力はい。クトゥルフ要素は非常に濃厚だと思います。特に「エンシェントワンの復活を阻止する!」という目的達成を目指す上で、クトゥルフ世界の神格の存在を強く感じられますね。

奉行それぞれで大分展開も異なってくるからな。

与力ある程度定石と言える行動もあったのですが、拡張が追加されるとそうも言っていられなくなり…

奉行拡張様様だな。

与力拡張での展開も含めて、最も忠実にクトゥルフ世界を再現しているのが、この『EH』なんじゃんかろうか、と思いますよ。一点だけ、個人的には「アーカム」や「ダンウィッチ」「インスマス」などの馴染み深い場所を細かく探索できなくなったのは残念ですが…

奉行それは『アーカムホラー』に戻って遊んでまいれ、ということであろう。

与力んー。『アーカムホラー』日本語版の再販はあるんですかねぇ。

奉行それ以上申すでない。

TRPGに近い?『マンション・オブ・マッドネス』

『MoM』は、付属のシナリオにそってゲームをセッティングし、プレイヤーの妨害を行うゲームマスター(GM)と、探索者たるプレイヤーの対決型ボードゲームです。プレイヤーはなんやかんやで迷い込んだ巨大な館の中を協力して探索し、そこで何が起きているのかを突き止め、無事に生き延びたり陰謀をくじいたりすることが目的となり、GMはそれを阻止することを目指します。

奉行まず一つ言えることは、とにかく物理的に重いな。

与力『EH』の倍くらいありますかね、重さは。それだけに内容物も豊富で、『EH』なんかではタイルで表示されていたモンスターは、全てフィギュアが同梱されています。プレイヤーキャラクターもフィギュア入りです。

奉行色が無いのがちと残念だが。

与力自力で塗るのがおススメです。財力が有り余っている人は、ファンタジー・フライト・ゲームズが販売している色付きのフィギュアを買って置き換えるといいんじゃないかと思いますよ。

奉行次に、これは持ち主が大変じゃな。

与力そうですね。誰か一人がGMをやる必要があるのですが、だいたい持ち主がやることになります。で、GMはシナリオの予習をして、実際にゲームをセットアップして確認したりするところまでやっておいた方がいいかなあ、と思いますから…

奉行遊ぶ前日は大忙しじゃのう…

与力そうなりますね。

奉行中身に話を移そうか。入り口から少しずつ奥へ探索を進めていくと、物語の核心に迫れるようになっているのは見事であった。

与力そうですね。「手がかり」を発見することで館の中の事情が明らかになり、それがある一定の段階に到達すると、どうすればゲームに勝てるか、という「勝利条件」が明らかになります。

奉行うむ。つまりまずは目的がなんなのかを探さねばならぬのよな。

与力はい。ただ、悠長に探索している訳にもいかず…

奉行GMの妨害で化け物が送り込まれてきたり、時間の経過で状況が悪化する出来事が発生したりするのであったな。

与力その通りです。大胆かつ迅速でありながら慎重かつ計画的な探索が求められます。

奉行できるか、そんなこと。

【クトゥルフ的な要素は…】

奉行実は思いの外、直接的に感じられるところは少ないのよな。

与力そうかもしれませんね。箱にはクトゥルフ様のご尊顔などがどーんと書かれていたりしますが…

奉行展開によってはさっぱり神話的化け物に出くわさずに終わる。わしが遊んだ際には、斧を持った通り者(マニアック)と、出ては消える奇怪な女(魔女)にしか会わなかった

与力そうですねえ。「話の影にどうやら巨大な存在がいるっぽい…」という感じがほのめかされつつ、という印象が強いですね。確かにクトゥルフ小説っぽいと言えばそうかもしれませんが、若干の物足りなさを感じる可能性もあります。まあ、今のところ我々が遊んだシナリオがたまたまそうなっていただけなのかもしれませんが。

奉行うむ。『EH』に比べると、その辺りがこじんまりしておるかのう。

与力より古典的なお化け屋敷探索という趣は強いですね。個人的には『ラプラスの魔』を思い出しました。

奉行…古いのう。SFC版もわしはよう知らぬぞ。

与力ははっ、申し訳ございません。

奉行まあ色々な話で遊んでみたいものだ。

与力ええ。しかし、先に申し上げた通り、大抵は持ち主がやるGMの負担が大きいことと、一回のプレイに3時間は優にかかる辺り、なかなか頻繁にはできませんのが玉に瑕かもしれません。

奉行お手軽に、という訳にはいかんな。そうなると、「ぜひ『MoM』をやりたい!」という者同士で盤を囲めぬと、中途でだれそうじゃのう。

与力その恐れは十分にあるかもしれません。ちなみにTRPGに興味はあるけど、どうやっていいのかわからない、という方には、こういうのを進めて誘ってみるのも手じゃないかと思っています。

【総評】クトゥルフボードゲームの選び方

奉行ふわふわとした結論ではあるが、どれも協力ゲームとしては悪くはない、といったところだ。

与力そうですね。GM対プレイヤーというシステムが他にないということで、ゲーム的に体験して損はないですよ、というのは『MoM』ですね。ちなみにホラー要素が好きなら『MoM』剣と魔法の世界が好きなら『ディセント』という似たようなシステムのゲームが同じくファンタジー・フライトから出ておりますぞ。ただ、とにかく色々と時間がかかるのが難点です。

奉行他二つは、まあ「くとぅるふとは何でしょうか?」と少しだけ興味を持っている者には『ES』、日ごろ「ふんぐるい むぐるうなふ」などと題目を唱えておる者には『EH』がおすすめとなろうか。

与力はい。ファン向けゲームと思っておいた方がいいかもしれないですね。「おっ、クトゥルフのゲームできるじゃーん」みたいな人がプレイヤーに混じっていないと、ゲームとしての面白さだけでプレイするのは、ねぇ。

奉行他に、もっと取っつきやすいものがあると言えよう。

与力いずれにせよ明確に「クトゥルフ」という主題を掲げたゲームですから…

奉行『クトゥルフ神話 超入門』などの本を読んでみたりしてから遊んだほうが吉と申しておく。

与力ゲームするのに予習が必要、ってのも大変ですが…

奉行知らない話に何時間も巻き込まれる方がよっぽど大変じゃぞ。

与力そうですね。自主的に参加するなら勿論、クトゥルフを知らない人をこの3つのゲームに誘うなら、そういった資料を貸して差し上げるとかの配慮をしたいです。

奉行深い世界を再現しようとしている遊びゆえにな。