ポケット・マッドネス完全日本語版(ボードゲームプレイ感想編)

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【登場人物】

与力藩の買掛担当。「コンビニのおにぎりはツナマヨネーズ」狂信者。

奉行藩の決裁担当。「コンビニのおにぎりは鶏五目」狂信者。

みんな狂信者スタートです

奉行とりあえず説明書のゲーム概要的なものを読み下してみたが。

与力はい。

奉行このゲームでは、我々は狂信者か。いつもとは立場が逆じゃな?

与力ですねえ。『クトゥルフダイス』『キングスポートフェスティバル』なんかは、狂信者として一生懸命に頑張るゲームでしたが、これもそちら側の作品ですね。

奉行狂信者はさほど頑張り過ぎぬでも、よいのではなかろうかな……

ゲームの準備は難しくはありません。7枚のゲートカードをテーブルに並べ、トークンを準備します。6~12の数字がふられている場所カードをプレイヤーに2枚ずつ配り、最初の手札とします。

残った場所カードのうち、17枚を伏せたままランダムに抜き出します。その後、残りを表に返して伏せたままのカードを混ぜ、シャッフルします。これが山札となりますが、積んでおくのではなく、テーブルの中央に一列に並べ、各カードの中身が分かるようにしておきます。これで準備が整いました。

ポケットマッドネス
一風変わった山札

奉行これを山札と呼ぶのか? どちらかというと川札といった感じじゃが。

与力誰がそんなうまいこと言えなんて要求しましたか。ちょっと分かりにくいですが、「山札の中に17枚は中身が分からないカードが混ざっている」のが大切です。これがランダム要素となる訳なんですね。

奉行ふむ? しかし、上手くカードを並べるのは骨だな……。

どうせみんなインスマス面になる

ゲームの目的は「自分はできるだけ狂気に陥らないように、他のプレイヤーを狂気に陥れる」ことです。ゲームは山札を使い切るか、誰かの手札が無くなるまでを1ラウンドとし、このラウンドを何度か繰り返して、勝者を決定します。

与力この綺麗な狂気トークンを、自分は受け取らないように、相手に押し付けろ、と、まあそういうことですね。

奉行全プレイヤーがおかしくなっていくのは、クトゥルフゲームの基本じゃな。やれやれ。

与力でも「おかしくない狂信者」って、逆に嫌じゃないですか?

奉行おかしくない……「わたしはくるっているのである」と明確に自覚している狂信者……?

プレイヤーは、自分の手順になったら、「強制アクション」を1回必ず行い、また可能であればそれに加えて「ゲート封印アクション」を1回行っても構いません。

強制アクション
このアクションには、「調査」「ゲート遭遇」「結果発表」の3種類があります。

与力「調査」は、山札から1~3枚のカードを引くアクションです。これで手札を増やします。

奉行なるほど。山札は一番上……つまり、カードの全面が見えている、一番上に重なっているやつから取るのじゃな。

ポケットマッドネス
手札をどんどん溜めこんでいこう。

与力「ゲート遭遇」では、同じ数字のカード3枚を手札から公開することで、そのカードと同じ数字がふられているゲートカードを手元に持ってくることができます。

奉行ゲートカードというのは、特殊効果を使えるようになるカードじゃな。

与力はい、その特殊効果を使うまでは、手元にそのまま置いておくことができます。

ポケットマッドネス
ダゴンというかウルトラ怪獣というか。9を3枚出すことで手元に置けます。

奉行「結果発表」とか言われると、某バラエティ番組の長寿コーナーを思い出してしまうが……

与力いや、これが直接攻撃の手段ですね。手札から6~12のカードを1枚ずつ7枚セットにして自分の前に公開すると、他のプレイヤーに狂気トークンを1個押し付けることができます。ちなみに、十分に手札があるならば、3セットまで一気に出せます。

ポケットマッドネス
さあ、世界の真実に近づこうではないか(ぐるぐる目)

奉行ほおお、こうやって狂気に陥れていく訳じゃな。

与力注意したいのは、同一ラウンドに結果発表が重なった場合、2回目の結果発表なら2個、3回目の結果発表なら3個、と、押し付けられる狂気トークンの数が増えることですね。

奉行つまり、同じラウンドに上手いこと重ねられれば、一気に大損害を与えられる、と。それは積極的な発表を目指して、手札を溜めていきたくなるのう。

与力でしょう? でもそれが実は落とし穴なんですよ。あ、あと、「ゲート遭遇」「結果発表」で公開したカードは、そのまま自分の前に置いておきます。

奉行ほ、そこは情報公開していくのじゃな。

ゲート封印アクション

ゲート封印アクションでは、「ゲート遭遇」で手元に持ってきたゲートカードの効果を使用することができます。同じ手番中に手に入れたものでも使うことが可能です。効果を適用したら、ゲートカードは、誰も手にいていないゲートカードと一緒に並べておきます。

奉行ほう、再利用可能か。

与力再利用できるほど、カードの巡りがいいかどうかは分かりませんがね。ゲートカードには大体グレート・オールドワンか、上級の奉仕種族が描かれていますが、その絵の通り強力な力を持っています。「手札を捨てさせる」とか、「手札を奪う」とか。

奉行うまいこと使っていきたい所じゃな。

狂信は計画的に

これを順番に繰り返し、山札を使い切るか、誰かの手札が無くなったら、そこでラウンド終了となり、狂気トークンの増減を行います。

与力「山札を使い切った」場合には、最後にカードを引いたプレイヤーからもう1回だけぐるっと各プレイヤーがプレイを行う最終手番を行えます。で、本題ですが、どちらの終わり方でラウンド終了になったか、で、狂気トークンの処理は変わるんですよ。

奉行ほほう?

与力「山札を使い切った」場合には、各プレイヤーが手元に残している手札が問題になります。手札の場所カードの数字1種類につき1個の狂気トークンを押し付けられてしまうんですよ。

奉行なぬ。ということは、『チケライ』気分でカードを溜め込んではいかん、ということか……。

与力下手すると一発で吹っ飛ぶかもしれませんから。で、「誰かが手札を使い切った」場合には、使い切ったプレイヤーは、自分が持っている狂気トークンを、半分捨てることができます。逆に、それ以外のプレイヤーは、1個ずつ押し付けられてしまいます。

奉行ほおお、厳しい情勢を逆転するならば、こちらをぜひ狙っていきたい所じゃな。

与力上手く無くせればいいんですけどもねえ。

以上の処理を行い、誰かの狂気トークンが10個になったら、その時点で一番狂気トークンの少ないプレイヤーが勝利となります。10個になったプレイヤーがいなければ、新たなラウンドを開始し、誰かが10個になるまで、ゲームを続けます。

当方にてプレイした結果、張り切って攻撃を仕掛ける奉行と、ペースを乱されつつも応戦する与力といった具合に。二人プレイゆえのガチンコ狂信勝負となり、最後はゲートが閉じたり開いたりせわしない攻防も見られまして、おおよそ引き分けに収まりました。

ポケット・マッドネス【ここがイカス!】

奉行まあ、シンプルな方じゃな。クトゥルフテーマとは思えないほどすっきりだ。

与力絵も可愛いですしね。

奉行可愛い、というか、愛嬌がある、というか……。まあ、『エルドリッチホラー』なんかの絵は迫力があるから、苦手な人は苦手であろうが、これなら安心して遊べるかもしれん、というところか。でだ、ゲームはすっきりしてはいるが、考え所がなかなかある。

与力と、申されますと。

奉行情報の公開量が結構多い。分からんのは伏せられた17枚の山札と、プレイヤーの初期手札2枚ずつ。で、ゲームが進むごとに、情報は公開されてくるから、何となくあとは何ができるか、ってのが分かるのよな。

与力確かにそうですね。わざわざ公開したカードは見えるようにしておけ、っていうのは、そういう情報把握をやりやすいようにするためでしょうし。

奉行で、そこから悩むのよ。相手を狂気に陥れるためには、7枚揃えたい。しかし、見えているカードからすると可能性は低そう、となればゲートの力に頼るか……と、上手く要素が絡んでいる。

与力ふむふむ。

奉行あとお主が説明をすっ飛ばしておったが、カードの枚数は7種類共通ではないのよな。

与力あ、はい、そうでした。これはとんだ不手際を……

奉行結構重要じゃから、忘れてはならんぞ。つまりそれぞれ6は6枚、7は7枚、12なら12枚と、カードの数字と同じ枚数になっておる、ということであるな。という訳じゃから、特に低い数字の動向にはよく注意して、カードを管理してかねばならぬ。もう6は出てこぬというに、結果発表なんぞ狙っておる、なんてことになったら、ラウンド終了でえらいことじゃからな。

与力そこら辺のリスクマネージメントが大切になりそうですね。

奉行テーブル上でオープンになっている情報と、自分の手札の情報から、押すべきか引くべきかの判断をできるようになると、面白くなってくるのではないかな。

与力そしてそのプランをゲートカードで台無しにするのもまた一興、ですかね。

ポケット・マッドネス【ここはちょっと……】

奉行山札が作りにくいぞう。

与力そこですか?

奉行わし、トランプ名人でもマジシャンでもないからな。一列綺麗にカードが重なるように並べるとか、無理じゃ。それにカードの数字が見えるようにせんといかんから、それを修正するのに一枚ずつカードの間隔を調整して……

与力ちょいちょい修正してもいいんですから。あ、テーブルの上に、カードが滑りやすいクロスなんかをかけておくのがオススメですよ。

奉行あとはゲーム的なところはいいんじゃが、クトゥルフ的な所になると、ちょっとな。

与力おや、私がこだわりそうなことを。

奉行うーん、まあクトゥルフ神話の魅力である強力なモンスターたちには、それぞれ性格付けがなされている訳だが、このゲームのゲートカードで登場するそやつらには、何かこう、そやつらならでは、という能力が感じられないのだな。

与力実はそう原作に精通しているわけではないお奉行が、そこを気になさるとは……。アメリカンなフレーバーテキストだらけなゲームをやり過ぎましたかね……

奉行おぬしの刷り込みもあるよ。「クトゥルフならテキストフレーバー」みたいなの。で、具体的に例をあげると、ニャルラトホテプの能力が「山札から1枚任意のカードを引ける」だが、これって別にニャルラトホテプでなくても良い能力ではあるだろう?

与力そうですね。ですが、そういうことを言い出したらキリが無いですよ。

奉行そうそう、確かに。クトゥルフ世界が再現されているのではなく、クトゥルフ世界を味付けに使ったゲーム、ということじゃな。コアなファンの方は、そう心得ておいて遊んで欲しいかな。

与力逆にクトゥルフにさして造詣が深くない人にもやりやすくていいゲーム、言えますね。

奉行うむ。つまり、この絵柄で「これなんてキャラですか~?」ってな人の興味を引いて、ゆくゆくは「『マンション・オブ・マッドネス』最高!」とか言っちゃうようなクトゥルフ信者にしてしまえ、と言いたいのだな?

与力んなことは言ってませんよ!

ポケットマッドネス
本当に魅力的なイラストです。

奉行しかし、見れば見るほどクトゥルフってタコっぽいよな。逆もまた真なり。

与力そんなクトゥルフっぽいタコを好んで食べてしまう日本人は、狂信者なのか、神を倒した勇者なのか……

奉行どっちでもよい。タコは美味いし、タウリンも豊富に含まれておるから、疲れた時に食すがおすすめじゃ。

与力疲労にクトゥルフ……