『レガシーコード The Best版‐日蝕と月の物語‐』を開けてみた
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奉行藩の決裁担当。よく死ぬゲームで思い出すタイトルと言えば?「王道だがスペランカー、あるいはマリオの8面」
与力藩の買掛担当。よく死ぬゲームで思い出すタイトルと言えば?「『魔界村ですかねえ……。でも死にゲーと死に戻りゲーって、どうやら違うようですね?」
はじめまして、狩人様
与力ということでですね、今回は『レガシーコード The Best版』の紹介なんですけども。
奉行時間の都合がつかなかったということで。
与力はい、私のソロプレイ体験によるレビューって寸法ですね。
奉行すまない、本当にすまない。どうしても外せない急用が入ってな。
与力仕方ないです。突発的な事態というのは突然起きるので突発的なんですからね。
奉行前環境大臣的な構文じゃな、なんか。
ゲームを始めるためには、まずマップを広げます。その後、マップ上の対応する位置にシナリオカードを配置します。各プレイヤーは筆記用具を持ち、加えてゲームの持ち主が説明書を持つとよいでしょう。これで準備完了です。
与力これで準備は終わりました。あとは、カードをめくっていけば、自動的に話が進むという仕組みです。
奉行へえ。なるほどね。
与力TRPGでいうところのシナリオが、このマップ上に展開されている、という感じです。実際にシナリオを作る場合にも、こんなフローチャート的な図を意識して作ると便利ですよね。
奉行で、説明書というのは?
与力おそらく持ち主がゲームの進行やストーリーテラーである「ゲームアシスタント」を務めるので、まず導入のところから読んであげてね、ってことです。
奉行いわゆるゲームマスター(以下GMと略)ってことか?
与力んー、違いますね。GMは完全にシナリオを進行するサイドに立つのですが、このゲームでは、あくまでプレイヤーの1人がゲームを進めるために音読する係になる、というだけです。
奉行持ち主なら、少なくとも説明書に事前に目を通せているだろうから、ってことじゃな。
狩りとはそういうものだよ。じきに慣れる…
与力ざっくり説明しますとね、ゲームが始まると、プレイヤーはよく分からない状態でよく分からない世界に放り出されていることに気が付きます。
奉行実によく分からないな。
与力で、手元に武器が有ったので拾って外に出て、なんやかんやで世界の外へ脱出しましょう、と、だいたいそんな感じです。
奉行脱出ね。そういえば脱出ゲーム要素もあるようだから、謎解きも入っているのかな?
与力そうですね、それもあります。
与力各プレイヤーは導入の話を聞いたら、武器を1枚選びます。で、フリーポイントを3点好きなようにこの4つの能力に「個性値」として割り振ります。
奉行へえ。いかにもRPGっぽい。
与力各能力は、それぞれゲーム中に「判定」を求められます。これは非常に単純なシステムで、ダイス2個の出目と、能力値の合計が、決められた数字以上になれば成功、下回れば失敗、というものですね。
奉行つまり、高ければ高いほどいい、と。
与力そうです。ただ、判定には「クリティカル」という名の“絶対成功”があります。ダイス2個が同じ出目、つまり“ゾロ目”になれば、判定は必ず成功になります。
奉行では運が良ければなんとかなる可能性もあるんだな。
与力とはいえ、狙って出せるものではないですしねえ。
奉行だよな。そうなると、どの能力値を上げておくか、悩むのであろうな。『女神転生』ならパワー一択みたいになるが。
与力一応、ゲーム開始の時点でハッキリと影響が有るのは防御力ですかね。「10+防御力」が最大HPになるので、タフかどうかは防御力次第になります。あとは感覚かなあ。
奉行ところで、「成長」という欄があるってことは、ゲーム中にレベルアップするみたいな要素が有るのだな?
与力ありますね。ストーリーが進むと報酬として能力値を伸ばせる、みたいなシーンも出てきます。もちろん限りがあるので、慎重に選ぶ必要があるかもしれませんが、最初のうちはテキトーで大丈夫です。ていうか、それしかないです。
どこもかしこも獣ばかりだ。どうせ貴様もそうなるのだろう?
与力武器の準備が終わったら、ストーリーを読み、判定をする必要があれば判定を行い、相談して進路を決めます。ソロプレイの時には決断するだけですけど。
奉行しかし何か手がかり的なものはないのかね?
与力ストーリーの中にそれらしき示唆はありますが、あとはカードの右下部分に注目ですね。
与力これは「感知度」といいまして、なんかありそうな雰囲気を可視化したものです。それが敵なのか味方なのかアイテムなのか分からん、というのが問題にはなりますが。
奉行逆にこれが全然ないとかだと、大した話ではないか、あるいは本筋に関わらないか、みたいな予想がある程度立つという訳じゃな。
与力で、プレイヤーは色々と判定をしたりしながら、HPが0にならないようにエンディングまでたどり着くのが目的になります。
奉行HPは敵と戦って減ったりするのかね、やはり?
与力えっと、一番大きいのはそうではなくて、どちらかというと判定をどうにか成功させるためにHPを使うパターンですかね。
奉行ほほう?
与力各装備には「スキル」が2つずつ装備されていて、決められたHPを消費すると判定が有利になる効果が発動します…大体有利になるはずです。
奉行なんか含みのある言い方じゃのう。
与力敵の攻撃は一発貰うとちょっとその先がおぼつかなくなる感じが有るので、どっちかというとスキルで判定に成功し続けて枯渇していくケースが多いかもしれないです。
奉行HPが0になって死亡するとどうなる?
与力成長や探索の状況はそのままで、スタート地点に戻されます。プレイヤー合計で3回死亡するとゲームオーバーという仕組みですね。
奉行なるほどのう。枯渇する前に真実にたどり着け、ということか。
与力そんな感じです。一応、私は全部のエンディングを迎えましたが、中々骨が折れました。繰り返しのプレイが大切です。
『レガシーコード』【ここがイカス!】
与力「ストーリーを楽しむ」という点で、TRPGにかなり近い体験ができましたね。
奉行ふむ、ライトTRPG風という看板に偽りなし、か?
与力そうですね。ストーリーを考える、シナリオを作るっていうのがTRPGを継続的に遊ぶ上で一つのネックであろうとは思うんですよ。
奉行ネタを頑張って出さないといかん訳じゃからな。
与力その手間がかからずに遊べる、ということと、あと、シナリオってこうやって可視化して作ればできるんだな、という参考になりますよね。
奉行ああ、そこはTRPGプレイヤー視点からの評価じゃな。
与力ですね。ゲームシステムは必要最小限に抑えられていて、ストーリーを楽しむことに集中できるようになっています。それもいいですね。
奉行細かいルールもあったりするのじゃろ?TRPGによっては。
与力ルールは細分化すれば様々な局面の再現度が高くなりますが、「あれってどうやるんだっけ?」になりがちですからね。ルールの把握っていうのは、ゲームマスターにとってもプレイヤーにとってもプレッシャーになったりしますから。
奉行なるほどな。“ロール”、いわゆる演技の部分については?
与力多少あった方がいいのは、ゲームアシスタントの朗読力くらいですかね。ただ、このゲームを買おうという人なら、そこはクリアできるでしょう。プレイヤーが演技を求められる局面はないです。もちろんしても構わないと思います。盛り上がると思いますよ。
奉行そこが恥ずかしい、という人もおる訳じゃが。
与力受け身でいても、目の前でストーリーが進んでいくのを見ているのは楽しいですからね。普通にゲームを進める発言をしているだけで十分だと思いますけどもね。ルールで規定されている訳ではないので。
奉行総じて、TRPGらしい感じになっている、ということで良いのか?
与力ですね。どっちかというと多人数型ゲームブックという表現の方がしっくりくるかもしれませんが、よいゲームだと思います。
『レガシーコード』【ここはちょっと…】
与力まず、ゲームとしてこの『The Best版』の問題を挙げておきますね。
奉行なんじゃ、なにかあるのか。
与力このゲーム、『日蝕の物語』をパーフェクトクリアした後に進める『月の物語』は、カードのQRコードをスマホなどで読み取って遊ぶんですね。
奉行おう、未来的で便利な仕掛けじゃな。
与力ところが、販売を行っていた半月堂さんが活動を休止されているようで、そのデータが無くなっています。ので、QRコードを読んでもダメなようです。
奉行えええええ。
与力ご心配なく。制作を手掛けられたクリエイターズ編集部さんが、データを復旧して遊べるようにしてくれています。ので、クリエイターズ編集部ホームページからデータを参照しましょう。(https://www.creators-ag.com/legacybest)
奉行ほっ、一安心か。
与力もう1つ、マップの裏に思わせぶりなQRコードが印刷された世界地図的なものがありますが、こちらも現在は機能していないそうです。残念ですね。
奉行やむを得んのう。
与力さて、ゲーム的な部分ですが、まあともかくクリアできるかは死に覚え、ダイス運にかかっています。どの能力値が求められるか全滅して覚え、厳しい局面ではダイス運一発にかける、と。
奉行ボードゲームとしてはどうなんだ?って話になるのか?
与力そうですね。でもこれはあくまでTRPG風ゲームなので、判定の目標値がかなりタイトであるとはいえ、よくあることではあります。2回はやり直しがきくので、そこも救済にはなっている、かな?
奉行そうなのか…。
与力そういうことを考えると、このダークな味付けが為されたストーリーを楽しめるか否か、という部分にかなりかかってくるかもしれません。
奉行そりゃまあそうか。ストーリーを楽しむゲームなのに、好みのストーリーでなければなんの苦行か、ってなるものな。
与力かなり文章表現としては持って回った言い方してますし、『日蝕の物語』を一周しただけでは世界観の全貌もつかめないですし、まあまあストーリーがハマるかは、非常に大きい要素ですよ。
奉行世界観ね。全部が説明されている訳ではないのだものな。
与力そこら辺は探索が進むにつれて明らかになっていきます!なので、シナリオが言っていることがよく分からないうちは分からないなりに「そういうもんだ」と思って、素直にうろたえたりビックリしたりするといいですよね。それで「結局、どうなってるんだろう? 事実を知りたい!」みたいな疑問が持ち上がれば、ストーリーがハマったってことになる、かな?
奉行遊び手の柔軟性が求められるな。
与力まあ物語は素直に楽しもう、というところですか。
奉行そういうものなのだなあ。
与力あと、決定的にこのゲームがTRPG寄りだな、と思うのは、説明書に「細かな不明点はゲームマスターの裁量で決定してよい」という指示が有ることですね。これはTRPGで出てくるGMの判断が最優先される、ってやつです。
奉行へえ、そんなのがあるんだ。
与力ルールは守るべきではありますが、状況によってはGMがその適用を変えたりできるのがTRPGのファジーな所であり、良さです。
奉行確かに、ボードゲームファンのわしとしてみれば、曖昧じゃな。
与力とはいえ、TRPGはGMとプレイヤーの対戦ゲームでは無いですからね。協力して面白い体験をするのが一番の目的だと思うんで。楽しむ仕掛けを用意するのがGMで、仕掛けに全力で取り組むのがプレイヤーですよね。なので、時々GMがうまくさじ加減をしてあげる局面も上手く使いこなせると楽しいんですよ。露骨に手を抜いたりしてはダメですけど、互いに勝ち負けを競ったり、相手をやり込めるものではないんでね。もちろん、色々なTRPG流派の人がいらっしゃるでしょうから、これはあくまで私のポリシーですけども。
奉行まとめれば楽しく遊びましょうという話じゃな。
与力死に覚えゲームって、1つのジャンルになりましたよね。
奉行なんちゃらソウルじゃな。
与力あのゲーム、死に覚える以前に指が思ったように動かなさそうですよね、もう。
奉行あれだけ遊んで慣れていたはずのモンハンですら苦労する有様じゃからな。