『1920 Wall Street/1920ウォールストリート』を遊んでみた
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1920 Wall Street/1920ウォールストリート(ボードゲーム開封編)
【登場人物】
与力藩の買掛担当。一千万円で自由に株を買えるなら?「ソフトバンクですかね。保有していたら資産家っぽいので」
奉行藩の決裁担当。一千万円で自由に株を買えるなら?「ニンテンドーかのう。二十年遅い気もするが」
取引停止の合図は爆破?
奉行株取引のう。つまり安く買って高く売る、と。で、思うようにいかなくなったら爆破オチにする、という感じか?
与力違います。昭和のアニメじゃないんですから。
ゲームのセットアップを説明書の手順通りに行います。山札の回りにぐるりとカードが配置されるのが面白いですね。ゲーム開始時に注意したいのは、株の価格を決定する株式ボードのどちらの面を使用するかです。上部が青い面とオレンジの面があり、価格変動のしかたが異なっています。説明書によると、オレンジの方がより簡単にゲームを楽しめるそうです。
奉行この二色刷り株券はどうなるのかな。
与力ゲーム終了時の精算を行う際に、どちらかの色の株式として扱うことになる便利な株です。
奉行ふむ、この色の株券を中心に集めていくのが簡単そうじゃな……。
市場は巡るよグルグルと
各プレイヤーは手番ごとに3つの行動、「移動と購入」「株の売却」「増資」から1つを選び、実行します。
①「移動と購入」
この行動を選択した場合、「マーケットトレンドカード」が示す方向に従い、自分のコマを買いたいカードの上まで1つ以上動かします。この時、
- 移動したカード1枚ごとに1ドル
- 購入したいカードに描かれているコイン1枚につき1ドル
のコスト支払いが必要です。
奉行つまりこの状態だと反時計回りに回っていくのだな。『ナヴェガドール』とかのロンデルシステムを思い出す……ところでこれ、方向は変わるのか?
与力移動をトレンドカードの上で止めて、1ドルを乗せると、カードが裏返って方向が変わりますね。同時に山札の一番上のカードが捨てられてしまうんですけども。ちなみに乗せたお金は、後で止まった人がもらえます。
奉行ふむ……ところで与力よ。我らはセットアップで4ドルしか受け取っておらぬ。4枚カード上を移動して終わりではないか? カードなど買えぬではないか。
与力そこで大切なのが会社の資産なんですよ。
資産カードは、会社の資本金を示します。各プレイヤーは、このカードで示されている数字(この写真では4ドル)までの金額を、毎ターン支払いに使用することができ、無くなることはありません。
奉行ははあ、なるほどなあ。それならなんとかなるな。
与力ただし、資産では支払えない支払いもあります。
説明書で「コインで支払う」となっている支払いには、資産を使うことはできません。
- 購入したいカードの上に別のプレイヤーがいた場合、そのプレイヤーへ1ドル
- マーケットトレンドカードの方向を変えるための1ドル
- 資産を増やすために銀行へ2ドル(増資)
などの場合には、コインを使うことになります。
-株を買う-
奉行で、実際に買えるカードだが……。
与力まずは株式カードですね。4色あります。コーン、綿花、鉄鋼、原油、かな?
株式カードは購入したら、自分の手元に置いておき、終了時に清算して勝利点に変換します。シンプルな株式のみのカード、カード1枚で2枚の株式を持てるカード、ゲーム終了時に好きな株式に変換できるゴールド株式カードなどがあります。
与力カードによっては、同時に市場操作を起こす複合カードがありますので、注意しましょうね。
奉行むっ、このカード買い注文が入ったのに価格は下落するのか……。
-市場操作-
与力株の価値はだいたいこのカードで決まりますので、狙った株の価値が上手いこと上がるように購入していきましょう。これも買ったら手元に置きます。
奉行資金投入で価格を上げたり下げたりじゃな。いくつか特殊カードもあるようじゃ。
与力それから、市場操作カードはダイレクトに勝利点になります。どんどん買ってください。
変動する株が指定されている市場操作カードは、その通りに価値を上下させます。このほか、
- 任意の会社の価値を上昇・あるいは下降させる。
- 最も価値の低い会社の価値を上昇させる。
- 最も価値の高い会社の価値を下降させる。
- 最も価値の低い会社の価値を上昇させ、かつ最も価値の高い会社の価値を下降させる。
といった、プレイヤーの意図を市場に反映させやすいカードも含まれています。
奉行むむむ? これも市場操作か?
与力ブラックデーカードですね。これも市場操作の分類のようですよ。
ブラックデーカードを購入すると、全プレイヤーは2ドルを銀行に支払わねばならず、支払えなければ強制的に借金させられることになります。借金はゲーム中どのタイミングでも可能で、5ドルを獲得できる代わりに勝利点がマイナスされます。
奉行手元不如意になっているプレイヤーがいる時を狙って、これを買えばいいのかのう。ただこれ、購入すると勝利点高いなあ。
与力自分も含めて借金リスクが高まりますからね。借金はゲーム中に返済できない、ってのもミソです。
市場操作カードにはもう1種類、プレイヤー同士に株式カードの交換を強制する株式市場カードがあります。ただし、このカードは3人以上のプレイでのみ適用されます。
-カードを捨てる-
与力で、ですね。買ったカードの効果を適用せずに捨てることもできるんですよ。
奉行捨てる? せっかく買ったカードをむざむざと捨てるのか?
与力まあ望まない相場変動を起こさせないとか色々狙いは考えられますが……じつは捨て札にも重要な意味があるんですよ。
ゲーム中にカードを捨てることを選択した、あるいは捨てる指示があった場合、「捨て山ボード」の3か所の捨て札置き場のうち、どこか1か所を選んでカードを置きます。各捨て札置き場には対応するイベントが描かれており、ゲーム終了時にダイナマイトのアイコンがついているカードが一番多く捨てられていた場所に該当する、以下のイベントのいずれか一つが発生します。
- ゴールド株式が3ドルに変換されてしまう。
- 各プレイヤーの持ち株が全て-1される。
- 株の価値がすべて半額になる。
奉行なあるほど。爆破によって市場が混乱するわけだ!
与力ダイナマイトアイコンはここで意味を持ってくる訳ですね。ですからゲーム終了時に自分が有利になるようなイベントが発生するよう、うまいこと捨て札山を作っておきたい、ってことになります。
奉行なるほど。捨て札が発生する行動も上手く使っていく必要が有るのじゃな。
②株の売却
株を売ることを選択したプレイヤーは、自分のコマが置かれている場所のカードを捨て、自分の売りたい株式カードをそこへ配置します。その上で、その株式の現在の価値の半額を受け取ることができます。最後に、山札の一番上のカードを、配置したカードと同じ場所にセットにして並べておきます。
奉行基本、半額か。現金化するのは難しいということなのかのう。ちなみに、マルチ株式とかゴールド株式とかを売った場合、どう価値が適用されるのだな?
与力はい、どちらも価値が低いものが適用されますね。マルチなら安い方、ゴールドなら一番価値の低い株、という扱いです。
奉行それはつらいのう。あと、この売却後の状態はどうやって買うのだ?
与力これは2枚のカードの価格を合算して購入することになります。ただし、買ったカードは“1枚手元において1枚捨てる”か、“2枚とも捨てる”のどちらかです。
奉行2枚を手元に置いておくことはできないのじゃな。
③増資
使える資産を増やします。2ドルを銀行に支払うと、資産が1増加します。
奉行シンプルに1回しゃがんで、やれることを増やす感じかな。
与力そんなイメージで間違いないかと。プレイヤーコマは動きません。
ウォールストリート爆発! その時……
以上の行動を繰り返し、山札の1番上に「爆破カード」が出現したら、各プレイヤーは最後の手番を行ってゲームは終了となり、勝利点清算が行われます。まず捨て札の山を確認してどのイベントが発生するかを確認します。その後、株式カードを種類ごとに分けます。この時、マルチ株式とゴールド株式をどの株に変換するかを決定します。
株式は、プレイヤー人数によって各種類ごとに何枚必要かが決められています。その枚数に届いてない種類の株は、全て紙くずとなってしまい、勝利点には換算されません。
奉行ひい、ふう、みい……げっ、1枚株が足りない!? あれ、爆破の混乱であと一枚必要になることは分かっていたのに……!?
与力えっ、計算間違えました? 流石にそれは想像していなかった。
奉行わしもびっくりしておる。
そして、相場の価値と比較して株式1枚あたりの価値を決定し、勝利点に換算します。これと購入して手元に置いた市場操作カードの点、残ったお金1ドルにつき1点を合算し、最終的な勝利点を計算します。最も多くの勝利点を獲得できた人が、ウォールストリートの王者となります。
2人プレイは奉行のミスが致命的なものとなり、与力の勝利となりました。
奉行鉄鋼が1枚足りなかったとは……
与力原油で攻めておられると思ってましたよ。ええ。
『1920ウォールストリート』【ここがイカス!】
奉行最初の印象よりもお手軽だったな。やることはシンプルだから。
与力そうですね。プレイ時間45分という表示もだてではありませんか。
奉行基本的には株を買っておくゲームじゃな。売りはどちらかというとやむを得ぬときに使う手段という感じなので、それがよかったのかも。
与力売るための銘柄を持っておくほどには余裕がない感じではありましたものね。
奉行そう。意外と買えぬのよ。手を広げすぎると紙くずを量産することになるから、うまく銘柄を絞って買いたいが、そうすると市場操作が露骨に警戒されるから、なかなか厳しい。
与力ですね。それだけにどのタイミングで資産を増やすかとか、他のプレイヤーの動向を見ておきたいですよね。
奉行しゃがむことでやれることが明らかに増えるからな。まあ、このゲームの資産含めた“ドル”というのは、アクションポイントだと考えると分かりやすいか。初期状態4アクションできて、それをどううまく使えるか、みたいな。
与力なるほど、そうですね。
奉行ゲーム中の見通しが思ったより良くて、遊びやすかった。それだけに苦しさも直視させられてしまうのだがな。
『1920ウォールストリート』【ここはちょっと……】
奉行できるなら、3人以上で遊ぼう。
与力ストレートな意見ですね。
奉行2人から遊べるのは確かじゃが、2人だと自然と銘柄のすみわけが発生するよな。攻撃的に行ってもいいのだろうが、それよりは自分の手を伸ばすのに専念した方が……。
与力効率的でしたね。
奉行ゆえに、互いの思惑が交差しやすい3人以上がよかろうと思う。最大人数の5人までいくと、まさに株式市場を体感できる混沌に襲われそうな気はするが。
与力どんなゲームでも、人数が増えるほどコントロールはしづらいですからね。
奉行また、ルール自体は飲み込みやすいので難しくはないだろうが、全体的には常に手番時に“ちょっと足りないかなあ”という状況が続く気はする。
与力自転車操業というか、なんというか……。
奉行そうさな、あと全体的にパッケージのイラストほどに派手な展開はないゲームじゃから、なんとなくこう、相手の狙いを読み合いつつ、落ち着いて遊ぶという趣向の際にやってみるとよいのでは。昔のトレーダーらしく、スーツでも着用してな。
与力紳士淑女のゲーム、ですか?
奉行男性諸氏はヒゲもたくわえるとなおよかろう。
与力なお、1920年にウォールストリートで爆発した爆弾については、『自動車爆弾の歴史』(河出書房新社)を見ると、多少書いてあるようですよ。
奉行なんだその物騒なタイトルの本は。お主の本棚はまこと奇怪な状況よな……。