第二十五回 野望尽きるとき
(ある宣教師の手紙)
二条城―1579年の戦略―
角隈石宗「御屋形様、織田家の苗木城主・河尻秀隆が我が方に降るとのこと。美濃から信濃への要衝を労せずして得ましたぞ」
甲斐親直「おやおや……河尻と申さば、信長子飼いの猛将であったろう。この土壇場で寝返りとは、人の心映えは分からぬものですな」
そう言ってやりなさんな。こちらの大軍団が美濃から尾張を席巻してるんだ。中国、近畿1、近畿2とブロックを分けて部隊を編制し、ローテーションでアプローチし続けてるから、流石にそろそろ向こうもサプライが間に合わなくなるころでしょ。あらゆる意味でリミットなんじゃないかな。
龍造寺隆信「だがよ、ちと一気に城が増えすぎちゃいねぇか。ただ守っとくだけなら一人か二人適当なのを置いときゃいいが、この先の足掛かりにしていくんだろ? しっかり手早く開発を進めていくには、優秀な人材が不足気味になって来たぜ」
確かに「足りるな~」と思っていたら、余りの城の多さに加え、CPU大名の予想を上回る手抜きのせいで、どの城もまきで内政をやってかないと、この先の戦力キープが難しい。そうなると人手不足感もあるが、もちろん手ぬかりなしさ。城井谷研修センターの方に連絡を取っておいた。
ほら、現場はこんな感じ。
******* 城井谷城 ********
センター長「国家平穏を神から与えられた使命とし、オープンでフェアな支配を通じて、全ての民から信頼され、愛される幕府を目指します! ハイ!」
全員「国家平穏を……!」
*******
どうだね、毎日の厳しくも温かい研修の繰り返しにより、我々の理念を理解し、力を尽くそうと考えてくれる人材がどんどん育っている。素晴らしいね。
角隈「ヒソヒソ(……こういうのを、何と申せばよいのでしたかな……)」
甲斐「ヒソヒソ(……角隈殿、もしや洗脳と申されたいのですかな……)」
という訳で。ここに入って貰っていたおかげで、忠誠度的に信用できなかった毛利や織田の武将が、考えを改めてくれたよ。人材的には問題なし。このまま侵攻を続けていこうか。
官兵衛「ところで話題は変わりますが、訃報がいくつか入っております」
角隈「むう、高橋殿は当家の重鎮。何とも傷ましいことよ」
甲斐「……高橋殿に血縁はおられたか? もしおられぬようならば、新たに軍団を……」
官兵衛「それが……」
官兵衛「御屋形様のご息女で、一萬田鑑実殿の奥方・桜様が後継の軍団長となられました」
龍造寺「??? お前の娘、高橋の隠し子だったのか???」
うーん……石宗、説明してくれる?
角隈「はっ。高橋鑑種殿は、もともと一萬田家から養子に入られた方。従いまして、ご子息無しとあれば、一萬田鑑実殿が血縁と相成ります。さりながら、一萬田殿は既に軍団長にございますゆえ、というところかと……」
甲斐「奥方の桜様に白羽の矢が立った、と? 左様に複雑な話が?」
成程ね。まあ、なんでもいいや。桜なら色々気を回さずともやってくれるだろう。で、他の訃報というのは?
ふむ、それはそれは。上杉とのアライアンスを今のまま続ける気はないし、再考のタイミングになりそうな報せだな……。
鍋島直茂「御屋形様、お疲れでーす。これから前線へ向かうので、一応ホウ・レン・ソウってことで顔出しましたー。織田はもう岩村城と鳥峰城に追い詰めてあるんで、確実にトドメ刺してきますねー」
長宗我部元親「ここで顔を出さねば、今回も出番が無さそう、とか言っておったのが本音であろうが。あ、島津兄弟は先発しておりますぞ」
ふふふ、我が大友家の誇る猛将諸君……能力値だけで言えば、新たに多くの人材を獲得しているが、あくまでもコアは島津兄弟、高橋紹運、それに君たちだ。頼りにしているぞ。
―美濃・岩村城―
島津歳久「で、どうなのよ。ここの状況は」
栗山利安「そうですね! 控えめに言って余裕、歯に衣着せず言えば楽勝、ってとこですか!!」
島津義弘「よし、そのまま御屋形の命令に従って攻め落とせ。歳久、出かけるぞ、ついてこい」
歳久「おい兄貴、ちょっとまてよ、俺たちはこの城を攻めるように言われていただろ、おい! 気は確かか!?」
―美濃・鳥峰城―
蒲生氏郷「これは立花軍団の方々。岩村城も既に落城し、織田はこの城を残すだけ。かの織田信長が最期を見物に参られましたか?」
宇喜多直家「フッフフフ……はるばる手助けに参ったが、不要、か。が、手柄の一つも立てずに帰るも興醒めよ。風雲児織田信長の最後は、この直家が見とってやろうぞ。フフフ……」
―二条城―
さて、織田もあっけなく終了となった。ここからはプロジェクトチームを3つ立ち上げて、一気に関東を目指していこうと思う。物量はこちらのストロングポイントだから、これを活かして勝負を決めに行く。
甲斐「力強いお言葉とご決意にございますな」
龍造寺「よっしゃ、やったろうぜ。で、具体的にはどうなるんだ?」
具体的には、こんなマスタープラン。少々長いけど、ちゃんと把握してね。
まず問題は東海の徳川家。彼には東海道、中山道にチームを送り、三河と信濃の同時攻撃から始める。東海道は立花軍団が主軸。伊勢の長島城に長宗我部元親を配してヘルプの体制を作っておく。
角隈「なるほど、これは真正面からの力比べになりますな。道雪殿ならば、まず力負けはありますまい」
で、中山道は鍋島、栗山、蒲生、新顔の堀直政といったあたりを、島津義弘・歳久が助けていく感じ。小諸あたりまで攻め込んだら、そこでさらにチームを分割し、甲斐と上野を目指す予定だ。ただ、両チームが活動するエリアは近い。全体のバランスは官兵衛、臨機応変によろしく頼むよ。
龍造寺「なるほど、直属軍団が突撃していく、と。だがよ、気がかりが一つあるぜ」
官兵衛「上杉がこと、に、ござりましょうか?」
龍造寺「おうよ。連中だってこっちに遠慮して領土を広げねぇってことは無いはずだ。となりゃ、こっちが徳川を弱らせたら、そこにつけこんで北信濃あたりからどんどん南下してきそうなもんじゃねえか? 俺ならそうするぜ」
そう。確かにその通り。そこで、第三のチーム、つまり我々の出番。我々は島津家久らを率いて、若狭からタイミングをうかがう。そして、上杉の野心が見えたら……ね?
―三河・岡崎城―
長宗我部「むっ、あれは島津勢。フン、なるほど。長篠から回り込んで我らの合力に参ったか。おい、義弘殿よ、どうせ勝手な判断で参ったのであろう?」
義弘「分かるか? あ、歳久に早馬を出せ。置手紙だけで黙って消えると、二度と口を聞いてくれなくなる」
長宗我部「だが、貴殿がこちらへ参る余裕があるということは、中山道の進軍が思うに任せておらぬ、ということだな?」
義弘「そう。上杉がちょっかい出してる」
長宗我部「左様か、ならばその旨、官兵衛に伝えねばなるまい……だが」