南国土佐を横切って
(ある宣教師の手紙)
中村御所―1565年から1566年の戦略―
……ふう。いやはや、引越しと言うのも中々楽ではないね。本社移転作業となるとより一層大変だ。だが、ここも噂通りいい場所じゃないか。
角隈石宗「まこと、土佐の気候風土は暮らしやすいと聞き及んでおりましたが、この早春にても暖かにござりますな」
土居宗珊「お目通りがかないまして、光栄に存じます。それがし、中村御所を預かっておりました土居宗珊にござります。この城に御屋形様をお迎え出来ましたこと、まこと当代の誉れにて……」
あー、あなたが土居さんね。はじめまして。今後ともよろしく、期待してるよ。ところで長宗我部の動きは?
土居「(ほう、なんと単刀直入な……)ははっ、只今は我が方の軍勢が窪川城を奪いったところにございます。長宗我部元親、これでようやくおのれの不利を悟って本山城、朝倉城、岡豊城の三城を固め、我が方の攻撃を防ぐ構えのようで。おそらくは三好の援軍を当て込んでのことと存じますが……」
龍造寺隆信「長宗我部の元親ってのも、聞こえた戦上手だ。それが守りに徹するってんなら、五月雨式に攻撃を繰り出しても、跳ね返されるだけだぜ。気合い入れてかからねぇと」
そだね。まあ、私の直属軍は府内から続々送り込める状況にはあるし、戸次勢も引き続き渡海中だ。全軍の準備をしっかり整えて、休む暇もなく攻め立てていけば、長宗我部の守りも破たんするタイミングがくる。ただ、土居さんの言う通り、三好が出てくると厄介だから、長宗我部攻めはなるはやで終わらせたいとこだなー。
龍造寺「おっし、とにかく気合い入れてけってことだな、分かったぜ」
土居「(なるほど、これは大した御屋形だ。京へ上るというのも、あながち……)」
甲斐親直「(相変わらず、噛み合っているのか噛み合っていないのか分からぬ軍議だが)」
鍋島直茂「お疲れ様です、御屋形様。窪川城から進撃した木脇祐守、高橋紹運、納富信景たち先鋒軍団が朝倉城、岡豊城を攻め落としました。あと、島津の家久君が本山城を攻め落としましたね」
一萬田鑑実「長宗我部はさらに後退し、香宗城と安芸城に戦力を集中し、我が軍勢を迎え撃つ構えのようにございますな」
まあ分かっていたとはいえ、進撃が上手くいったね。戸次の軍勢もそろそろ到着するだろうし、私も出陣して一気に勝負をつけよう。それにせっかくこれだけの大軍勢が揃っているんだ、ここはオポチュニティマネジメントをしっかりして、讃岐・阿波まで踏み込んでいきたいな。
吉岡妙林「好機を逃さない見事な采配、素敵ですわ、義鎮様!」
吉岡長増「……ただ、やはり三好勢が出てまいりましたじゃ。ご差配通り……」
長増「三好の重臣、大西出雲守の調略は済ませておりますが、続々と三好勢は阿波より進軍してまいりますぞ。これは侮れませぬ」
鍋島「いや、たぶんそこは例の連中にコミットさせるんでしょ、御屋形様?」
うん、鍋ちゃんの言う通り。あんま心配しなくていいと思うよ。他に懸案事項はなんかある?
一萬田「近江の浅井、越前の朝倉が反大友連合に参加した、との報せが山名家より参っておりまするが……」
あー……それは特にハレーション出ないでしょ。好きにしといて貰おう。じゃ、土佐攻め最終フェイズと参りましょうか!
―伊予・湯築城―
島津義弘「来てくれたな、歳久。いいか、今回の御屋形の指示は、岡豊城北の山中で、三好勢約30,000を食い止めることだ。ここは細い山道だから、大軍は通りづらい。こっちが有利に戦える」
島津歳久「え、なに? ごめん、兄貴。今なんて言った? よく聞こえなかったんだ、もっかい言ってくんない?」
義弘「こちらが有利だ、って言ったんだ。おかしいか?」
歳久「なんかヘンだなぁ。あのさあ兄貴、有利って言葉の意味、知ってる? 敵は30,000なんだろ? こっちは何人いるのよ」
義弘「俺とお前の軍勢で約10,000」
歳久「出たよ、兄貴の計算。あのねぇ、兵力でこっちが不利な状況を、有利なんて口が裂けても言えないよ、普通。いくら道が通りづらいったって、城に籠れる訳じゃないんだからさ、だったら数が多い方が勝つのが兵法では常道、あたりまえでしょ。兄貴、どんな兵法ならったの? え?」
義弘「俺は5倍までの敵になら勝てる方法を知ってる。お前、まさか習ってないのか?」
歳久「あ、こりゃ何言っても無駄ってことね。ハイハイ分かりました、やりますよ」
よーし、長宗我部はこれで滅亡だ。見どころのある・なしにかかわらず武将は全員採用して、戦力化していこう。ここから先、人手は多ければ多いほどいいからね。ホントに。簡単に死なれては困る。
一萬田「はい。すでに当主・長宗我部元親以外の武将は、みな提示した労働条件・給与・福利厚生に納得し、登用に応じました」
サンキュー。でも長宗我部元親もまんざらではないと思うんだ。たぶん少し冷却期間置いたら、就職してくるでしょ。さて、では土佐攻略に成功したこのタイミングで一つ発表しておこう。わたくし、今日より以降は大友宗麟というビジネスネームを名乗りますので、一つ宜しくお願いいたします。
角隈「宗麟? 御屋形様、なにゆえ法名を名乗られるのです?」
甲斐「確かに。御屋形様は南蛮人の教えに帰依しておられたはずでは……」
うーん、何でかと言われると困るけど、あれかな、字画。今後京の都を目指すに当たって、義鎮よりは宗麟の方が運勢が良くなるんだってさ。
龍造寺「どこの場末の占い所で聞いてきたんだ、そんな話をよ……」
まあなんでもいいじゃない。とにかく以降は宗麟でいかせていただきます。因みに、その話を各武家にも通してみたら、戸次鑑連が何か『御屋形様がそのご覚悟なら……』とか言い出して、彼も立花道雪と名を改めることになったよ。まあ立花姓は前から私が名乗るように勧めていたんだけどさ。
角隈「(何があの男をそこまで駆り立てるのか……)」
鍋島「御屋形様、前線の高橋紹運からノーティスメールです! その立花勢約14,000が土佐から北上し、三好家の白地城へ攻め懸かりました!」
おおっと、そいつはなし崩し的に大合戦になりそうだな。タイミング的にはジャストとは言えないのがつらいとこだけど。
鍋島「確かに、白地城は土佐から讃岐を目指す上でボトルネックになるとこなんですが、私も含めて、長宗我部攻めに投入していた軍勢はかなり損耗してます。立花勢の後詰をするのはちょっと無理な相談じゃないですかね」
守る三好はほぼ同数でしょ。道雪自身が出てきてないんだから、苦戦は免れないっていうか、下手すると全滅まであるよね。余裕のある部隊は……私と義弘か。
甲斐「(し、島津め。あれだけ戦っていて兵を一割程度しか損じていないとは、やはり化け物か……)」
龍造寺「どうするんでぇ。無理押しするか? まあ白地城を攻めてりゃ、その間に九州や伊予、西土佐の兵を再編できるから、戦は継続できなくもないと思うぜ」
そうだね、さすがは龍造寺隆信、目の付け所がシ●ープだ。とりあえず鍋ちゃんはASAPで木脇くんと九州に戻って、兵を整えて戻ってきて。それから島津の歳久、家久、それに紹運を余力のある四国の城へ派遣して軍勢を整えさせよう。
戸次鑑連改め立花道雪「我が軍勢、少しでも御屋形様のお役に立てねばならぬ」
由布惟信「ホントにお役に立ってるんですかねぇ」
ううーん、恐ろしいほどにとんとん拍子で話が進んでしまったな。白地城を取ったことで、伊予と土佐の連携が容易となり、三好の戦線を一気にスケールダウンさせられた。
龍造寺「それもこれも戸次……じゃなかった、立花のおっさんが暴走気味に戦線を進めているだけじゃねぇかと思うんだけどよ」
まあそうは言うけどさ、九州・四国で再編した軍勢も順調に集結しつつあるし、状況は我が方優勢に傾きつつあると思うね。ただ、ちょっと戦線がスケールアップしそうになってるのが、気になるんだよなあ。讃岐・阿波まで出ると、近畿がビジョンに入ってくるからねえ。
角隈「近畿の情勢は、如何なっておりましょうな」
まあ多分、ゲームタイトルにもなってるあの人と遭遇しそうな気はしてるよ。