越後は南北に長かった
1590年10月
みなさまごきげんよう。真田源三郎信幸でござる。只今はやや取り込み中の海津城館からご挨拶申し上げております。今は1590年の10月、ちょうど4度目の上杉勢による総攻めを跳ね返してやったところです。
鈴木忠重(以下、忠重)「あれっ、3度目はどうなりましたか?」
まあ、我らがこうして喋っておる時点で皆様察しはついておられよう。3度目も乗り切って此度の4度目、という訳だ。
高梨内記(以下、高梨)「毎度お見事な采配でございますな。上杉も驚いておりましょうし、戦功によって源三郎様も家老の地位を得られました。良いことです」
うーん、毎回同じ形でやられている上杉も流石にどうかとは思うけどもな。しかし、こちらとしてもかなり苦しくなってきているんだ。実は昨年から上杉との戦しかできておらん。昨年(1589)の7月から9月にかけて2度目の戦があっただろう。そのあと、今年の3月から4月にかけて3度目の戦、で、今終わったのが8月から攻め込まれていた戦だよ。これだけ連続で攻め込まれていると、兵糧の消耗も激しいし、兵も増減を繰り返して練度が上がらん。身動きが取れん。
河原綱家(以下、河原)「我らが踏ん張っておる間に殿が何とかして下されば、と思いますが…」
鈴木重則(以下、重則)「上田の南にある徳川の持ち城・小諸城を狙っておられるようですな。実際、源三郎様にも兵を率いて上田へ参り、小諸攻めに加われとのお下知が」
我らを攻めて兵を減らしている上杉を攻めるのがよいと思うのだがねえ。どう転ぶだろうか。
未だに明智が粘っているのもすごいが…。東海は徳川、北陸は柴田から衣鉢を継いだ前田、近畿は羽柴、中国は毛利、四国は長曾我部、という辺りが大きく力を伸ばしています。彼らの牙城に迫るのは難しそうですな。一方で九州、奥羽はまだどこがどう転ぶか分からない感じ。
忠重「真田は…」
見ての通り、生き残りに汲汲だよ。
1590年12月 好機!?
重則「申し上げまーす! 信濃・甲斐の徳川勢、上杉の根知城へ総力を挙げて攻め懸かりました!」
おっ、これは願ってもない。徳川・上杉共に根知城の攻防に大軍を張り付けておる。海津を攻める余地は無かろうし、徳川の後詰も多くはこれまい。小諸を攻めるならば今をおいて他にない!
…と思ってやってきたのだが、思ったより徳川の守りが固いな…。
河原「高力清長、民政の達人と聞いておりましたが、戦の腕も中々」
まずいなあ。これほど果敢に打って出てこられるとは想像していなかった。兵力を消耗してしまったから、このまま城を包囲しても不完全になりかねんぞ。…むっ?何事だ?
高梨「申し上げます、徳川方の酒井忠次勢およそ4000、小諸へ援軍に向かっているとの報せが入りました!」
それはいかん! 酒井忠次といえば、徳川でも指折りの戦上手。とてもそんなのを相手には出来ん。…くそぅ、徳川方の人材の豊富さと軍勢の数を見誤ったか!
河原「見誤ったのですか?」
おう、こっそりと上方の様子を見ておったのだが、向こうで50000くらいの兵を動かしておったのよ。そこに根知攻めが重なったゆえ、小諸まで手は回らんだろうと思ったのだが…我らの尺度では測れんな、徳川ほどの大大名ともなると。仕方がない、今回は諦めよう。
1591年8月 風雲急を告げる
さて、小諸攻めは痛み分けになってしまったが、一応戦功が有ったということで、おれは軍団長に出世したよ。これで権限は大きくなった。外交なんかができないくらいで、殆ど大名だな。言ってみれば上田真田家に対して海津真田家、というところか。
重則「このところ、上杉の攻撃も止んでおりますし、内政に専念できておりますな」
うん、内政の方が得意なおれにはありがたい時間だ。田畑を耕し、兵を蓄え、人口を増やす。葛尾城跡に築いた陣屋も完成したし、海津も大分住みやすい町になっただろう。
高梨「北信濃は今一つ人口が増えづらいですからな。道の拡張も急ぎたいところです」
だな。欲を言えば長野しんかんせ…ゲフンゲフン。まあいい。しかし、上杉の動静が不気味だ。なぜこれほど海津に攻め寄せてこないのか…。ちと上杉領に乱波などを送り、情報収集にあたるとするか(ただの画面スクロール)。
上杉領が出羽から攻略されておる! これは最上と伊達か! 最上と伊達が手を組んでおるのか!
河原「どうやら我らが小諸にかかり切りになっている間に、奥羽が伊達と最上の折半という形で勝負がついていたようで」
なんと、みるみる上杉領が減っていく…。持ち城の三分の一がほどは取られてしもうた。これはいかん、いかんぞ。伊達か最上がこのまま上杉領を侵食すれば、真田はこれまで相手にしてきた上杉に倍する力をもった大名と隣り合わせとなることになる。それでは徳川との板挟みがますます厳しくなり、とても長くは持ちこたえられなくなるぞ!
重則「いかがいたしましょうか。城の守りを一層堅固にいたしますか?」
それも確かに大切ではあるが…いや、我らも守りばかりではなく、攻めねばならぬ! 上田の父上と談合し、勝負に打って出る!