行きつ戻りつ
(ある宣教師の手紙)
勝端城 ―1570年から1571年の戦略―
さて。紀州では手取城、雑賀城を確保し、兵を送り込む足掛かりは作った。若狭は後瀬山城まで確保した。八上城はスタック。若干両ウイングを伸ばして近畿を包囲する姿勢になってきたけども、ここからどう軍を進めていくか……。
龍造寺隆信「備前・備中、因幡・但馬の内政は上手くいってる。直属軍主力の将兵はそこで再編中だぜ。んで、最前線の後瀬山城は圧力に耐えられるよう、島津家久を配置してある」
角隈石宗「立花軍団を南河内より大和路へ突入させられれば、宜しいのですが……」
甲斐親直「我らはまだ立花軍と策応できる距離にはございませぬ。もそっと摂津・山城へ兵を進めねば……」
うーん、困ったなー。本願寺が実に邪魔だ。淡路や山陽道の主力軍が、真っすぐ畿内へ進軍できない。だが、連中と戦うと、漏れなく織田が出てくる……。
龍造寺「畿内の城は距離が近いからな、敵の増援の出現がはえぇ。厄介だぜ」
甲斐「切り崩しのため、各地の大名家中に調略をかけ、寝返りも促しておりまするが……」
角隈「まだ様子見をしておる者が多うございます。もそっと、我らの力が強くなれば、雪崩を打って裏切り者が出そうなところではございますが……」
大兵力を動員するんなら、勝利はマストだからね。期待値に基づいてゴーを出すのは、私の流儀に反する。調略や兵力の再編などを軸に、しばらく推移を見守ろうかね。
角隈「……これで島津四兄弟の長兄以外は全員御屋形様の婿、でございまするか……」
確実につなぎとめておくためには、これが一番。他に武家をいくつか立てたよ。西土佐に土居宗珊軍団。伊予に吉岡長増軍団。それから、但馬の竹田城には一萬田鑑実を送って軍備充実のプロジェクトリーダーにした。これで後方支援体制はキッチリ整えてくれるだろう。……とはいえ、進攻のオポチュニティをどこに見出すか、それがちょっと思いつかなくてねぇ……。
龍造寺「おう、毛利に送っていた日高喜から連絡が来たぜ。どうやら毛利の連中、有岡城の荒木村重を寝返らせて、城ごと毛利のものにしてしまったようだ」
甲斐「なんと、有岡城が? あの城は播磨と摂津の通行を扼する要衝。これは御屋形様……!」
うん、毛利の持ち城になったということは、アライアンスの我々も、あの城を通過できるようになる、ということ。これは明らかにシェア拡大のチャンスだ。準備が整っている部隊を編制して、任務をアセットしていこう。意外と早くラッキーが来たな!
―島津義弘は、備中・備前の軍勢を率いて東進。摂津の飯盛山城を攻撃せよ。
長宗我部元親「ほう、珍しく弱気じゃないか。弟がいないと元気が出ないか?」
島津義弘「そうじゃない。俺たちは織田と真正面からぶつかる。相手の実力はまだ未知数だ。楽観はできない。分かるだろう? それとも四国の戦はそういうやり方はしないか?」
高橋紹運「どうでもよい。要は立ちふさがる敵を完全撃滅すれば済む話だ」
元親「お前はお前で、話を単純化し過ぎではないのか」
鍋島直茂「やれやれ……あんな調子じゃ果たしてコンバージョンできるかどうか……。ま、先行して敵の様子でも探りましょうね、っと」
―島津家久は但馬よりの援軍の到着を待ち、後瀬山城から琵琶湖西岸を南下せよ
島津家久「やるねえ、御屋形様は。ところで増援? 戦の準備はできてる?」
栗山利益「はい! 大丈夫です!! よろこんで!!!」
家久「わかった、そんなに大声出さなくてもいいよ」
栗山「はい!!!!」
家久「元気がいいのも考え物だな」
―島津歳久は信長の動きを拘束するため、籾井城に攻撃を繰り返せ。
木脇祐守「我らの兵は少のうござる。うまくやりおおせねばなりませぬな」
島津歳久「そういう戦なら俺は得意なの。んで、たいてい上手く成功する」
木脇「たいてい?」
歳久「そう、たいてい。あー、成功しない時は決まって……」
木脇「義弘殿?」
歳久「そ。きっと今ごろ兄貴、くしゃみしてんな」
―勝端城―
さて、各セクションの状況だが……
龍造寺「島津兄弟はどの戦線でも頑張ってるぜ。なんとかなるんじゃねぇか?」
角隈「確かに今はそう見えまするが、織田の援軍が現れれば、逆転されかねません。相当危うい状況であろうかと存じます」
上手く行っているようだが、織田軍の兵力が多すぎて、キャパオーバーしかけている、ってのが現実的なとこだな。……親直、納富は上手くやれそう?
甲斐「はっ。まもなく始まるかと存じます」
……納富の軍勢が雑賀城の北、河内の岸和田城に攻め懸かったのを見て、立花軍団が一斉に岸和田攻めの兵を繰り出した。予定通りだ。
角隈「岸和田城は立花家に攻略目標の指示を出しておりましたが、敢えてお攻めになられましたな? 何故に?」
まあそうね、攻略目標を指示してもしなくても、どうも軍団長の行動は御し難いところがある。んで、再指示が面倒くさかったり、あるいは細かく采配するのが面倒くさい時には、攻略目標の城を、直属軍でつついてやると、軍団が突然やる気を出すことがある……面白い現象だよね。立花軍団の戦力には余裕もあるし、南河内で暴れて、織田の注意を引き付けてもらおう。
龍造寺「そうだな、恐らく織田は慌てて兵を散らして守りに向かおうとするだろうが、そうなりゃこちらの注文通りだ」
ただ、特に義弘の軍勢はもうひと押しのために増援が必要になるだろう……という訳で、いくぞ!
龍造寺「相変わらずあんたの城攻めは見事なもんだな……ちと俺の理解を超えているが……」
角隈「御屋形様、立花家より使者が参っておりますぞ」
由布惟信「お久しぶりです、御屋形様。あるじ道雪の使いで参りましたよ。岸和田城はすぐに落とせました。んで、その後、兵力がまだ余ってたんで、高屋城を攻囲して攻め落としてやりました」
由布「てことなんで、俺らは囮の役割を上手く果たせましたか……ってのは、この飯盛山城に御屋形様がいる以上、聞くまでもありませんな」
甲斐「ふふふ、中々手厳しいことを申されますな、由布殿」
まあパラレルに進めて上手くシナジーを起していかないと、織田を倒すのは容易ではない、ってことだよ。あまりうがった見方はしないで貰えると有り難い。引き続き、大和を攻める準備にかかるよう、道雪には伝えておいてね。
由布「それでは、これにて失礼」
甲斐「……御屋形様、ただいま早馬が参り、立花勢の高屋攻めに乗じて、密かに吉野川沿いより大和を目指した宇喜多忠家殿らの軍勢、十市辺りで織田勢と戦となり、利あらず撤退した、とのこと」
ふーむ……立花軍団の兵力の繰り出し方なら、もう少し河内の方に釣られるかと思ったが……信長もまだまだ慌ててはいないか。これは戦が長引きそうだ。各戦線、現状で一旦オペレーションをペンディングして、コンディションの回復にシフトするよう、指示を伝えてくれ。
龍造寺「いったん矛を収めろ、ってことで大体良さそうだな? おし、伝えとくぜ」
角隈「よく今の出理解できましたな」
龍造寺「もうすっかり付き合いも長くなっちまったからな。要は心が通じ合えば何とかなるもんよ」