花の都を前にして
「さあパードレ、約束の時が近づいてきましたよ。あなた方の国にもない、驚くようなカテドラルを、私はミヤコの真ん中に立ててごらんに入れましょう」
私の背筋には寒いものが走りました。そのカテドラルは、神の慈悲を示すものではなく、オオトモの権力の強大さを表す、傲慢な建造物に他ならないのではないかと思ったからです。そう、あたかもあの、バベルの塔のような……
(ある宣教師の手紙)
勝瑞城―1567年の戦略―
いやはや、本州攻略のためのアイドルタイムさえ取れないとは……指示出し忘れたのもなんだけど、急に好戦的になったな、道雪は。ともあれ、CPU軍団長に丸投げるするのは、今一つ信用しきれない手段って感じかもね、全部コントロールしていきたい身からすると。
角隈石宗「(CPU……?)やむを得ませぬな。幸いにして、兵力には余裕がございます。このまま一気に本州へ押し渡られても、一時は十分に戦えましょう」
甲斐親直「いかにも。後取った城を守り切れるかどうか、そこまでは分からぬ、というところでしょうな」
そうよなあ。ざっと見まわすと、備前に本願寺が進出していて……別所、赤松が播磨で我々に対抗している、と。で、そこへ立花軍団が突っ込んでいったわけだな。
龍造寺「とはいえよ、三好だってまだ滅んでねぇ訳でよ、淡路にはできるだけ早く兵を回さんといかんだろ。それに、土佐の東からは、もう紀伊へ渡海できなくもないんだぜ。んで、攻め口が増えたってことは、敵に攻められる場所も増えたってこった」
そうだなあ。備前へ攻め込むチーム、淡路攻略チーム、それに淡路攻略後に紀伊へ浸透するチームと、色々考えなければいかんか……。
鍋島直茂「まあ、とりあえず立花軍団の北上を軸に、今ここにいるメンツを使ってフィジビリでやってみましょうよ」
そうさな。では取りあえず私の直属軍団は、瀬戸内海を北に渡り、長船城、三石城を狙わせよう。で、室津城を攻めてる立花軍団は呼び戻して、洲本城攻めをアサインしちゃって。
一萬田鑑実「よろしいのですか? 立花家はかなり張り切って播磨へ攻め込んでいったようですが……」
正直ね、ここで彼らに北へ向かわれると、いろいろと戦線の整理が面倒になる。だから室津攻めは私預かりにするってことで、早々に洲本城へ兵を投入するように指示を。
鍋島「了解でーす」
角隈「では、瀬戸内海を渡る部隊ですが……」
敵は飛び地化してる本願寺だからなあ、大したことはないとは思うんだが、島津兄弟にゴーサインを出しといてくれる? あれが行けば大体勝負はつくでしょ。
義弘「あの坊主たちがあまり抵抗しないことを祈る。正直」
島津歳久「あれ、兄貴にしちゃ珍しいじゃない。敵とみりゃいきなり鉄砲ぶっ放したり、とっ捕まえてサメがうようよいる海に放り込んだりするもんだと思ってた。いや、したいんじゃないの?」
義弘「俺は今の御屋形に大隅の片隅に追い詰められたとき、正直駄目だと思った。俺の経験から言って、助けの来ない一つや二つの城で、御屋形に立ち向かっても、いい結果は出ない」
歳久「経験者は語る、って? ずいぶん柔らかくなったねえ」
義弘「言ってろ。戦をしないで済むなら、それに越したことはない」
―洲本城―
というわけで最前線のこの城に自らやって来たわけだが、旧三好の武将で見どころのある人らは、全員立花家に送ったかい?
角隈「はい、仰せの通り取り計らいました。他のものはみな、城井谷に送り込んでございます」
甲斐「城井谷の生活はなかなか厳しいらしゅうございますな。見たいような、見たくないような……」
龍造寺「おう、ところで今後の方針を教えてくれよ。どう進軍していくつもりだ」
そこね。まずは立花軍団が東へ向かい、紀伊へ攻め込む。紀伊を抑えていた鈴木家はだいぶ織田家に痛めつけられているようだから、今なら一気に行けそうだ。
で、備前の方は……
一萬田「御屋形様、島津兄弟と、吉岡長増殿より報せが参っております」
ほっほう、上手くいったね。備前の本願寺領は消滅。で、浦上家が降ると、岡山城とかあそこら辺の要衝がロハで手に入ることになる。ついでに、浦上の武将は意外と使える人材が多いから、そのまま城の強化工事を担当させて……あっ。
一萬田「いかがなされましたか?」
こいつはいかん。こいつの扱いはクリティカルなポイントだ。彼だけは悪いが道雪に任せよう。
甲斐「……いかにもこの御仁はよい評判は聞きませぬな」
角隈「いくら有能とはいえ、御屋形様に何かあっては元も子もない」
なんかちょっとざわっとした……気のせいとしておこう。んで、鍋ちゃんや長宗我部、紹運辺りを旧浦上領に展開させて、山陽道を東へ進む部隊のキックオフを任せよう。準備整い次第、島津兄弟を先頭に、一気に河内まで進行させること前提に。で、四国は吉岡親子と土居宗珊にそれぞれ軍団を任せて統治。こんなアジェンダだが、どうだね?
龍造寺「んだな、なんとなくいいんじゃねぇかな、と思うぜ。あとは道雪のおっさんの領地をどんどんと東へうつしていけば完璧か」
……あっ、そうだ。
一萬田「また、なにかお心にかかることが?」
いやさ、島津兄弟が海を渡る前に、「兵に余裕があったらいけるとこまでいってくれても構わないぞ、余裕があれば」って言っといたんだよね……で、どうも報告を見る限り、相当余裕残してるっぽい。……これを今、引き揚げさせるのももったいないかなあ……ってね。
角隈「あまり左様な博奕のような采配は……」
甲斐「まあ、良いではございませぬか。島津には暴れられるだけ暴れてもらうも、また一つの策かと」
歳久「おいおいおいおい何だってんだよ、備前取ったら体勢を整えて、って話だっただろ、このまま東へ進んだら、本願寺の本隊と織田が待ってんだよ? そいつらのこと考えて進軍してる? 御屋形は何て言ってるのよ。 なあ、俺の話は聞いてくんないの?」
義弘「こういう戦は勢いが肝心なんだ! ちなみに御屋形も俺と同意見だ! さあ家久、こい。一、二、三……よし行け!」
島津家久「鉄砲隊前へ! 撃て!」
歳久「あ、そ。じゃあもうしょうがないな。素晴らしい計画性にびっくりだわ。のけぞるわ」
という訳で、仲の良い兄弟のおかげで、播磨も大分近づいてきたね。ははは。期待以上かな?
一萬田「よろしいのでしょうか、斯様に勢いに任せた戦をするのは」
龍造寺「あんま気にすんなよ鑑実、時の勢いってのは、案外と得難いもんだ。それに乗るのも悪い選択じゃねぇって」
うん。それに、薩摩隼人を使う以上は、このくらい思い切った采配をしてもいいんだ、と、最近そう思うようになってきたよ。あいつら、ほんと何かがおかしいから。
―紀伊・手取城―
立花道雪「……いかんな」
由布「いけませんかね、殿。まあ、覚悟はしてましたが……」
宇喜多「フッフフフ、御屋形は畿内を抑える織田の力を甘く見られましたな。フフフ」
道雪「……雑賀城を取った信長の大軍が南下してくる。なれど我が軍勢、この手取城を守るために呼び寄せるは、時がかかり過ぎる」
由布「どうします? 戦えってんなら戦いますが……」
道雪「……ここで兵を損じるは無益」
由布「てことは一旦撤収ですか。やれやれ、骨折り損になっちまいましたね」
宇喜多「捲土重来、にござる。フッフフフ」
由布「(やれやれ、噂通り不気味なヤツだ)」
―洲本城―
一萬田「御屋形様、吉岡妙林殿から報せが参っております」
丹波の波多野が降ったか……嬉しいが、これで丹波方面で織田が完全にコンペティターになってしまった。連中の戦力はまだ未知数のところが大きいからねえ。若干、タイミングが前倒しになってしまった感もあるな。
角隈「いよいよ織田との全面戦争になりましょうか」
甲斐「とはいえ、御屋形様。これで……」
いよいよ天下が近くなってきたか……あっ、そういえば鑑実に謝らなきゃ。
一萬田「何事にござりますか」
いや、一色から養女が来ててさ、その娘を君の嫁にしたから、君も私の一門衆に加わったんだよ。その披露をすべきだったのに、SS取り忘れててさ。申し訳ない。
一萬田「なに、左様なことは些細なこと。今後も御屋形様の手となり足となり、身命を賭して働きまする」
そういってくれると嬉しいね。さて、いよいよゲームタイトルの人と正面衝突になるか……?