あの感覚を言葉で伝えるのは難しいけれど
以前読んだ育児書で「胸（授乳）にはそれぞれのドラマがある」といった表現が使われていて、もの凄く腑に落ちました。母親の体質、子どもの性質、それをとりまく環境によって感じ方や問題の現れ方が異なるということを「ドラマがある」と表現すると、個人個人の思いが詰まっている様子がよく伝わるように思うからです。実にしっくり。
ということで、私の胸のドラマ、授乳にまつわる個人的体験談なのですが。
子どもが生後数か月を迎えた頃からでしょうか。授乳を始めた途端、喉が猛烈に乾くような感覚を覚えるのと同時に、どうにもならない気分の悪さを味わうようになりました。そこから1~2分が過ぎると、ふっと不快感が薄まっていきます。とは言え、なんとなく胸はざわざわする感覚、座り心地が悪いというような後味の悪さが残ってしまいます。
（イラストは「いらすとや」さんよりお借りしました）
ごく短い時間に現れる症状であるとは言え、日に何度となく行う授乳の度に発生するので（混合の予定でしたが、哺乳瓶イヤが発動して完母に）、一番きつかった頃は「授乳、億劫だなあ」と感じる時すらありました。居ても立っても居られないような焦りのような、ネガティブな感覚を前にすると、「授乳は乳児とのコミュニケーションの場」などと聞きますが、それどころではありませんでした。子どもは文句なしに可愛いし大切ですが、辛いことは辛い。
これは、いわゆる『D-MER（不快性射乳反射）』だったと思っています。医師の診断を受けたわけではないので素人判断ですが、
あなただけじゃない！授乳が不快という感覚…D-MERとは？（たまひよ）
こういった資料に基づいた自己診断の限り、症状がぴったりとあてはまるからです。
名前と症状を多少なりとも知っていたので、慌てずにすみました
先に参照した「たまひよ」などでは、「こんな症状が出るなんて、自分はおかしいのではないか」と悩んでしまうケースがあげられていますが、私の場合は当てはまりませんでした。これにはおおよそ二つの理由があるかなと思います。
第一に、「こんな産後トラブルがあった」という漫画や体験談を読むのが好きで、D-MERについてもTwitterで回ってきた育児漫画で呼んでいたから。どういう症状なのかを頭の片隅に置いておけたので、誰にでも発生する可能性があると知っていたために、あまり衝撃を受けることはありませんでした。
第二に、私の実母も、同じような症状を訴えていたから。特に喉の渇きが激しかったらしく、産前産後をとおして「授乳をし始めるとすっごく喉が渇くから、水とか麦茶とか飲みなさい」と折に触れて言われておりました。最初は「なんだかよく分からないけれど大変だなあ」と思っていたのに対し、最終的には「水分補給大事だわあ」としみじみ思うようになっています。
なお、Twitterの体験談と実母の体験談が同じものと気が付いたのは、実際に自分に症状が現れてからです。母はネガティブな感情（ずうんと暗くなる）とも表現していましたが、とにかく「水！ お茶！ 飲め！」というアピールが強かったので、「授乳とはそんなに大変なのか」としか思っていませんでした。
個人的な対処法
あくまでも私（と母）の場合ですが、授乳を開始する前にコップいっぱいの麦茶を用意して、子どもが飲み始めたら自分も一気に飲み下すと、かなり落ち着きます。少なくともせりあがるような不快感はこれだけでも軽減しました。
その次に、誰か（基本は夫）に話しかけて雑談します。一人の時はスマホをいじるかテレビやラジオなどをつけます。授乳中は子どもを見ているべきと考えるクラスタから激怒されそうですが、一番症状が重かった頃は、とにかく別のことに意識を向けているのがベストだったことは確かです。ピークは開始1分後くらい、一方で授乳は基本的に10分以上かかると思いますので、気になる方は不快感が落ち着いたらやめればいいんじゃないでしょうか。
という我が家では、「泣いた！ 授乳だ！ コップ用意！ 夫いない！ テレビ……はみたいものが何もないのでスマホ用意！」みたいな感じで態勢を整えて迎え撃っていました。
水分補給については、母体に欠かせない水分もとれるし、基本的に害になるであろうことはないと思うので、おすすめです。しいて言えば、寒い時期の夜間は飲みづらい。
ちなみに母は、この不快感は割と誰にでも起きる現象だと思っていたらしく、「マイナーな症状らしいよ」と話したら驚かれました。産後すぐの頃（症状が発生していない頃）から実家で授乳を始めようものなら、毎回口にコップを突っ込む勢いで飲むことを促されたので、もしやこれは勘違いしている……と思ったら案の定でした。長年の謎が解けてよかったね。
