戦術はリアクション
1613年の情勢
みなさまどうも、相変わらずの真田信幸でございます。本日はちょっと危ない状態に陥っている関東平野からお伝えしてまいりたいと存じます。
鈴木重則「いや、ちょっとどころか、前後を塞がれてしまっておりますが…」
小幡景憲「いかがなされますか、前の敵は我らよりも多勢、このままでは挟み撃ちに…」
まあ二人とも落ち着いておれ。脱出の機会は十分にある。それよりも関東平野の戦が思うように進まぬ理由がこの戦でよう分かってきたではないか。
重則「はて、上手くいかぬ理由…と?」
鈴木忠重(右近)「もしや、道、でありましょうか?」
そうそう、道。伊達も、その前に関東を支配していた北条も、道を細かく整備していないから、軍勢の併進ができず、攻めるにも大体一方向に限定されてしまう。行軍速度が落ちると、兵糧も無駄に食うしな。支配下の諸城へ、付近の道の拡幅工事を早急に行うよう、申し伝えねばならぬな。
小幡「それにはとりあえず目の前に危機を脱する必要がありますが…」
うん、八王子と玉縄の軍勢を後方、河越に回り込ませれば、そちらに反応して退くだろう。その隙に小田原へ退くのだ。
小幡「ははっ」
しかし越後の戦線は思うに任せないなあ。逆に見れば、最上の総勢を直勝殿以下、北信越の軍勢だけで拘束している、とも取れるから、まあ変な動きをされずに済んでいると、良い方向に考えた方がいいのか…。
河原綱家「兵が回復すると、またすぐに消耗させられてしまう。我慢比べですな」
高梨内記「したが殿。何やらよいこともあったそうで?」
おう、上州の要衝・厩橋城の城主であった上条政繁が調略に乗ってきた。国峯以外に我が方の拠点ができたことで、伊達も慌ててな。国峯に集中していた兵が一斉に引き退き始めた。これで、箕輪城が、孤立。ようやく、小諸から東へ本格的に進軍できそうだ。
河原「ようやっとですなあ」
高梨「小諸の源次郎様も、奮い立っておられましょう」
弟には長いこと耐え忍んでもらっていたが…北関東から伊達を倒す戦、始めて参ろうか!
1614年の情勢
さて、年が改まったところで突然なのだが、浜松が軍勢を動かし始めた。どうやら厩橋城が我らの支配下に入った、ということで、伊達征伐の好機!…とでも、思ったらしい。
小幡「それにしては、信濃から参る兵力が弱すぎますが…」
彼らにまず伊達勢とぶつかってもらい、消耗したところを満を持して源次郎以下の真田勢が箕輪城を奪い取る、とそういう役回りを背負ってもらうには、ちょうどいい位の数だろう。
重則「…申されようが安房守様に似てまいられましたな」
それ、褒めてるんだよね? さて、で、浜松的に本命は多分こっちだ。
右近「我らも城攻めの軍に加わりましたな、今回は」
重則「何か、打算がございますか?」
うん、この三浦半島を押さえることで、江戸を通らずとも房総へ攻め込むことができるようになる。房総から北進する軍と、相模から江戸へ東進する軍の二方面から攻撃を受ければ、伊達の南関東での活動も、大分苦しくなるだろうと思うのだ。そのためにも、三崎城は自分の持ち城にしておきたい。
小幡「あとで“提案”して、知行として拝領すればよいのではないか、とも思うのですが…」
そこはそれ、なんかこう、自分で勝ち取りたいじゃないか。ま、軍勢に余裕もあるし、このまま館山まで奪い取ってしまおうか!
最大の好機到来
さてさて、房総半島は気候がよいし、魚も美味い。みな、食うておるか?
小幡「…あのう、このように物見遊山気分で慢心しておって、よろしいのでしょうか?」
何を言う。これまでの苦労が報われ、ついに館山城を落城寸前まで追いつめたうえでの、ただの昼餉ではないか。あとはもう、城方が精根尽き果てるまでのんびりまっておるしかやることがない。あまり目くじら立てるでないぞ。
小幡「はぁ、まあ、そうですが…」
右近「申し上げます、越後の相馬利胤様、永井直勝様より火急の報せが届いております」
ん?なんだ一体。しかしこのデザートのピーナッツソフトクリームも美味いのう。どれどれ、ふむふむ。
重則(誰だ、殿にあのようなものを差し上げたのは。時代考証がおかしいだろうが)
右近(今さらそれを申されますか、父上)
…ついに来た! 重則、右近、館山城に使いを送り、直ちに降伏せよ、さもなくば城に火をかけ、焼き尽くしてくれる、とな!
重則「は、はぁ!?」
小幡「お待ちください父上。先ほど申されることが違うようですが?」
景憲殿、この書状を読まれよ!
小幡「こ、これは…!!」
右近「殿!」
おう、待ちに待っていた好機だ。ついに伊達と最上が仲間割れしおったわ。伊達が最上領へ東北の兵を送り込んでおる間、南関東への注意は手薄となろう。小田原に帰って我らが体勢を立て直し、一気に兵を進めて河越あたりまで進出するぞ。急げ! ソフトクリームも食え!
重則「ハ、ハハーッ!」
おっ、そうだ。関東で伊達と決戦になる前にだ、右近よ。
あれが一番真田の血を色濃く受け継いでおるように思う。となれば、真田を熟知する譜代のお主が似合いであろう。頼むぞ。
右近「身命を賭しまして」
さあ、一気に行くぞ! 越後の軍勢にも北進するよう、伝えるのだ!