第十九回 道は切り拓くもの
(ある宣教師の手紙)
雑賀城 ―立花軍団の最前線―
江里口信常「おいおいおい、信勝のやつ、討死しちまったって本当か!?」
円城寺信胤「うむむ……、困ったことになったぞ」
木下昌直「如何にも。一人欠けては、『五人そろって龍造寺改め大友四天王!』の見得が上手く決まらぬな」
百武賢兼「やむを得ん、由布殿に新しいのを考えてもらおうか……」
由布惟信「考えねーよ。はい解散、とっとと味方を迎える準備準備」
勝端城 ―1572年の戦略―
よし、前回のMTG通り出陣の準備はできてるね。これからしばらく戦陣滞在になるから、前もって必要な所には必要なタスクをアサインして起きたい。特に若狭・越前側はどうなってる?
角隈石宗「ははっ、島津義弘を筆頭に、よくやっておる、の一言かと心得まする」
甲斐親直「朝倉の金ヶ崎城を奪い、鋒を転じて琵琶湖東岸を南下。浅井・朝倉の迎撃を打ち破り、浅井の本城である小谷城を囲みましてございますぞ」
龍造寺隆信「これだけやるのを見ると、やっぱあいつ飼い慣らしといてよかったのかもしんねぇな」
そっか、じゃあそっち方向は一安心だな。では出陣するといたしましょうか。石宗、留守を頼むよ!
―高屋城―
織田の軍は一部隊ずつが抱えている兵力がこちらの1.5から2倍はある。やはり各城の人口差が大きく影響しているなあ。大和をスコープにしてるけど、アプローチのやり方を考えないといけないな、これは。正面から突いて勝てるものではないわ。
龍造寺「じゃあ、調略か?」
甲斐「応じる者も少なくはございませんが、それでも織田には十分な人材が残ってござる。調略にて戦局が大きく動くとも、思えませぬなあ……」
そうさね、寧ろ大和を包囲するような形を目指して、段階的にフェーズを引き上げていった方がいいかな。そのためにはどうすればよいかな、官兵衛?
黒田官兵衛「なんとか、本願寺を味方に引き入れるか、或いは石山本願寺を我らが手中としたいものですな。あの寺がある限り、御屋形様の軍勢と、立花様の軍勢は二分されたままにござる。ですが、御屋形様には、既に解決策にはお気づきかと、存じまするが……」
ふふん、お見通しか。確かに、あと少々粘れば、時間が状況を好転させてくれる……
この時を待っていた。官兵衛、すぐに本願寺さんと会って、我々へのアグリーを取り付けてくれ。渋ったら朝廷にオーソライズされていること証明してやる、とでも言ってくれ!
官兵衛「ははっ。本願寺殿、朝廷が間に入られるとなれば、一も二もなく、我らを信用なされましょうな」
唯一のネックは、私がブディストじゃないことだけどもな。頼んだよ!
龍造寺「しかし反大友同盟って、何か意味があったのかね。同盟組む側に回らねぇと、分からんのかな」
甲斐「まあ、宜しゅうございましょう。我らは如何いたしましょうか」
そうね、立花勢が無事に引き上げたら、我々も引き上げましょう。……大和攻めは、立花軍団だけでは難しいかもしれない。リスケかなぁ。
―小谷城―
義弘「よし、浅井長政は拘束したか、歳久?」
島津歳久「いや、逃げたよ。鎌刃城に立てこもったみたい。まだやんのかね」
高橋紹運「兵にはまだ余裕がござる。ここは一気に鎌刃城へ攻め入り、浅井を完全撃滅することが肝要では」
長宗我部元親「雑な判断だな。お主も含め、兵を半減させている部隊も少なくはないぞ。ここら辺りで奪った城を固め、次への足掛かりを築くが宜しかろう」
義弘「そうだな……城代を誰にするかは、御屋形様の指示を仰ごう。俺たちは周囲の安全を確保したら、段階的に撤兵する。それでいいか?」
鍋島直茂「んー……そうしたいけど、そうもいかないみたい」
歳久「なんでよ」
鍋島「上杉が南下してきたらしいのよ。目標はどうやら金ヶ崎と小谷。んで、上杉謙信が陣頭指揮らしい。兵力は多分こっちの倍くらい」
義弘「それはまずいぞ、下手すると後瀬山城が危ない。何かで注意を引く。金ヶ崎で時間を稼ぐんだ」
歳久「何か、って、どうせ俺たちが体張るんだろ。あのさあ、金ヶ崎は一旦あきらめてさ、後瀬山に兵力を集中した方がいいんじゃない?」
義弘「歳久。お前、今まで俺を説得できたことがあったか?」
歳久「ない」
義弘「じゃあいくぞ」
鍋島「……冷静にまずいね。御屋形様にメール出しとこう。“キャパ超えなう”っと」
―勝端城―
今さら謙信がやる気を出して前線まで出てきちゃったのはまずかったなあ。島津兄弟には無事に金ヶ崎を放棄させられたかい?
角隈「はっ、島津義弘が主力は後瀬山城に退き、小谷には長宗我部と栗山を残して守らせておりまする。若干無理をさせておりますゆえ、備前、播磨の兵に東進を命じました。これで上杉勢が金ヶ崎を越えて一気に畿内へ入り込むことは防げるかと」
それならまあよし。それに金ヶ崎はまだ重要じゃない。そのうちタイミングがくれば、自動的に戻ってくる。さて、前線の動きが停滞したここでやることは、ディテールにこだわって我々のシェアを確定させていくことだね。それが結果的にコストリダクションにつながる。
角隈「(よく分からぬが)御意」
龍造寺「細かい話はあらかたカタがついたようだぜ。で、上杉の攻撃をどう防いで、大和をどう攻略するつもりだ?」
甲斐「その両方を睨める城に、強力な軍勢を配置したいところですな……」
そう、その通り。そろそろこの勝端城を引き払って、いよいよ二条御所へ本格的に引越しするタイミングが来たんだと思うんだよ。