近畿攻略
(ある宣教師の手紙)
二条城 ―1576年の戦略―
黒田官兵衛「……という訳で、心の声が駄々洩れでしたが、本願寺はしばらく気にせずともよいかと」
角隈石宗「本願寺殿、なかなかに正直な御仁にございますな」
何にせよ、本願寺に対して実力行使する局面は、面倒が増えるから避けたいねえ。さて、これで大和へのオペレーションにゴーを出すフェーズを迎えたが……プランはきちんと進んでる?
甲斐親直「すべて、手はず通りに」
龍造寺隆信「立花軍団に動員を指示して、高屋城に島津義久以下、約三万の兵を集めさせた。それから、島津家久と蒲生氏郷に南へ回らせてるぜ。んで、道雪が合流する。こちらも総勢三万程度になる予定だ。順調だな」
甲斐「織田勢は即座に反応し、筒井城、信貴山城、十市城に兵を集めて守りを固めました。これも予定通りにござります」
OK。あとは我々がコミットしていくだけだが……だが、織田はもう美濃・尾張からヘルプを出さないだろうか? できれば一網打尽にしてしまいたいが……。
龍造寺「なら、家久に突かせて反応をみちゃどうだ? 俺が言うのもなんだが、野郎なら上手くやりおおせるとおもうぜ」
……だな。よし、そうするか。至急家久に連絡を。
角隈「龍造寺殿の読み通り、島津家久勢が、突出してきた織田軍を夜襲にて打ち破りました。織田勢はいよいよ三城に集結し、守りを固めております」
甲斐「そろそろですな。織田勢が袋を食い破ろうとする前に、口を閉じてしっかりと息の根を止めねばなりませぬ」
よし、いよいよ出陣だな。官兵衛と納富くんが脇を固めるように。あと、播磨の立花勢にも兵を出すよう、メールを送るんだ。いくぞ!
龍造寺「んで、戦はどう進める?」
甲斐「織田の三つの城は、互いに連携をして我が方の攻撃を阻んでおりますが、どれか一つでも落とせば、後は熟柿が落ちるように全て落ちましょう」
角隈「つまり、我らの攻撃正面にある筒井城を落とせば、勝負はつきますな」
官兵衛「ただ、城攻めが長引けば、織田の援軍が続々と来援し、厄介なことになりかねません。できるだけ早く攻め落とすことが肝要」
OKOK、城攻めは我々のストロングポイントだ。城に取りつきさえすれば、力攻めで10日はかからない。……だが、その前にボトルネックが。
官兵衛「野戦に打って出てまいった織田勢ですな。ここは私と納富殿に御一任を」
納富信景「官兵衛殿が左様申されるならば、そのように」
―大和・十市城近郊―
立花道雪「……我らの不甲斐無き戦により、御屋形様の御出馬を仰ぐこととなったは、まさに痛恨の極み」
由布惟信「まあ、そういう考え方するのは止めましょうや、殿。御屋形様が来てくれた以上、今度こそ必ず勝つ!って気合が肝心ですわな」
道雪「……惟信、高屋城の島津義久に早馬を送り、直ちに信貴山城へ仕掛けよ、と申し伝えよ」
由布「は? 御屋形様ご指示は、敵が包囲の外に出ないよう、しっかり守りを固めろってことでしたが……」
蒲生氏郷「なるほど。立花様は、包囲など必要なくしてしまえばよい、左様お考えにございましょう?」
道雪「……」
蒲生「御答えなさらぬが何よりの答え。何ごとも主の御心のままに……」
由布「なんだかまた妙な雰囲気になっちまったなあ……」
―大和・筒井城―
いやあ、やっぱ大したことなかったでしょ。城攻めに関する我々のシステムは全く完璧じゃない? 筒井城は陥落した。これで大和は平定したも同然だね。
龍造寺「……ここまで来て、まだその攻め方を公開はしないのな」
角隈「御屋形様、ただいま早馬が参りまして、立花勢が南大和で織田勢と大合戦に及び、みごと勝利を収めたとのこと」
甲斐「これで信貴山、十市を守る兵は払底したであろう。城は容易に落ちますな。御屋形様、大和平定、おめでとうございまする」
いやいや、ハッハッハ。やっぱり自分で出ていったら勝負は簡単についた、というと言い過ぎか。だがともかく、これで遅れがちだったマスタースケジュールを、しっかりと前に進めることができる訳だよ。さて、他のエリアの進捗はどうだ?
官兵衛「その前に御屋形様、よろしゅうございますか。悪い報せがございます」
お、悪い報せ? どうした?
うへえ、織田のカウンタープランも中々じゃないか。これはまたひと戦だね!!
―備中・中国山地―
島津義弘「俺たちのことを知らないとは、噂ほどの人物じゃないな。島津義弘と長宗我部元親、それに高橋紹運。お前らみんなで遊ぶか? 遊びたいなら付き合うぞ。その気がないなら引っ込んでろ!」
長宗我部元親「薩摩隼人というのは、かくも雄弁なものなのか?ん?」
高橋紹運「歳久殿もよう喋られる。国風でござろう」
元親「お、“完全撃滅”と言わないとは珍しい。そういえば歳久の方はどこだ?」
義弘「歳久は家に着替えにいった」
―大和・筒井城―
はあやれやれ。信長も面倒をかけさせる。しかし地の利はもうこっちにあるからな。もう大和は渡さないよ。
角隈「で、御屋形様。我々が大和を固めている間に、毛利は最早風前の灯火といった塩梅のようですぞ」
龍造寺「ほお、やったな。しかしまあ、毛利領を誰にどう預けるか考えないといかんな。どうするよ、御屋形」
甲斐「そういえば、臼杵鑑速殿が病にて身罷ったとの報せも参っております。一門がおらぬため後継が立てられず、豊後から日向にかけての軍団長が空席となっております」
そうだなあ、臼杵軍団の後は、川崎祐長君に任せるかな。長いこと黙々と道路を作り続けたご褒美だ。毛利領は周防、長門、石見、安芸は蒲池家と高橋家に分割。因幡、伯耆、出雲を領地として、一萬田鑑実に軍団を立てさせよう。それから備中、備後に松永久秀を送って軍団を任せる。
龍造寺「松永!? あの剣呑なジイさんを信用するのか!?」
角隈「よろしいのですか、御屋形様?」
あ、彼はギブ&テイクを間違えなければ大丈夫な人だから。むしろ飼い殺しにしてる方が何を企むか分からない。てことなので、それなりの領地を与えて余生を過ごして貰えればいいと思っているよ。さて、あとは新しく獲得した城を中心に、道路をしっかりと作ってこれからのスケジュールに備えるように指示を……
官兵衛「その前に御屋形様、よろしゅうございますか。悪い報せがございます」
え、またそういうノーティス? また織田? それとも徳川でも出張ってきた?
官兵衛「いえ、本願寺が攻め込んで参りました」