FIFA18 テキストリプレイ 転生した内藤昌豊は、武田の旗を天下に知らしめることができるのか? Part.1

第1節 内藤昌豊、転生したってよ

どうも皆様、内藤昌豊と申します。先日、武田の旗が京都に立った気がしたんですけれどね。ふと朝起きてみたらどうにも夢だったらしくて、まだまだ太平とは程遠い世の中が続いてしまいました。そんなこんなで先年、我が御屋形様・武田信玄公は身罷られ、諏訪四郎勝頼様が後を継がれました。何と申しても戦上手であった御屋形様の跡目ゆえ、皆々初めはお家の先行きを危ぶんでおりましたが、勝頼様の采配は中々にて、遠江では徳川の領土を奪い、美濃では織田に圧力をかけ、威勢並々ならぬものがございました。

やがて勝頼様は勝ちに慣れ、さらに勝ちを積み重ねようと、徳川に味方する三河・奥平氏の居城、長篠城を囲みました。すると、これ以上我らに圧されたくなかったのでありましょう。徳川家康が織田信長に泣きつき、信長自ら率いる三万の援軍を引き出したのです。馬場、山県、そしてそれがしの三名は、直ちに兵を退くように進言しました。織田と徳川を併せて約四万。一方の我ら武田勢は一万五千ほどです。戦の定石から言って、勝ち目はございません。しかし、勝頼様は兵を進めるよう下知を下され、長篠城の囲みを解くと、本陣を設楽原辺りまで押し出したのでございます……。

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1573年 三河・設楽原近辺の武田本陣

馬場信房「ご当代様、長篠城の囲みを捨て、ここまで出てまいりましたが……」
武田勝頼「織田信長、我らとの決戦を望んでここまで出陣して参ったのであろう。ならば信長を打ち破れば、長篠城は自ずと落ちる。どうだ、あやつは打って出てくるであろうな?」
馬場「さあ、それは如何でありましょう。武田の強さは彼奴も存じておりますゆえ……」
山県昌景「修理殿、どう見られる?」

「左様……」

信長の野望・創造 戦国立志伝
信長は設楽原に着陣後、連吾川沿いに長大な馬防柵を築いた、とのこと。
(信長の野望・創造 戦国立志伝より)

ゆえに、戦となりましても、一筋縄とは参りますまい。さすれば、三万以上の敵に対し、その半数にも満たぬ我が方は、苦戦を免れぬかと。厳しい戦となりましょう。

真田信綱「尋常の野戦であれば、後れを取るとは思いませぬが……」
真田昌輝「まさか信長、ここまで我らを引き出しておいて、長滞陣に持ち込もうというのでしょうか?」
馬場「いや、それはあるまい。信長は近畿に敵を抱えておる。時間をかけ過ぎれば、京が危うくなる。必ず、何か仕掛けてくるはず。だが……」
山県「武田を相手にする以上、何も考えずに向かってくるなどあり得ぬこと、ですな? だが、その仕掛けが柵とは……」
勝頼「いずれ、夜が明ければはっきりとしよう。そして信長めに引導を渡してくれようぞ」

―本陣側―

美濃殿、三郎兵衛殿。此度の戦、いかに思われる。勝てようものであろうか。

山県「ふむ……」
馬場「どうした、修理。不安か?」

いや、ただ……我らは、御屋形様が勝つと仰せであったがゆえに、必ず勝つと信じ、そして勝ってきた。

山県「何を言うか。御屋形様亡き今でも、武田は強い。勝つと思えば勝つ。心に疑念が湧けば敗れる」
馬場「そう、一本気に考えられればよいが、ということろだな? 三郎兵衛よ」
山県「ご当代様は、今、勢いに乗って勝っておる。御屋形様すら落とせなんだ高天神城を落とすなど、戦上手でもあらせられる。ただ、いささか勝ちが過ぎた、のやもしれぬ。わしは、そう思う」
馬場「なるほど、それで信長の誘いにまんまと乗せられたか……。思い出されるのう、村上義清との上田原の戦が」

と、いうことは、この戦、我らが駿河守様(板垣信方)、備前守様(甘利虎泰)の代わりを務める、ということに相成りましょうかな?

馬場「どうかな。最初から負けると決めてかかることはない。だが、いざとなれば、そうするのが我ら家老の務めよ。のう」
山県「フフフ、まあ、勝てればそれに越したことはあるまい」

―明け方―

勝頼「どうじゃ、修理よ。織田の陣は見えるか?」

はっ、これは……

信長の野望・創造 戦国立志伝より
なんと、これだけの堅固な柵を僅かな日数で……?
(信長の野望・創造 戦国立志伝より)

信綱「これはとても、我らと戦をしようとての構えとも思われませぬが?」
昌輝「いや、兄上。これは信長の誘いの手ではありますまいか。数の劣る我らが、斯様に堅固に構える陣に打ち掛かれば、見過ごせぬ痛打を受けましょう」
勝頼「信長め、わしが衆の多寡をわきまえられぬほどのうつけかと思うたか。侮られたものよ……!」
百足衆1「ご注進! 鳶ヶ巣山の我が陣に徳川の酒井忠次勢が朝駆けを仕掛けました!」
馬場「なに? して、我が方はいかがした?」
百足衆1「はっ、後方よりの奇襲に不意を衝かれ、主だった大将方はことごとく討死なされ、砦は全て徳川の手に落ちましてございます」
勝頼「なんと、兵庫介叔父(河窪信実)や、三枝(昌貞)、和田(業繁)ほどの者が、易々と……」
山県「まずいな、鳶ヶ巣の砦は、長篠城を見張ると共に、我らが甲斐への退路を抑える意味があったというに!」

……このままここに本陣を置いては、前後より挟み撃ちを食らいます。ご当代様、いかがなされまするか。織田本隊には殿備えを置き、反転して退路を切り開かれるか。それとも前方、織田の本隊と一戦して血路を開くか。二つに一つかと心得まするが。

勝頼「……この二者択一が、信長の仕掛けであったか。うかつであったわ……かくなる上は、やむを得ぬ。進むしかない。信長が首を挙げ、この窮地を脱する!」

―設楽原―

馬場「山県の赤備えが先ほどから一歩も進めておらぬ。なんという種子島の多さだ」
勝頼「深田に足をとられ、馬も人も容易には進めぬか。これでは織田方の種子島のよい的ではないか!」
穴山信君「進んでも馬防柵にて止められ、種子島にて討取られてしまう。これでは焼け石に水をかけておるようなもの……四郎殿、潮時を誤られますな」
勝頼「潮時、と!?」
百足衆2「申し上げます、原昌胤様、土屋昌次様、お討死!」
百足衆3「真田源太左衛門様、真田兵部少輔様、討死なされました!」
勝頼「馬鹿な、原や土屋、真田兄弟までが……」
馬場「……これは、もはや敗北は免れぬか。かくなる上は如何にしてご当代様を甲斐へお戻しするか、この戦はその一点のみぞ」

なれば今こそ我らが働くとき。御親類衆は早急に退陣のお支度を。では!

馬場「修理、ここが命の捨て所じゃな……!」

思えばこのわしという男は、まこと幸せであった。先代・機山公に従って甲信を斬り従え、一時は都を指呼の間に捉えたものであった。今の日の本にあって、かくも輝かしく、武功に恵まれた者も、そう多くはおるまいよ

織田家鉄砲頭「あっ、あれは武田の家老、内藤修理亮じゃ! 鉄砲、前へ!」

先代のご恩、お返しするは今この時をおいて他に無い。みな臆するな! 甲斐源氏武田家をお守りするが、我らの務めじゃ! 続けぇッ!

織田家鉄砲頭「放てぇーッ!」
パーン パパパーン パーン

御屋形様ぁーッ! うおおおおーッ!















FIFA18
ポコン!
(FIFA18)

いてっ……!

我こそは、武田に聞こえし……!

ん? あれっ?

FIFA18
「なーんだ、夢かぁ」
(FIFA18)










改めましてプロローグ(あるいは趣旨の解説)

???「戦国時代からの転生、お疲れ様です。ということであなたはこれから、FIFA18の世界にて、サッカー選手として活躍していただきます」

ちょ、ちょっと待って! 誰?! 何?!

???「流行りのスタイルに乗っかりたかったのか、伝統的なネタに則ったのか分かりませんが、これ以上、うだうだと戦国風テキストを続けていても仕方がありません」

待って待って! いや、タイトルに「FIFA18」って書いてあるから今更だけど! なんで内藤昌豊でFIFA18をやるのさ! FIFA18ファンの人、もうブラウザバックしちゃってるんじゃあないの? 大体、私の話を紡ぐのであれば、『信長の野望・大志』が出たじゃないですか。ここまでやってきた『創造』のテキストリプレイ、あんなに好き勝手をしていたのに、面白いっておっしゃってくだる方がいらして、もう……(感涙)。これはもう引き続き、武将として手腕を振るうべきなんじゃないかと思っていたんですけれど?!

???「まず、『信長の野望・大志』については、パワーアップキット待ちです。分かりますね?」

あっ……はい。

???「で、なぜサッカーなのかと申しますと」

そうですよ。なんでサッカーですか? 何か関わりありましたっけ?

???「特に深い意味は無いです。中の人が選手作成弄ってたら、まあまあ良い感じの内藤昌豊が出来たんで、せっかくだからやってみよう、ということに決まったのです。後、FIFA18が凄く面白くてはまってます」

FIFA18
まあまあで作られてしまった。
(FIFA18)

えええ……確かに見事な月代(さかやき)が再現できていると思うけどさ……唐突に、中の人の趣味すぎるでしょ……。

???「それからもう一つ、大きな理由があります」

なんですか。そんな中途半端な理由だと、戦国ファンの方も、サッカーファンの方も怒髪天を突いてしまうかもしれませんからね。しっかりと聞かせていただきましょう。

???「まず、武田四名臣が一人・内藤昌豊は、その武勇にも反して、大河ドラマには1968年『天と地と』(注1)以降、出演できていませんし、2019年も(扱うテーマ的に)登場する可能性はありません。そこで、内藤昌豊・大河ドラマ再登場を勝手に切望すべく、異世界転生の主人公としてピッチを舞台に活躍してみようかと」

はい……? そろそろ本物の関係者から怒られない……? いやいやいや、違う、その前に! それですよ、それ、前世の時から指摘しなきゃと思っていたこと! 単に中の人(与力)の調べが足りなかっただけじゃないですか。1968年の『天と地と』! ちゃんと50年前に出てたんですよ、みなさーん! どうしてくれるんですか、ほんとに?

???「その件については七重の膝を八重に折り、陳謝いたします。誤った見識を面白おかしく話してしまい、まことに申し訳ございません。で、2017~2018年にかけてBSで再放送となった『風林火山』(注2)では、錚々たるメンバーの中、やはり影も形もなかった悲しみを胸に抱き、これは転生してでも応援したい、と」

謝ってる? 謝罪の言葉なの、それ?

???「なに、50年間に渡って大河に出ていないことは事実です。そしてあなた(中の人)に至っては、武田の旗を京の都に立てるのは、真田昌幸に先を越された形で失敗したじゃないですか。これは『内藤昌豊ファン』を名乗る資格をも揺らがす大失態と言えます。だから、せめて今度は、世界のど真ん中に武田の勇名を轟かせて貰いましょう」

いやいやいや、ちょっと待って。せめて、の方が規模が大きくなってるでしょ?

???「言葉のアヤです。なんにせよ、貴方はこれから『FIFA18』キャリアモードにてサッカー選手になって頂き、世界の頂点を目指さねばなりません」

なりません、って。反論の余地はありませんね、その言い方だとね。なんか、あなたには逆らわない方が良い気がしてきた。

???「ありません。武田の武名を世界に冠たるものとして下さい。その功労者こそは内藤昌豊、と世界に知らしめし、次こそは『出演してもらわなきゃ』と界隈に思っていただきましょう」

なんかもう言いたいことだらけだし、何言ってんだって話なんですが。

???「それは、閲覧してくださっている方のほうが、そう強く思っていることでしょうね」

はいはい、腹をくくりましたよ。いっちょ天下を目指してみましょう!

???「それは何より。それでは最初のステップはJリーグ、貴方に縁深い土地のチームからスタートですよ。頑張っていきましょう」

FIFA18(任天堂Switch版)キャリアモード
難易度:セミプロ(難度は状況に応じて上昇)
所属:ヴァンフォーレ甲府(J1)
ポジション:FW
名前:内藤昌豊

目標:バロンドール(ヨーロッパの年間最優秀選手に贈られる賞)獲得大河ドラマ出演

注1:大河ドラマ『天と地と』
1968年に放映された、上杉謙信が主役の大河ドラマ。武田は敵方ですが、内藤昌豊が出演しています。大河ドラマは結構見ている方の中の人ですが、さすがにこの年代のものはチェックが漏れており、内藤昌豊出演という事実を見逃してしまいました。大変に申し訳ありません。

注2:大河ドラマ『風林火山』
2007年に放映された、山本勘助が主役の大河ドラマ。武田四名臣のうち、内藤昌豊のみモブ扱い。冒頭に現れた馬場とか真田とかは大活躍しています。勘助演じる内野聖陽さんの名演技は必見(オープニングの前に挟まれる「勘助がそらんじる風林火山」ですら、時の経過と共に読み方にも変化が生じるなど細かい)。弱点は、「落命前の長台詞フラグ」。