時は来た、それだけだ。
奉行ふむふむ、絵が綺麗だな。実に絵本の世界を切り取ったような。
与力ですね。眺めているだけで楽しいのですが、ここで早速少々残念なお知らせを。
奉行なんじゃ。
与力この『ペーパーテイルズ』、2人から遊べるゲームなのですが、説明書によれば、「3人用ルールで遊んでから2人用ルールを試してネ」という主旨の文が記載されておりました。
奉行ええー。万年二人プレイが基本のところで、取り上げて良いのかそれ?
与力いずれ3人プレイに挑むので平にご容赦いただければと……
奉行怒られないか? 大丈夫か?
与力申し訳ありませんが、以下の情報には3人プレイに基づく話題が欠いている点があると存じますが、何卒ご容赦ください。……だって早く遊びたいじゃないですか!
奉行謝るのか開き直るのかどっちかにせい。……しかし、してみると、プレイヤーが2人の場合とそれより多い場合では、ルールが少々異なる、ということじゃな?
与力そうなりますね。ルールとしてはわずかではありますが、差は生じます。
ゲームを始める前に、勝利点ボードを場の中央に置き、ラウンドマーカーを所定の位置に乗せます。カウンター類はそれぞれとりまとめておき、そこから各プレイヤーに金貨カウンターを3金ずつ分配し、最初の所持金とします。
各プレイヤーは受け持ちの色を選択し、その色のプレイヤーエイドカード、勝利点マーカー、5種類の建物カードのセットを受け取ります。勝利点マーカーは勝利点ボードの決められた位置に置いておきます。最後に、ユニットカードをよくシャッフルして、山札を作ります。これで準備は完了です。
第一回選択希望カード
奉行さて、準備を終えて気になるのだが、このボード上にはラウンドの数字が4までしかないのだ。これは一体?
与力はい、このゲームはリメイク前の『ヴォーパルス』の説明によると、王国100年の興亡を体験することになるのですが、こちら1ラウンドあたりが25年となっております。
奉行なぬ。100年をたったの4ラウンドで終えるのか!?
与力それだけに、国主には果断が求められますぞ。
このゲームは4ラウンドの間に王国を発展させ、最も多くの勝利点を獲得したプレイヤーが勝者となります。1ラウンドは、以下のように進行します。
①雇用と配置
まず、各プレイヤーは山札からユニットカードを5枚とります。その中から1枚を選んで自分の手元に残し、残りのカードは左隣のプレイヤーに渡します。続いて、右隣のプレイヤーから回ってきた4枚のカードから、また1枚を選び、残りを左へ……を繰り返し、各自手札が5枚になるまで繰り返します。これが雇用フェイズです。
与力世にいう「ブースタードラフト」って方式の選び方、ですかね。
奉行ふむ、だが、2人だとここが変更になるのじゃな?
与力はい、2人の場合には、「それぞれ9枚を山札から引いて」「1枚選び、1枚捨て札にしてから相手に渡す」という手順で、5枚の手札を準備することになります。
奉行一度に2枚減っていく、という訳じゃな。
手札が決まったら配置フェイズに移行します。今入手したカードの中から、自分の場に出したいカードを選択して、裏向きに配置します。なお、最初は前衛2枚+後衛2枚の合計4枚までしか場に配置することはできません。既に配置されているカードは、前後に移動させたり、捨てることでスペースを空けることが可能です。
奉行ふむふむ。で、ここで金の力がモノを言うのであろうな?
与力はい。全員配置が完了したらカードを表にして、各カードに描かれている配置コスト分だけ、金貨を支払います。
奉行うむ。ところで、配置しなかったカードは次のラウンドへ持ち越せるのか?
与力基本的には捨て札になりますね。ただ、捨てたくないカードがある場合、1枚だけキープしてエイドカードの上に置いて持ち越すことができます。
奉行ふむふむ、いきなりよさげなカードを引いてきても、高価で配置できぬであっては意味が無い、ということじゃな。
②戦争
このフェイズでは、各プレイヤーは両隣のプレイヤーと戦争を行い、勝利点を得ます。
プレイヤーはそれぞれ前衛に配置したカードの兵力の数値を確認して合計します。この数値を互いに比べ、大きかった方が勝利となり、勝利点3点を獲得します。
与力ですんで、上の写真の場合、兵力は「5」ってことですね。強いユニットとかは王国の状況によって兵力を変化させたりするので、きちんと計算しましょう。
奉行紫色の楯っぽいアイコンの中に書かれている数字か、なるほどな。ちなみに同点引き分けの場合には?
与力その場合には、両者勝利となりますので、両方に3点入ります。
奉行少しだけ優しい戦じゃな。で、ここでも2人用ルールは少々変わるのじゃな?
与力はい、2人だと戦う相手は目の前にしかいませんから、戦争は1回だけ。で、「勝者の兵力が相手の2倍以上」であれば、勝利点は倍の6点となります。
与力この陣容くらいまでくると、強いですね。
奉行前衛が3枚になっておるが……?
与力それは後で説明しますね。
③収入と建築
戦争が終わったら収入フェイズとなります。プレイヤーは基本収入として2金を得ます。ユニットの能力などにより、追加で収入が発生する場合も有ります。
続いて建築フェイズとなります。建築フェイズでは土地コスト、建築コストを支払うことにより、王国内に建物を建築することができます。建物は収入や勝利点の源泉となる、重要な要素です。
与力土地コストは、「自分の王国内に、すでに建築されている建物カード1枚につき2金」です。建築コストについては、建物カードに必要な種類と数の資源アイコンが描いてありますね。
奉行ふむ、このアイコンはあれか、ユニットカードの下に描かれているやつと同じようだな。
与力はい。ユニットは兵力になるだけでなく、何かしらの資源を生み出すものもいます。配置されているカードの資源アイコンが、必要な種類と数そろっていれば、建築できるという訳ですね。
奉行ちなみに、建物カードは両面あるようじゃが?
与力はい、左肩に「2」という数字が入っているのはアップグレードされた建物です。建築の時に、もう建てた建物をアップグレードする、あるいは両面の建築コストを一気に支払えれば、2レベルの建物にできます。これが1つでもあると、前衛カードを3枚置けるようになるんですよ。
奉行うむ、それは極めて重要な話だな。
④経年
あらゆるユニットは年月の経過を無視することはできません。王国に配置されているカードに経年カウンターを1つ乗せ、すでにカウンターが乗っているユニットは、捨て札となります。
奉行苦心して配置したカードも、ずっと活躍できるわけではないというのだな。
与力ですね。ただしこの経年カウンターも、中には妙な挙動で数を増やしたり減らしたりできる、というユニットがいますので、少々取り扱い注意なところです。
奉行うーん、お別れをするのは寂しい限りじゃ。それに、強いユニットだからといって、ずっと活躍してくれるわけではない、という点は留意せねばなるな。
与力なんとか活躍を長引かせる手段を見つけたいところですよね。
このラウンドを4回繰り返し、最終ラウンド後にユニット、建物から得られる勝利点を、これまでのプレイで得た勝利点と合算して、最も勝利点を獲得できたプレイヤーが勝者となります。2人の対戦は、資源のやりくりに勝る奉行が、カードの回りに苦労した与力を抑えて勝利しました。
『ペーパーテイルズ』【ここがイカス!】
奉行なるほどなあ、これは大変に面白い。ユニット選びから王国の発展、さらには経年によるユニットの強盛退場。うまく出来ておる。特に、経年によって「常に最良の王国を維持できるわけではない」という盛者必衰の感じが、綺麗に醸し出されているあたり、テーマとよく合っておるなあ。
与力ゲーム中に必要な情報も、カードに綺麗にまとまっていますし、遊びやすいですね。
奉行そうじゃな。1回遊べば、ルールはスッキリ理解できるであろう。また、ユニットの能力を組み合わせて、うまいこと連鎖させられると大変楽しい。いわゆる、コンボというやつか。
与力ユニットによって、フェイズごとに発動する特殊な能力を持っていたりしますが、それを上手に活用していくことが、勝利のカギになっていました。
奉行うむ。その点を鑑みれば、繰り返し遊ぶことで、よいカードの組み合わせを見つけていくという楽しみが見いだせよう。
与力こうなると、自然と何度も遊びたくなるゲームですよねえ。
奉行もしかしたらその過程で、圧倒的に強い組み合わせとか見つかるかもしれんなあ。それから、このイラストは良いな。なんというか、少年少女世界文学全集の挿絵的な、優し気な印象であった。落ち着いたファンタジー世界……というと、少々変か? 他にはあまり見たことがない雰囲気だと思うのだが。
与力確かに、殺伐とした世界観ではないですね。素敵な絵だと思います。リメイク前のダークな感じを知っておられる方は、「前の方が『ゲーム・オブ・スローンズ』とかみたいな感じで好き!」ということもあると思うので、好みは分かれるところでしょうが。
奉行そうそう、あとプレイ時間の短さもよいな。4ラウンドは短い気もしたが、「もうあとちょっと!」というところでピシャっと終わるのは、リプレイ欲を刺激される。
『ペーパーテイルズ』【ここはちょっと……】
奉行楽しかったし決して遊べぬではないのだが、やはり注意事項の通り、2人プレイはこのゲームの真の楽しさにたどり着けないように思う。
与力そうですよねえ。
奉行うん、戦争フェイズがキモだな。両隣との戦いを気にしての王国経営と、対面の相手だけに注意を払えばよい王国経営では、だいぶ感覚が変わってくるのではないか。
与力確かに3人以上になると、戦争の結果による勝利点の入り方も、だいぶ読みづらくなりますしね。
奉行2人であれば、ルール的な配慮があるとは言え、ドラフトによる相手の手札はなんとなく想像がつくところもあるしのう。
与力やはり3人以上でのプレイ推奨は正しいですね。今度はなんとかして人数を揃えて遊びましょう。
奉行うむ、その通りだと思う。あとは、良かったところで挙げた点ではあるが、組み合わせを考えるとなると、ユニットの能力をよく知っている方が楽しかろうと思う。最初の1回2回は、かなり手さぐりのプレイになってしまう点は踏まえて遊びたいかな。
与力我々もユニットの能力見て、「えー、こんなやついるのかー」とかやってましたしね。予想しないデザインや特徴を持つユニットもあったので、面白かったです。
奉行うむ。それにユニットの種類が数百に及ぶ、とかではなし。1回のプレイ時間も短いし、何度か遊べば全容は把握できると思うので、それからお気に入りの戦略を編み出す楽しみがある、という感じかな。何度も遊んでみてほしい一作だぞ。
与力一家に1個、『ペーパーテイルズ』ですか。
与力『ヴォーパルス』には拡張が出ていましたが、『ペーパーテイルズ』の方にも出るようですよ。
奉行なんじゃと。ならばその拡張も日本語化されるよう、富山方面へ毎日の祈りを欠かさぬこととするか。