本日の名店「北京」
北京【ここがイチオシ】
今回の収録にご協力いただいたのは、大通りの看板に気を取られていると見逃してしまいそうな小道で、元気に営業しておられる「北京」さん。お店の外の看板とのぼりで推しておられるように、油淋鶏(ユーリンチー)に関しては中華街屈指の味と評判の高い名店です。大通りのきらびやかなお店と比較すると、町の中華料理店といったたたずまいですが、そこは老舗の味で勝負、という気合がみなぎっています。
ランチタイムの開始と同時にガイドブックを見てやってきたお客さんや常連さんで、12席ほどの1階店内はごった返し。ピークタイムは席取り合戦状態。その中を大変お忙しく立ち回るエネルギッシュなママさんに、忙しくなる直前の時間をいただき、お店のお話をうかがうことができました。
①70年という伝統のメニュー
「北京」はもともと西新宿の東京医科大学病院前で、先生や病院の看護師さんたちのお腹を満足させながら、60年にわたって営業してきた中華料理店でした。しかし2009年、一心に鉄鍋を振り続けたマスターの肩と手首が限界を迎え、一線を退くことを決断。惜しまれながら店を閉めて都心に別れを告げ、故郷である横浜中華街に戻ってこられたそうです。
ところが、中華街に戻ってみたら、「やはりじっとしてはいられない」と、マスターは現役復帰を決断。同年11月には現在の店舗でお店を開業され、現在は9年目を迎えておられます。そんな怒涛の移転物語を背景に、2019年で70周年を迎える「北京」のメニューは、その長い歴史の中で多くのお客さんに愛されてきた逸品。お店の2枚看板である油淋鶏と獅子頭(シーズートウ/肉だんご)は、「美味い」料理が時代を超えて支持されることを教えてくれます。
②いつだってリーズナブル
平日、土日ともにランチメニューは1000円でお釣りがくるにも関わらず、味のみならずボリューム感もたっぷり。心身ともに満足のいく食事が楽しめます。土日はランチメニューの中に常連さんが「これは美味い」と太鼓判を押しているエビチリも入るそうですので、2枚看板ならぬ3トップ、“YES”トリデンテから何を食べるか迷ってしまいそうなのが、逆に悩みどころになるでしょうか。
北京【この日にいただいたもの】
「一番食べて頂きたいのは油淋鶏ですよね。でまた次来た時にこう、肉団子を食べて、って感じで」というママさんの熱い油淋鶏おススメに従いつつ、“取れるリソースは取れるタイミングで取らないと後悔する”という個人的なゲームの鉄則に従って、結局2枚看板をまとめてオーダーです。
「油淋鶏(鶏肉甘酢かけ)」。シェアすれば皿上のマジョリティ争い必至の絶品。衣をまとった肉のザクザク感、香味ダレの酸味、上にかかったネギとパセリ。全てがひたすら素晴らしい。
見よ、これがベテランマスターのテクニック。しっかり揚げられた衣は最後まで歯応えを失わない。そして脂っぽさも感じない。
「獅子頭(肉だんご)」。子供のこぶしほどはありそうな巨大な豚ひき肉の肉だんご。これは『スルー・ジ・エイジズ』級にヘビーなのでは……。
と思いきや、中身はふわふわ。優しい味付けの餡と絡んで、パクパク食べてしまう。揚げていないためか、全く脂っぽさも無く、サッパリ味といえる。
サービスの杏仁豆腐。オールドスクールな味が嬉しいデザートです。
*料理の感想はあくまで与力の主観です。
まずは油淋鶏。とにかく油淋鶏。
おそらく生涯最高の油淋鶏を食べさせてもらいました。注文から揚げたてが出てくるまで約15分程度、ご飯片手にモリモリと食が進む絶品です。「食べ終わると、足りないからもっと食べたいと思っちゃう」とはリゴレ店長のつぶやきですが、本当にいくらでも入りそう、という表現はまさにこの料理の為にあるのでは……と思います。そういう訳で、特別な日のレストランというより、美味いメシをいつも食べにいく食堂、と言った方がしっくりくるお店でした。
そして「うちは油淋鶏と肉だんごずっとやってて、遠くからも食べに来てくれますから」と看板メニューに絶対の自信をのぞかせるママさんは、こう語ります。
「中華街ってたくさんお店があるけど、それが連携して繋がっていけば、もっと面白い街になると思うんですよ。それで『あれが食べたければあそこのお店いったら』とか、『あの店はこれが美味しいよ』とか『あそこは面白いよ』とか、お客さんに教えてあげて、中華街面白いな、と思ってもらえたらね。中華街ってホントにいいお店がたくさんあるんですよ。それを知らずに素通りするのはちょっともったいないよね。」
300を超える店が軒を連ねる中華街の中には、「北京」と同様に小さいけれども個性的なお店が、まだまだ少なくありません。こうしたお店同士が競争するのではなく、連携して街を盛り上げていく。ゼネラリストばかりにならず、それぞれのスペシャルな領域―看板メニュー―を活かした方が、中華街というブランドの発展に貢献できるのではないか。ママさんは短時間ですが熱く話してくれました。
というわけで「北京」を訪れた際には、横浜中華街を人一倍愛し、「若い子が頑張ってるのが大好き」なパワフルママさんに、ぜひ色々聞いてみてください。きっとまだ知らない中華街の美味しいお店、面白い場所を親切に教えてくれると思います。ちなみに私、与力は「若くないうえに頑張っていると言えなくもない」くらいですが、色々と親切にお気遣いいただきました。ありがとうございました。
*店内の席は限られておりますので、特にコアタイムの3人以上での来店は予約が安心です。
- 店名
- 北京
- 郵便番号
- 231-0023
- 住所
- 神奈川県横浜市中区山下町146
- TEL
- 045-651-6383
- 営業時間
- 11:30-14:30 17:00-22:00 日曜営業
- 定休日
- 水曜日
- WEB
- 食べログ
※リゴレ提携店舗です。詳しくはリゴレ店頭にて。