リゴレのレポート≪リゴレぽ≫ 第2回 店長と『メキシカ』 presented by 北京

ボードゲーム愛好

『メキシカ』も中華料理もマジョリティ争いですね

【リゴレのレポートって?】
「一生遊べるボードゲームをお客様にご提案したい」リゴレ店長と、「一生ボードゲームで遊んでいたい」ほ~らく奉行所の与力が、横浜中華街の有名レストランの一角で、ランチタイムにそっと繰り広げるボードゲームトークの様子です。
【本日の名店「北京」】
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※掲載情報は2018年5月時点のものです。
【登場人物】

与力ほ~らく奉行所ボードゲーム方の買掛担当。メキシコと言えば、デスペラード。

店長横浜のボードゲームショップ・リゴレの伸居店長。ボードゲームと横浜中華街のお店選びならお任せ! 最近、中南米からの宇宙的パワーを感じます。

本日のテーマ1:『ティカル』に引き続き、中南米の『メキシカ』

与力本日もお付き合いありがとうございます。無事に第二回を迎えられて幸いです。

店長いえいえ。今日はどんなポーズの写真を撮られるのでしょうか(笑)。

与力それは後のお楽しみとしまして。さて今回のテーマに選んでいただいたゲームは、前回の『ティカル』と関連性も高い『メキシカ』ですね。

メキシカ

デザイナーはW・クラマー&M・キースリング。2002年発表、同年ドイツゲーム賞5位。『ティカル』と同様、巨大な顔をモチーフとしたパッケージが有名で、2000年発表の『ジャワ』とあわせて顔三部作とも。

『ティカル』との共通点は顔?

店長これも『ティカル』と同じでクラマーとキースリングが作ったアクションポイント(以下APと略)制のゲームで、陣取りとエリアマジョリティのゲームなんですね。

与力エリアごとの支配権を争うゲーム、ですね。

店長ですけど、その「エリアを区切る」ということころから自分でできるんですよ、既にあるエリアを取り合うのではなく。APを上手く使って、自分が有利になるようにエリアを区切りつつ、マジョリティを取るための神殿を立てていく……ってことをするんですね。

与力自分がせっかく作ったエリアを、相手に取られないように立ち回る、ってことですか?

店長そうです。そして、各プレイヤーのコマが1つずつボードにあるんですけど、これを移動させながら作ったエリア設立の宣言をしたり、神殿建てたりしていきます。まずは、この「移動」が結構パズルライクなんですよ。それが面白い。

与力ふむふむ。

店長『メキシカ』では1手番に6APなんですが、まともにボード上を歩いていくとAPを大量に使っちゃうところを、運河を泳いで海に出て……みたいな方法を上手く使った場合、1APで移動できちゃうんです。そういう所を考えてボードを広く見る視野とか、凄く面白いですね。

与力『ティカル』とはまた違った面白さなんですね。

店長違いますね~。6APって、非常に微妙な量のポイントなんですけど、更に「1ラウンドに2APまで持ち越す」っていう選択が出来るんですよ。で、持ち越したAPをまとめて使って一気に行動して無双するとか、そういう「先を見て動ける」っていう独創的なアイデア、要素がいっぱいありますね。

与力なるほど、一度“しゃがむ”っていう行動を意志を持って選べるんですね。

店長ですね。先回りしていくのか、後の先を狙っていくのか、そういう所が面白い。

与力10APある『ティカル』に比べて6APというと、やれることが制限されるのかな……と思いきや、仕掛けるタイミングを自分で明確に選べるゲームであると。

店長ところがそう単純にはいかなくて、自分の手番に毎回やりたい放題できるわけではなく、常に「手が半端な状態で終わっている感」があるんですよ。

与力ほほう?

大局を捉えつつ、コッソリ仕掛ける面白さ

店長半端な形でターンが終わっちゃうので、「他のプレイヤーに自分の成果を上書きされる恐れ」というのが常にあるんです。そうなると「じゃあそれを防ぐためにどうしようか」っていうことを考える手があるし、防ぐための手もある。

与力なかなか満足のいくターンというのはない、ということなんでしょうか。「ここまでやったけど、ちょっと足りてないな」みたいな気持ちで、次の人の手番になってしまう、という。

店長そうそう。でも、満足できなくてストレスになるんじゃないんです。何か仕掛けて「これ、気づかれないかな」って思いながら自分の手番を終えるターンって、楽しくないですか? これはいいゲームほど、そういうドキドキ感が多いと思うんですけども。

与力「この意図、誰か気づくかな……よっしゃ、みんな見逃したぞ!」みたいなやつ。

店長そう。気づかれたら止められちゃうんだけど、誰も気づかずに一巡して自分の所にきたら、とんてもないことがやれるぞ、っていう、ウヒウヒした感覚。

与力ああなるほど、分かります。その感覚。

店長そうやって自分の手番を終える楽しさもあるし、ギャンブルせずに堅実に行く手もあるし。その選択肢の多さが、『メキシカ』の面白いところですね。

「油淋鶏を端からいくか、あえて真ん中から取るか、そういう駆け引きですよね」

与力逆に「相手の意図を読む」という点についてはどうでしょう?

店長とても大切ですね。エリアマジョリティって一か所に自分が集中すると、大局で負けちゃいますし、しかも『メキシカ』は、各エリアのマジョリティの点数が3位まで入るんですよね。だから自分のエリアを作るだけに専念しないで、人がエリアを作ってるのを見て、ちょっと加担しておくのも大事です。

与力3位までってのは大切なところですね。コツコツとでも加点しておけば、最後に笑えることもありますし。

店長ちなみに、「運河で土地を区切ってエリアを作った時に、エリア完成を宣言してトークンを置いた時」と、「決算時に、完成したエリアの中に配置している神殿の段数の合計が多い上位3人」に得点が入るんですよ。

与力ああー、二段階で得点が入る。

店長ただし、決算は結構流動的。誰かが使える神殿コマを置ききるか、エリアトークンを使い切った時ですから、発生するタイミングをはかっておかないといけない。

与力基本的にはエリアを作って得点を狙い、作ったエリアに神殿を建てて決算を待つ流れですか。

店長そう、ここで先ほども話した「コマの移動」が大切になってくるんですね。自分のコマ、実は貴族で神官なんです。これがあるところじゃないと、エリア完成の宣言ができないし、神殿が建てられないという制限があります。

与力常に手を考えつつ、コマを動かさないといけないんですね。

店長ええ。ただし、運河を掘るのと、そこに橋をかけるアクションは、肉体労働なんで労働者がやるって設定です。だから、これはコマと離れた所でもできるんですよ。

与力貴族や神官が手を動かしてやる作業ではないですもんね。しかし、急に身分差社会が実感できる要素が出てきました。

店長なおかつ、例えば「橋と橋の間は移動できる」というルールがありまして。これを利用して「ゲームが始まったらすぐ、明後日の方向に運河作って橋をかけ、更に自分の目の前に運河と橋を作って、橋から橋へワープしてしまう」とか出来ちゃいます。で、次のターンにエリア完成を狙う。

与力それ初見でやられたら、度肝を抜かされますね。

店長あと、自分のコマって、神殿と他のプレイヤーのコマを乗り越えられないんですよ。だから意地悪な神殿の置き方をすると、閉じ込められたりするんです。

与力おや、それは参りますが。

店長そんな一歩も動けなくなっちゃったプレイヤーのためにか、「5AP使うと任意の場所にテレポートできる」っていう行動が可能です。こう聞くと特殊な場合の救済措置のようですが「ゲーム始まった瞬間にテレポートして、他人がいない所を狙いに行くプレイヤー」なんかがいたりして。とにかく、エリアを作ろうと区切りつつ、他人にエリア完成宣言をさせないように、広く色々考えていくゲームですね。

与力ははあ。選択肢が多い分、人によってプレイスタイルの特徴が出るゲームですね。

『ティカル』と『メキシカ』

「運要素無しだからこそ、『メキシカ』には香味ダレのような妙味があります」

与力『ティカル』『メキシカ』はどちらも同じ製作者、クラマー&キースリングですよね。

店長はい。『ティカル』から始まって、「おんなじ人が作ったゲームかぁ」と思って『メキシカ』遊んだら、またすごく面白くて。サイコロ使わないゲームでこれだけいいものを最初にたて続けに遊んだので、やっぱりそういうゲームを好きになっちゃった、ていうのはあります。

与力そういった意味では店長にとって『メキシカ』は『ティカル』の次、という位置づけだった訳ですね。難易度的にもその順になると思いますか?

店長思いますね。『メキシカ』の方が難しいです。ちょっと人を選ぶかもしれない。

与力『ティカル』は前回ファミリーのど真ん中にあるべきゲーム、と仰っておられましたが、『メキシカ』はちょっと毛色が違う、と。

店長違いますね。『メキシカ』は最初の指針が立てづらいんですよ。なにしろエリアを引く所から始めるので、何をやっていいか分からなくなる方もいるんです。

与力ゲーム勝つための進行方向がよく分らなくなる?

店長ですね、ちょっと囲碁みたいな感じがあるのかもしれません。「初手分かんない、探りから行かないといけない」みたいな。あと、よりガチ感は出てきます。陣取りは早い者勝ちだし、相手の邪魔をすることにもなるし、そういう要素が苦手な方には、ちょっと敬遠されるかもしれません。

与力すると、「『ティカル』は一通り楽しみました、もっと厳しい戦いをしたいな」という方におすすめする感じになるんでしょうか。

店長そうですね。どっちもボード上にコマ置いていくゲームなので、終わった後の見た目の良さは共通なんですが、やはり「次のステップで遊びたい!」という感じでお勧めしたいですね。

与力はじめの一歩、次の一歩のさらにその先。

店長そうですね、サードステップです。実際、最初に結構簡単なゲームで楽しんで、「次どうしよう、その次どうしよう」って探してる方には、ぜひいいゲームを上手にお勧めできるようになりたい、と常々考えていますが、『ティカル』『メキシカ』と、ぜひ推薦していきたいですねえ。

与力ふふふ。『メキシカ』まで楽しめるようになったら、ボードゲーム沼にどっぷりですね。

店長谷底まで真っ逆さまかもしれません(笑)。まあ『メキシカ』はとにかくAPで常にやり切ることができない、でも早い者勝ち、じゃあまとめて一気にやるために力溜める選択肢と、そのジレンマがたまらない。

与力で、ラウンドの終わりがプレイヤーにゆだねられてるから、様子見ばかりせず、基本的に早め早めで動いていかないといけない訳ですね。これはやはり、ゲーム慣れしている人ほど楽しそうだなあ。

『メキシカ』とは「神にささげる公共工事」

メキシカSuperMeeple版
現在流通中のSuperMeeple版では、神殿コマの質感が評判。

与力さて、最後に本の帯のように『メキシカ』推薦文を作るとしたら、どんな感じになるでしょう。

店長ええ、難しいなあ……。神様絡みでしょうかね。このゲームのマジョリティがどういう設定かというと、神殿の霊的エネルギーを誰が一番神様に捧げているのか、なんですよね。神様はメキシコのウィツィロポチトリ神って神様。

与力なるほど。

店長なんていうか遊んでいると公共事業感もあるんですよね。ダイナミックで、派手で……大騒ぎって感じではないんですが、なんか派手な。

与力「神様」と「公共事業」って、すごい感想ですね。でもなんか、テーマ性ってのを考えながら遊ぶと面白くないですか。

店長確かに確かに。

与力そして私、一つ思うのは、あのコマのかぶってる頭飾りか帽子ですか? あれをプレイヤーもみんなかぶってやったら面白いんじゃないか、って。

店長いいですね、それ(笑)

与力ところで、今回お持ちくださったのは流通中のSuperMeepleの新版ですね。

店長はい、無茶苦茶豪華になってますよね。

与力飾っておくことを考えると、旧版の顔パッケージ版が素敵とも思いますが。

店長はい、私も昔の版の方がいいに決まってるな、と思って手に入れました。でも、新版の後に旧版遊んでみたら、ちょっと寂しくなっちゃって。旧版のプラスティック製の神殿コマは積み重ねやすくていんですけど、やっぱり新版のコマは質感がすごい。コンポーネントがすごいって、説得力があるんですよね。

「中華街も本物志向のコンポーネントが豊富だからこそ、魅力的なんだと思います」と笑顔の店長だった。

本日のテーマ2:リゴレ、テレビに出る。

与力ところで、リゴレさんはテレビに出ましたね。店長も出演されて。拝見しましたよ。(『にじいろジーン』2018年4月14日放送分)

店長出ましたね。結構映してもらって、ほんと嬉しかったです。

与力放送後は相当大変だったんじゃないですか?

店長そうですね、ありがたいことにTVご覧になった方がたくさん来店してくださって。ゴールデンウィーク明けてだんだん落ち着いてきたかな、ってところです。

与力やっぱりテレビって凄いんですねえ。ところで、その際に遊んでいたのが『ワードスナイパー』でしたが。

店長ええ、大反響でいま商品が無い状態になってます。お問い合わせはまだ頂いてるんですが。

与力それはすごい。嬉しい悲鳴という奴ですか。そして今度、リゴレさんから新版が発売される予定なんですよね?

店長そうですね、6月中には出したいな、と思っています。予価1650円で制作中です。

与力あ、予約とかは受け付けておられるんです?

店長一応予約って言うか、完成したら「できましたよー」ってお知らせメールがいく感じの、ゆるい登録をホームページで承っております。

与力ふむふむ。『ワードスナイパー』は『ティカル』や『メキシカ』とは全く違ったジャンルですが、非常に魅力的なゲームですよね。

店長そうですね。良質でいいゲームだからこそ、本腰を入れて時間をかけて、しっかり売らせてもらいたいと思っています。

与力なるほど。

店長今回はテレビを通じて、多くの方にボードゲームを知って貰えたので、まずは『ワードスナイパー』を遊んでもらって。それをきっかけに、次の「長く遊べるゲーム」とか「複雑なゲーム」とかご要望頂けたら、それにお応えできるようにしていきたいと思っています。

与力なるほど。リゴレは、「また別のゲームを遊びたいな」という時にスッと提案をもらえるお店ですものね。

店長ええ。このゲームはこういう風に遊べるといいですよ、みたいなゲームごとの特徴を積極的にご説明していきたいですよね。遊び心地とか、どんなシーンに合うか、とか。で、セカンドステップ、サードステップとゲームの提案をさせていただければ。

与力ほうほう。コンシェルジュですね。

店長そのためにも『ワードスナイパー』や『ティカル』『メキシカ』も含めて、良質なゲームを充実させて、お客様がゲームを選びやすい、ずっとお付き合いしていただけるお店作りをめざしたいですよね。

与力『ワードスナイパー』のリリース背景には、そんなリゴレ未来像が隠されていたんですねぇ。

「これからのリゴレ」

ご好評いただいた「『ティカル』&『メキシカ』会」第二回を企画中です。その他ゲーム会などの予定はリゴレ公式ページをチェック!

『メキシカ』はまだですが、『ティカル』のプレイ動画は配信中のリゴレチャンネルもよろしくお願いいたします。