プロローグ
奥様A「ちょっと奥さん、聞きました? 大河ドラマ『麒麟がくる』に、鵜殿長照(うどのながてる)が出たんですってよ」
奥様B「エッ、あの神君家康の初陣譚で触れられる以外では全然見ない、あのテルが?」
奥様A「それが出たんですって。すごいわね、時代かしら」
奥様C「長谷川さんの十兵衛が『はぁ』とか言ってるだけの大河かと思ったら、そんなとこ頑張ったのね~」
奥様B「もう有名な武将はいつも出てるから、ちょっと珍しい人を出しとこうか?みたいなことなのかしらね~?」
奥様A「そうよね、織田五大将とか、徳川四天王とか、武田四名臣とか…」
奥様方「いつも出てるものね~」
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???「という街の声が漏れ聞こえますぞ、武田四名臣に含まれているにも関わらず、たった一度しか大河ドラマに出演なさったことがない内藤昌豊さま」
ちょっとちょっと。もうちょっとオブラートに包んでよ。そろそろ血筋の方とかさ、本当に内藤家とかかわりが深い方とかから怒られそうじゃん?
???「こんな弱小ブログの、なりきりテキストリプレイで、そのような心配は無用かと」
事実だけれども、言い方! …………いや、というかね、鵜殿長照なんてとこから弄ってくるんですか。勘弁して貰えませんか、本当に
???「ダメです」
いやいやいや。『なぜか大河に出ない内藤昌豊に出て欲しいから、知名度をちょっとでもあげられるお手伝いを』とか言うトンチキ理論で、信長の野望・創造のリプレイはともかく、慣れないサッカーなんかやってみましたよ?
???「やりましたね」
で、効果は? 無かったですよね? 2020年大河の『麒麟がくる』も、舞台と私のいる場所と地域がずれているわけだし、とても出演しそうにないですよね?
???「当り前じゃないですか。1回バロンドール取ったくらいで、すぐに大河再出演が叶うと思ったら大間違いです」
いやいや、バロンドールって生半可なことでは取れませんよ。謝ってくださいよ、いろんな人に。
???「そういう甘えです、あなたの大河再出演への道を阻んでいるのは」
は? 甘え?
???「心に甘えがあるからそういう事を軽々しく口にする。そしてそれすなわち、身体にも甘えが表れている、ということです」
何を言われているのか分かりかねるんですけど……。
???「論より証拠、自分でごらんになってください、そのみっともない中年体型を」
急に手ひどい攻撃始めましたね、あなた。確かに事実とは言え、流石にその物言いはどうなんですか。……っていうかみっともない中年体形なのは中の人のことでしょうに。『信長の野望』の顔グラフィックが中年っぽいって話なら、あれは月代(さかやき)のせいだからね? 怒られますよ、本当に。
???「その甘えを叩きなおし、大河再出演を目指す。精神修養もいいですが、身体を鍛えることで同時に精神力も養う、これが今回の目標です」
待って待って。確信をついた私の突っ込みを無視して、サラッと目標とか言ってるけど、また何かやらせるつもりですか、あなたは。急に。相談もなしに。
???「はい、ということで内藤さまの新たな挑戦の舞台はこちら!」
なぜ? 非常にシンプルに聞くけど、なぜなの?
???「さっき申し上げましたね。身体を鍛える、と。“出たい”と念じるだけでダメなら、鍛えるしかないんです」
一切会話が成立していない気がしてきたんですが。
???「はいどうぞ」
うわあ、なんか意外としっかりした輪っかだなあ。さすが任天堂さんのモノづくりは素晴らしい……いや、感心してる場合じゃない。このゲームと私に、どういう関係が有るのか、って、そこですよ。そもそも。
???「は?」
いや、『FIFA18』で「ちょっと似た顔ができたから」とか軽々しい理由で、戦国武将とは関係ないサッカーをやらされましたよね。
???「似てたじゃないですか」
似てたけどさあ! 大した盛り上がりもなく淡々と終わった非を認めない訳ですか、あなたは。ともかく一応聞きたいんですけど、私がこの輪っかを持って運動することに必然性はあるんですか?
???「あります。面白そうじゃないですか」
は?
???「あと、せっかく抽選販売に当たったので、やらせてあげたかったんですよ」
はぁ?
???「さあ、身体を鍛えて大河ドラマ再出演を目指すぞ、おー!」
君さあ、もう完全に玩具にしてるだろ、私を。
なし崩し的に始まる
???「それではこの記事の方針をご説明いたします」
ご説明されますよ、じゃあ。ああもう本当にこんな看板かけちゃっていいんですかね。なんですかね、『内藤昌豊、鍛える』って。
???「まず内藤さまには『週4回、1日30分以内程度の運動』をこの『リングフィットアドベンチャー』で行っていただきます」
はあ。週4、30分ですか。
???「それで体の変化を見てみます。効果が有って見た目のステキな武将になれれば。大河ドラマ再出演の可能性は上がりますし、効果が無ければ無いで、指さして笑えるんで、どっちにしても美味しい、と」
……私の尊厳とかそういったものは無視ですか? え?
???「3か月後に同じメニューをこなして、どのくらいできるようになっているか、というのは、判断の1つの尺度になりますよね」
そりゃまあ、そうですね。
???「では、ゴー!」
ん、えっ。これを、こう、押すの? えっ!?
体力テストなんて聞いてない
???「測ったのは5部位、5種目です。結果を見ていきましょうか」
ハァ、ハァ……はい……
- 大胸筋
- 66回 ランクBマイナス
- 広背筋
- 66回 ランクBマイナス
- 三角筋
- 59回 ランクCプラス
- 脊柱起立筋
- 43回 ランクC
- 大腿四頭筋
- 46回 ランクBプラス
???「一つずつ見てきますか。大胸筋、いわゆる胸の筋肉ですね。鍛えれば姿勢や肩こりの改善に繋がる可能性がある上に、見た目にも分かりやすい大きな筋肉である一方、日常動作ではなかなか意識されないという問題がある筋肉です。さて、あなたさまの場合、やや貧弱ですかね」
20秒間で両手に持ったリングを押しつぶす要領で、何回押せるかをやったんですけど……疲れてくるんですよ、大胸筋が。ホントに。
???「広背筋。背中の中央あたりで逆三角形の形に広がる、身体の中でもトップクラスに大きな筋肉ですね。肩甲骨を寄せる動きをすると意識しやすいですが、やはり日常的には鍛えられることは少ないでしょうね。さて、こちらも同じくBマイナス判定です。どうですか」
こっちは20秒間リングを引っ張り続けるんですけどね。もたないですね。背筋が。腕の力に頼っちゃいますね。
???「三角筋。肩から二の腕の上部あたりまで伸びる小さめの筋肉ですね。予防接種を打つ場所が、三角筋の終点、という感じでしょうか。こちらはCプラス判定。これは弱いですね。言い訳は?」
頑張ったんですけどね。腕を上げて引っ張ってるうちに、だんだん腕を支えきれなくなってきて……。
正直、途中で止めたくなりました。
???「なるほど。なまってますな」
いつと比べてるの? ねえ?
???「次、行きましょう。脊柱起立筋(せきちゅうきつりつきん)。広背筋と同じく背中にある筋肉ですが、背骨の両側を首から腰にかけて走っています。誰が聞いても大変重要そうな筋肉だというのに、Cランクでさらに悪い」
いやー、これはダメですってば。頭の後ろでリングを押し込むとか、こんなポーズで力入れる場面が、生活の中にない!
???「ほらほら、そういうのが甘えなんですよ、甘え。あまねく鍛えておかないと」
努力はしたんですよ、慣れぬ動きをしようと。
???「最後の大腿四頭筋(だいとうしとうきん)は、足の筋肉の一つ、太ももの表側(お腹側)にある筋肉です。計測方法は、モモあげでしたね。これはまあよかった。傍目に見てたらヤケクソっぽく動いてましたけど」
これまでの計測によって上半身が疲れてましたんでね。ヤケクソってのは正解です。
???「しかし、見事に全部BからCですなあ。『信長の野望 天翔記』なら、間違いなく第二軍団以下に配属されるレベルの武将です」
能力の上限と伸びが悪いからね。しょうがないよね、それは。でもこれとは関係ないんじゃないかな。ステータス作るなら筆記テストとかもいれて。
???「ともかく、現状の内藤さまのスペックはこんなもの、と。最後に、体重体組成計のデータを取っておきましょう」
- 体重
- 62.1kg
- BMI
- 22.7
- 骨格筋率
- 36.5
- 体脂肪率
- 21.4
???「家庭用機器のデータなので目安の類ではありますが、まあ全体的には標準の範囲内ですかね」
やや体重が多い気はしますけどもね……。身長が160cm代中盤ですから。
???「戦国時代なら大きい方に入るんでしょうけどね。その身長」
……もう虚構と現実がごちゃごちゃになっていて、何がどう内藤昌豊なのか分かんなくなってきたと思っています。
???「ともかく、このデータからスタートして、体重周りのデータを1週間ずつ開陳。5種目チャレンジは1ヶ月ごとにやってもらいましょうか」
嫌だ、とは言えないんですね、今回も。
???「大河ドラマ再出演が遠のくだけですからね、拒否権は無いですね」
一応ね、無駄だと思いますが、突っ込んでおきますよ。こんなしょうもない企画で決まるものでもないと思うんですけどもね?
???「信じる者は救われるのです。さあ、レッツ、筋トレ!」
そろそろ、お墓参りとかして本物に謝った方がいいんじゃないかなあ……。
注2 鵜殿長照(うどのながてる)。戦国時代の武将。今川義元の家臣の一人で、立ち位置的には重用されていたはずなのに記録がほとんどない影の薄い人(でも主君より先に逃げ帰った逸話とかは残っている)。奥様方の噂話の通り、「この人が大河ドラマに出るなら昌豊でてもよくない?」という主張です。
注3 ちょいちょい挟まる歴史・雑学的な内容は、こんな感じで注釈にさせていただきますので、お茶うけになれば幸いです。