『インセクタ』を遊んでみた
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奉行藩の決裁担当。昆虫採集の思い出と言えば?「ある時、運よくタマムシを捕まえられたんだが、あの独特の輝きを手にした時はテンションが上がったな」
与力藩の買掛担当。昆虫採集の思い出と言えば?「カブトムシを捕まえようと、木に蜜を縫って帰ったその翌日、豪雨で全て流されました」
学問として認められない学問
奉行ふぅん、重要性が認識されていない学問は学問では無くて、だからこそ女性が進出する余地があった…という時代背景ってことかね。
与力古い時代は、そういうことは結構ありますよね。東洋の古代では医術も手品とかと一緒にして語られることもありますし。
奉行ニッチな分野が認められるってのは、携わる方々のそれこそ血のにじむような努力があってこそ可能になることなんだろうなあ。では遊ぶ準備をいたそうか。
ゲームの準備を行います。まずゲームボードを広げ、昆虫タイルを対応する大陸の場所にそれぞれよく混ぜて積み重ねます。次に、郵便タイルをよくまぜて山にしたあと、上から4枚取って表向きに並べておきます。メダルタイル3枚を並べ、その横にボーナス面が書かれた方を向けたメダルタイルを1枚ずつ並べます。
各プレイヤーは好きな色のコマセットと黒マーカー2個、研究者タイル1枚を受け取ります。そして研究者タイルで指示されている大陸の「キャンプA」に研究者コマを置き、残りのマーカー類を勝利点トラック、研究者タイルの上に配置します。
最後に、季節タイルをランダムに2枚選び、ゲームボード上の両サイドにある「秋~冬」エリアと「春~夏」エリアに1枚ずつ配置します。このとき、2・3人プレイ用と4人プレイ用で対応する面が違うので注意しましょう。また、各プレイヤーからマーカーを1個ずつ集め、「秋~冬」エリアのアクションスペースに、上から1個ずつランダムに置いておきます。これで準備は完了です。
奉行ことごとくタイルってのは質感がよくていいね。
与力カードが全く無いゲームというのも、久しぶりな感じがいたします。
人間よ! 昆虫に(ここで文言が途切れている)
奉行んで、何をどうするのが目的になるのだ。
与力ザックリいうと、パズルですね。昆虫を採集しつつ、ヨーロッパ各国の学界からの依頼郵便を受け取りつつ、それらのタイルがかみ合って評価してもらえるよう、市松模様に並べていくという。
奉行うむ、分かったようで全然分からんな。
与力えっと、昆虫タイルと、この積み上がっている郵便タイルが自分の前に横6×縦4で並びますんで、そのスペースだけ確保しておいてください。それでは、参りましょう。
奉行えっ、意外と場所使うじゃん。
『インセクタ』では、各プレイヤーは手番ごとに季節エリアに示されたアクションを1つ選択し、実行することで昆虫コレクションを増やし、世界を旅しつつ、研究の評価を高めていきます。そして自分の前に並べたタイルから獲得した勝利点が最も多いプレイヤーが、ゲームの勝者となります。
与力で、ラウンドの進み方なんですが、基本1ラウンドごとに「春~夏」と「秋~冬」を行ったり来たりしながら進んでいくんですね。
奉行季節は巡るのう。
与力で、前の季節でアクションスペースの上の方に自分の色を置いているプレイヤー、簡単に言うと「弱めのアクション」を選んでいたプレイヤーに、次のラウンドでは手番の優先権が与えられます。
奉行あー、『キングドミノ』なんかで見られる「前のラウンドで何をしたか」が次のラウンドに影響してくる的なやつね。
与力左様でございます。そして、選べるアクションは全部で4つですが、まとめると多分3つと言えなくはないです。それほど難しいことはございません。
①トラベル
与力移動です。船のアイコンの右側に書かれている数字ぶんだけ、今いる場所から矢印が指し示す方向へ移動することができます。
奉行直行便の飛行機とかはまだないわけだな。
与力舞台が19世紀なもので。はい。基本的には両隣の大陸に移動するか、同じ大陸内の別のキャンプへ移動するかということになります。
奉行大陸間を移動したとき、移動先では2つあるキャンプのどちらへ入ればよいのか?
与力その場合は好きな方を選んで結構です。
②タイルを取る(郵便/昆虫)
与力このゲームの勝利点要素となるタイルには、大きく分けて2種類あります。勝利点条件を決める「郵便タイル」と、条件を満たす「昆虫タイル」です。
奉行なるほど、郵便タイルというのは、欧米諸国の学術機関からのコレクション発注、そして昆虫タイルを発注に合わせて採集していくということじゃな。
与力それぞれ、アクションの虫眼鏡と封筒の横に書いてある数字だけ、タイルを引くことができます。「2/1」のようにスラッシュで分けられた2つの数字が描かれている場合には、「2枚引いて1枚取る」というように読みます。
奉行ふむ。タイルはすべて山の1番上から引く?
与力いえ、山の1番上からでも下からでも、引く1枚ごとに選んでかまいません。注意するべきは郵便タイルを引くアクションの封蝋の色で、赤い色であれば「表になっている郵便タイルか山になっているタイル」、青い色であれば、「山になっているタイルから」引く、という違いがあります。
奉行封筒だから郵便タイル、という覚え方だけではいかんのだな。
与力それから、引いたけれどもいらないなというタイルは、山の一番下にそっと戻しておいてください。
奉行ほお、絶対に並べないといけないわけではないのか。
与力そこら辺、結構温情のある作りです。ついでに言うと、アクションも2つのアクションができる時でも、やりたい方だけをやったりとか、回数を少なくとか、強制的に全部やらずともよい仕組みになっていますね。
③メダルの獲得
与力このアクションは、メダルを獲得できます。
奉行なにメダルなのだ…。
与力ちいさなメダルではないと思います。さておき、ゲーム開始時に並べた6枚のメダルタイルがこのアクションのポイントです。
与力左側のタイルは「メダルを獲得してボーナスをもらえる条件」、右側のタイルは「ボーナスの内容」を示します。要は、対応するタイルを何枚コレクションできているかということです。ほどよく集まったらボーナスをもらいに行きましょうというアクションです。
奉行つまり、このケースだと…。
与力上から「依頼を達成したフランス昆虫学協会の郵便タイルの枚数」、「中サイズの昆虫タイルの枚数」、「小サイズの昆虫タイルの枚数」ということになります。
奉行お、フランスなのか? 青い郵便タイルはドイツ自然研究所のものであるようだが?
与力メダルタイルと郵便タイルの色はリンクしてないんですよ。一瞬、迷うんですけどね。で、持っているタイルの枚数と同じボーナスのところに、自分の研究者タイルの上に置いてある3つのマーカーのどれかを取っておきます。そうすると、置いた場所を含めて下全部のボーナスが解放されるので、下から順に処理をしていきます。
奉行ええと、例えばボーナス「3」の所にマーカーを置いたら、「1,2,3」のボーナスが手に入るので、「1」から処理していきなさいということだな?
与力そうです。それから、研究者タイルのマーカーが移動すると、その特殊能力が解放されます。
奉行えらくつながってきたな、おい。
与力特殊能力は1回だけ、自分の手番に追加で使うことができます。使い終えたら、黒いマーカーを置いて目印にして下さい。3つの特殊能力を使い切った場合には、研究者タイルを裏返します。
奉行ううん、なにやら見たことのないアイコンが。
与力一番下の能力が解放されていますね。これは「昆虫採集アクションを行うとき、自分のコマのある両隣の大陸の昆虫を選んでもよい」というものです。これ、研究者5人の3個の能力はオールユニークなので、説明書をよく読んで確認してくださいね。
奉行ふむふむ、気が抜けぬな…。
人生はモザイク模様
与力さて、それで肝心のタイルをどのように並べていくかなのですが。
奉行おう、それだな。そこが勝利へのカギなのであろう?
与力先ほど申し上げましたように、タイルは大きく「郵便タイル」「昆虫タイル」の2種に分かれます。で、この2種は隣り合うように並べることができません。
奉行うん?
与力つまり、郵便タイルの上下左右は必ず昆虫タイル、そして昆虫タイルの場合にはその逆、というようになるのです。
奉行あー、なるほど。理解した。
与力で、郵便タイルは勝利点を得る条件を示します。基本的には「条件に当てはまる昆虫タイルを、郵便タイルの周りに指定通りに並べろ」という感じですね。指定は「縦横隣接」「上下隣接」「十字方向」の3種類です。
奉行つまり、やたらめったら昆虫を獲るのではなく、郵便の条件に対応した特徴の昆虫を探して採集しないといかんのだな。
与力はい。昆虫には5種類の「分布地」、5種類の「目(分類)」、3種類の「サイズ」が設定されています。そういった特徴をよく見て、昆虫タイルを集めに行きましょう。郵便タイルの指定を満たせたら、コレクション達成ということで郵便タイルを裏返し、勝利点を獲得できますよ。
奉行それが場合によってはメダルの獲得にもつながる、と。
与力で、郵便タイルにせよ昆虫タイルにせよ、誰かが12枚目を獲得したら、ゲーム終了の合図です。そのラウンドを最後までやって、ボーナス点の計算をして、一番勝利点が大きかったプレイヤーが勝利となります。
奉行ボーナス点と言うのは?
与力えーと、「研究者のお気に入り昆虫1匹ごと」、「5大陸の昆虫がすべてコレクションされている」「メダルアクションで“研究日誌の断片”を獲得している数」というのがボーナスになります。
『インセクタ』【ここがイカス!】
奉行絵がキレイ。ゲームのすみずみまでこのイラストが堪能できるのは凄いよ。昆虫も細かい所まで大変にリアルだ。
与力まずはそこですかね。写実的な昆虫絵本などで見る、美しいイラストでコレクションのしがいがあるというところでしょうか。
奉行ゲームはそれぞれの要素が巧みにかみ合っていて、うまく連動するようになっている。キモになるタイルの配置は、特に計画性を持って進めないと勝利点が伸びないから、勢い何手も先を考えるようにできていて、結構頭を使うね。
与力その一方で、タイルの引きで気合一発目当ての昆虫を引かないと、みたいなシーンもあったりしましてね。
奉行運の要素が少なからずいいスパイスになっている。採集テーマのゲームゆえに、醍醐味とも言えるな。
与力あと、強烈なプレイヤー間の干渉は無いですかね。
奉行そうだな。わりと棲み分けして自分の手を伸ばしていけるゲーム性かな。2人プレイだからそうなったのかもしれんが。
与力また、オールユニークの特殊能力があったりとか、メダルタイル、季節タイルがゲームごとに変化するというあたり、リプレイのことも考えた親切設計になっています。
奉行長く楽しんでくださいというデザイナーのメッセージなのであろうなあ。
『インセクタ』【ここはちょっと…】
奉行とはいえ、案外ドライなんよな、ゲームの展開は。
与力はあ、なるほど。
奉行世界を駆け巡って僻地に踏み込んで昆虫を採集するというダイナミックさを追体験できた感じは薄い。わりとツアー旅行的に世界を巡ってタイル引けるからね。そもそも、昆虫採集って苦労する時は苦労するのじゃろ?
与力まあ、狙う虫にもよりますが、レアなクワガタなんかは大変と聞きますねえ。
奉行そういう苦労無しで、言葉を選ばずに言えば、お使いしに行くだけじゃからな。目当ての虫がその場所にいるのは分かっているし、場合によれば見えているし。『テーベ』みたいにスカのタイルが混ざってくるとかだと、多少の焦燥感なんかもあったかもしらんが…。
与力確かに採集やコレクションを巡っての競争のような感じにはなりませんでしたね。
奉行タイルのコレクションも美しいのだが出来上がりはワンパターンなんよな。必ず互い違いに郵便と昆虫が置かれるので、条件こそ異なるが、構成は毎回同じ。
与力私的にはタイルのコレクションを標本箱に見立てたとして、郵便タイルが混ざるのがなんともちょっと惜しいというか。
奉行それはあれだ、昆虫のデータを書いた紙をピンで留めているのだと脳内変換いたせ。
与力これは厳しいお言葉。
奉行全体としては昆虫モチーフのパズル…かな。少なくとも我々のプレイ後感では、見た目以外に胸が高鳴る要素が欲しかった。
与力全体にゲーム体験がやや薄味ってところでしょうか。
奉行あと、褒めてきた見た目の方もな、知っている虫がほとんどおらんのでちょっと感動が薄いのは正直なところよ。どれも貴重な虫なんだろうけどもさ。
与力あー、本当に昆虫が好きな人でないと、タイルを眺めてコレクションする嬉しさが倍化しないんですね。
奉行もう少し分かりやすい虫がいてもなあ…というか、知らなくても見た目でウケが取れる甲虫類や蝶類ってのは素晴らしいんだな。小っちゃい虫はちょっと分からんかった。場合によっては、虫の見た目でゲーム全体を敬遠する人がいてもおかしくないかなとは思う。これはこのゲームのウリである写実的なイラストと表裏一体になってしまうが。
与力まあ、これを機会に色々と皆さま興味をお持ちになっていただければ…ということで。
奉行あと、あれだ。郵便タイルを積み上げるというのはなんとかならなかったか? 山の下からタイルを引くアクションがあるのに、すごく高く積み上がっているから崩しかねんぞ。『テケン』の棒並みに詮議対象ではないか?
与力説明書では一山になっていますが、山を分けて対応でしょうかねえ。細かいことを言うとタイルの出現率が変わるとかなのかもしれませんが…。
奉行できれば布袋が付属していて、その中に入れたタイルをランダムに引く、がスマートなプレイにつながったように思う。大方の意見を乞いたいところじゃな。
奉行お前の次のセリフは「強壮な甲虫類の時代ですよ!」と言う。
与力強壮な甲虫類の時代ですよ! 大いなる種族が訪れるまで地球を支配する昆虫の…ハッ!
奉行続きは『アーカムホラー』でやってくれ。な。