大国の狭間に紛れて生きる
1595年5月 また娘が武将になる
どうもみなさまごきげんよう。真田源三郎でございます。ただいま次女が髪結いを終えて我が配下に加わったところにございますれば、ご披露申し上げます。
能力的なものはわしを受け継いだ…とは申しがたいが、我が息子二人よりはちょっと優秀。
高梨内記「また源三郎様は何をおっしゃっておられるのか。ご嫡男・信吉さまも、ご次男・信政さまも、先頃お生まれになったばかりで先はまだわからぬというに」
河原綱家「どうも最近は妙な独り言が増えておるご様子。心配ですな」
うるさいな、ちょっとしたネタバレだよ。血統の割に微妙に育つんだよ、うちの息子たちは。で、なぜまた娘を武将にしたか、ということなんですが…。実は、上杉と最上の合戦の隙をついて、要衝・春日山城の攻撃を敢行してみたのですよ。
ところが兵力不足につき、包囲が不完全。そこで慌てて後詰を繰り出そうと思ったのですが、武将が足りない。そこへ折よく娘が志願してきた、という寸法でしてな。
鈴木重則「あっ、最上を退けた上杉勢が救援に駆けつけてまいります。これはいけない」
くっそ、最上も今一つ詰めが甘い。もう少し我らのために頑張ってくれてもよさそうなものだが、仕方がない。これ以上の戦は不要だ。いったん引き上げて、次の機会を待とうか。
1595年9月 父の山歩き
さて、飯山や根知に援軍を送る機会も増えようから、海津周辺の道を整備しておく必要があるな。道の整備は勢力が拡大してくるにつれ、欠かせない事業となる。
鈴木忠重(以下、右近)「その分、敵も攻めてきやすくなる、というマイナスもあります」
うむ、そこで要所に陣所を築き、砦をもって城を守っていく、という普請と戦略も必要となってくるであろう。…おや?我らが普請したばかりの道を軍勢が通っていくが…あれは誰だ?
右近「あれは…上田の殿…っぽいですが…」
いや、ちょっとまった! 小諸の徳川軍は戦力を充実させつつあるじゃないですか。このタイミングで上田をほぼ空にして坂戸なんてまた守りづらい所を攻めにいくのですか? ちょっと、父上、父上ーー!!
右近「ああ、行ってしまわれました。いかがなされますか」
徳川の動きは無視できん。だが、こちらに備えありと認めれば無理な攻撃には出てこぬであろう。特に今、徳川は上方の戦で忙しいからな。既に手は打ってある。
とりあえず、綱家に貢献させて、娘たちの率いる軍勢を上田に張り付けておいた。上田の堅固な守りをもってすれば、そうそう後れを取ることはない…とは思う。
高梨「殿は次々と城を手に入れておられますな。重畳です」
とはいえ、守りづらいんだよね。やっぱり小諸、深志あたりが欲しいなあ。上田から近くて守りやすいし。生産力も高いし…。
高梨「そのためには徳川と…」
そう、上杉を気にしつつ、徳川を蹴散らす。なかなかハードルが高いな。最上と上杉が争っているタイミングで徳川勢が我らへの警戒を怠る…その瞬間を待つしかない。
1595年12月 孤独な防衛戦
そして冬を迎えたタイミングでトラブル発生。根知城に前田の軍勢約10000が攻め懸かってまいりました。同時に、小諸城から出陣した徳川勢5000が上田城を包囲。二方面から大勢力に襲われる、という、最悪のパターンです。
重則「上杉まで動かず、良かったというべきなのでありましょうか…」
右近「いずれにせよ、援軍を出されますか? 根知を捨て、上田に兵を集めるが得策と存じますが…」
うーん、いや、上田の父なら三倍程度の兵力までなら籠城してなんとか持ちこたえてくれよう。むしろ、援軍が必要なのは根知だ。
重則「しかしそれでは下手ををすると、二つの城を同時に失う恐れもあります」
右近「ここはやはり兵を集中いたしましょう」
と、いうのが定石だよな。だが、定石どおりにやっていてはジリ貧なのが我らの辛いところ。ブラック企業的に過度な働きを強要する大名と後ろ指をさされそうだが、ここは上田も根知も、三倍の敵を相手に頑張ってみることといたす。
さて、城を囲みおるのは、先に父上に蹴散らされた毛受、三善の二将じゃな。兵の数は多いが、恐れるには足らんか。
海津城で鉄砲備を増やせるようにしておいたのが功を奏している気がするな。籠城戦は正直、四つの備えのうち、三つは飛び道具で固めてしまっても良いかもしれません。
重則「敵勢、退いていきます!」
よしよし、どうやら上田では徳川勢は戦を避けて引き返したようだ。少々謎の動きだが、父上の籠城戦の手腕に恐れをなした…ということにしておくか? だが、意外と頑張れるな。まだまだ真田は大きくなれる。
河原「……最上勢が早々に与板城を攻め落としてしまったせいで、春日山から与板へ後詰していた軍勢が、早々に立ち戻ってきてしまいました」
これでは城攻めは無理だ。最上め、今度は張り切り過ぎだよ、まったくもう。