予想以上の鬼島津(前編)
(ある宣教師の手紙)
府内館 ―1556年の戦略―
――日向・都之城付近
米良祐次「土持殿、これ以上の戦は無理にござる、退けのお下知を下され!」
土持親成「ぐぬぬ、島津の若造め、戦上手とは聞いていたが……我らの兵は彼奴らの三倍であったのだぞ……」
一萬田鑑実「御屋形様、土持家が島津義弘の守る都之城攻撃に向かい、敗退した、との報せが参っておりまする」
吉岡長増「これは、よろしくない。土持が兵を損じたとなると、我らが切り取った旧伊東領の守りが手薄となりますでな」
うーん……。あの城は北郷義久が築いて以来、比類なく堅固という評判だし、守っていたのは島津自慢の一族にあって最も戦上手とうたわれる義弘だし、土持では荷が重かったな。
吉弘鑑理「と、申しましても、都之城の城兵は一千五百が程度。土持が総力挙げて攻め懸かれば、なお五千は動かせましょう。引き続き、攻めさせるのも悪手とは思えませぬが」
島津義弘はモンスターだ。甘く見ては我々が痛打を喰らう。うかつに手を出し続けて兵がショートしてしまったら長増が言う通り、目も当てられないことになる。それよりはむしろ、弱いところを確実に確保していこう。高橋軍団に加えて、戸次家にも有馬攻めをアサインしておいて。あっちも島津が首を突っ込んできたら高橋軍団だけでは対抗できない。
一萬田「ははっ」
戸次鑑連「……高橋、蒲池、志賀の総攻撃を受けて、なお降らぬか……」
由布惟信「島津の援軍が手強いんですよ、殿。こちらは兵の数では上だが、指揮官に人材を得てねぇ」
戸次「……不甲斐無し!」
高橋鑑種「……どうだ、肝付兼盛の首を挙げたぞ! 軍団長たる我が働きを見よ! 日之江城を落とせ!」
志賀親守「(あやつめ、戸次に戦で張り合おうなどと、妙な気を出しおって……任せておけばよいのだ、やつらに)」
一萬田「御屋形様、有馬の日之江城は臼杵家が攻略いたしたとの報せ。意外でしたな」
なに、臼杵? タスクは与えていなかったけども……。あ、日向に援軍出してなかったのは、そっちに勝手に兵を派遣していたせいか! でもまあ結果オーライとしよう。御咎めは無し。ただし褒美も無しだ。
吉岡「なお、高橋鑑種殿は、引き続き平戸城攻撃のお下知を下さるよう、願い出ておりますぞ」
平戸? 完全に龍造寺の領土を通過することになるな、そこは。アライアンスを組んでいる今はいいが、龍造寺の立場に立って考えてみると、自分の周囲を完全に大友に包囲されていることになる。いい気持ちはしないだろうな~。
吉岡「では、止めさせますかな」
いや、ここは勢いに乗って攻めていこう。高橋軍団の次の目標は平戸城でゴーだ。
吉岡「ははっ、では早速に」
さて、佐土原方面のリスクマネジメントをしておかないと。土持の兵が減少していれば、島津は見逃してくれないだろう。鑑実、鑑理、出陣するぞ。島津の北上を食い止める!
吉弘「ははっ」
吉岡妙林「的確な采配、素敵ですわ、義鎮様!」
角隈石宗「これは御屋形様の読み通り。さて、いかがなされまするか」
甲斐親直「兵の数はこちらが倍以上……なれど、島津は兵力の不利を悟るや陣所に引き退き、逆に我らを迎え撃つ支度を整えておる様子。ここは下手に仕掛けられぬが得策かと」
ふむ、我がブレーンは後ろ向きだな。だが、ここを抜けば飫肥城までは指呼の間。できれば辿り着いてしまいたいところなのだが……
一萬田「御屋形様、敵は島津義弘を中心に守り堅く、突破は困難かと心得ます。佐土原城まで退いて対陣されてはいかが」
吉弘「しかしながら、兵糧の不足も目立ってきております。あまり長滞陣はおすすめいたしかねまするが……」
うーん、義弘が出てくるとどうしてもスタックするなー。島津は街道の要所要所に陣所を築きまくっている。これをどう回避していくかが今後の課題か。よし、一旦、日向戦線はペンディングで!
府内館 ―1557年の戦略―
―平戸城包囲の陣中―
高橋「おのれ臼杵鑑続め! 己が領分で無いところに出しゃばってきて、手柄を横取りするなど、言語道断! この上は平戸城を我が手で必ず落とし、高橋の力を御屋形に認めさせて平戸と秋月の二城、高橋の持ち城としてくれよう!」
三田井親武「あ、殿、まずいですな」
高橋「何がじゃ!」
三田井「いや、蒲池勢が搦手から抜け駆けを仕掛けておりまする。あ、城内に蒲池の旗が立ち申したわ」
高橋「なんじゃと!」
一萬田「御屋形様、平戸城は蒲池勢が攻め落としたとの報せにございます」
よくやった。有馬領、日之江以外の城は蒲池家の支配に組み込んでいたから、今度の平戸は高橋家に組み込もう……ただ、鑑種は貰いが少ない、と文句を言いそうだけども。
角隈「左様ですな。戸次、蒲池以外の各家からは、御屋形様が働きを認めて下さらぬ、と愚痴の声もちらほらと……」
やっぱりそうなってきたか。でも、私の査定はフラットなんだよ。文句を言われてもそこら辺はコンバージョンしてないんだから、しょうがないでしょうに。
甲斐「御尤もでございます。しかしそうなると、彼らは手柄にどん欲になり過ぎるやも、しれませぬ。特に、そろそろあの家が動くと思いまするが……」
木脇祐守「申し上げます。土持親成殿、約五千の兵を率い、島津の都之城へ向かわれたとの報せ」
あ、新メンバーの元伊東家臣・木脇くんだよ。みんな、宜しくって言いたいところなんだけれど、また攻めたのか! 成り行きを見守りたいところだが、どうせあいつは負けてピンチを招くだろう。しかたがない、出陣して土持家を守る!
吉弘「申し上げます、蒲池鑑盛殿、約一万の兵を二手に分けて隈本と島原から南下。島津の佐敷城へ攻め懸かる、とのことにござりまする」
いやー、蒲池は乗ってるな。日向と肥後の同時攻撃、上手くシナジーすれば、島津に両方面で劣勢の戦を強いることができるかもしれない。妙林、蒲池家を援護するんだ、頼むぞ!
妙林「お任せください、義鎮様!」
土持「(また島津の小僧に敗れるとは……不覚にもほどがある……)」
一萬田「薩摩、大隅の島津勢ことごとくこちらへ攻め寄せてまいります。都之城攻めに失敗した土持勢を撤退させるためには、我らがここで島津勢を押しとどめる必要があるかと」
木脇「申し上げます。島津の隠居、日新斎が約六千の兵を率いてこちらへ進軍中との報せ。島津の兵力がこちらを上回りまする」
薩摩の兵力がこれほどというのは、ちょっと予想の上をいっていたな。我々は今回もここでスタックだが、肥後の戦線はもう少しうまく立ち回れるはず……!
蒲池「兵はこちらが倍以上、なのに佐敷城にすら近づけぬとは……。くそう、兵をもっと繰り出せ!」
妙林「(……お考え通りの展開です。嗚呼、冴えておられますわ、義鎮様!)」
―肥後山中
由布「三段構えの戦とは、御屋形様もやりますなあ。島津の兵を東西に十分引き付けたうえで、真ん中の人吉盆地、鍋城へ俺らを突っ込ませる。いい作戦だ」
戸次「……御屋形様はやはり非凡であらせられる」
由布「人使いが荒いのは気に入りませんがね」
【幕間】できる武将の●●個の秘訣 ~家臣の顔を覚えましょう編
角隈「さて、いくつかの大名家を滅ぼしましたゆえ、短期間に家臣が増えました。ここらで何人か御屋形様にご披露申し上げておきたいと存じまするが、いかに」
ああ、いいよ。大切なことだしね。
秋月種実「はじめまして! 見た目は武将、頭脳は大人。秋月種実、十歳です!」
角隈「御屋形様、お言葉を」
あ、ああ……。これから大変だと思うが、期待しているよ。
秋月「はい、がんばります!」
角隈「次のものは、親子でのご挨拶をさせていただきとうございます」
はいはい。
籠手田安昌「同信の御屋形様に仕えられて光栄に存じます。元松浦家家臣、籠手田安昌と申しまする。また、これに伴いましたは、息子の安経にござりまする」
籠手田安経「籠手田安経にござります。父ともども、神の教えを守り、御屋形様をお助けいたす所存」
角隈「御屋形様、お言葉を」
えっと、あの、何歳なのかな。
安昌「五十に相成りました」
安経「二十六に御座りまする」
……そう。一瞬、疲れ目か何かかなって思ったんだけど。……画像処理間違えてないよね? うん、なんかこう、これから一緒に頑張ろうね。宜しく。