兄より優れた弟など存在しない
(ある宣教師の手紙)
秋月城 ―1560年の戦略―
さてさて、この秋月城を中心に、大内を完全に九州から追い出そうというMTGです。まずは、現状の確認から進行しましょうか。
一萬田鑑実「ははっ。まずは肥前の平定は完了し、旧龍造寺領は蒲池家、高橋家に知行として分け与えております。両家ともに御屋形様の格別なるお計らいに深く感謝し、新たな案件のアサインを心待ちにしている、とのこと」
木脇祐守「また、臼杵家は南北の日向・豊前に目を配り、万端整えておる由。ご命令あらば直ちに北上できましょう」
吉岡長増「最後に御屋形様直属の軍勢にござるが、府内館、秋月城を中心に兵の増員や鉄砲の配備は順調に進んでおりますぞ。島津への抑えを残しても、優に一万は動かせましょう」
ふむ、全武家のスケジュールが上手くかみ合っているね。大内の案件はASAPで終わらせないといけないから、これはもう行くしかないな。
角隈石宗「ただ、蒲池家は手ひどく戦った後なれば、軍勢は完全に整わぬやもしれませぬな」
鍋島直茂(元龍造寺家家老)「それはこのフェーズではもう気にする必要はないのでは? とりあえず兵力に最も余裕のある高橋家にボールを預けて、状況次第で順次軍勢を進める的な感じでいけば、蒲池家に全力挙げてもらう必要もないでしょう」
そうね。蒲池は休みでも、十分何とかなるでしょう。まずは高橋家に実力を見せてもらいましょうか。
甲斐親直「御屋形様。攻勢の到達点をどこに置かれるか、これは肝要かと存じますが……」
ああ、なるほど。大内は周防・長門がホームタウンだから、場合によってはそこまで出ていくことになるかも、ってことな……。まあ、そこは流れで、現場判断で行きましょうかね。OK?
一同「ははっ」
甲斐「(……周防・長門まで出れば、毛利の機嫌を損じかねん。今、関門海峡は渡らぬが得策じゃが……)」
角隈「(うーん、ますますよう分からぬ言葉ばかりが飛び交う評議になりつつあるのう……)」
よし。妙林が秋月城に攻め寄せた大内勢を叩くことに成功した。これを合図に、高橋、臼杵の両家と、私の直属軍で大内を叩くぞ!
鍋島「御屋形様、大内から“従属したい”とかいうふざけたメールが来てますが、なんて返信しておきましょうか」
……向こうからアライアンス破棄しておいて、その言いぐさはよく分からんね。まあうちが毛利と組んで逆包囲されたという所から、あわてての方針転換だろうけど、残念ながらもうノーチャンスだよ。
鍋島「では、そんな感じでメール返しておきます」
―立花山城攻めの陣中
高橋鑑種「……このところ、我が家は各所で他家にしてやられすぎてきた。だが、此度の戦は我らの足元でのもの。今度こそ存分に働き、高橋家の武勇のほど、御屋形に知らしめねばならん」
戸次鑑連「……闘志十分じゃな。将たるもの、常にそうでなければ」
高橋「おう、立花山城程度、一捻りにしてくれよ……んん? 戸次殿、なぜここに!? 島津の抑えをしておられたのではなかったか!?」
由布惟信「すいませんねぇ。御屋形様から急に『大内を確実に潰したいから高橋家の助けに行け』って命令が来ましてね。いや、俺はそりゃ無茶だって止めたんですがね。うちの殿は『……御屋形様のご指示とあれば』って、来ちゃったんでね。てことなんで一つよろしくお願いしますわ」
戸次「……これで備えは万全でござろうが?」
高橋「……左様ですな。(わし一人で十分なものを……)」
一萬田「御屋形様、戸次勢が立花山城を開城させました。なお、高橋鑑種殿は引き続き軍勢を率いて東進、櫛崎城を包囲しつつあるとのこと」
鍋島「それから臼杵家の軍勢も順調に北上し、只今は小倉城を囲んでいるそうですね。オンスケですよ」
ふむふむ、高橋家はそろそろいい所を見せたいだろうから、フルコミットしてくれるでしょ。ちなみに、こちらの状況は毛利家にホウ・レン・ソウできている?
吉岡「ただいま毛利家との外交交渉を担当しておる日高喜を通じて、逐一談合しておりますじゃ」
となれば、毛利も大内領を削り取りにくるだろう。本州の周防・長門は毛利家にプレゼントすることになるだろうな……高橋、臼杵の攻撃が巻きで進めば、あるいは少々の貰いはあるかもしれないが。
角隈「ところで、四国経略の方では、宇都宮家が新たに家臣の列に加わることを承諾いたしましたぞ」
甲斐「なお、先の西園寺に続き、此度の宇都宮が我が大友に降ったことを聞き……」
そういえば河野は毛利への対抗上、我が大友との提携をしきりと訴えてきていたけども……まさか状況がここまでドラスティックに転回するとは思ってもいなかったかもな。
甲斐「いかがなされます。少々、脅しをかければ、河野家のもつ伊予一国、今なら我らのものになるやもしれませぬ」
角隈「左様。かくも事が上手く進んでおります上は、御屋形様の申された通り、三好辺りが出張ってくる前に、取り込んでしまうが上策と心得まする」
OK、それでいこうか。河野家にメールを出しておこう。こうなると、いよいよ大内との状況は早々にフィックスしていかないとな!
一萬田「御屋形様、九州の大内領はすべて我らが手に帰し、もはや北九州に敵はござりませぬ。おめでとうございます」
鍋島「ついでながら大内家は、本州サイドの城を全て毛利に奪われ、滅亡を迎えましたね。しかし、必要上、今回は毛利に提携をアプローチして上手く回りましたけど、この先は連中とどうなるか分かりませんね。毛利からみれば九州、四国の出口をウチが塞いでしまった訳ですし」
そうなあ……。それもいつかは考えなければいけないがなあ……。
角隈「……間をおかずに、今、島津との戦をはじめられたは、中々の博打と存じますが」
鍋島「そうとも言えないんじゃない? 高橋家とかが頑張ったおかげで、御屋形様直属の我々の兵はほとんどロストしてないよね。たぶん、それだけでも城の一つか二つはとれないかな」
木脇祐守「確かに我が方の動員した兵は二万に近く、島津の守りが手薄な城に取りつければ十分勝算はありましょうが……」
甲斐「島津は街道の各所に陣所を設け、全領土を要塞化して守っている。各所で手強い防戦に遭うであろうな」
鍋島「どうですかね、御屋形様」
そうね、スキームとしては、我々の軍が島津領へ踏み込んで敵兵力を消耗させる。その間に大内攻めで消耗した各武家の兵力が回復し、我々と入れ替わりで二次攻撃を開始する。石宗や親直が危惧する通り、島津の抵抗力は侮れないけど、物量で勝る我々が常に新しい軍団を前線へ送り続ければ、勝算はほぼ100%でしょ。行けるでしょ。
甲斐「……思いのほか、四国経略が上手く運んでいることの影響もございますな?」
さすが。実は河野、更に西土佐の一条がM&Aに前向きな姿勢だという知らせを長増から受けているんだが、それを察してか三好と長宗我部の動きが怪しいそうなんだ。これはそろそろ、九州は決着をつけるタイミングがきた、ってことだよ。
角隈「御屋形様、それがしが先にお勧めしたとおり、九州平定の暁には九州探題の座に就かれることと存じますが、四国へさらに深入りする、ということは……」
うん、そろそろ目標を共有しておこう。九州平定後の大友家は、瀬戸内海、四国を東へ進み、この国のキャピタル、京の都を目指しますよ。