水滸伝マラソン(ボードゲームプレイ感想編)

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【登場人物】

奉行藩の決裁担当。水滸伝と言えば?「頭に幻想とつけたゲームなら、一つ二つ遊んだことはあるが……と言ったら怒られそうだな」

与力藩の買掛担当。水滸伝と言えば?「コーエーの『水滸伝 天命の誓い』。サウンドトラックカセットまで買いましたよ」

与力は奉行にルールを開陳し

奉行ふうむ、箱裏の説明を見る限り、どうやらソリティア的なゲームじゃな。

与力ルールに従ってカードを並べていく、ということですね。

奉行あと、この人らがなぜマラソンしているか……は深く考えずにおくか。

与力そこはまあ、天の導きとかです。はい。

ゲームを始めるには、まず適当な方法で親を決めたら、親はカードをよく切り、プレイヤーに1枚ずつ配ります。これで準備は完了です。

水滸伝マラソン
シンプルなスタート。

与力親をどうやって決めるかは揉めるところですね。「プレイヤーの中で最も最近、水滸伝の豪傑的なことをした人」とかいう方向性だと、大半が犯罪行為になっちゃいますから。

奉行どういうことだ、それは。いや、長話になりそうだから良い。とりあえず、うちで水滸伝といったらお主以外にないので、お主から始めよう。カードは18枚全部使うのだな?

与力あ、いえ。カードには色分けがされていて、赤・青・紫・緑・黄・橙・桃までは常に使いますが、残る2枚、黒と虹のカードは使っても使わなくてもです。初回プレイの場合には抜いておいた方がいいらしいので、抜いておきましょうか。

奉行うむ。推奨ルールには従っておくものだからな。

水滸伝マラソン
黒の双鞭・呼延灼と虹の混世魔王・樊瑞。

奉行はスタートカードに悩む

与力では、スタートプレイヤーを決めましょう。

奉行む、親から始まるのではないのか?

与力親が最初に配った手札からスタートプレイヤーが決まる、ということらしいです。

各プレイヤーは最初のカードを見て、赤のカードだったら、そのプレイヤーからスタートになります。赤を持つプレイヤーが複数いる場合には、数字が小さい順に優先されます。

奉行ふうむ、色とアルファベット……。

与力この豪傑カードには、グループ分けを表す「色」、ゼッケンを表す「数」、そして豪傑の体型を表す「アルファベット」と、3つの分類が書かれています。これがゲームを進めるうえで大切になりますので、よく見ておいてください。

奉行で、その「色」のうち、赤を持っているプレイヤーからプレイが始まるようだが……持っている人がいなければどうなる?

与力アルファベットEのカードを持つ人が、次の優先権を持ちます。それでもいなければ、D、Cと探します。

スタートプレイヤーは山札からカードを1枚引きますが、必ず最初の手札を場に出してスタートします。次のプレイヤーからは山札から引いたカードと手札のどちらかから出せるカードを出していくことができます。

(2018.11.7追記)内容に一部誤りがありましたため、訂正させて頂きます。大変、申し訳ございません。

与力、カードの配置を間違え

水滸伝マラソン
1列目のカードが並んだ。

与力で、最終的には5列並べたいわけです。1列目は5枚、2列目は4枚、という形で1枚ずつ数を減らして、5列目は1枚になるので、その豪傑が優勝した、と、まあそういうビジュアルになるんですね。

奉行ふむ、で1列目はこのように並んだわけだが……。

与力1列目は5枚とも「違う色のカード」を並べないとだめです。ですので、こうなりますね。

奉行しかし赤のカード、まだ手札にこないなあ。

水滸伝マラソン
2列目のランナーがそろう(カードは逆ピラミッドに並べるのが正解……)

与力2列目と3列目は、「違う色のカード」の制約と同時に、「上下左右で同じ色や数を持つカードと隣り合ってはいけない」という制約が加わります。

奉行あー、ポジション取りが厳しくなってくる感じなのか?

与力で、たぶん察しのよいお奉行なら気づいておられると思いますが……。

奉行分かるぞ。4列目と5列目は、それに加えて「同じアルファベットを持つカードと隣り合ってはいけない」という制約が入るのじゃろう?

与力ご明察、にございます。

2枚のカードがどちらも置けない場合、プレイヤーは手札を山札の一番下に戻してパスを宣言することができます。そして次の手番からは常に山札から1枚めくって、そのカードが置けるか置けないか判定していくことになります。

与力つまり、一発鬼引きの勝負ですね。

奉行パスもありだそうだから、カウンティングしていればパスも有用、か?

与力あっ、置けない。パスですね、ここは……。

水滸伝マラソン
その結果、四列目で。

与力うっ、山札からは智多星の呉用が出ましたが、この3列目だと、左に置くと赤の霹靂火・秦明と色でぶつかり、右に置くと一丈星・扈三娘と体型でぶつかってしまいます。置けませんね……。

奉行名前で呼ばれるとさっぱり分からんな。色で良いだろう、色で。まあ、仕方がない。あとは、わしが引き継いでレースを終わらせてみせようではないか。

与力お願いします、お奉行。

水滸伝マラソン
しかし、あえなく。

奉行ぐぬぬ。この並びでは、山札から引いてきた史進は置けぬのう……。

与力残念ながら、レース不成立ですかな。

奉行なんと、全員DNFになるのか? まあよい、並べきれるまで遊んでみようではないか。

水滸伝マラソン
今度は正しく逆ピラミッドのレース風景。

奉行これはレース成立……なのだな? 大丈夫か? 間違いないか?

与力た、たぶん。はい。

『水滸伝マラソン』【ここがイカス!】

奉行うむ。確かに、ルールを覚えればすぐ終わるな。

与力「公称5分」は伊達ではありませんでしたね。

奉行列が進むごとに縛りがきつくなるソリティアゲームだな。あるいは色をつなげて配置していかなければならない『ペンギンパーティー』の逆版といった趣か。

与力あちらよりカード枚数は少ないですが、その分カード1枚が持つ情報量を増やして、面白さを出していますかね。

奉行1人用ルールを搭載していたり、得点計算ルールやバリアントルールも説明書に載っているので、色々と遊び方も多かろうと思うな。付属のチップ類は、そういうルールの方で活用していくようだな。トランプのカードゲームの雰囲気が強いから、全くボードゲームに慣れていない人を巻き込んで、ちょっと遊ぶのにいいかもしれん。漢字が沢山あって、なんとなく勉強している気分になるので、学校とかか。

与力今回、ご紹介したのは基本的なルールだけですね。そしてさらっと、発想が小学生みたいなこと仰ってません?

奉行個人的に、カードが持ちやすいのと、デザインや絵柄はこだわりがあっていいな。爺なんかは爺らしい顔をしつつ、ちゃんと現代のマラソンランナーの格好をしているからシュールで面白い。

与力オシャレですよね。

奉行ただ、やっぱりシュールなので、学校とかで遊んでいた時に、女の子から「なにそれ~可愛い~」と言われるかどうかはな……

与力そもそも言われますか、それ?

『水滸伝マラソン』【ここはちょっと……】

奉行で、結局わしらはどういう立場でこの豪傑連中を走らせておるのだな。

与力テーマの部分に引っ掛かりますか。

奉行考え出すと気になる。それから、列が進むごとに増える配置の制約ルールだが、慣れないうちはミスることが多いかもしれん……というか、やってしまったな。

水滸伝マラソン
クリアしたと思えば、ミスの嵐。

与力これは2、3、4列目でミスっていますね。つまり完全にミスゲームです。

奉行色に注目しすぎた結果だ。「置ける置ける!」とか言っている場合ではないかった。ぜひぜひ気を付けて遊んでいただきたいと思う。

水滸伝マラソン
普通に走ればこいつらが強い。

与力ナチュラルに足の速い活閃婆の王定六は良しとして、神行太保の戴宗が使う速足のお札は、絶対に禁止用具だと思うんですよ。

奉行そらまあそうだ。コンプレッションウェアですら禁止になるのじゃからな、本格派の大会では。

与力、余計なオマケを書く

与力なんつうか、キャラクターゲームですから、知らない方にも親近感を持ってもらいたいなあと思って、18人の豪傑がどんな連中なのか、ぜひ説明しておこうと思うんです。勝手に。

奉行はあ。正直、わしにはさっぱりわからんよ。中国の伝統的物語の一つで、108人の仲間が集まって戦う話、だよな。

与力最初は『ジャイアントロボ 地球が静止する日』を見てください、とか書いておこうと思ったのですが。

奉行それは多分、相当な誤解を生むからダメじゃろう。

与力女性の楊志とかカッコよかったですけどね。

水滸伝マラソン
主人公格?
豹子頭・林冲(青)

元禁軍(国の正規軍)教頭で槍棒の名手。無実の罪で陥れられ、全てを捨てて逃亡生活に入る。物語序盤の主人公格である。『三国志』の張飛をイメージさせるキャラ。
浪子・燕青(橙)
梁山泊の副頭領である盧俊義が堅気だったころからの使用人。色白で全身に彫った刺青がトレードマーク。なんでも得意だが、中でも弩(ど/弓の一種)と相撲の腕が際立っている。
一丈青・扈三娘(黄)
梁山泊軍に数名いる女傑の代表格。あだ名の解釈には諸説あり、一説には身長一丈、刺青入りの美女だとも。小男の矮脚虎・王英を夫とする。
及時雨・宋江(赤)
物語の主人公格。色黒で風采のあがらない元小役人。謎の人望が武器だが、最終的には彼の国家への忠義心が多くの仲間を死に追いやる。

奉行ん? 宋江とやらは主人公格なのに、酷い言われようだな。

与力この物語、108人が揃うまでは面白いんですが、揃った後は、大体こいつのせいで鬱展開になりますから。

奉行えー……

水滸伝マラソン
暴れん坊
黒旋風・李逵(橙)
二丁の斧を振り回す色黒の巨漢で、宋江の忠実な部下。彼のためなら子供であろうと容赦なく手にかける。
九紋竜・史進(青)
豪農のドラ息子で武芸を好む。物語の序盤で大活躍をするが、話が進むにつれて影が薄くなる残念なキャラ。
行者・武松(赤)
兄の仇討ち、素手での虎退治など、武勇伝なら登場人物屈指で知名度抜群の豪傑。
花和尚・魯智深(紫)
人助けで殺人事件を起こしてしまい、逃亡のために出家した暴れん坊和尚。突然不在になったと思ったら敵の総大将を捕まえて帰ってくるなど、謎の力を持つ。

与力この人たちのエピソードは「ルール無用の勧善懲悪」的なものが多いので、非常に楽しいですし、人気者です。でも、国への忠義が強調されるようになって、梁山泊の組織性が強くなると、だんだん活躍の場が無くなります。

奉行ふうん、複雑なものだな。

水滸伝マラソン
元・役人色が強い連中
霹靂火・秦明(赤)
短気な軍人のおじさん。逃亡中の宋江を捕えようとしたが、逆に宋江の策にはめられて無実の罪で家族を失い、やむを得ず宋江の仲間になった。
挿翅虎・雷黄(黄)
立派な髭がトレードマークな地方役人。立場を利用して梁山泊の人々をちょいちょい助け、やがて自分も仲間入り。その後は影が薄くなり、ほとんど活躍の場は無い。
小李広・花栄(桃)
宋江の親友で、弓と槍の名手。軍人の地位を捨てて、宋江の忠実な部下となる。必殺の弓は百発百中、物語中では一騎打ちにおいて無敗を誇る。梁山泊リーサルウェポンの1人。
轟天雷・凌振(緑)
元は軍人で当代一の砲術家。梁山泊討伐軍の一員として数種類の大砲を運用し、宋江たちを驚愕させたのが最大の見せ場。108人に彩を添える特殊技術保有者の1人である。
青面獣・楊志(紫)
エリート軍人の家系だが、やることなすこと運に恵まれず、犯罪者に転落して、やがて梁山泊に加わる。梁山泊発足の事件では噛ませ犬役だった。

与力この経歴の人たちが全面に出てくると、さっきの暴れん坊連中は影が薄くなってくるんですよね。

奉行なんだか褒めてるのかけなしてるのか、分からんところもあるな。ところで砲術家って、水滸伝の時代に、そんなものがあったのか?

与力北宋の時代に火薬はありましたけど、いわゆる大砲はないです。物語が成立した後代の要素と、個性のためのキャラ付けですかね。

奉行おぬしが遊んでる、某北九州の戦国大名がぶっ放してたのと似たようなものか。

水滸伝マラソン
走ったら勝つ人たち
神行太保・戴宗(緑)
元は地方の牢役人兼道士で、一日に400km以上を走破できる神行法という道術の使い手。情報収集などの側面活動で非常に重宝された、梁山泊に無くてはならない人物の1人。
活閃婆・王定六(桃)
元は居酒屋の若主人。足が速いのが特徴だが、物語中でその能力は十分に生かされなかった。

与力というかですね、王定六は戴宗がいる以上、どうやっても活躍できない運命だったんですよ。術と特技の差ですから。

奉行せめてこのゲームでは勝たせてやろうではないか……。

水滸伝マラソン
ゲーム的には特殊なポジション
双鞭・呼延灼(黒)
国家創業の名将・呼延賛の末裔で、連環騎兵という重装騎兵部隊を率いて梁山泊討伐を行い、宋江たちを危機に陥れた。仲間になってからは強いが個性は失われた。
混世魔王・樊瑞(虹)
様々な方術を用いる道士で、さらに武勇にも優れた山賊の頭領。梁山泊に加わったが、彼を上回る方術の使い手で梁山泊リーサルウェポンの1人である入雲竜・公孫勝がいたため、余り目立たない位置に埋没した。

与力キャラの特性が被ると悲しいことになるパターンその2ですね、樊瑞は。『ジャイアントロボ』ではいい役なので、ぜひそちらをご覧ください。

奉行ジャイアントロボへの愛が深すぎやせんか。ところで、呼延灼という奴に「双鞭」とあるが、ムチを使うのか?

与力いや、この「鞭」というのは、鉄でできた角棒みたいな武器です。鈍器ですね。

水滸伝マラソン
問題の人
智多星・呉用(赤)
地方の家庭教師から梁山泊の総参謀格となり、ほとんど諸葛亮そっくりの格好で登場する。だが策を弄してはうっかり失敗を重ね、大切な兵法では仲間の神機軍師・朱武より劣る。宋江の相談相手としてはよいヘッドコーチなのか。コンパクトにセンター返しか。

与力彼の名前は「無用」と同じ発音になるので、中国では役立たずの代名詞でもあるんだそうですよ。

奉行お、豆知識か。じゃあこいつ、孔明のコスプレしてるこざかしい人、ってだけか。

与力彼の元ネタの人が、地位のわりに学が無いことをいじられていた人らしいので、そのせいですかね。

奉行完全に困った人じゃないか……。

以上、勝手なキャラクター紹介でした

与力以上です。あくまで私の記憶と偏見による紹介なので、興味がわいたらぜひ本を読んだり、ドラマを観たりしてみてくださいね。

奉行与力の偏見に物言いの声が上がらないことを期待する。ひとの名前が覚えられぬという特技を持つわしには、手も足も出んし、そもそもこれを全部暗記してるのかおぬし……。

記載についてのお詫びと訂正(2018.11.07追記)

奉行上記のような記事を公開したところ、なんとゲームデザイナーの苺葉ナップ殿に御高閲いただき、記事中の文章についてご指摘を頂戴したので、ここにご披露申し上げたいと思う。

奉行……与力よ、いかに。

与力ははっ、「スタートプレイヤーを決めたのち、スタートプレイヤーが山札からカードを引いて2枚になった手札のどちらを出すかについては、赤のカード、でなければアルファベットという優先順位に基づいて決定せよ」とのことと拝察いたします。

奉行我らの記事中にあるように、「スタートプレイヤーはスタートの一手は必ず”最初の手札を出す”のではない」ということであるな。

与力左様です。私の説明書解釈の誤りでございました。ここに訂正し、お詫び申し上げます。

奉行よろず、細部のルールについて適用ミスの多い男ゆえに、何卒ご寛恕頂ければ幸いにござる。