『グリッズルド拡張 ご命令どおり! The grizzled At Your Orders!』を遊んでみた
人は、過ちを繰り返す
奉行うわぁ、またこの泥濘の中を這いずるゲームの時間が来てしまったか。
与力ずいぶんと酷い表現ですねえ。確かに勝率が高くなりがたいゲームですが……。
奉行いやいやすまん、嫌いってわけじゃないんだ。だが、こう……勝って嬉しさがこみ上げるというよりも、勝ってホッとする。ああ……生き延びた……みたいな感覚になるゲームってのは、中々お目にかかれるもんではないぞ。
与力テーマの再現がばっちりですね。ある意味、没入感が高いってことなんでしょうか。
奉行それは間違いないと思う。
『グリッズルド拡張 ご命令どおり!』(以下『ご命令どおり!』と略)を『グリッズルド』(以下、『基本』と略)に追加して遊ぶ場合、いくつかの大きな変化が発生します。
与力ゲーム開始時の準備からちょいちょい変わってきます。「ゲーム開始時の試練の山は常時25枚ですよ」とか。
奉行基本の時は、難易度によって上下させるのであったな。
与力そうです。じゃあ、明らかな変化を見ていきましょう。1フェイズごとに1つ、違いが加わったと思っていただけるといいですかね。
①ミッションカード
ミッションカードには「イージー」「ノーマル」「ハード」の3種類合計39枚があり、1ゲーム中に12枚を使用します。そして、ゲームの難易度に応じて、それぞれ何枚使用するかが決定されています。
奉行ははあ、難易度はこっちで調整しろってことだな。
与力ですね。「イージー」のミッションはプレイヤーが有利になるよう作用しますが、「ノーマル」以上は、その……。
奉行どうせツラいご命令のミッションでひどい目に遭わされるんじゃろ。
与力ご明察です。はい。
奉行はあ、やれやれ。命令1つで塹壕から飛び出して敵の機関銃陣地に突撃させられるところまで再現されるようになったか。
②アクションの増加
プレイヤーが選べるアクションに、手札を1枚試練の山に戻せる「戦略的撤退」と、スピーチトークンを場に返却する「終わりなきスピーチ」が追加されました。
奉行手札は引いてきてしまうと自分が処理するしかなかったのが、他のプレイヤーに引き受けてもらえるようになった、という解釈か。
与力手札の管理が若干やりやすくなりました……かね?
奉行『スピーチトークン』は、トークンを消費して脅威の要素を1つ指定すると、それ以外のプレイヤーたちは、その要素を含むカードを持っていた場合1枚捨てられる、というやつだな。多人数プレイの場合、トークンは使い切りだったが。
与力あえて使うほどではなかったとき、将来のリーダーに残せるようになったのは、結構大きいですね。
奉行でもスピーチで要素を指定しても、かなりの確率で外れるんだよな、わし……。
③幸運のお守りの回復
ミッションの成否に関わらず、サポートを受けるプレイヤーは、必ず『幸運のお守り』を回復できるようになりました。
奉行ああ、これは大きいな!
与力各グリッズルドに割り振られている、特定のアイコンのカードを1枚捨て札にできる特殊能力ですね。
奉行基本ではサポートを受けた時、「自分に割り振ってある苦難カードを2枚捨てる」か「お守りを回復する」かの選択だったからな。同時に恩恵に預かれるようになるとは。
与力しかもミッション失敗の時には、苦難カードを1枚捨てることしかできませんでしたからね。
奉行強力だけども中々回復できなかったお守りが、より使いやすくなったのう。
④士気低下の上限
ラウンドの最後に、「残り士気」の山札から「試練の山」の山札へ移動してくるカードの枚数がプレイヤーの残り手札に関わらず最低3枚、上限6枚となりました。
奉行ほおおお、手札ゼロでも3枚は必ず移動してきていたが……。
与力手札が何枚残っていようとも、6枚が上限になりました。これで速攻敗北のケースが減少するかもしれません。
奉行まあ確かに、5人プレイで各人に4枚配ってスタートしたラウンドで思いっきりコケた時は、士気がガタ減りしてどうしようもなかったからな。
与力手札が残り過ぎてもそう悲観するものではなくなった、ってことですね。
どうも、新兵のカーマインです(嘘)
与力で、我々は2人プレイで遊ぶのですが、『ご命令どおり!』には2人用ルール「デュオ!」が用意されています。
奉行ほお。ではあのランダムにサポートタイルを投げてくる従軍神父はお役御免になったのかな。
与力牧師ですね。彼はいなくなりましたが、代わりにその強化版の「新兵」が我々にくっついてきます。
奉行ふむ、ルーキーが一緒について来るのか。よかろう、足を引っ張らぬように頑張ってくれい。
「デュオ!」ルールで参加するNPCの新兵は、取り除かれることのない苦難カード「新兵」がついてまわるグリッズルドです。彼らはNPCなのでリーダーになることはなく、その行動はリーダープレイヤーに一任されます。また、スピーチの効果は適用されません。
奉行そこまで聞くとあまり役に立たないような気もするが。
与力新兵の試練カードは、配布後に即オープンされるので、公開情報なんですよ。そこでスピーチの効果が適用されたら、ちょっと強すぎますね。
奉行確かにそうだな。で、他に特徴はあるのかね?
与力撤退の時、サポートタイルをランダムに選ぶんですが、選んだ後にこれも即オープンされます。つまり、新兵が早めに撤退するほど、サポートのターゲットをコントロールしやすくなる、ってことですね。
奉行ははあ。いかにベテランが新兵の面倒を見て先に逃せるか、ってとこじゃな。よし、ではやるか。
与力あ、あと「デュオ!」では、新要素の『戦略的撤退』ができないです。そこもひとつ。
奉行おう、忘れそうなので、ゲーム中に注意してくれい。
奉行なんじゃこら。いきなり戦況が厳しいじゃないか!
与力毎ミッション開始時、リーダーはミッションカードの山から2枚を引き、そのうちのどちらか1枚を選んで適用するのですが……。
奉行2枚ともマイナス効果で、マシな方を選んだ結果がこれか。
与力左様でございます。トホホ。
ミッションカードの効果は、基本的にそのミッション中のみ適用されますが、まれに累積するものもありますので、注意が必要です。
奉行引けども引けどもミッションカードが全部ノーマルで、全然恩恵を被れない。そしてそろそろ限界が見えてきた。
与力こうなったら、最後の大勝負に出るしか!
奉行やってくれい! でも、それ選ぶ時点でもう負けな気がするんだよ、映画とかだったら。
与力この『決死の攻撃/最後の抵抗』を選択したら、どちらを選んでも基本試練の山の山札を全て配り切り、このミッションで全て出すことができれば勝利、なのですが……。
奉行「最後の抵抗」を選んだ場合には、4枚めの脅威がオープンされるまで負けることはないから、大分無理して戦えるのであったな。代償として勝っても全員KIA(戦死/Killed in action)ってことになるが。
与力しかしこのカードでは到底無理なので初戦は敗北ですね。実りませんでした。
奉行うん……実に……ミッションカードがひたすら辛さを増す、にっちもさっちもいかない敗北であった。
与力これ、本当にチュートリアルモードだったんですかね。
奉行と、まあ嘆いていても仕方ない。いざ再戦。
奉行という訳で、2度目は新兵のサポートやお守りを上手く使うことを意識したら、勝つことができたな。
与力まあ、確かに勝利はしたんですけど……。
与力どう考えても、戦後は故郷で後遺症に悩まされつつ生活をすることになりそうです。
奉行まこと、戦争などするものではない。得難い教訓だ。
『グリッズルド拡張 ご命令どおり!』【ここがイカス!】
奉行もはや打つ手が無くなって死を待つのみ、みたいな状態でプレイヤーの戦意が喪失する、という、ただひたすら辛い状況が減る方向にルールが調整されたなあ。
与力まずは『幸運のお守り』が使いやすくなったのは大きいですよね。
奉行エリクサーのように、出し惜しみしても勝てるタイプのゲームではないから、これは嬉しかった。
与力後は、手札の管理がどうしようもなくなる局面が減ったとかでしょうかね。
奉行うん、プレイ人数が増えれば『戦略的撤退』や「士気低下の上限が決まったこと」などの恩恵はより受けられようと思うのだ。我々が二人で遊んでいるのが悪い。
与力まあ、今度なんとか機会を作って遊びましょうよ。拡張の目玉になる『ミッションカード』はどうでしたか?
奉行基本ほど五里霧中、暗中模索でない感じになったな。イージーのミッションカードに恵まれれば、相当プラスに働く。が、ノーマル以上のミッションカードは、辛い……。
与力思ったよりも、あるいは「やっぱりグリッズルドだった」的に辛かったですね。確かに。
奉行だが、基本セットでプレイしている場合は比較的平板、つまり常に変化しない一定の戦場だったのが、ミッションカードによって色々なバリエーションを持つようになったのは、非常に良いと思う。1回ごとにゲームの違いが出て、チャレンジし甲斐があるし、リプレイ意欲も高まるんじゃないかな。
与力あと、イージーのミッションカードは、プレイヤーへに有利になる要素が『クリスマス』しかなかった状況を考えると、ホント有難いですよね。
奉行まあその分、ハードのミッションカードとか、一見するとどうすりゃいいのかという様相だな……このハードミッションを嬉々として遊ぶ人、あるいは勝てる人は歴戦のベテラン兵を名乗れると思う。
『グリッズルド拡張 ご命令どおり!』【ここはちょっと……】
奉行誰だ誰だ誰だ! 少し難易度が下がる部分があるという説明を、わしにしたのは!
与力私ですね。他にいませんからね。
奉行「お前はグリッズルドを舐めているのか?」って言われそうだが、わしは断固として主張する。十分手ごたえがあるぞ! 相変わらず辛酸をなめ汚泥にまみれて戦うゲームであった。
与力塹壕戦は本当にきついんですよ。
奉行だったら最初からそう言ってくれ。嫌な予感がしたから無理せずイージーで始めたが「まあ、とりあえず様子を見てイージーでいいんじゃないか?」で始めたのに、あんなにどんよりするとは思わなかった。
与力初回はミッションカードの混ざり具合の問題もありましたよ。
奉行誰がセットアップをしてくれたんだったかな。
与力私ですね。他にいませんからね。
奉行というわけで、ミッションカードはよく混ぜよう。奉行との約束だ。
与力当方、2回目以降はヒンドゥーシャッフル(編集注:日本でごく一般的に行われるシャッフル方法。トランプをシャッフルする場合、多くの人がこの方法を用いていますが、案外、混ざりづらいので偏りが発生しがちです)をやめて、ディールシャッフル(複数の山ができるように1枚ずつカードを配り、配り終えたら山を重ねて1つにまとめるシャッフル方法。偏りが少ないものの、シャッフルに時間がかかる)にしました。
奉行ノーマルのミッションでも状況はキツくなるからな。バランスよくイージーも出てきてほしかった。まあ、そのままならなさが戦争っぽさ、と考えたらテーマ的にはありなんだが。
与力あとはどうですか?
奉行我々の問題として、組み立て式の大きなコマ。せっかく付随したのに、ついプレイを焦るあまりに動かすのを忘れすぎたとか色々反省点はあるが……まあ、真綿でじわじわ首を絞められる状況から脱出を果たす、という元々のプレイ感はそう大きく変化していないから、そこを気に入っているかいないか、だな。
与力一発大逆転などはほとんどなく、ただただ「忍」の一文字な展開になりやすいですからねえ。
奉行そのプレイ感を気に入っているのなら、ゲームに変化を付けてくれるこの拡張は入れるべきだと思うなあ。細かいところの調整が効いているし、難度も調整できる。
与力多人数プレイでの感触はどうなるか、試す必要もありますね。
奉行うむ、是非やってみよう。
与力冷静になってみると、「デュオ!」の新兵は相当便利ではありますね。
奉行早めに撤退させることを心がけておけば、有用なオプションではあるよな。
与力むしろ我々の方が右往左往して新兵っぽかったですね。