『グリッズルド』を遊んでみた
例えば『ジョニーは戦場へ行った』とか
奉行第一次世界大戦か……なんとなく、イメージがわきづらいな。
与力あらそうですか。よろしければ参考図書など推薦させていただきますが……。
奉行お主の推薦図書はたいてい「難しいか、辛いか、あるいはその両方」のどれかだから遠慮する。よいからゲームの説明に入ってくれ。
『グリッズルド』では、プレイヤーはフランスの(たぶん)地方の村から総動員命令によって徴兵された、幼馴染同士のおじさん兵士となり、戦争中に起きる数々の困難を協力して乗り越え、無事に終戦を迎えることを目指します。
奉行ふむ、このゲームのタイトルは何やら聞きなれぬ言葉じゃが、「白髪まじりの」とかという意味か。つまりなんだ、本来、徴兵対象にはならないはずだった高齢者たち、というわけだな。
与力ええ。ちなみに説明書にある1914年8月ですが、フランスではポワンカレ大統領が議会で「神聖なる団結のもと、兄弟のごとく一体となる」ことを呼びかけ、挙国一致体制が本格化した時期で、その時の戦況としては……
奉行あー、あー、で、セットアップはどのようにするのであるかな。
プレイヤーは、6枚のグリッズルドカードから1枚を選び、自分の前に置き、サポートタイル3枚を受け取ります。続いて試練カードをよくシャッフルして、決められた数だけ抜き出し、平和カードの上に置いて、「試練の山」とします。残りは記念碑カードの上に置かれ、「残り士気」となります。スピーチトークンは、この2つのカードの山の間に、プレイヤー人数ごとに決められた個数だけ置いておきます。最後にスタートプレイヤーを決定したら、ゲームの準備は完了です。
奉行で、我らは2人プレイゆえに、少々ルールが変わるのであったな?
与力はい。仮想プレイヤーである牧師が登場し、サポートタイルをランダムに出す役割を担当することになります。あと、試練の山がちょっと枚数少な目になってますよ。
奉行それから毎度毎度のことだが、2人以上のプレイ感想をお求めの方には大変申し訳ないが、ご容赦いただきたい。
『鋼鉄の嵐の中で』
奉行で、何をどうすれば戦争を生き抜けるのだな。
与力簡単に言いますと、「残り士気」の山が尽きて記念碑カードが完全に見えてしまう前に、各プレイヤーの手札も含めた「試練の山」を0枚にして平和カードが完全に見えるようになれば、勝利となります。
奉行記念碑って、想像すると意外とえげつないな。よし、では、実際にゲームを進めていこうではないか。
ゲームはミッション(いわゆるラウンド)ごとに成否を決定し、進行させていきます。ミッションの一番最初に、ミッションリーダー(いわゆるスタートプレイヤー)は、試練の山から適当と思う枚数のカードを、全プレイヤーに時計回りで配っていきます。手札を持ち、手番が回ってきたプレイヤーは、次の4つのアクションから1つを選んで実行します。
①試練カードを1枚プレイする。
与力減らしたい試練カードを出します。端的に言うと、「敗北条件を満たさないようにしつつ」手札を限りなくゼロに近づけていきたいんですね。
奉行ふむふむ。どうにもよくない内容のカードばかりだが、そういうものか?
与力悲しいけど、これ、戦争なんですよ。
試練カードには戦場の状況である「脅威」と、極限状態での精神状態「苦難」の2種類があります。
与力「脅威」はプレイヤー共通の場所である、テーブルの中央に出します。で、カードには「どんな脅威か」が絵で示されています。全部で6種類ですかね。
奉行えー、「夜」「雪」「雨」。そして「砲弾」「笛」「ガスマスク」か。
与力はい。で、同じ「脅威」が描かれているカードが3枚、場に出てしまうと、そのミッションは失敗となります。
奉行なるほど。まあ注意しておれば大体大丈夫ではないか。
与力そんな時にやってくるのが「トラップ」込みのカードなんですね。
トラップのシンボルが描かれている脅威カードを出した場合、そのプレイヤーはただちに試練カードの山から1枚引いてプレイしなければなりません。
奉行ランダム要素か……厄介な! それならば「脅威」が2枚だから全然余裕、というのも考え物になってくるわけだな。
与力戦場で一寸先は霧の中なのですよ。
「苦難」は、自分のグリッズルドカードの横に配置します。このカードは継続的なマイナス特徴をグリッズルドたちに付与してしまいます。行動が制限されるもの、特定の脅威の効果が強化されてしまう(2枚でミッション失敗)になるなど、基本的に大きな足かせになるカードです。
奉行厄介だなー、この「苦難」というやつも。
与力「苦難」も敗北の条件の1つなので、あまり溜め込みすぎると良くないですよ。
奉行かなうことならば、当然何枚も背負いこみたいとはまったく思わんぞ。
②幸運のお守りを使う。
6枚のグリッズルドカードには、それぞれ四葉のクローバーと共に、1種類ずつ「脅威」の絵が描かれています。手番時に、この「幸運のお守り」を使用すると、すでに場に出されている「脅威」の中から、お守りと同じ種類の描かれたカードを1枚取り除くことができます。
奉行ほっほう。ただの老兵集団かと思えば、なかなかの特殊能力ではないか。ん?
与力ですが、このお守りは1回使ってしまうと無くなります。グリッズルドカードを裏返して、お守りの描かれていない面にしてください。
奉行うぬ、使いきりか、これは?
与力後で出てくる「サポート」の結果次第では、また使えるようになる、かもしれません。
③スピーチ
ミッションリーダーになった時、プレイヤーはスピーチトークンを1個もらえます。このトークンを消費してスピーチを行ったプレイヤーは、6種類の「脅威」のうち、1種類を宣言します。スピーチを聞いた他のプレイヤーは、自分の手札の中から宣言された「脅威」を含むカードを1枚だけ捨てることができます。
奉行ほっほお、これは便利な……。
与力ただし、スピーチした当人は捨てられないことと、スピーチトークンは使い切りですので、考えて使っていきたいですね。
奉行2人プレイだとゲームから除外ではなく、山に戻るようであるがな。
与力それだけ過酷ってことでしょうね。あ、あと次で説明する「撤退」をしてしまっているプレイヤーは、スピーチの恩恵に預かることはできませんよ。
④撤退
手札を出すのを止め(あるいは手札が0になったので)、ミッションから離脱します。この時、手元にサポートタイルが手元にあれば、他のプレイヤーに見せないように1枚選んで、グリッズルドカードの上に載せておきます。
与力撤退したプレイヤーは手札はそのまま持っておきます。あと、サポートタイルが手元にない場合も、自由に撤退できます。
奉行しかし、撤退するとそのミッション中にはもうなんのアクションもできんのだな?
与力そうですね。ただ、撤退したプレイヤーのグリッズルドにくっ付いている「苦難」の効果は、そのミッションには適用されなくなるんですよ。だから、ちょっとだけ戦況が楽になる、かもしれません。
奉行あー、例えば特定の「脅威」に弱いトラウマとかを発症しているプレイヤーを先に逃がして、他のプレイヤーは踏みとどまって手札を消費していく、とかができる、と?
与力そうです。うまいこと逃げる順番を決めていきたいところですよね。
『パレーズ・エンド』
ミッションは以下の場合に終了します。
- 全てのプレイヤーが撤退を選んだ場合。
- 同じ脅威が場に3つ置かれてしまった場合。
与力①の場合にはミッション成功でございます、おめでとうございます。場に出ている「脅威」カードはすべて捨て札になりますね。
奉行②の場合は、失敗ということだな。
与力失敗した場合には、場の「脅威」カードは、試練の山に戻ってしまいますよ。
奉行辛いなあ。まことに辛い。
与力それから成否に関わらず、残った手札と置かれている「苦難」カードはそのまま次のミッションに持ち越しです。
奉行ぐええ。
続いてサポートタイルを確認します。撤退の際に置いたタイルをオープンして、その内容を全員に見せて、「誰にそのタイルを渡すのか」処理していきます。
与力タイルは「左隣、あるいは右隣のプレイヤーに渡す」「2つ左隣、あるいは2つ右隣のプレイヤーに渡す」の4種類があります。
奉行うむ、皆でコーヒーを回し飲みしておる……かどうかは知らんが、とにかくタイルを渡すわけだな。
与力で、「誰か1人だけ、他の誰よりもタイルを受け取ったプレイヤー」がいたら、そのプレイヤーは、自分のグリッズルドの「置かれている「苦難」を2枚まで捨てる」か、「使用済みの幸運のお守りを再使用できるようにする」か、選んで適用できます。
奉行おお! だが、単独最多がいなかった場合はどうなる?
与力その場合は何も起こりません。タイルが移動するだけですかね。あと、そもそもミッションに失敗していた場合、最多タイルのプレイヤーは「「苦難」カードを1枚捨てる」しか選べないです。
奉行ミッションを成功させて、かつタイルが1人のところに集まるように皆で察していく……。
与力プレイヤー感の意識の共有が大切ですね。
『西部戦線異状なし』
以上の処理が終わった後に、次のような状況が発生していた場合、ゲームは終了します。
- 「苦難」を4枚以上置いているプレイヤーがいる。→敗北
- 「試練の山」カードが0になり、全プレイヤーの手札が0である。→勝利
奉行勝敗が付かなかった場合には次のミッション、というわけだな?
与力はい。ただし、ここで士気の低下が発生します。
奉行なんと。左様な処理が待ち受けておるか。
次のミッションへ入る前に、まだ戦争を続行できる気力があるかどうかを確認します。プレイヤーの手札として残っているカードの枚数を数え、その合計と同じだけ、「残り士気」の山から「試練の山」へカードを移します。
与力この時、手札合計が3枚より少なくても、最低3枚は必ず移動してきます。
奉行ゆるやかな気力の減退、といったところかのう。で、これ、「残り士気」が0になると……。
与力ええ、記念碑カードが見えてしまうので、もしもこの処理の際にそうなってしまったら、ここで敗北ということになります。
奉行なるほど、特定の1人が「苦難」に負けてもいかんし、戦争が長引いて全体の士気が尽きてしまってもいかん、そういうことなのだな。
与力まこと、戦とは難しいものです。
というわけで、二人でプレイしてみました。
奉行うるさーい。わしがリーダーだから、ここでスピーチするぞ……どれにしたものか。うむむむ、「夜は怖くないぞー!」
与力怖くない! でも持ってません!
奉行うぐぐぐ……!
すったもんだ、色々ありましたものの……。
奉行……難しい。実に難しい。何とかしてカードを出したくないが、出さねば士気が尽きる。そしていつ「苦難」に陥るかもコントロールしなければ……。
与力えっと、休戦は1918年の11月11日のことですね、パリ近郊のコンピエーニュでドイツ新政府代表団と……(以下、延々と)。
『グリッズルド』【ここがイカス!】
奉行まあ、どうにか勝てたわけだが。要は「同じマークのカードを出してはいけないよ」ということなのだが、まあ上手いこと戦争っぽくできているな。
与力徐々に追い詰められていく感じはなかなかですね。
奉行カードの山の残り少なさとか、苦難カードでおかしくなっていくさまとか……。
与力基本、辛いですよね。コーヒーとクリスマス(「苦難」を1枚取り除けるカード)がわずかな楽しみで。
奉行こんなのもうやってられん、となる感じがだんだんと出てくる。
与力しかし生き残るためには頑張らないといけない訳で。
奉行ま、そうだな。2人プレイの場合、サポートタイルがどちらにいくかはランダム要素なので、そこにあまり期待しすぎず、スピーチをどんどん使っていった方がよいように思うな。
与力その辺り、やはり3人以上が推奨プレイ人数になってくるでしょうかね。
奉行だな。できれば4人以上で戦いに挑みたいところだ。意思統一が上手く取れた時など、相当な達成感を得られそうだぞ。
『グリッズルド』【ここはちょっと……】
奉行一にも二にもテーマだな。第一次世界大戦というリアル戦争を色濃く想起させるゲームを、どう捉えるか。
与力デザイナーさんも真面目に考えて作ったことは、説明書からわかりますね。
奉行だから人によっては拒否反応が出るかもしらん。
与力他はどうですか?
奉行スタートプレイヤーの決め方はちょっとなんだなあ。
与力「一番毛深い人」ですか。
奉行あんま人に言いたくないだろ、そんなの。
与力それを開陳できるくらいの仲の人と遊んでくれ、ってことじゃないですか?
奉行「友情は戦争より強し?」という副題も付いていることだし、そういうことなのかな。
与力あとは協力ゲームならではの問題ですか。
奉行奉行に就任する人が現れるかどうかはしらんが、サポートタイルとか手札の中身とか、秘密にしておく情報はしっかり秘密にして進めないと面白さは三割くらい減るだろうから。
与力協力ゲームならではの「情報の限定」は、しっかりやりましょう、ということですかね。他には何か?
奉行説明書の11ページ、若干印刷がずれとる。個体差ならいいが、文字とカッコが被っているな。あと、プレイヤーエイドのサポートのところ。ここだけ見ると、サポートタイルが上手く誰かに集まるかどうかがミッションの成否を決める、と読めてしまう。
与力重箱の隅を楊枝で洗う、というやつですね。
奉行だな。ルールはしっかり説明書を読もう。
奉行第一次世界大戦を感じる作品って、あんまり見ていないなあ。だがお主、『西部戦線異状なし』は、ドイツ側の話ではなかったか?
与力イメージです。あくまでイメージ。
奉行あと、拡張は発売されると思うか?
与力期待したいですね、拡張も面白いらしいんで。
グリッズルド拡張『ご命令どおり! The grizzled At Your Orders!』の開封編はこちら。