小田原から愛を込めて内藤です
1550年8月 名推理がさえわたる
どうも、色々あって今回から小田原城の天守よりお送りいたします。武田家中老の内藤です。さて、お館様より新たな主命として「韮山城を攻略せよ」との命が下りました。韮山といえば伊豆の要衝、北条家にとっても早雲以来の大切な拠点。いやあ、まことに重大な任務ですなあ!
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馬場信春「昌豊殿、ちょっとちょっと」
え、なんですか。あ!馬場殿じゃないですか! どうしたんですか、こんなところで。
馬場「いや、その辺も含めて、前回の終わりと話が食い違っているように思われるのじゃが、途中の経緯が飛んでおらんか、と、そういうことよ」
あ、そうですか、説明不足でしたか。すいません。じゃあ改めて…
えっとですな、前回、今川の蒲原城を攻めろ、などというふざけた斬新な策を披露されたお館様だった訳ですが、まあこれが武田滅亡への序曲になりかねないのは先に語りました通り。これは何としてもお止めせねばなりません。
そうなれば、お館様が何を根拠に今川との戦に成算アリと判断されたのか。その謎を解く必要がありましょう。思うに、蒲原城にほど近いのは、この内藤昌豊の居城・中野城でありました。そしてそれがしの軍勢は、先の小田原攻めでほとんど兵を損じていない…。(ピコーン!)
謎は全て解けました。つまり、お館様はそれがしをあてにして、今川攻めをご決断なされたのです。ということは、それがしが今川領から離れれば、むしろ今、戦をしている北条領に近づけば、お館様は今川と新たに戦を始めるのではなく、北条との戦に決着をつける方向にいくのではないか…。
そう思ったそれがしは、早速小田原城への転封を願い出ました。これでそれがしの力をあてにしていた殿は、蒲原城よりも小田原城に近い玉縄城や韮山城攻略に考えを改めるはず!…と思ったところ、
武田晴信「よかろう」
ということで希望がかなった上に、主命も韮山攻めに変更。それがしの策が見事図に当たって今に至る訳です。
秋山信友「いやあ、それにしても小田原はいいですな。海が見えるし食い物も美味い(モグモグ)」
山本勘助「で、なぜ馬場様がここにおられるか、という話ですが」
ああ、なんか小田原城を頂戴したときに、小田原城代であった馬場殿以下四名が、それがしの寄騎としてそのまま残られたのです。ま、城のおまけ的な?
馬場「てめぇ調子に乗ってると、その月代、倍の広さににして本格的にハゲにしてやんぞ」
秋山「どうどう、馬場さま、ここは小田原名物の小田原かまぼこでも食べて落ち着いて」
このようにちょっと怖い部下になりますが、あらゆる面で頼りになる馬場殿は、今後それがしの右腕として大いに働いていただきましょう。はっはっは。
馬場「なんか腹立つな」
勘助「あまり気になさらず。小田原名物の梅干しはいかがですか」
1551年7月まで 味方と足並みをそろえる難しさ
韮山攻めのために力を蓄えよう…と思いましたが、小田原は流石によく発展した城下町を持ち、兵も多数集まる状態でした。そこで増えた部下たちにちょちょいと適当に命令を出して投資を行い、時間の経過を待てば戦支度は整います。
駒井高白斎「そうはもうしても、町の者や家臣の面々の要求に応えるのは、大分骨折りされたでござろう」
そうですな…って、舅殿がなぜここに?
駒井「婿殿よ、同じネタを二度使うのはどうかと思われますぞ」
そっすね。舅殿は深志城落城の際に捕虜となられたのですが、うまいこと解き放たれて甲斐に戻っておられました。そして馬場殿と同じ経緯で我が寄騎に加わられた、ということでございますな。
駒井「このような展開は想像もしてみませんでしたぞ」
まま、舅殿は安心して内政の一切をお任せできる方。それがしもまこと大助かりというものです。
馬場「韮山攻めで問題であったのは、むしろ後背の玉縄城であったな」
秋山「左様。北条綱成以下の兵が小田原奪還の機をうかがっておりました」
うん、小田原から兵力を西に振り向けると、その後ろを自動的に北条が狙ってくる状態。ですので、韮山攻めは短期間で終わらせる必要がありました。そこで用いたのが調略と懐柔。
小田原で十分な兵を動員できるようになるまで、韮山周辺の国人衆が北条に加勢せぬよう、懐柔工作を進める一方、韮山城の敵将・真里谷信隆を勘助殿が調略し、不戦に応じさせました。ここまでの準備に約一年。
馬場「えらくかかったのう」
まあねえ。韮山を速攻で落とすためには
・北条が攻めてこない程度の兵力を残しつつ
・韮山へ大軍を送り込む
ことが必要だったんですけど、小田原以外の各城の兵力回復に時間がかかりまして。特に八王子城なんか、うちが出兵したら一緒に出陣してスキを作りそうだったから、すごい怖かったですよ。他所の城代連中、絶対内政やってねえってカンジ。
しかし慎重な準備が実って、18000の兵を送り込んで攻め立てた結果、韮山は見事に武田の手に落ちた、と、そういう思い出話ですね。
秋山「今回はえらくあっさりした回顧でしたね」
えーっとねえ、部下が、特に優秀な部下が増えてくると、実戦とかは君ら部下任せでもよくなってくるから、それがし自身は全体の調整とかスケジュール管理的なことが業務の中心になってくるのよ。だから、ここから先は、割と1年単位の話になっていきそうよ。
秋山「そうなんですか?」
うん、なにせ武田家初の軍団長に任命されちゃったから。