『時代劇3600秒』を遊んでみた
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奉行藩の決裁担当。好きな時代劇といえば?「なぜか再放送を見て過ごしていた記憶から、とりあえず『暴れん坊将軍』。一時期はNHK時代劇が好きで『ぼんくら』『まんまこと』『ちかえもん』とか楽しみに見てたなあ」
与力藩の買掛担当。好きな時代劇といえば?「『長七郎江戸日記』。里見浩太朗先生が二刀流で、妙に豪華な衣装と、なんか無駄に走り回ったりするところとか大好きでした。あと、火野正平さんも」
いつの世にも悪は絶えない
奉行あー、これか。昔、お主にずいぶん付き合わされたのを思い出すよ。立派になったなあ。
与力ね、すごいですよね。ていうか、このゲームを出そうと思った数寄GAMESさんの決断力ですよ。
奉行「ゲームは面白がったもん勝ちなんだよ!」みたいなこのゲームをな。いや、実際そういうご存念で出されたかどうかは分からぬが。
与力ともかく、私は嬉しい。本当に嬉しいです。もうカード見てるだけで2時間はいけますよ。超パワーアップしてるし。何せこれ、本当に私がゲムマに足を運ぶ理由を作ってくださったゲームですからね。
奉行その熱い思いと共に、さっそくゲームを始めようではないか。……おぬしの話は長すぎるのでな。
ゲームルールは「身を切る思いで単純(説明書ママ)」になっているので、誰でも遊びやすくなっています。
まず、カードは各種類ごとに分けてよく混ぜます。そして各プレイヤーは、主人公札1枚、脇役札2枚を引き、最初の番組と登場人物を決定します。脇役札の残りは山札とします。
最初の事件として、事件札を3枚引いて表にして場の中央に置き、残りは山札とします。
イベント札、反響札はそのまま山札とします。
最後にゲーム進行を確認するため、時計札の「8:00」の場所にマーカーを1個置きます。これで準備は整いました。
奉行スタートプレイヤーはどうやって決める?
与力「いちばん最近に時代劇をみた人」がスタートプレイヤーですね。あと、このゲームの目玉システムの1つ「番組名ジェネレーター」を使って、一番面白い番組名をつけたプレイヤーから始める、という方法もデザイナーズノートでは紹介されています。
主人公札と脇役札、つまり番組の登場人物は、だいたいどこかの時代劇で見たことのある人であり、その由来である番組を想起させるワードが、カードの左上、右下に1つずつ書かれています。自分の手元にいる登場人物のワードを好きなように組み合わせて“分かりやすい”番組名を作れるのが、「番組名ジェネレータ―」です。
与力うーん、鬼平、鬼…。よし、じゃあ『エレキイモである』で。
奉行エレキイモ? 電気? イモが?
与力鬼の使いどころに迷ったんですけどもね。
奉行ではわしは…
奉行「名奉行うっかりが斬る!」かな。
与力大岡越前がいるのに、うっかりが実は奉行だ、という設定ですか?
奉行それは三匹の方だが…。ともあれ、このジェネレーター、毎回すごい盛り上がるのだが、ゲームの勝敗には…。
与力ルール的には一切全く関係無いです。はい。
奉行でも、とても重要な手順なのだよな。
親分、てぇへんだ、てぇへんだ!
『時代劇3600秒』は時代劇の進行をなぞるようにゲームが進みます。各プレイヤーは番組開始から10分ごとに劇中におきる何かしらの事件を解決していき、8時40分にはクライマックスシーンを迎え、放送終了後の8時50分に番組視聴率を算出する、という形で勝敗を決定します。
与力ですので、どのプレイヤーの番組も、基本的には5回盛り上がりがあるはずなんです。
奉行しかし”基本的には”、というのがミソではある。
与力場合によっては5回盛り上がらないこともありますからね…。
手番プレイヤーは、まずイベント札を引き、その記述内容に従います。そのあと、場に表になっている事件札から1枚、あるいは事件札の山札から1枚引いて、その事件を解決します。それが終わったら、次のプレイヤーの手番となります。
奉行これはうっかりの人がラッキースケベ的な展開があったと、そう考えるのが自然かのう。
与力間違って女湯に入ってしまうとかですかね。それじゃ『影の軍団』かなぁ。
奉行このイベント札には視聴率がついているから、最後の計算でプラスになるんだよね。
与力そうです。イベント札も引き次第も、勝利への要素の1つですね。
奉行さて、では事件解決といこうか…。
事件を解決するとき、プレイヤーは自分の番組の登場人物から1人、場に出ている事件札のうちの1つを選びます。これで「誰がどの事件を解決するのか」を決定する訳です。場に出ている事件札が気に入らなければ、パスをする、あるいは山札から1枚だけ引くこともできますが、引いた事件札は、必ず解決判定を行わなければならなくなります。
解決判定はダイスで行います。解決におもむく人物札の中段に書かれている「解決力」ダイスアイコンと同じ数だけ、プレイヤーはダイスを振ります。そして手番プレイヤーの右隣のプレイヤーが、事件札に書かれている難易度のダイスアイコンと同じ数だけサイコロを振ります。お互いに1か6が出ているダイスの数を数え、くらべましょう。
数が多い方が勝利、引き分けならば互角で再勝負です。
奉行よし、"三匹"が"偽小判づくり"を斬ろう。こちらはサイコロ4個だ。それ(コロコロ)。
与力"偽小判づくり"は2個ですね。よっ(コロコロ)。あれ?
奉行ぐぬぬ、0対1だと。"三匹"が敗北したな。
与力これはあれですね、殿様とたこがまだ来てないうちに、腹を空かせた千石が何かに引っかかったパターンじゃないですかね。
奉行いかんな、番組名が変わってしまう…『名裁きうっかり』にしておこう。
登場人物の出入りがあった場合、番組名ジェネレーターを用いて番組名を付けなおしましょう。
このように、番組へのテコ入れなのか脇役札は追加で引くこともあり、戦力強化ができることもあります。与力はここで『必殺仕事人』の"かんざし職人・秀"を引き、そのまま"偽小判づくり"を倒させようとしましたが、なんと失敗。即座に脱落します。
与力うーん、友情出演かなんかだったのか。
奉行告知でもあったのかね。わからんな。しかしこの"小判作り"、強いな。
事態はこのあと急激に悪化。8時20分のターンで奉行は主人公の大岡越前を失い、番組名はついに『うっかり』、登場人物は八兵衛一人に。しかし、ここから番組は急展開、八兵衛は仲間を失った責任感からか、銘刀を手に入れ、黙々と修行に打ち込むというシーンが流れます。
与力それでもダイス3個なんですけどね。
奉行いいんだよ、ロマンだよ。しかしその八兵衛をして、40分のクライマックスシーンで謎の拳法家に敗れる、というな。
与力世は無情ですね。藤沢周平の世界みたい。
奉行うっかり八兵衛が出ていたのに、急に海坂藩の話にせんでくれ。それより、お主だよ。
与力の番組は8時30分から10分間の緊急地震速報が挟まるというハプニング。それでも長谷川平蔵が頑張り、火付け盗賊を捕縛。さらに平賀源内のエレキテルでパワーを得た平蔵は悪の忍者軍団を倒し、一応番組にまとまりをつけます。
奉行やはり主人公は温存しておきたいが、しかし平蔵を上手く使えたなあ。
与力属性“火盗”の相手には+3、そしてどの主人公も40分のターンにはダイスが増えますからね。お奉行は越前の早期脱落が厳しかったです。
奉行そうな。最後は誰もいなくなって江戸に小雪がチラつく風景で番組が終わったからな。
幸あれ、と願う吉宗であった
8時50分になったら、各プレイヤーは番組の視聴率を計算します。カード左下にピンク色のテレビアイコンがあるカードは、アイコンの数がそのまま視聴率となります。さらに、右下に「50分に反響札を引く」アイコンがあるカードは、反響札を引いて、その結果で視聴率を増減します。全ての視聴率を合計し、最高視聴率を取ったプレイヤーが勝利するのですが、視聴率10%を切ってしまった番組は、打ち切られてしまうので、プレイヤーは大変残念な気分を味わうことになります。
奉行お色気シーンは全然反応なく、八兵衛のうっかりがヤヤウケし、そして八兵衛が女スリの事件を解決したシーンが大反響…。
与力結果は7%…打ち切りですかね。うーん、確か八兵衛はこのとき銘刀を手にしていたはずですから…。
奉行やだよ、八兵衛がスリで試し斬りするとかのバイオレンスシーンは。そりゃ打ち切られるよ。
与力真面目に考えれば、主役も脇役も残っていなかったのがきつかったですね。
与力人物で4%、事件が反響札の効果で14%、合計18%ですかね。
奉行めしを食っているシーンに対して『ブルーレイで見たい』って反響、なぁ。
与力池波正太郎原作の時代劇なら、飯にはこだわりますから。
奉行どんな名演だったんだ。それともかく、再戦だ再戦。ダイスで1回しか勝てなかったのが敗因だからな!
与力なぜか私のダイスが強かったですよねえ。ほんと。
昨今剣術は商売なり
奉行これは互角の勝負になるんじゃないの?
与力うーん、飛天御剣流の人が出演するんですねえ。令和版って感じだなあ。
ところが奉行の番組はまたも出だしでつまづきます。番組中盤には動けない伝説の剣客に、早々と必殺技“天翔ける龍のナントカ”を打たせて事件解決を狙ったのですが、クライマックスシーンではない時間帯のこの人は強敵でした。
奉行ふ、福本さん! 強い…! 勝てない…!
与力最後はちゃんと斬られてくれると思うんですが…。私の今日のダイス、走り過ぎてますね。
さらに奉行の番組にはハプニング。8時20分のイベント札で出たのは「初版の事情で俳優交代」。木枯し紋次郎を捨て、新たな脇役札を番組に加えます。そこで出てきたのが…。
奉行いや、これはないだろ、おかしいよ! 俳優交代してないじゃない! 紋次郎が降板しただけだよ!
与力一人二役とは、大胆な配役だなあ。
奉行特殊能力的には上手く補完し合っているとはいえ…。なあ。予算があるのかないのか分からない番組になってきた。番組名は…『仕事商売』にでもしとこう。
与力どういう商売なんですかね。
一方の与力は上々の滑り出し。イベント札で問題2つの同時解決に成功。番組開始と同時に悪代官と吉良上野介を倒してしまうという雑な展開が気にはなりますが、強力な登場人物に助けられ、順調に悪を成敗する殺陣シーン満載の時代劇となります。そして…
与力おおっ、ジュリー! このゲーム最強の一角じゃないですか!
奉行ん、2は敵のターンがやたら長かったアレか?
与力そりゃ『魔神転生』ですがな。うーん、柳生十兵衛がいると心強いんだけどもなあ。
クライマックスシーン、奉行の中村主水が“よく見る悪役”演じる闇の仕事人を倒し、一方、与力の桃太郎侍は天草四郎を倒すことに成功します。
奉行すごいなあ、お主のはスペシャルドラマだなあ。
与力吉良上野介に始まり、天草四郎に終わる。1時間では収まらない超大作になりましたよ。いやあ、これは視聴率が楽しみ。
与力ぜ、全否定の嵐…。11%でギリギリ打ち切りは回避しましたけど…。
奉行ちょっと脚本に詰め込み過ぎたんだろうな。視聴者を置いてけぼりにし過ぎたってことだ。
与力まさか、ここで引きの悪さが出るなんて…。
奉行なんか材木問屋のシーンが超好評だったらしい。なぜだろう?
与力まあ「火事と喧嘩は江戸の華」と申しますしねえ…。
奉行視聴率は上々の22%。主役のパワーで引き寄せて貰ったんだろう。
『時代劇3600秒』【ここがイカス!】
奉行とにかくもう、『いい意味でのバカゲー』だよね。
与力いい意味での、ですか。
奉行ゲームの完成度とかゲーム性とかは置いておいて、まず、ゲーム体験が面白いかどうかっていうね。そこにフォーカスが当たっているように思う。
与力ゲームとしては箱裏にも「運ゲーです」と書いてあるように、ダイスと『反響札』の運次第ですものね。
奉行その要素だけを聞いたら微妙じゃん? でも、そこに力いっぱい時代劇というフレーバーが加わって。振り切った、思い切ったことをやれるっていうのが、同人イベント・同人ゲームの強みだったと思うのよ。今回はそれのリメイク作品だけれど、同人の頃の良さを、ほぼそのままリメイクした数寄GAMESさんは、本当にすごい。
与力まさしくその通りですね。
奉行だってさあ、今回の2戦目みたいに「どれだけ理想的にゲームを進めても、反響札一発で苦労が瓦解する」とか。ここだけ聞くと理不尽でしょ。
与力昭和のバラエティー的ではありますよね。「この問題に正解したら100万点です!」みたいな。しかし、痛快娯楽時代劇が大好きな私としては、その感じが嬉しい。
奉行そうそう。このざっくり感が面白い。
与力それから時代劇のファン同士だと、ゲーム中の話も広がりますよね。「この作品ならそろそろ斬りあい」とか。戦いでの有利不利や、時間による能力の増減など、システムにもしっかり反映されていますが、なぜそうなっているのかが分かるとより面白い。
奉行イラストのレベルも高くて、「これはあの俳優さんだと思うから、〇〇年頃のリメイク版」とかそんな話にもなる。ゲームの無茶苦茶な展開にも、なんとか整合性を付けたくなったりしてな。
与力娯楽時代劇的な整合性だから、話しているだけで面白いんですよねえ。
『時代劇3600秒』【ここはちょっと…】
奉行少なからず本放送・再放送で暴れん坊やらJACやらを見ていたプレイヤーなら全然いけるだろうが、『水戸黄門』のタイトルくらいしか知らないようなボーイズ&ガールズって感じだと、キツいかもしらんな。
与力そうなりますかね、やっぱり。
奉行とにかく時代劇への愛とリスペクトを端々から感じる訳だよ、このゲームからは。だから『時代劇的なお約束』を踏まえつつ、それを打ち破るとんでもないハプニングが起きるのを楽しめた方がより楽しい。
与力余すところなく楽しめますものね。
奉行そこら辺に興味がないと「なんかバタバタした運ゲーだったなぁ…」で終わってしまいかねんよね。もったいない。
与力時代劇というジャンル自体が好きかどうか、が前提にありますかね。
奉行クトゥルフゲームなんかも、原作の小説類を知っていた方がより楽しめると思うから、それと同じか、もうちょい強く求められるのかもしれないね。例えば、「同じ顔イラストの敵が何体もいるのは、どういう意味があるんだろう」とかね。
与力「一週間のうち、同じ顔の斬られ役を何度も見る」という、時代劇あるあるですね。
奉行そう、日本一の斬られ役である故・福本清三さんを知ってたら「あ、今日も元気に切られておられる」となる。ゲーム展開が時代劇的にどう説明できるのか、みたいな面白がり方ができる方が、絶対いい。このゲームの一番こだわっていると部分の作りこみを逃すのは、もったいないと思うんだ。
与力確かにもったいないですが、結構ハードルが高くなってきましたね。
奉行運ゲーを楽しみたいなら、他にも色々いいのはあって、例えば『グリード』とか遊んでもいい訳でね。せっかくフレーバーがついているなら、その部分も楽しみたいじゃない?
与力ということで、遊び手・受け手も、心にしっかりとチョンマゲを結う必要がある、と。
奉行それはお主だけでいいんじゃないかな。
与力実際に結えと?
奉行それはなおさらお主だけでいいな。
奉行旧作と比べて、ちょっと主人公と脇役に出入りがあったよね?
与力少し調べてみましたけど、主人公は松平長七郎が抜けて、脇役から長谷川平蔵が昇格してますね。
奉行そういえば鬼平は脇役だったなあ。個人的に「なんで?」と思っていたから、納得。
与力脇役では眠狂四郎、榊夢之助、快傑ライオン丸など6人ほどいなくなって、飛天御剣流の人や脳外科医の人など6人が追加されてます。
奉行最近の時代劇のトレンドは抑えている、ってことなのね。だがなぜ里見先生が減ったかなあ。
与力話していたら、無性に時代劇専門チャンネル観たくなってきました。
購入はこちら「数寄ゲームズの通販サイト」からできそうです。