『小太刀(KODACHI)完全日本語版』を遊んでみた
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奉行藩の決裁担当。一番印象深い、忍者が出てくる物語と言えば?「真田太平記。単身で家康を襲おうとしたシーンとか、惚れ惚れしたなあ」
与力藩の買掛担当。一番印象深い、忍者が出てくる物語と言えば?「本格忍者アクション作品『影の軍団』ですね。千葉真一と真田広之、カッコいいですよ。次点で『燃えよNINJA』」
ニンジャのイクサはカラテあるのみ
奉行うーむ。まさかあの『忍者刀』がカードゲーム化されるとはな。
与力私もまさかの展開に驚いています。元のゲームは2011年ですから、実に8年ぶりの忍者ですよ。
奉行お主はいつでも「ニンジャニンジャ」言うておるから、そんなに昔だとは思わなかったわ。
与力それは置いておいて、やたらと重い雰囲気が漂う抜群の和テイストなイラストで、またゲームが楽しめるんですよ。さっそく準備しますね!
各プレイヤーは、「道場カード」10枚と、ゲーム開始時用の「技能カード」2枚を受け取ります。12枚のカードをよく混ぜて自分の前に伏せて山札とし、上から6枚を引いて最初の手札にします。
次に一番物静かなプレイヤーが親プレイヤーとなり、手裏剣マーカーを受け取ります。その他のプレイヤーは、時計回り(プレイ順)に決められたアイコンを持つ「護衛カード」を受け取り、初期の「宝」とします。残った護衛カードは、赤色の「上級護衛カード」と一緒によくまぜ、伏せて山札とします。これが「護衛の山」です。
裏に「道場」と書かれている「使者カード」「うわさカード」「技能カード」をよく混ぜ、伏せて山札とします。これは「屋敷の山」です。
最後に、氏族トークンをルールに従って積み上げます。これで準備ができました。親プレイヤーから手番を開始します。
奉行カードが多いなあ、なんか。で、わしらは忍者として何をすればよいのだね。
与力簡単にまとめますと、「屋敷に潜入して宝をゲットして勝利点を稼ごう」ですかね。
奉行大泥棒じゃないか、それじゃ。石川五右衛門の先取りか?
与力まあまあ。ともかく、順を追って説明いたしましょう。
アイサツは神聖不可侵の行為
手番が回ってきたプレイヤーは、
・屋敷への侵入
・カードの獲得
を順に行います。
与力屋敷への侵入がうまくいけばいくほど、カードを多く獲得できます。で、獲得したカードによって勝利点が手に入ったり、自分の山札が強化されたりします。
奉行なるほど、人の家を巧みに荒らせば、次の潜入が楽になっていく、という寸法だな。
与力その通りなんですが、それじゃ空き巣みたいですよ、お奉行。で、最終的には勝利点を一番多く獲得していたプレイヤーが勝ち、ということになります。
奉行なるほど。では早速張り切って不法侵入とまいろうではないか。
与力中々言えないですよね、「不法侵入しよう」なんて。
プレイヤーの忍者が屋敷への侵入を開始すると、「屋敷の山」と「護衛の山」から1枚ずつカードが表になります。この2枚のカードは、どちらも獲得できるカードになりますが、まずは「護衛の山」から出現した護衛をなんとか処理しなければいけません。
与力「忍者が侵入しようとしたら、護衛がいたのでコイツを何とかしないと宝に近づけない」というようなシチュエーションだ、と思ってください。
奉行うーん、「屋敷の山」から現れたのがお宝なのか?
与力それも宝ですが、護衛も宝になりますね。
奉行あれも宝だ、これも宝だ、か。ゴジラ映画みたいじゃのう。
与力“宝田明”とか言いたいんです? それは相当滑ってますね。
奉行うるさいな、ついだよ。出来心だよ。いいから先を説明せんか。
最初の護衛を見たあと、プレイヤーは今回の手番では“戦闘”するのか、“潜伏”するのかを選択し、手番を表す手裏剣マーカーを、対応する面にして置いておきます。以後、手番中は選択に従って手札からカードを出すことになります。
与力ちょっと分かりにくいんですが、「刀を抜いている忍者」が戦闘で、「抜いてない忍者」が潜伏を表すアイコンですね。
奉行ふむ、なるほどな。
与力護衛には戦闘・潜伏に対応した数字が書かれています。今回の武士の場合には、「どちらも5」ということですね。
奉行おう、このカード下部に書かれている数字じゃな。
与力で、戦闘を選んだ場合には「護衛の戦闘よりも大きい数字」、潜伏を選んだ場合には「小さい数字」を持つ道場カードを、手札から出せれば、侵入成功ということになります。
奉行上回れば相手を倒し、下回ればやり過ごせるのじゃな。
与力基本的にはそうなります。ただし、手番中は特別な効果を持つカードを使用しない限り、「戦闘・潜伏」を変更することはできないので、現在の自分の手札をよく見て、どうするかを考えてください。
奉行ちなみに、パスはできるのか?
与力いいえ、道場カードを出すのは“必ず”ですね。
ベイビー・サブミッション?
手番プレイヤーは、道場カードを出して侵入を成功させたら、さらに手番を続けるか、それともそこで止めるのかを宣言しなければなりません。
奉行おお、ここで「バンザーイ!」と叫べばよいのか?(『忍者刀』では潜入を続ける場合、「バンザイ!」といいながらカードをめくる)
与力いいえ、そのルールは残念ながらカードゲーム化に伴って削除されました。
奉行なんじゃと、ゲーム中にやたらバンザイの声が響き渡る光景こそ、『忍者刀』の本体だと思うておったに。
与力確かに、かなり独特なルールではありましたが…。ともかく、続けるならば、新たに護衛と屋敷の山からカードを引きます。止めるならば、カードの獲得へ進みます。
手番終了を宣言したプレイヤーは、今回表にして並べた屋敷カードと護衛カードの中から、侵入に成功した回数に対応した枚数まで獲得することができます。もしも侵入を失敗してしまった(必要な道場カードを出せなかった)場合には、カードの獲得を行うことはできません。
与力ここ、大切なんでちょっとまとめておきましょうか。
奉行よろしく頼む。
侵入成功回数 | 1―2 | 3 | 4 |
獲得できる枚数 | 1 | 2 | 3 |
(以降、侵入成功が1回増えるごとに獲得できる枚数が1枚増える)
与力そういうことなので、3回成功した私は最大2枚まで、並んでいるカードから選んで獲得することができます。ここで大切なのは、どちらを獲得するか、ですね。
奉行ふむ?
与力「護衛の山」からめくられた護衛カードは、獲得すると左上に描かれている「宝」になります。それで、この「宝」を支払うことで、「屋敷の山」からめくられたカードを獲得できるようになるんですね。
奉行ははあ。二段階になっているのか。獲得する時のコストは、カード下のアイコンか?
与力その通りです。例えばこの場合には・・・1枚目と3枚目の技能カードが「どの宝でもいいので1つ」、2枚目の赤いうわさカードが、「どの宝でも同じ種類を2つ」になりますね。
奉行ふむふむ。高いほど価値が高いのであろうな。
与力宝として獲得した護衛カードは、手元に4枚まで置いておけますので、今後の侵入で屋敷の山からめくられるカードを手に入れるために持っておくこともできます。
奉行貯蓄するのも選択肢、と。
与力逆に獲得して即座に使うこともできるので、この場合だと、私は「宝を1枚獲得して即座に支払い、技能カードを1枚取る」「宝を2枚取る」の2択になってくる訳ですね。
奉行うむ、分かった。で、獲得しなかったカードは全て捨て札になるのじゃな。
与力ご明察、なのですが、実はこのゲーム、もうワンクッション挟まります。
手番プレイヤーがカードを獲得し終えた、あるいは侵入に失敗し、場に残ったカードは、その他のプレイヤーが時計回りに1枚ずつ獲得するチャンスを得ます。選択肢は「護衛カードを宝として獲得する」か「手元の宝を支払って、屋敷の山のカードを獲得する」かです。
奉行ほほう! 他人の手番でも少しだけ自分も何かもらいがあるわけじゃな!
与力そういうことなので、是非他プレイヤーの成功・失敗を見届けてあげてください。
その後、手番プレイヤーは手札が6枚、手元に持っている宝(護衛カード)が4枚になるように調整します。手札の山が尽きていたら、使ったカードをよく混ぜて山を作り直してください。そして次のプレイヤーに手裏剣マーカーを渡します。
進入中、手札の状況によっては、戦闘も潜入も途中で思うに任せなくなることがあります。そこで突破口を開いてくれるのが技能カードです。技能カードは開始時に2枚が配布されていますが、侵入を進めていくことで、新たに入手し、山札の中に入れることができます。
奉行ハァハァハァ、この屋敷は警戒がやたら厳重じゃな!
与力解説が必要ですね、これは。お奉行は戦って護衛を倒すことを選択して侵入しています。カラテが試される局面です。
奉行フーリンカザンじゃな。
与力2人目の護衛に対して技能カードを使っています。左上のアイコンは「3の道場カードとして使う、あるいは出した道場カードの数値を±1できる」ことを示しています。
奉行わしは前者を選んだのだな。
与力このように、技能カードは「道場カードとして使う」ほかに、「道場カードの直後に出して追加効果を得る」ものや「手札を引ける」、「戦闘と潜伏を切り替える」などの効果を持つものが有ります。上手く使っていきたいですね。
奉行で、だ。問題は4枚目の護衛カードじゃな。
与力赤い護衛カードは上級護衛カードです。こいつらはだいたい難敵ですね。お奉行は2人同時に護衛が出現するカードを引いています。各護衛に1枚ずつ道場カードを出さねばならないので、お奉行は3の護衛に「2か4の道場カードとして扱う」技能カード、そして難敵5の護衛に対しては、5の道場カードに「数値を±1できる」技能カードを使い、6にして倒しました。お見事です。
奉行疲れるわ、こやつら。
技能カードのほか、屋敷の山から入手できる「うわさカード」「使者カード」も道場カードとして使えますが、それぞれ勝利点、氏族トークンに大きな影響を与えます。
勝ってメンポを確かめよ
屋敷の山からめくられるこれらの使者カードは、道場カードとして侵入に使うことができますが、同時にプレイヤーに氏族トークンをもたらします。プレイヤーは使者カードが示す氏族のトークンを山の1番上から1つ取り、手元に置きます。いずれかのプレイヤーが氏族トークンを4個獲得するか、氏族トークンの最後の1個が獲得されたら、親プレイヤーの右隣のプレイヤーまで手番を続けたあと、ゲームは終了となります。
与力得点計算は、まず自分のカード全部ですね。山札、捨て札、手札の全てを確認して、右上に勝利点が描かれているカードを探してください。
奉行ふむふむ…。
与力その数字を全て足し算して、さらに手に入れた氏族トークンに書かれている数字も足します。
奉行ほうほう。
与力うわさカードだけはちょっと特殊で、それぞれ指定の条件に当てはまっていれば勝利点を与えてくれる、という感じになります。たとえば「保有している使者カード1枚につき1点」とかですね。
奉行自分の手札の内容に合わせたうわさを持っているとよい、ということだったんだな。
与力そういうことです。
奉行忍者は色々考えることが多いなあ。
『小太刀』【ここがイカス!】
奉行まあその、『忍者刀』のもっともダイナミックな部分を切り取ってカードゲーム化できているな。
与力『バンザイシステム』は無くなってしまいましたが。
奉行行くのか? 戻るのか?という判断が非常に悩ましく、面白い。チキンレースだわな。
与力やることは単純に数字の大小比べですが、どうしてなかなかですね。
奉行ただ、カードを獲得して山札を育てれば、技能カードという名の忍法でゴリ押しできる局面が作れたりとかもできるし、ゲーム中に強くなっているのを実感できる。
与力デッキビルディング要素も楽しめると。
奉行そしてカードを獲得する元手となる宝の獲得や、屋敷の山カードの獲得も、自分の手番以外でも1回できるから、何かしら手は進むし、不運に見舞われてもギリギリついていける感じもある。
与力簡単に脱落しない救済策は用意されている、というところでしょうか。大事ですよね。
奉行各人の山札が強くなるにしたがってゲームテンポも早くなるし、悪くないゲームだよ。
『小太刀』【ここはちょっと…】
奉行髭の武将がこちらをにらんでいる箱を、ゲームショップで手に取ることができるか、というのがこのゲームの最大の難関ではないかな。
与力ひどいこといいますね。
奉行なんかほら、日本発信の和風ゲームって、もう少しファンタジーで細マッチョによるじゃない。
与力それは偏見では。『信長の野望』とかありますよ、本格武将が出てくるゲームも。それに「オッサンが箱絵のゲームにハズレは少ない」というじゃないですか。
奉行いやもう、わしらはウハウハで手に取るけれどさ。あと気になるのは説明書かなあ。ゲーム例が豊富に書かれているのはよいのだが、字が小さい。老眼が気になる世代としては、やや辛い。
与力それも難癖じゃないですかと突っ込みたいところですが、読むのが辛いと、内容が頭に入りにくいのは最近確かに実感しています…。
奉行あと、お主がまとめていたような、獲得できるカードの枚数みたいな一覧表の欲しい情報がまとまっていないのも気になる。
与力うーん。
奉行さらに言えば、説明書の最後3ページはカードの効果早見表なのだが、これはサマリーにして全プレイヤーに配布したいところだ。特にうわさカードの効果を把握していないと、獲得するべきかそうでもないのか、判断がつきかねる。
与力持ち主のゲーム前準備力が試されてしまいますか。サマリーがあったらありがたいですよね。
奉行まあ、デッキビルディングという育成要素と、チキンレースの分かりやすいギャンブル感が同居している手軽でいいゲームなので、なんかテーマ的にちょっぴり色物っぽく感じられたとしても、そこには目をつぶって、一度は遊んでもらいたいよな。
与力カードの引き運は相当にあると思いますが、遊びやすいゲームですよ。
奉行『忍者刀』の時から不思議だったが、忍者テーマでなんで舞台が平安時代なんだろうね。
与力忍者が一番活躍したのは確かに戦国時代ですが、その系譜は源義経であるとか、役行者であるとか、あるいは聖徳太子、孫子、徐福、黄帝と古代中国にまでさかのぼるとも言われていますから、平安時代でもいいんですよ、たぶん。
奉行お主の話を聞いておるとニンジャリアリティショックを発症しそうだわ。