電力会社 完全日本語版(ボードゲームプレイ感想編)

ボードゲーム愛好

『電力会社 完全日本語版』を遊んでみた

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【登場人物】

奉行藩の決裁担当。電力消費量がちょっと気になる電化製品と言えば?「食洗機。みみっちいが、乾燥を止めて拭いてしまうこともあるなあ」

与力藩の買掛担当。電力消費量がちょっと気になる電化製品と言えば?「デスクトップパソコンですかね」

僕らの街にも電気がくるよ!

奉行電力自由化の波がついにボードゲームにも、という趣向であるか。

与力無理に流行を取り入れるのは止めましょう。これ、2004年のゲームですから、全然前ですよ自由化の。新版の『デラックス』ですら2年前じゃないですか。

奉行まあそう目くじらを立てるな。これはわしの好きなゲームの1つであるゆえに。

与力ああ、興奮してるんですね。

奉行うむ。

ゲーム開始前の準備ですが、各プレイヤーは担当する色の都市コマ22個と50エレクトロのお金を受け取ります。続いて資源市場上に資源コマを説明書の通りに並べ、最初の発電所市場と発電所の山札を用意しますが、発電所はプレイヤー人数によって準備の仕方が変化します。

与力具体的には人数によって山札からカードを何枚か抜きます。で、ゲーム中は使いません。

奉行3から50まで数字を振られた発電所があるが、出てこない発電所もある、ということになるのじゃな?

与力左様でございます。それから最初の手順にもう1つ。ボードの写真をもう一度ご覧ください。

電力会社 POWER GRID ボードゲーム
ボード。

与力これはドイツマップですが、6つのエリアに区切られて色分けされているのがお分かりいただけるかと思います。

奉行おう、ドイツはまこと広い国だな。

与力そこ感心するんですか。それはともかく、これ全部使って遊ぶわけではないです。人数によって何色のエリアを使用するか、決めて遊ぶんですね。

奉行おっ、すると我らの電力会社が参入できない地域もある、ということか。

与力少人数で広すぎると、ただ棲み分けして終わりになってしまいますからねえ。2人で遊ぶ場合には3色です。

奉行ふむ。人数ごとの準備の違いについては、説明書をしっかりと確認せねばならぬな。

時代は……やはりエコ発電?

『電力会社』は、1ラウンドごとに5つのフェイズをこなし、さらにゲーム全体の展開によって3段階のステージ進行が発生します。

与力こう述べると面倒くさいように思われますが、1つずつ手順を確認しながら進めば、どうということはありません。

奉行遊び始めのうちは、説明書をよく見ながら先へ進んでいった方がよさそうだな。

与力まあ、「こうなった場合にはこういう処理」みたいなのがちょくちょくさし挟まってきますので、注意するに越したことはない、というのが偽らざるところです。

フェイズ1. プレイ順決定フェイズ

このラウンドにどのプレイヤーからプレイを始めるかを確認し、決定します。基本的には「現在自分の都市コマをボード上に配置している数」の順に、順番が決定されます。

奉行ふむ、やはりリッチマンが有利か。

与力どういう表現ですか。誰も都市コマを配置していないスタート直後の第1ラウンド以外は、その順番で決定します。第1ラウンドはじゃんけんとか適当に決めるみたいですね。

奉行確かに適当じゃな。まあ「最も最近発電した人」とか言われても困るが。

与力全員の都市コマを1個ずつ集めて袋に入れ、ランダムに引く、とかそういう類の決め方でもいいかもしれません。

奉行第2ラウンド以降、都市コマの数が同点引き分けだった場合にはどうなるのじゃ?

与力その時は「より大きい数字が書かれている発電所カード所持している」プレイヤーが優先されますね。

フェイズ2. オークション・フェイズ

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さて、どの発電所にしようか……

電力を生み出す肝心かなめの設備、発電所をオークションによって入手します。プレイ順に現在の発電所市場に並んでいる8枚のカードのうち、上段4枚の中から欲しい発電所を指定して入札します。同じ発電所が欲しい他のプレイヤーがいた場合には、競りを行い、より高い金額を提示できた方が入手します。

与力このフェイズは、全プレイヤーが「発電所カードを1枚入手する」か「自分のオークションをパスする」かするまで続きます。

奉行ほぉ、すると誰かと競りになって負けたからといって、発電所が手に入らん、という訳ではないのか。

与力はい。それから「発電所カードを入手できたプレイヤー」と「オークションの権利をパスしたプレイヤー」は、もう他のオークションに参加することはできません。

奉行むっ。つまりパスして後ろのプレイヤーの様子を見る、というのはできないのじゃな?

与力ですね。あと、発電所カードが1枚無くなるたびに、新しいカードが補充されるのですが、初期のカードより後で出てくるカードの方が大抵強力なんですよね。

奉行それが欲しいからと言って、パスを使って弱めの発電所を他人に押しつけるなよ、ということか。

与力そんなとこなんですかね。あと、全員がパスしてしまった場合には一番安い発電所を破棄して市場を変えるとか、いくつか注意点は有ります。

奉行詳しくは説明書をよく読むように、ということかな。そういえば、発電所の価格は……。

与力左上の数字です。その数字が大きければ大きいほど、(だいたい)強力な発電所です。それから、市場では常にその数字順にカードが並びますから……。

奉行安いカードがはけないと、高いカードは市場に出てこない、ということになるのか。

与力まだ市場が成熟していない、早まるなってことなんでしょうね。それから、発電所を持てる上限が2人プレイの場合だけ、4枚になってるのに注意です。

奉行ちょいちょい気を付けないといけないルールが有るなあ。

フェイズ3. 資源購入フェイズ

各プレイヤーは、資源市場表に配置されている各種資源を、資金が許す限り購入することができます。

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一番高いところはホントに高い。

与力注意点としては、このフェイズはプレイ順が逆回りになる、ということですかね。

奉行なぬ。最後のプレイヤーから購入を始めるのか。

与力はい。で、資金が許す限り何個でもなんですが、各発電所に書かれている「発電に必要な資源」アイコン×2個までが備蓄できる容量になります。

奉行あ、上限があるのだな。つまりだ。

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2つの発電所が並んでいますが。

奉行この状態だと、左の発電所は赤のウランを2個まで、右の発電所は黄色の資源ゴミを4個まで備蓄しておける、ということだな。

与力です。置ける発電所が無いのに購入することはできません。

奉行ふむふむ。買占めという訳にはいかんのだな。

フェイズ4. 建設フェイズ

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さあ、どんどん配置していくよー

各プレイヤーは、都市に自分のコマを配置し、自分の送電ネットワークの構築を始めます。最初の1個は都市に書かれている最も安い価格(10エレクトロ)となりますが、ネットワークはその都市が起点となるため、次のコマを置く場合には、起点から延びる送電線の配置コストが加算されていきます。なお、このフェイズもプレイ順は逆です。

奉行あー、置きたい都市にコマを置けばいい、最初の1個は10エレクトロ。2個目からは、1個目にコマを置いた都市から送電線の価格を加算していく、ということだな。

与力まあ、繰り返しですがその通りです。

奉行つまりだ。

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こういうところを抑えたい。

奉行エッセンに最初に配置したとすれば、周辺に2個目を置こうとすると、ミュンスターには16、ドルトムントには14、デュッセルドルフには12といった塩梅で配置することになるのか。

与力です。基本、「都市コマは独立して配置されることはない」と思ってください。1人のプレイヤーの送電ネットワークは1つしかありません。

奉行ちと難解な表現じゃったが、ようは全部つなげなさい、ということじゃろう?

与力ええ。仮に遠く離れた位置の都市にコマを置こうとした場合には、その間の送電網分の価格を全部合計して払わないといけません。

奉行そういうことにならぬと良いがのう。

フェイズ5. 収入フェイズ

各プレイヤーは発電所を使用して発電を行って都市コマを置いた都市に送電し、送電できた都市の数だけ、規定の収入を得ることができます。また、資源市場への資源供給、発電所市場の更新が行われます。

与力注意したいのは、発電所は必ずフルに動くってことですね。

奉行うん?

与力発電所の能力が高いからと言って、一部の資源だけを使用して限定的に稼働させることはできないんです。

奉行あ、例えば石炭3を消費して3都市に送電できる発電所を持っていたとして、石炭2だけを使って2都市に送電、とかはダメだということだな。

与力はい。発電所は動かすか動かさないかの2択ですね。

奉行発電所の能力が足りないので、送電しない都市があるというのはOKか?

与力それはOKです。その都市の住民の方々には申し訳ないのですが。

奉行あとで住民訴訟とかに発展せぬとよいのう。

以上の5つのフェイズが終了したら、次のラウンドへと進みます。

ステージ進行は自由化の波

与力さて、ステージの進行ですね。

奉行おう。ゲームスタート時はステージ1。この状態では、各都市には1人のプレイヤーしか都市コマを配置できんのであったな。

与力はい。で、ゲームが進んで誰かが規定以上の都市コマをボードに配置できたら……

奉行待て待て、そこもプレイ人数で変わってくるのか?

与力そうです。2人の場合には10個ですね。3人からだとぐんと少なくなるんで、気を付けたいです。

奉行だいぶ展開の速度が変わってくるものな。

与力で、置けたらですね、ステージ2になります。そしたら各都市の15と書かれているスペースにも都市コマを置けるようになるんです。

奉行つまり、2社目の電力会社が新規参入できる訳だ。ただ、コマを置くのが5エレクトロ高くなって15エレクトロとなるのだな。

与力さようです。ついでに、資源の供給量も若干変化してまいります。

奉行チェックすることが多いのう。

与力そしてステージ3なのですが。

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分かりやすいカードが出現する。

与力ゲーム開始時、山札の一番下に入れておいたこのカードが出現したら、ステージ3です。これが出たらゲームは終了に向かって一直線ですね。

奉行各都市3社目の参入(配置20エレクトロ)が解禁され、資源供給量が変化するほかに何が起きる?

与力発電所市場の扱いがちょっと変わります。今まではカード4枚×2の列を上下に作って、上側の4枚しかオークションに出てこなかったのですが、ここからは市場のカードは6枚に減るかわりに、どの発電所に入札してもOKとなります。

奉行おお、すると超強力で誰もが欲しいあの発電所なども、手元に来る可能性が高まるのじゃな。

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ゲーム開始時からは想像もつかない能力の発電所ばかり。

こうして第3ステージまでゲームが進行し、誰かが規定の個数(プレイ人数によって変化、2人だと21個)の都市コマを配置したラウンドで、ゲームは終了します。そのラウンドの収入フェイズで、最も多くの都市に送電できたプレイヤーが勝者となります。引き分けの場合、残り所持金額、置いていた都市コマの数の順で多い方が勝者です。

奉行ここがアヤなのだよなあ。勢い込んで都市コマ置いたと思ったら、発電能力不足で送電できずに負ける、という悲惨な事態は招きたくない……。

与力誰よりも都市コマを置くことは大切ですが、送電できるだけの発電所をしっかりと用意しておかないといけませんよね。

『電力会社』【ここがイカス!】

奉行競りと市場の更新、資源の需要と供給バランス、ネットワークの構築、ステージ進行によるゲーム展開の加速、どれを取っても面白いのだよな。

与力プレイヤー同士の思惑がうまいこと絡み合うようにできていますよね。先にどの都市を取るか、どの種類の発電所を中心にするか、とか。

奉行誰かが先行したとしても、資源と都市配置ではプレイが逆順になる辺りで、どうしても加速が止まるから、4人くらいまでなら割と団子状態になりやすいのではないかな。

与力なんとなくまだ勝てるんじゃないか、という感じで全員第3ステージまで入れたりするんですよね。

奉行そうだな。第1ステージで完全に脱落していくさまは、一度だけしか見たことが無いな。

与力あれは、お奉行が出口になる都市を全部封鎖してしまったせいですよ。

奉行ふふ。初期投資が安く済む都市を起点にした場合、利点を生かして早々に外へ伸びていかないと、周りを囲まれて逆に高くつくこともあるのは、要注意だな。

与力急にプレイTipsみたいなことを言い出しましたね。

奉行あとはそうだな、発電所じゃな。初期は資源コストの安い石炭、石油を使う発電所を購入することになるが、どこかでよりパワーが有る発電所か、ゴミか原子力を使う発電所に切り替えていきたい。そこの決断でミスると、高騰する資源価格に追われることになるか、ゴミや原子力に全員が集中して、資源の奪い合いになるし……。

与力いつになく饒舌ですなあ。

奉行個人的なマイベストゲーム(非協力系ボードタイプ)だから許してくれ。「どうすっかなー」と決断を迷う場面が常に付きまとってくるのは、なかなか面白い感覚だと思うぞ。

与力先行すべきか、様子見るか、買い占めるか、資金を貯めるか、いろいろ迷いは生じますね。

奉行戦略論まで発展しているガチゲーマーは迷うかどうかはしらんがのう。ていうか、上手い人のプレイを囲碁チャンネルみたいな感じで放送してくれないものかなあ。わしは見るぞ。

『電力会社』【ここはちょっと……】

奉行正直、各フェイズごとに色々と細かいルールが多いよなあ。

与力プレイヤー人数ごとに準備や条件が違うとか、これがこうなった場合にはこの処理をしてネ、とか、遊び始めのうちは「そんなルールあったの!?」みたいなことはありましたね。

奉行そこらへんがスマートではないと感じる人もいるかもな。大きなボードが出てくるゲームに慣れていない人にとっては辛そうだ。そして2人プレイは、それ以外のプレイヤー人数とは各種数値が異なるので、要注意だったな。

与力説明書に分かりやすい一覧表がありますから、要確認ですね。

奉行おしなべて、うっかり適用忘れが起きやすいと思う。できれば、出来の良いプレイエイドなどを手元に置きたいものだ。

与力自分で一通りまとめてみるのもよいでしょうね。

奉行あとはなんだ、紙幣か? お金のやり取りが頻繁に発生するが、ちと紙幣が安っぽく、取り回しが悪いように感じた。これは人それぞれじゃが。

与力手先が乾燥しがちな我々は、ちょっと使いづらかったですね。

奉行その場合はポーカーチップなど、代替品を使ってみると良いぞ。

与力でも、現時点(2018年12月)で一番の問題は入手性ですよね。

奉行『デラックス』が打ち止めになって久しいが、ここにきて吉報が届いたばかりだな。

与力この知らせには思わず叫びました。後もう、2人用ルール追加とかもう待ち遠しすぎて……。

奉行正座で待機しておこう。

与力今すぐ欲しいなあ、という場合には、ゲームストア・バネスト様が旧版の台湾版を時折入荷しておられるので、これを購入するのも手ですかね。(編集注:2019/6/7 下部に発売に関する情報を追記しました)

奉行そんな方法があるのか。ゲームプレイ上は、ボードの地名くらいしか言語依存は無いからなあ。

電力会社 POWER GRID ボードゲーム
新版『デラックス』では黄色のゴミは無くなり、天然ガスに変化したらしい。

奉行ジェリージェリーカフェさんの紹介を見ると、『デラックス』では、だいぶ遊びやすさが向上したようじゃな。

与力細かい配慮が感じられますね。ボードの進化はうらやましいなあ。

奉行でも、燃料の「ゴミ(廃棄物)」が変わってしまったんだな。ゴミ発電所が得意技のお主はちょっと寂しいであろう?

与力ですね。私の合言葉は「めざせアントン・ハイセル」ですから。

奉行それはブラジルマップでやってくれ。

2019/6/7追記 7月に発売決定!『電力会社 充電完了! 完全日本語版』

奉行きたああ!

与力きましたああああ!

奉行改めてみると「充電完了」って響き、いいよな。待ってた甲斐があった気がする。

与力いやあ、もう嬉しいです。この一言に尽きます。

奉行しかしあっという間に完売になってしまうのでは……?

与力ふふふ。もちろん抜かりはありませんよ。今、仕事の進捗に暗雲が立ち込めていますが、そちらはばっちりです!

奉行お、おう。そうか。大丈夫か……? まあ、ともかく楽しみに待とう。