エルダーサイン完全日本語版(原題『ELDER SIGN』)(ボードゲームプレイ記録編)

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『エルダーサイン完全日本語版(原題 ELDER SIGN)』を遊んでみた

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【登場人物】

与力藩の買掛担当。呪文や知識などを駆使する知性派スタイルでプレイすることが多い。が、相変わらずダイスには嫌われている。

奉行藩の決裁担当。「呪文の代償が怖い」とかたくなな肉体派。斧とウィスキーとタバコがあれば生き残れると信じている。

コンパクトに旧支配者と勝負

奉行舞台は世界でも国でも町でもなく、博物館内なのか。『エルドリッチホラー』と比べると、けっこう閉鎖空間での探索になるのじゃな。

与力そうですね。舞台設定は狭めではありますが、エンシェントワンとの戦いであることは変わりません。

奉行部屋の中であの連中に遭遇したら、一瞬で発狂しかねんぞ……。

エルダーサイン完全日本語版(原題『ELDER SIGN』)
探索する博物館内。

まずはゲームの準備です。冒険カード6枚を写真のようにならべて、博物館を表現します。アイテムやトークン類をそれぞれ種類ごとにまとめてこの周囲に並べ、だいたいの準備は完了です。

エルダーサイン完全日本語版(原題『ELDER SIGN』)
モンスターマーカーもお忘れなく。

トークン類ではモンスターマーカーだけ、適当な袋の中に入れて「モンスター袋」を準備しておきます。

奉行ほう、このゲームはボードを使わんのだな。

与力はい。ボード代わりに並べられた冒険カードは、クリアしたりイベントなどで入れ替わったり数が増減したりして、博物館内の異常現象を表現してくれます。

奉行なるほど。あとは我々が操る探索者と戦うべき敵を決める、と。

各プレイヤーは探索者カードの中からそれぞれ1枚を任意の方法で選び、カードに指示された初期装備を受け取ります。そしてボス敵となるエンシェントワンカードを、任意の方法で1枚選び出します。

エルダーサイン完全日本語版(原題『ELDER SIGN』)

奉行わしが担当するのは医者のビンセント。体力を回復できるのだ。

エルダーサイン完全日本語版(原題『ELDER SIGN』)

与力それがしはウォルターズ教授。ダイスの出目をいくらか操作可能です。

エルダーサイン完全日本語版(原題『ELDER SIGN』)
今回のボスは高い知名度を誇るニャルラトテップ。

奉行確か、森に放火すれば追い返せるのであったかな?

与力相変わらず、雑な理解ですねえ?

最後に神話カードをめくり、最初の神話的イベントを適用してから、ゲームを開始します。

奉行どうせろくなイベントではあるまい?

与力ご明察。基本面倒なことしか起きないですよ。

奉行で、プレイヤーはどうすれば勝てるのだ。

与力エンシェントワンカードのど真ん中に書かれている数字と同じ数だけタイトルにもなっている“エルダーサイン”トークンを集めることができれば勝利となります。トークンは、主に冒険カードをクリアした報酬として、手に入りますね。

奉行なるほど。そういう訳で我々は博物館内を歩き回ることになるというてん末であったのか。ちなみに、カードの右側のマークは何じゃ?

与力そっちは破滅トラックですね。それが全て破滅トークンで埋まると、エンシェントワンが復活します。

奉行お目覚めゲージか。増えぬように見ておかないとな。

ダイスの出目を揃えていこう

各プレイヤーの手番では、任意の冒険カード上へ探索者を移動させて冒険の解決を試みるか、博物館のエントランスへ移動して待機するかのどちらかを行います。

奉行基本は冒険の解決になるのであろう? そも、こんな博物館に入りたくはないが。

与力はい、その通りです。

エルダーサイン完全日本語版(原題『ELDER SIGN』)
冒険カードの例。いい笑顔の『館長』だが…

冒険カードには、アイコンの列が1-3列描かれています。探索者は緑色のダイスを振って、出目がいずれかの列のアイコンと同じになるように揃っていたら、その列は“成功”となり、ダイスをカードの上に置いておきます。続けて残りのダイスを振り、カードに描かれている列全てを成功させれば、冒険そのものが成功となり、カード下に描かれているアイテムと、冒険カードを報酬として受け取ります。

エルダーサイン完全日本語版(原題『ELDER SIGN』)
冒険者の武器はこのダイス。

与力注意したいのは、ダイスを振るごとに一列ずつしか成功させられない、ということですかね。一気に成功させることはできないのです。

奉行なるほどのう。揃わなかった場合にはどうなる?

与力冒険失敗として諦めてペナルティをくらうか、ダイスを1個捨てて、残りのダイスでもう一度チャレンジするができます。

奉行ははあ。チャンスは一度ではないものの、ダイスが無くなってどんどん手が狭まっていく、という寸法か。

与力最終的にアイコンの数よりダイスの数が少なくなったら、強制的に失敗ですね。

エルダーサイン完全日本語版(原題『ELDER SIGN』)
全て成功した図。

奉行しかし、緑色のダイスは6個しかあるまい。冒険カードによってはダイスが足りなさすぎる気がするが…

与力そういう時はアイテム、そして“フォーカス”“アシスト”、さらに“手がかりトークン”を使いましょう。

エルダーサイン完全日本語版(原題『ELDER SIGN』)
アイテムの例

探索者はアイテムを使用することで、「冒険カードによってはペナルティをくらう“恐怖”の出目が無い」黄色と、「どの出目としても使うことができる“ワイルド”の面を持つ」赤色追加ダイスを使用することができます。

また、失敗した場合、任意の出目のダイスを1個だけそのまま持っておくことができます。これが“フォーカス”です。一方、自分と同じ冒険カードの上に他の探索者がいれば、同じように任意のダイスを1個預けておくことができます。これを“アシスト”と呼びます。

与力フォーカスとアシストは、失敗したときに必要な出目のダイスを1個だけロックできる訳です。これでダイスの数が減っても、成功には少し近づけるという感じですか。

奉行ふむふむ。"手がかり"トークンというのは?

与力ダイスを振った後に消費すると、気に入らない出目のダイスを振り直すことができます。1個でも複数でも構いません。

奉行それは切り札的なアレだなあ。

与力以上が大体のところですね。他にも冒険カードによって、上の列から順に解決しなければならないとか、解決の時に体力や正気度を消費しろ、とか色々な指示が付いてくることもあります。そこをなんとかしてダイスの出目をうまいこと揃えて冒険を成功させ、エルダーサインを集めていく訳ですよ。

エルダーサイン完全日本語版(原題『ELDER SIGN』)
エルダーサインと手がかり

星が描かれているのがエルダーサイン。一見、松ぼっくりのように見えるのが手がかりです。

エルダーサイン完全日本語版(原題『ELDER SIGN』)
色々駆使すれば、手強い館長もこの通り。

奉行ところで、「エントランスで待機」というのは?

与力スタートのエントランスで任意の行動ができるんですが、ここが結構重要なんですよ。

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エントランス

エントランスは安全地帯で、冒険で傷ついた探索者の体力や正気度を回復できたり、アイテムを獲得することができます。また、獲得した冒険カードなどの“トロフィー”を消費することで、大幅な回復が可能になったり、任意の種類のアイテムを獲得できるようになります。

時間も気になる

探索者1人が行動を終えると、時計盤の針が1/4進みます。針が一周すると、神話カードなどに書かれている「深夜12時」の効果が適用され、さらに新たな神話カードがめくられます。

与力神話カードは上下二段に分かれていてですね。

エルダーサイン完全日本語版(原題『ELDER SIGN』)

与力上段は“即時効果”といってめくられた瞬間に適用し、下段は“持続効果”で、次に12時になるまでずっと適用されるペナルティや、あるいは次の12時で発生する効果が書かれています。

奉行なるほど、12時になるたびになにか起こる、ということか。しかし一周しかせんのに深夜12時になるんだな。

与力夜型なんですよ、探索者は。それはともかく、この時にモンスターが現れたり、エンシェントワンが復活するための破滅トークンが追加されたりします。それから、冒険カードにも12時になると妙な効果を発揮するやつがあるので、そういうのは早めに解決しておきたいですよね。

奉行ははあ。そういえば冒険カードの「館長」には、12時になるとダメージを与えるとかなんとか書いてあったな。だからお主、最初から「館長、館長!」と言っておったのか。

また、12時になると出現することが多いモンスターは、冒険カード上の解決しなければならないアイコン列を増やしたり、置き換えたりします。倒すとトロフィーになるので、弱いモンスターなら歓迎ですが…

エルダーサイン完全日本語版(原題『ELDER SIGN』)

まれに、このようにダイスを使えなくしてしまうなどの厄介な能力持ちが現れます。

与力ちなみに、エンシェントワンがニャルラトテップだと、マスクモンスターという彼の化身が出現することがあります。どれも強いんで面倒な相手ですね。

奉行なめてはかかれんのう。

概ね以上を繰り返し、エンシェントワンカード上の破滅トラックがトークンで全て埋まる前に、必要なエルダーサインを集めきることができれば、探索者の勝利となります。

奉行と、いうわけで挑んでみた今回。何やら悠々とエルダーサインが集まって我らの勝利となったわけだが、もしエンシェントワンが復活したら?

与力その時はお互いの存亡をかけてガチンコバトルですよ。

奉行絶望的な伝統芸だな。

エルダーサイン【ここがイカス!】

奉行クトゥルフ要素を下敷きにしたダイスゲームじゃな。特に小難しいことはなく、効果もダイスの出目をコントロールするとか、ダイスを増減するか、まあそのくらいだから、ルールの適用忘れも少ない。

与力ダイスを振って一喜一憂という感じですが、完全に運ばかりという訳でもなく、どうやって出目を操作する手段を準備していくか、というプランニングが求められますね。

奉行報酬をよく見ながら、欲しいアイテムを揃えつつ、高難度の冒険カードに挑んでいく、という図式だな。期待通りにアイテムが揃えば、結構高確率で冒険は成功する。

与力ストレスはそんなに高くないですかね。

奉行ランダム発生ゆえ「こんなの無理ぃ!」という盤面になることもあるが、それをクトゥルフっぽさとして、命からがら潜り抜けるスタンスで楽しめれば問題あるまい。狂気一歩手前が本番だ。ただし、ダイスゲーム故に、ダメな時は全くダメだなあ。

与力プレイ時間の方はどうでしょうか?

奉行人数が増えればそれに伴って当然時間はかかるが、慣れれば4人で1時間くらいで終わるのではないかなあ。『エルドリッチホラー』なんかに比べれば、プレイしやすいと思う。

エルダーサイン【ここはちょっと…】

奉行純然たるダイスゲームだから、ことの成否は全てダイス次第というのを受け入れられるかられないか。そこだな。

与力最終的には運というのが大丈夫かどうか、ってことですね。

奉行あとはそうなあ。意外と人数が少ない方が難易度が顕著に低くなりそうだ。

与力それはまたなにゆえに?

奉行アイテムやら手がかりやらを沢山持っていた方が冒険カードの成功率は高まる。従って、たぶん探索者の人数が増えるほど、それらは薄く散らばるから、冒険が成功しづらい人や、失敗し続ける人が多くなって、ペナルティを喰らうケースが増えるじゃろ。そうなると全体が窮地に追い込まれていくのではないか。だから、箱に書かれている最大人数の8人とか、どうなっちゃうのか、ちと想像がつかない。

与力ははあ。

奉行それから、あまりエンシェントワンごとにゲームが変化しないのが気になるかな。

与力ほう?

奉行エンシェントワンにはみなそれぞれに個性があるがいいところだが、この『エルダーサイン』では、必要なエルダーサインと破滅トラックの数くらいしか変わらん。復活して戦うことになれば多少の違いは感じられるが。

与力まあ復活させない前提で立ち回りますからねえ。

奉行それは確かにそうだ。が、そういった意味では、全体的にクトゥルフ要素はあっさり味だな。クトゥルフ愛が深い人ほど、物足りなさを感じるだろうが、そうなったら今は『エルドリッチホラー』か『マンション・オブ・マッドネス』といった、クトゥルフどっぷり大型ゲームに手を出すと良いのではないかな。

エルダーサイン完全日本語版(原題『ELDER SIGN』)
「トロフィー10点」で「古き印1個」がお買い求めいただけま……す?

与力初版だけなのかもしれませんが、実はエントランスの売店でエルダーサインを買えるんですよね。どっから仕入れているんでしょうか?

奉行実は土産物なのかもしれないと解釈すると、急に有難みが失せるな……。