リゴレぽ presented by 青葉新館 第12回 店長と山の王(2020.6.12)その2

ボードゲーム愛好

そしてゲーマーは鈍器を選ぶ

【リゴレのレポートって?】
「一生遊べるボードゲームをお客様にご提案したい」リゴレ店長と、「一生ボードゲームで遊んでいたい」ほ~らく奉行所の与力が、横浜中華街の片隅でそっと繰り広げるボードゲームトークの様子をつづったレポート、略して「リゴレぽ」です。
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【登場人物】

与力ほ~らく奉行所ボードゲーム方の買掛担当。トロールといえばブフ系だ、というイメージ。

店長横浜のボードゲームショップ・リゴレの伸居店長。最近、非常に色々と頑張っております。頑張ります!

与力いずれにせよ、『山の魔王』とかにしなかったのは、そういう背景があった訳ですね。

店長そうなんですよ。知識が色々衝突するんですけど、それはすごい楽しい作業で。『山の魔王の宮殿にて』ってタイトルがある、という知識はあるけど、こいつらトロールなんですよ。で「トロールって魔王なのかな?」って。なんかちょっと違和感ありません?

与力トロール、うーん……。

店長トロールが魔王と言ってもいいけど、魔王? 山の王だったらいいけど。山王。トロールが山で戦ったら、地形効果2倍くらいありそうじゃないですか。絶対に山で戦いたくない敵。

与力なるほど。メガテン信者な私は、トロールっていうと妖精って頭もありますが。

店長あと、僕はミニチュアウォーゲーム暦が長いんですけどね。

与力ああ、『ウォーハンマー』とかですね。

店長そうです。で、ミニチュアウォーゲームを長年遊んでいる人は、なぜかデミヒューマン好きになって行くんですよ、確実に。

与力あ、そこは確実なんですか。

店長確実です。オークとか、トロールとか、ジャイアント、はまあ人間型だけど、好きになるんですよ。で、大体ドラゴンには行かないんですよ。

与力あれ。そこは意外ですね。

店長我々はもうトロールとかオークが大好きなんですよ。

中華街の中心でデミヒューマン愛を叫ぶ店長。

与力なんかスケールモデル組む人の8割はドイツ好きで、アメリカにはいかない、みたいな話になってきましたね。

店長あとですね、ケンタウロスとかもダメなんですよ、オシャレだから。

与力え、ケンタウロスがオシャレなんですか。馬が絡むからですか?(笑)

店長ケンタウロスとペガサスとかもうだめ。馬が絡むとダメ、もうオシャレオシャレ。ダメダメダメ。乙女とかそういう絡みが出てきたら、もう立ち入る余地なしですよ。

与力何というか23区の中でも渋谷区とか港区みたいな匂いがしてくるわけですね。

店長ですね。オシャレオシャレ。

与力ひるがえって、トロールは……八王子くらいの感じが。

店長いいですね、八王子。お酒飲んで八王子ラーメン食べて寝たい。そういう憧れです。

与力そんなですか(笑)。

店長ちなみにですね、英語版の箱の裏には、商品説明に「4人から5人のトロール向けの戦略ボードゲーム」って書いてあるんですよ。

与力なるほど。実は人間のためのゲームではない、と

店長BURNT ISLANDの社長さんもノリノリで、これを一番推してた時期は、ツイッターに投稿するたびに「ヘイ、トロールズ!」って頭につけてましたね。僕もそういうの大好きです。

与力トロールになり切って遊ぶことが求められますね。

店長野蛮な雰囲気でね。トロールの武器、棍棒っていうのがいいですよね。なんかもう、ロングソードとか満足できなくなってくるんですよね。鈍器って一応万能だから。

与力硬い鎧も殴ればOKという。メイスとか。

店長我々の大好きなアックスとかもね。重さで殴る。最高ですよ。

与力斧はいいですねえ。

店長いや、昔は細い剣が大好きだったんですけどね。細い剣を振り回すエルフとか、好きでしたよ。楯と剣とかね。いまは、せめて両手剣だよね。

与力だんだん年取ってくるにしたがって、なぜか鈍器とか斧とかにいくんですよね。

店長やっぱそうなんですかね(笑)。 僕、いまファンタジー系のTRPGでキャラクターメイキングしたら、絶対鈍器持たせますよ。

与力初手鈍器ですか。

店長メイスか、モールかな……。でもモールは、ちょっと体格が恵まれたキャラが使うイメージがあるから、エリートなんですよね。鈍器の中のエリート。

与力鈍器のロースルロイス、って感じですか?

店長僕らみたいな雑兵は、やっぱ革巻いた棍棒とかになる(笑)。革巻いた棍棒を2、3本持っとけばもういいかなあ、って。刃物なら、せめてショートソード。ああ、ショートソードとかいいなあ。

与力若いころとは違う美意識方面に行きますね。

店長ちょっとリアル感を求めていくって言うか、現実的な方面にね。で、なんの話でしたっけ。

与力タイトルの話でしたね(笑)。

さらに翻訳の話

与力さて、タイトル以外の部分の翻訳作業についても、少しお話しいただけますか。

店長そうですね。ゲームを日本語化した方がいいかどうかの理由の一つに、「言語依存が高いかどうか」っていうのがあるんですけど、『マウンテンキング』には魔法カードが17枚入っていて、これがバリバリ英語なんですよ。これが日本語化して遊びやすくなるよ、というところですね。

与力日本語になってるだけで遊ぶハードルは大きく下がりますものね。

店長あと、これは交渉中なんですけど、プレイエイドをプレイヤー人数分の5枚付けたいな、と思っています。これはBURNT ISLANDさんからの感触もいいので、あとはデザイン上の問題だけで。

与力デザイナーさん探しが難航している、とかですか?

店長いえ、権利の話ですね。アーティストさんの絵を使っちゃうと、BURNT ISLANDさんもOKとは言えないよ、とか出てきたりしますので。まあ、基本的に僕ですね、どんなゲームでもプレイエイドを付けたいんです。『スカルキング』も付けたし、これも付けたいな、と思ってるんですよね。

与力やはりゲーム中に手元に置いておくと、手軽に遊び方を参照できる強みがありますね。

店長そうです。あと、プレイエイドの重要性はですね、ノンリプレイ派の方って結構いて、1つのゲームを繰り返し遊んでる人と、ノンリプレイ派の人が一緒に遊ぶってことが結構あると思うんですよ。

与力ああ、なるほど。

店長そうなってくると、初めて遊んだ人がゲームについていけない、っていうのは、僕すごくイヤですし、そこでゲームの評価まで定められてしまうのもイヤなんですよ。

与力「よく分からなかった、つまらない、そしてもう遊ばない」だと、1回でゲームへの感想が決まりますものね。

店長だからプレイエイドあると、その差が縮まりやすいんですよね。特に、この『マウンテンキング』は、ゲーム終了時の得点がすごく多いから、ゲーム開始時からそこをにらんでおきたい。なので、ゲーム始めた段階で、「何と何で点が取れるのか」という要素をハッキリさせておきたい。そういう意味も有って、つけようと思っています。

横浜中華街 青葉新館
一目で分かることは大切。(青葉新館店内)

与力ゲームを終わらせる時点での目標、というのがハッキリわかっていないと、なかなか点が伸びないんだけれども、それを遊ぶ過程で理解していくよりは、「最初からこうなんですよ」と説明しておいた方が、いろんな人が分かりやすい、ということですね。

店長例えば、「今度引っ越す部屋が2DKだから、ベッドのサイズはこれぐらいだろう」っていうところがちょっとあるゲームなんですよ。面積みたいな考え方がちょっと出てきますのでね。

与力逆に、5人家族でリビングが6畳しかないのに、お父さん60インチのテレビ買ってきちゃった、みたいな。

店長あー、ありがちですね、それ女性が一番嫌がるパターンだ(笑)。

与力悲惨なパターンですね。

店長でも僕は昔はミニチュアゲームばっかりやっていたから、2Kの間取りで、1つの部屋の半分がテーブルに占有されておましたからね。そして言われる、「テーブルでかくない?」って。

与力家に対してテーブルが明らかにおかしい、という?

店長すごいよ。もはや“テーブルルーム”って扱い。そんなこともありました。

与力なるほど。ともあれ、特典としてプレイエイドを今回も用意できるかもしれない。

店長できそうですね。特にお客様に「リゴレで買うと分かりやすいね」って思っていただきたい。そんな思いがありますから。

与力リゴレで出すゲームは分かりやすい。遊びやすい、と。

店長なぜかといえば、店長もゲーマーだから、ですね。ゲームを遊ぶ時の勘所が分かる訳です。それを踏まえて、ゲームを作る、ローカライズする時は、プレイヤーの気持ちに立って作りたい。なぜなら私もプレイヤーだから。というところです。

与力売る側でもあり、プレイヤーでもある。そういうことですね。

独特の雰囲気込みで翻訳する。

与力さて、「和訳の難しさ=ルール的な難しさ」っていうのはもちろんあると思うんですけれど、「ゲーム独特のフレーバーを残しつつ分かりやすくする」っていう点は、今回かなり苦労されたんじゃないでしょうか?

店長色々ありましたね……。今回のゲームでは魔法出てくるんで、これいろんな人にインスピレーションを貰ったんだけど、難しい魔法あったなあ。例えば、「PHANTOM HANDS」とか楽しかったね。PHANTOM(ファントム)って、「亡霊とか幽霊」って意味になりがちですが、イラストを見ると幽霊とかどこにも描いてなくてですね。

与力そこでうっかり幽霊って書いてしまうと、「どこに幽霊?」となってしまいますね。

店長なので、超能力的な、霊力的なパワーでモノが移動している感じの絵だから、これ「見えざる手」の方がいいんじゃないかな、って。

与力おお、元の語句とは少し変わってくるわけですね。

店長「このゲーム、幽霊って要素は出てこないので、ちょっと幽霊じゃないよね」とか。この辺は読み解きもありますね。やっぱり英語って直訳できないですから。

与力読み解きまで入ると難しいですねえ。

店長どうすればいいかなあ、みたいな。「岩喰らい(ROCKVORE)」もお気に入りの訳ですね。「“岩喰い虫”だともっと分かりやすいかな?」とか天秤にかけたり。

与力岩喰い虫だと、個人的には小っちゃい虫の群れな気がしてきます。

店長絵を見れば分かりますよね。あー、こいつが喰ってるのかのかー、という。

与力「食う」と「喰らう」だとやっぱり印象が違いますね。

店長そうなんです。そこで「ファンタジーって国内で再生産されていってるんだなあ」と思いましたね。なんかいいこと言ってる気分になってますけど、この「岩喰らい」って、『マジック・ザ・ギャザリング』の「業喰らいのワーム」というのを思いだして、「喰らい」はやっぱ口へんが付くよね、と確信しました。与力さんもありませんか?

与力何かしら先行者の影響で、いつのまにかアウトプットされるようになっていること……。

店長ファンタジー要素に関しては、グループSNEの影響とか受けてるのかもしれないです。あと、水野良先生。

中学生当時、SNEのゲームや小説は我々にとって青葉新館のランチと同じでした、という分からなくはない例えをする店長。

与力『ロードス島戦記』ですね。

店長もうちょっとフレーバーの話を続けますと、『マウンテンキング』の説明書には「トロールズムート」って単語が出てくるんですね。自分の前にピラミッド状に配置したトロールを、「トロールズムート」って言うんです。

与力ムート、ですか。

店長ただ「トロールズムート」って言葉は存在していなくて、「トロール」と「ムート」って語句からできているんですね。「トロール」はさておき、「ムート」という語句には、「集会」とか「合議」って意味があるんですが、どうもピンとこないんですよね。

与力「トロール集会」、「トロール合議」。うーん。

店長悩んだんですけど、「ムート」って言葉に聞き覚えがあったんです。長くなりますけど説明いいですか?

与力どうぞどうぞ。

店長映画の『ロード・オブ・ザ・リング』で、エントたちがアイゼンガルドを攻める時、「エントムートじゃ」って言って、フワァァって木の精が叫ぶと、山が起き上がって皆で話し合うシーンがあるんですよ。あ、いや、起き上がる前に皆で話し合うんだった。

与力ほほう(笑)

店長ともあれ、彼らの話し合いが「エントムート」と言うんですね。エントムートで検索したらロード・オブ・ザ・リングwikiが出てきて。“エントムートってのはエントの集まりで、集会だよ”という記述があったから、あ、もうこれはもうムートのままの方がいいや、ということになりました。

与力ここにも先行ファンタジーの影響が(笑)。

店長ただ、「トロールズムート」って言葉が最初に出てくるときは、“これはこのゲームのための造語で、トロールたちの集会を表しています”という注釈を書くことにしました。そんな作業がありましたねえ。

与力お話をうかがっていますと、ファンタジー独特の表現というか語句というか文法というかっていうのも考えないといけない、というような注意が必要なのでしょうか。もともと「ファンタジーというのはこういうものだ」という共通意識というか、共通理解みたいなものがある。そこにファンタジー要素のゲームを出していく、となると、先行しているファンタジーのイメージとか、ファンタジーで使われている単語・文法みたいなものを全く無視する訳にもいかない、という気遣いが必要といいますか。

店長確かにありますね。ファンタジーには限りませんが、例えばこのゲーム前に何か似たようなのがあったかな、というのは自然と見てしまいますね。多分ね。

与力先行しているものの影響下って言う部分もあるのかもしれないですけどね。

店長ちなみに、ファンタジーで漢字を使うっていうのも、意外とアリなんですよ。「ファイアボール」だったら「火球」とか。

与力むしろ意味がハッキリする。

店長『マウンテンキング』系のファンタジーではないんですが、636GAMESの『Discipline』見ててちょっと思ったんですよね。

与力ファンタジー学園系ゲームですね。

店長あのゲーム、学校のクラスが4つあるんですけど、あの世界観で、「風組」「雪組」ってあっても変じゃないですよね。わざわざ「ウインド」とか「スノウ」とか言わなくても成立する。

与力ああ、確かに。クラス名に自然現象ついてるだけでファンタジー、もしくは宝塚っぽいですもんね(笑)。

店長(笑)。そんな訳で、ファンタジー世界って意外と漢字持ち込んでも、日本の場合は大丈夫。でもそうなってくると、使う文字が多い日本語って大変だよな、っていう。カタカナも使うし、英語も使うし、カタカナ英語ってまたちょっと違うし。

与力受ける印象が変わるのは、難しいところですよね。

店長「コーヒー」って書いていいのか、「カフィ」って書いた方がいいのか。そういう逡巡もあったりするだろうし。物書きには。そういうのがあるから、大変ですよね。だから無難っていう言葉がちょっと良くないですけど、スッと溶け入りやすいやつ。納得がいく言葉を探す必要があるので、翻訳は大変ですけど、フレーバーが増えてくるとなおさら大変になりますね。

与力世界観を壊さずに伝える努力が大切になってきますね、本当に。

店長そういえばこの作業の間、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のルールブックも読み込んだんですよ。そうしたら、魔法名の所、英語をカタカナにしているだけだと思ったら、全部日本語訳がルビで振ってあるんですね。すごいなあ、と思いました。両方書くのは。

与力へえ、単に日本語化するというだけではなく。

店長うん、2つ書いているんですよ。だから英語版より苦労多いはずなんですよね。英語をカタカナにした後に、日本語考えて。個別の例は忘れちゃいましたけど、そういう風にやってて、ちょっと気が遠くなりました。ゲームをやってみていないと、出てこないですよね、そういう発想は。たぶんプレイヤーのこと考えているから出てきたんだと思うんです。そこに触れたことがないと、あの配慮は出てこないんじゃないかなあ。

与力今回、『マウンテンキング』は魔法なんかの部分では、そういうような感覚はあった訳ですね。

店長その通りです。で、またこういう悩みをDTP担当してくれる方に話したら、いくつか方法を教えてくれたりもして、色々とやり様があることも分かりました。

与力ははあ、今回のDTPの方はさきほど熟練の達人とうかがいましたが、さすがですね。

店長流石ですね。経験豊富な。

与力MMOやってたら、急にものすごいランクの高い人がパーティーに加わったみたいな。

店長(笑)。経験ってやっぱ偉大ですよね。

続き:リゴレぽ 第12回 その3はこちらからどうぞ。

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