第15節 乱高下
- DATE
- 9月25日 カラバオカップ3回戦
- VS
- ダービー(H)
- SCORE
- 5-0
- GOAL
- 8’、39’、49’、59’、64’ 内藤(ARS)
アーセナルの対戦相手は古豪ダービー・カウンティ。両チームの力関係からすれば、ガナーズは気楽に臨めそうな一戦ですが、メンバーに手抜きはありません。ラカゼットをサポートする両ウイングは内藤とアダマ。中盤ではジャカとエジルが攻撃にアクセントをつける役回り。ディフェンスライン、左サイドバックではモンレアルが先発します。
試合を動かしたのは、9月絶好調が伝えられていた日本人FWでした。8分、ラカゼットのパスを受けると、左サイドから斜めに切り込み、左のアウトサイドにかけたキックでダービーゴールを易々と攻略。得意の形でした。
さらに39分、ラカゼットのスルーパスを受けたアダマが、今度はゴールを狙います。これはGKに阻まれますが、こぼれ球にいち早く詰めてきたのは内藤。これで2ゴール。
後半になっても、内藤の勢いが止まりません。49分にはアダマのパスをペナルティースポット付近で貰うと、素早くシュート。ハットトリックを達成します。しかしこの日の内藤はこれだけで終わる気は全くなし。10分後の59分でした。
エジルのスルーパスを左サイドで受けると、角度のないところから持ち込んで4点目のゴール。ダービーディフェンス、なす術が有りません。そしてそのわずか5分後、内藤がまたもダービーゴールに迫ります。
エジルに代わったラムジーからのスルーパスで抜け出し、飛び出してきたGKの動きを冷静に見てゴールへ流し込み、なんと5ゴール目。これでアーセナルにとっては十分すぎる得点差となり、悠々と3回戦突破です。
戦術理解度の低さを監督から指摘され、出場機会に恵まれていない内藤ですが、まるでメッシやCR7のような、こんなゴールショーを見せてくれるのなら、ファンの支持は得られるかもしれません。
ロンドン -アーセナル練習場‐
と、ハットトリックヒーローになれたあの試合は良かったんだよね。さすがに1試合5ゴールなんて結果を出した選手ともなると、そうすぐにベンチやらベンチ外へ戻す訳にもいかないから、監督も使わざるを得なくなったわけだから。
黒田官兵衛「はい。それで続くプレミアリーグの大一番、マンチェスターユナイテッド戦と、ヨーロッパリーグのアンジ・マハチカラ戦では先発を果たされましたな」
山本勘助「ですが、どちらの試合もチームは勝利を挙げたものの、あなた様は得点0、アシスト0。“1試合5ゴールの男”として期待に応えたか、と申さば……」
応えてはいない、となるな。一応、マンU戦(2‐0)の2点は、どちらも私のシュートから決まったゴールだったんだがね。それでアシストはつかないからね。仕方ないね。
勘助「シュートのこぼれ球を味方が決めてくれた、というパターンですな。まあ、シュートまで持ち込んだことは褒められましょうが……」
官兵衛「それならそれで評点に跳ね返っても良いはず。さりながらマンU戦の5.9は正直微妙、アンジ戦の6.6でようやく平均程度か……というくらい。相変わらず、チーム戦術を真に理解できているのか、ピッチ内での動きを監督は不安に見ておられましょう」
もはやひどい言われようになってきたなあ……
勘助「ダービー戦が出来すぎ、と考えられてはいけませぬ。あれを実力と思うてもらわねば。その為には継続です。継続して結果を出すのです」
官兵衛「いずれ結果が出なければ、“雑魚専”とか“橙武者”とか、そのような蔑称をつけられてしまいまするぞ。いかがです」
私は狒々退治(ひひたいじ)なんぞしとらんから、そんな異名は御免こうむるるが……だが、使ってもらえている内にもう一度結果を出さねばならぬのは分かった。明日、リーグのバーンリー戦では先発で使ってもらえそう故に、ここを先途と働いて参るとしよう。
勘助「風林火山のフットボール、存分に見せつけて参られませ」
官兵衛「まだ期待値の高いうちに、頑張りましょう」
- DATE
- 10月8日 プレミアリーグ第7節
- VS
- バーンリー(H)
- SCORE
- 6-0
- GOAL
- ’21、’23、’35、’53、’87 内藤(ARS)
- 71’ ジャカ(ARS)
エミレーツにバーンリーを迎えたガナーズは、ここまでリーグ6戦負けなしと絶好調。この試合で7連勝といきたいところ。バーンリーはなんとか勝ち点を持ち帰れることを願っているでしょう。
ホームチームに大きな変更はなし。このところ先発起用が増えている内藤が、今日は3トップの真ん中からスタート。キャプテンマークはいつものようにラムジーです。
バーンリーは6試合13ゴールのアーセナル攻撃陣を抑え込むことができるのか。ディフェンスを引き締めるターコウスキに期待がかかります。攻撃は、アイスランド代表グドムンソンの左足が頼みの綱。
試合開始早々、主導権を握ったのはホームチームでした。バーンリーの中盤はラムジーとジャカを捕まえきれず、ガナーズの攻勢が続きます。そして波状攻撃の前に、バーンリーの城壁は21分で早くもほころび。ゴールを挙げたのは、この日もっとも攻撃的だったこの男。サンチェスのスルーパスに素早く抜け出し、バーンリーの両CBは反応が遅れました。
2分後、右からアダマが得意のドリブルで仕掛けると、バーンリーは激しいディフェンスでこれをストップ。しかしこぼれたボールは内藤の足元へ。いい時の彼は、チャンスを決して逃しません。
相手にとってはいつも危険な日本人ストライカー。ですが、この日の彼は特に切れ味抜群でした。容赦のない攻撃でバーンリーの息の根を止めにかかります。35分、ゴール前のシーン。
内藤の卓越したテクニックにガナーズサポーターは大興奮、こうなるとダービー戦のようなゴールショーへの期待が高まります。一方のバーンリーの防御は崩壊寸前、サポーターも意気消沈です。
後半開始早々の53分、ファンの期待は現実のものに。モンレアルからの長いパスを受けた内藤は、再びターコウスキのマークを外すと、左足で豪快に4点目。71分には、今度はその内藤からのパスが攻めあがったジャカに通って、5点目のゴールが決まります。
最後は87分。途中出場のエジルが、ペナルティーエリア右へ走り込んだアダマへ絶妙のスルーパス。これをダイレクトにファーサイドへ折り返すと、とどめを刺しに来たのは、もちろんこの男でした。
ホームのエミレーツで見事な圧勝劇。アーセナルの強力な砲撃で、バーンリーの城壁は完全に打ち砕かれました。それにしても移籍志願も噂される内藤、カラバオカップに続いてリーグ戦でも1試合5得点の大活躍。これだけの選手なのに、アーセナルは手放したら後悔しそうですが。
ロンドン -アーセナル練習場-
……と、あの試合も良かったんだがなあ。1試合5得点をシーズンに2回もやってのけたのだから、ちょっとした話題にはなるよね。ははは。
官兵衛「それで話題になったのは、翌週のリヴァプール戦とのパフォーマンスの落差でしたな。週間ベストイレブンを獲得した翌週の試合で、週間ワーストイレブンに選ばれそうな働きでしたから……」
勘助「バーンリー戦の9.8という評価はなかなか見られませんが、まじめにやっていて5.3という評価を受けるというのも、なかなか見ませぬな」
しょうがないだろ、なんか守備に追われてカードもらってしまったのだから。評価も下がるよ。あの試合はリヴァプールが強かった。チームは勝ったけど、ひどい出来だったよ、全体に。
官兵衛「まあ、それならそれでよいのですが、続くヨーロッパリーグ、サンテティエンヌ戦もパッとしませんでしたなあ。まったく見せ場が有りませんでしたぞ」
勘助「ボールのもらい方に工夫が有りませんでしたな、ボールロストの回数が多く、まったくキープできなかった。ひどいものです」
正直に言うとだね、5ゴールの大活躍の残像がどうしても目の前にちらついてしまって、プレーを焦っているんだよね、だから全部のプレーを早く早く、と思って、ダッシュボタンを使いがちになっているんだ。ボールを失う回数が激増してきたのは、多分、そのせいだと思う……
官兵衛「原因が分かっているのは、喜ばしいことです。それならそこを修正すればよいのですからな」
勘助「ま、次のリーグ戦はベンチ外でお休みを頂いております。この間によくよく基本テクニックの練習を反復し、体に覚え込ませることです」
頑張ります。とにかく、常に活躍できるように、落ち着いたプレーを心がけます。動かざること山の如く、です。
歴史系用語と見せかけて、サッカーファンの間で使われる言葉。なので言うまでもないかもしれませんが、「格下との対戦時にしかゴールを決められない、戦えない選手」を意味します。
橙武者(だいだいむしゃ)
続いて唐突に歴史系用語。戦国末期の武士・薄田兼相(すすきだかねすけ)の不名誉な異名のこと。剛勇の武将として知られていたのに、あろうことか遊郭に行っている最中に砦を落とされたという失態から付けられました。意味は「橙は美味しそうなのに酸っぱくて、正月用の飾りくらいにしか使えないよね」というところから転じて「見かけ倒し」ということ。
狒々退治(ひひたいじ)
先の橙武者こと薄田兼相は豊臣方についた武将ですが、その出生や生い立ちは謎に包まれています。で、狒々退治などの伝承に出てくる伝説的剣豪・岩見重太郎が、実は兼相さんと同一人物なのではないか?という説があるので、内藤さんは「狒々退治していないから、橙武者じゃない!」と主張しているわけです。しかし、雑魚専の汚名返上ができてないような。