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- 【登場人物】
奉行藩の決裁担当。四畳半に欠かせないものと言えば?「イヤホンか」
与力藩の買掛担当。四畳半に欠かせないものと言えば?「本棚ですかね」
まあ春のうちはぼちぼち遊んどこうか
奉行四年生というか四回生というかで東西が分かると聞くな。
与力一般的に、関東が「〇年生」で関西が「〇回生」と表現するようです。
奉行わしらは関東方面でうごめいていたから「〇年生」派だな。
与力よく分かっていなかった時期に二回生とか聞いて、「二回…ダブったの?」とか思ってしまった記憶が有ります。知らないって恐ろしい。
まず、ゲームの準備です。全員に専用の四畳半シートを配布します。オモイデカードを一まとめにしてよく混ぜてから山札をつくり、5枚をひいて表向きで横一列に並べます。5枚の最後尾に裏向きで1枚だけオモイデカードを置き、捨て札の山とします。
A・B・Cの三種類あるイベントカードをそれぞれよく混ぜ、1枚ずつひいて今回のゲームで使うイベントを決定します。これで準備は完了です。スタートプレイヤーからゲームを開始します。
奉行カードは6枚並ぶのだな。
与力このカードに書かれている形を上手く組み合わせて、シートのマス目を埋めていくわけです。
奉行うまく埋められると高得点、勝利、という寸法であるな。最終的には全部埋め切ってしまうのが目標という感じであろうか。
与力そう簡単にいきますかね。埋めるのにも色々と制限があるので、しっかり考えないと難しいですよ。
奉行まあよい、いずれにせよ遊んでみようではないか。
何はともあれ、麻雀でもしよう
『四畳半ペーパー賽系』は全12ラウンド(つまり12ヶ月)で構成されており、各ラウンドでは、最初にスタートプレイヤーが5色のサイコロを振ります。
与力サイコロを振ったら、出目に対応したオモイデカードの脇に、サイコロを置いていきます。
奉行“出目に対応した”って、どういうことじゃ?
与力最初に並べた6枚のカードは、山札に近いところから1、2、3…と数字が割り当てられているんですよ。
奉行ああ、だから6枚で、6面体サイコロなのじゃな!
サイコロが配置されたら、各プレイヤーは好きな色のサイコロを選択し、そこに配置されているオモイデカードに描かれたブロックを、サイコロの色と同じ色鉛筆で四畳半シートのどこかに記入していきます。なお、同じサイコロを複数のプレイヤーが選択しても構いません。
奉行ふむ、毎ラウンド6枚のカードはサイコロによってランダムに色が決まったり、あるいはサイコロが置かれないことで選べなかったりするわけか。一筋縄ではいかぬなあ。
与力ですから、スタートプレイヤーのサイコロの出目が偏ると悲惨ですね。
奉行非難囂々雨あられ、じゃな。
与力さて、ブロック記入にあたりいくつかの注意点が有ります。先の説明通り、プレイヤーは選らんだサイコロの色と同じ色の色鉛筆で、オモイデカードのブロックをシートに記入するのですが、よく見るとカードには結構たくさんブロックが描かれているんですね。
奉行ホントだ。カードの真ん中にスラッシュを挟んで2個描かれていたり、カードの上下、左右の肩に2マスだけのブロックが描かれておる。
与力まず、プレイヤーは、「真ん中に描かれているブロック」か「2マスブロック」のどちらかを選んで、対応する色鉛筆でシートに記入することができます。この時、ブロックはどう回転させても構いません。
奉行あ、『テトリス』でブロックをぐるぐる回すアレができる訳ね。
与力真ん中のブロックがスラッシュで区切られているのは、線対称を意味しています。この場合、どちらかのブロックを選びましょう。
奉行おう、分かったぞ。
与力あとは細かくなりますが、「最初の1つ目のブロックはシートのどこに記入してもいい」のですが、2個目からは「すでに記入されているブロックと左右上下で隣接するように記入」しなければなりません。
奉行ふむふむ、斜めは隣接とはみなさない、と。
与力あと、「同じ色のブロックは隣接できない」というのが非常に重要です。気を付けてください。
奉行おおう、それはやらかしかねんなあ。注意せんと。
与力そんなところですかね…。細かいですが、シートに印刷されている障害物の上にブロックを記入できない、ということと、畳の区切りをまたいでブロックを記入してもいい、というのも覚えておきましょう。
奉行畳縁は壁ではないものな。うむ。
全員が記入を終了したら、山札から一番遠い場所に置かれている表向きのオモイデカードを裏返して捨て山に重ね、他のカードを1枚ずつ捨て山側にずらし、新たなカードを山札からめくって配置します。その後、次のラウンドが始まります。
奉行つまり、サイコロの5に対応したカードが6の捨て札山に行き、他のカードは全て1ずつ増える、と。
与力思い出はどんどん流れていくわけですよ。
趣味でギターを買ったけど、結局飽きました
奉行ところで、色を選ぶ意味の説明が無いのだが。
与力はい、そこら辺はシートの下半分を見てもらうと分かりやすいかな、と。
奉行ふむ?
与力説明書とは順番が前後しますが、ここが分からないとどの色を選ぶといいのか、よく分からないと思いますので、説明しちゃいましょうかね。
与力勝者を決める得点は、基本的には12ラウンド終了後にまとめて入ってきます。ではどうやって高得点を狙うか?というのがここに書いてある内容でして。
奉行ふむ、具体的に頼むぞ。
与力まず第一に、畳を埋めきるとマス目の横に描かれている縮図に指定されている得点が貰えます。この得点を軸に考えていく感じですね。
奉行なるほど、確かに書いてあったな。畳は1枚ずつ確実に埋めたがよい…全て埋めきれば45点か。
与力そこで「じゃあ何色で埋めるのよ?」ってのが出てきますね。そこで各色の特徴なんですが、3色、すなわち緑の「交遊」、紫の「趣味」、赤の「恋愛」は、それぞれ設定された条件に応じてボーナス点が貰えます。
奉行これもシートに条件が書いてあるな。恋愛なら赤と同じ形のブロックが1マスごとに1点…なるほどなあ。恋愛はなにかと通じ合っていることが大切か。
与力そういうことにしておきましょうか。青の「学業」だけはマイナス点スタートでして、各畳で青で塗られているマスが全ての色の中で最小だと、このマイナスを返済することができず、失点が大きいままとなります。
奉行うーん、青は全畳にまんべんなくバラまけ、ということか…。
与力無い色は0で必ず最小ですから、青をばらまき、使っていない色が各畳に1色ずつあるといい、ってことになりますかね。
奉行では、黄色はなんなんだ?
与力それもまた、特殊なんですよ。
単位ヤバいけど…バイトして飲み会代を稼ごう…
与力12ラウンドの間に発生するボーナスというのがですね、「イベント達成」と「バイト」、そして「お母さんの仕送り」なんです。
奉行うーむ、これも具体的な説明を頼む。
ボーナスイベントカードは、ゲーム中に指定されている特別な条件を達成すると、ボーナス点を獲得することができるカードです。最も早く条件を達成したプレイヤーが高い方の得点、2人目以降に達成したプレイヤーは低い方の得点を獲得します。
与力これがゲーム終了時に合算されますよ、ということです。
奉行ふむう。カードによっては結構でかい点が入るのだな。
与力ですので、このイベントカードの条件を満たせるように、色のボーナスもにらみつつ、畳を上手く埋められるように…という配置をしたい訳ですよ。
奉行うーむ、思いのほかシビアな調整が求められるような気がしてきた。
黄色は「バイト」を意味しており、このブロック自体は得点を生みだすことはありませんが、1回畳に記入するごとに¥1を獲得できます。シートの所定の欄に記入しましょう。
奉行あ、これか。最初から¥1持っておるが、これを増やせる、と…。
与力同じような効果が「お母さんの仕送り」でして、ゲーム中に畳一区画のマスを全て埋められたら、仕送りとして¥1が貰えます。
奉行お小遣いか。で、このお金は何に使える?
与力¥1で「記入済みのマスに隣接する好きなマス1つを黒で塗りつぶせる」、¥2で「サイコロ1個を自分だけ好きな出目に読み替えることができる」、¥3で「追加でもう1つサイコロを選ぶことができる」となります。
奉行うわあ、思ったより強力だった。そういう飛び道具的な仕掛けが準備されていたのか。
与力お金を使う効果はラウンド中、サイコロを選ぶ前でも後でもいつでも構わないそうです。1回使うと消えますけどね。
奉行無くならないお金って、なにその夢のような話。しかし、¥1ってなあ。ボードゲーマーはよく「1金」とかいうけど、単位が円になると、なんか急に真顔になってしまう。
与力たぶん10万円くらいに読み替えておくといいと思いますけど。
奉行まあ1ヶ月バイトに充てて1円とか1万円ってのも哀しいしな。
与力くっ、こんな梁山泊の荒くれに襲撃されそうなアパートに住むんじゃなかった。
奉行自分で名前つけといて何言ってんだ。まあ、もう一勝負するか。
奉行お主のアパートはベルギー人の探偵が捜査に来そうじゃな。容疑者として疑われそうじゃないか?
与力そちらのアパートの方は、ゴミ出しの日を間違えでもしたら三族に累が及びそうですよ。
『四畳半ペーパー賽系』【ここがイカス!】
奉行『ベガス』的なサイコロの配置で記入できるブロックが決まる紙ペンパズルゲームであったが、一番感心したのはゲームのテーマ。実にいいよ、テーマが。
与力おや、テーマですか。
奉行日本的なテーマと言えば、お主の好きな「チョンマゲ」「忍者」「相撲」「桜」って感じだけど、そこら辺はシンボリックではあるけど、生活密着というほどではないじゃない。
与力以前、品川駅で茶筅髷(ちゃせんまげ)のサラリーマンを目撃したことがございますが…。
奉行お前はまたそうやって特殊な体験を持ち出して話を変な方向へやるんじゃないよ。ともかく、わしはゲーム内の四畳半に生活している“自分”がどんな1年を送っていたか、あれこれ考えながら遊べたんだ。こういう空想ができるのは、非常に親近感のあるテーマだからこそじゃないかな。
与力なるほどねえ。深いですねえ。
奉行4月から始まって3月まで何をするか。最初のうちは学業放り出しといて、9月過ぎたあたりからマイナス点の回収で青を取り始める…
与力まあ、そういう展開にもなりましたが。
奉行これって、「いっけね、夏休み明けなのに卒論全然準備できてないじゃん!」みたいなことだなあ、とかね。そう思いながらやってた訳よ。
与力あはは、そして提出日前日に印刷しようと思ったらプリンタがぶっ壊れて顔面蒼白、っていうヤツですね。そういう人見たんで、あんまり笑えないんですけど。
奉行同じようにやたら交遊ばかり選んでいる時は「この部屋は友達連中のたまり場なのかなあ」とかさ、恋愛で得点を伸ばすときは「それ以外見えてないなあ」とか。で、恋愛から急にバイト始めたりすると「あ、使い過ぎたな」なんて。
与力語りますね。
奉行そんな風に遊べるゲームだよ。素晴らしいと思う。紙ペンゲームは今まで幾つか遊んできたけど、ここまでストーリー性を感じるものはなかったな。
与力なるほどですね。
奉行もちろん、わしがそのストーリー性を感じる条件に見事当てはまっていた、という点は留意しなければ、だがな。
与力男女、文理の別、1人暮らし体験の有無とかでも、感想の角度は色々と変わりそうですね。
奉行それだけに、色んな人と「そういえばね…」みたいな実体験を語りながら遊んでみたいと思うな。
与力まさかのコミュニケーションゲームになりますか。
『四畳半ペーパー賽系』【ここはちょっと…】
奉行と熱く語ったが、反対に、テーマにピンとこない人にはどうなんだろうな。
与力ブロックパズルの無機質な展開を見ながら、ラスト1年の大学生活を妄想してお奉行みたく喜ぶなんてことには、体験の有無が欠かせないと思いますよ。
奉行じゃあテーマを除いた点を考えてみよう。ゲームとしてはよくできている。バイトの有無でかなり得点の変化が大きくなるような気はするな。
与力畳を埋めた得点は絶対に無視できないですからね。1枚10点の所で差を付けられてしまうと厳しいです。ですから、お金は絶対に使っていきたい。
奉行カラフルな色で入る点に目が行きがちだが、そこはしっかりインストする人が説明したいか。ともあれ、特定の色のボーナスに期待しすぎるのはよろしくないかも?
与力あと、マイナス点の要素ですかね。学業以外に空きマスの失点というのも有りますが、どちらもそんなに大きく喰らう感じは無かったですね。
奉行気を抜くと失点くらいかな。学業ガン無視というのも無さそうだし。最初からマイナスが分かっているしね。
与力でも、サイコロのランダム性次第では、中々狙った通りには進まないですよね。置きたいブロックが青にならない、的な。
奉行サイコロ次第でほしいブロックが全然選べない、って展開も無くはないだろうな。だが、そこを上手く乗り切ってどう得点していくか、というゲームじゃないのか?
与力ですね。あと、お金を使うタイミングのルールって、どうなんですかね。ボーナスでお金が入ってきた直後に使っていいのかどうか。
奉行「ブロックを記入」して「畳を埋め」て、「お母さんの仕送りボーナス」が出た後、そのお金を使って追加行動を行う、みたいな、「入ってきたお金を即座に消費する」という使い方がアリかどうか、ってことね。
与力たぶんOKだろう、って遊んでましたけど、どうなんでしょう。
奉行説明書見る限り、良さそうだぞ。多分。恐らく。
与力あとはなんかあったかな……あ、付属の色鉛筆は割と力入れて塗りましょう。
奉行お主、結構薄めに塗ってたな。折るのが怖かったのか?
与力クーピー派だったので……。
奉行筆圧強めで塗るのはおススメかな。あと、人数が増えるなら色鉛筆はもうちょい増やした方がいいかも。わしは塗るのが楽しいから、鉛筆を握っている時間が増えがちだ。
与力ところどころに挟まる、微妙に古いセンスの文言がツボです。
奉行イベントカードのイベント名はどれもなかなか面白い。
与力ちなみに、恐らく元ネタであろう小説『四畳半神話大系』の方は苦手です…。
奉行お主、あの作家さんが書く作品はたいてい苦手だと言っておったな。なぜだ?
与力描写が妙なところでリアルだから、うだつの上がらなかった大学院生時代の記憶が鮮明によみがえるんですよ。さえない男たちの鍋とか……うぅ、頭が……。
奉行そういやお主も『快傑ズバット』のDVDボックスとか持ってたしな……。
最後に触れている作品はこちら。
なお念のための補足として、こちらの『四畳半神話大系』はアニメ化もされた浮かれ京都のハッピーエンドなお話です。与力の思い出とリンクしすぎて、読後はしばらく斜めになっていた『太陽の塔』(森見登美彦先生のデビュー作)の衝撃が強すぎたのが苦手意識の原因だそうで。