『パンデミック:クトゥルフの呼び声 原題:PANDEMIC REIGN OF CTHULHU』を遊んでみた
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与力藩の買掛担当。パンデミック大好きその1。クトゥルフに親しんで早何年か……。
奉行藩の決裁担当。パンデミック大好きその2。ゲートなるものは「ろくでもないところ」だと思っている。
悪意は伝染する、とか申しますゆえ
奉行これがお主が勝手に注文したゲームの1つ目か。
与力(土下座)
奉行とはいえなあ。「パンデミック」と「クトゥルフ」とは度肝を抜かされる。うまいことを考えたものだ。
与力そうでしょう! 当方で興味ありありテーマの二つが並んでいますからね! 手に入れるのは最早義務といっても良かったかもしれませんよ。
奉行勝手に注文したことを正当化するんじゃないぞ。まあしかし、手に入れたものは遊んでみようか。
ゲームの目的は、ボード上に色分けされて描かれている4つのエリアの…
それぞれに1つずつある“ゲート”を封印し、閉鎖することです。ゲートのマスは、同エリアのマスと彩色パターンが異なるので、すぐにわかります。
奉行うっへえ。絶好調に嫌な思い出しかない地名ばかりだな。
与力なんですかその顔。クトゥルー関係にステキな思い出の地名とか存在しないと思うんですけど?
奉行おぬしはそっちの方面において、頭のてっぺんからつま先まで、ずぶずぶのファンだからなあ……。
続いてゲームのセットアップ。これはほぼパンデミックと同じです。”手がかりカード“の中にイベントカードに相当する“遺物カード”を入れてシャッフルし、各プレイヤーに手札を配った後、エピデミックカードに相当する“邪悪の胎動カード”を入れてプレイヤーデッキを作ります。また、感染カードに相当する“召喚カード”を規定枚めくって、邪教徒、並びにショゴスの初期配置を決定します。
与力あとはボード上面に配置されるオールドワンカードに注意ですね。感染率の悪化と同じような感じで状況が悪化すると、オールドワンが1体ずつ登場してきますが、その時に悪いイベントが発生したり、ルールに追加要素が加わったりします。
奉行なるほど、そこでそやつらの出番になるのだな。
与力あとはなんですかねぇ。あ、難易度の変更は『パンデミック』だとエピデミックカードの枚数を増やすという形で行いましたが、こちらではゲートを封印するために集めるべき手がかりカードを減らすことで行います。
奉行ほおお。つまり、うかつにカードを捨てたり使ったりできなくなる、という塩梅か。
奉行邪教徒とショゴスがどうやら病原体キューブに相当するようだが……?
与力その通りです。ちょっとだけ作用がことなりますが。
奉行とはいえ、邪教徒というのは、増殖するものなのか?
与力増殖って。布教活動に成功する……ということなのかもしれないです。
奉行ふむ。パンデミックで想像するとうじゃうじゃ増えるだろうな。カルト恐るべし、というところか。
また、各プレイヤーは担当する探索者を1人選び、カードと正気度トークン4個を受け取ります。これで準備はできました。
奉行さてプレイヤーをランダムで選んだぞ。わしは「ハンター」。衛生兵と同じく、邪教徒一掃の能力を持つ。
与力私は「陰秘学者」。邪教徒やショゴスをコントロールし、移動させることができます。
手がかりを集めるだけの簡単なお仕事です。
奉行とにかくカードを集めなければならない訳だが、それまでに、この配置されている邪教徒どもを蹴散らしたりせんといかんのであろう?
与力そうですね。邪教徒、ショゴスはボード上にできるだけいない方がいいです。
奉行そりゃそうであろうな。あんなんうろついてたら最悪だ。
プレイヤーは自分の順番になったら『パンデミック』同様、4回のアクションを使って行動を行います。できることは以下の4つに大別できます。
- 移動
- 邪教徒・ショゴスの撃退
- カードのやり取り
- ゲートの封印
与力では、1つずつ考えますか。まず「移動」ですが……
奉行1アクションで1マス。これはパンデミック本家と変わるまい?
与力はい。あと、飛行機とかはないのですが、このゲームではバスとゲートを移動に使うことができますね。
奉行こんな町を走るバスも大概な気もするが、その上ゲートって……。
バスの絵が描かれたマスでは、「今いるマスと同じ色のカードを捨てる」と、好きなエリアの好きなマスに移動できます。また、「行きたいエリアと同じ色のカードを捨てる」と、そのエリアの好きなマスに移動できます。
奉行ふーむ。バスはかなり便利じゃな。『パンデミック』と違って、1つずつのマスに対応したカードではなく、エリアごとのカードになっているから、こういう移動になる訳か。
与力いわゆる“直行便”は無くなりましたが、“チャーター便”の使い勝手が良くなった感じですかね。
ゲート移動は“シャトル便”に近い移動方法です。まだ封印されていないゲート同士は相互通行が可能なので、好きなエリアのゲートマスへ移動することができます。
与力ただ、これも代償があってですね。通る場合、正気度チェックをしなければならないのです。
奉行クトゥルフものお馴染みのSANチェックか。まあ、代償がないわけがないよなあ。
正気度チェックを要求された場合には、このダイスを振り、出目の結果に従います。出目は「成功」「正気度の喪失」「邪教徒の出現」となっています。
奉行ダイスかあ。おぬしにはつらい要素じゃな。
与力ま、まあ、何とかなりますよ。
邪教徒・ショゴスの撃退は、対応したコマを盤面から取り除くことができます。通常、邪教徒1人につき1アクション、ショゴス1体につき3アクションが必要です。また、ショゴスと同じマスに入った場合、正気度チェックが必要になるので、要注意です。
奉行なんとのう。アクションを消費しただけで撃退できるというのは、『エルドリッチホラー』をたしなむ身からすると、邪教徒諸君に申し訳ないように感じるなあ。あっちは銃やら鈍器やら拾ってこないといけないのに。
与力最初から完全武装していると思いましょう。
奉行あるいは、邪教徒が虚弱体質?
与力なんでそんなこっちが罪悪感を感じる悲しい設定にするんですか。
探索者同士が同じマスにいる場合、1アクションにつき、カード1枚のやり取りが可能です。遺物カードは特に制限なく渡したり貰ったりできますが、手がかりカードは通常やりとりしたいカードと同じ色のエリアのマスにいないと、行うことができません。
奉行カードの受け渡しルールは『パンデミック』と同じじゃな。これは上手く使いこなしていかないと。
与力5枚って、地味に揃わなかったりするんですよね……。なお、パンデミックでは「カードは見せない状態でプレイすること」が推奨されますが、こちらは「オープンした状態でプレイすること」が推奨されています。
奉行なんと。まさか、それほどまでに手強いということか。
与力そうかもしれません。まあ、オールドワンのバーゲンセール状態ですしね。
奉行やめんか。本当にセールを開かれたらたまらん。
「ゲートの封印」は、ゲートのマスにいる時に行うことができます。そのゲートと同じ色の手がかりカードを通常5枚捨てることで、成功します。封印すると、そのエリア全てのマスから、邪教徒を1人ずつ排除することができます。
与力そしてもう1つ。ゲートの封印は、正気度トークンを全て失って、狂気に陥ったプレイヤーが正気に戻る数少ない手段だったりします。
奉行む。そうなのか? ゲートにまつわる話となると、時空のはざまにすっ飛ばされたり、あり得ない角度ばかりの建物の中で狂気に陥ったりと、むしろ正気を失う状況が多い気もするのだが。
与力このゲームではそういうことになっております。ちなみに、プレイヤーは狂気に陥ると、アクションが1回減る上に、能力が弱体化します。また、全プレイヤーが狂気に陥ると、即敗北となりますので、ご注意を。
奉行ぐえー。新たなるキャラクターにて立ち上がれないというのは、シビアだなあ。
アクションを終了したらプレイヤーデッキからカードを2枚引き、手元に入れます。手札の上限は7枚ですので、それを超えてはいけません。
与力そしてこのカードを引く時に、“邪悪の胎動カード”が出てしまうと、エピデミックに相当する事態が発生する訳ですね。
奉行おお、嫌じゃのう。出るんだが、嫌だのう。
“邪悪の胎動”を引いてしまった場合、以下の手順を行います。
- 正気度チェックを行う。
- 伏せてあるオールドワンカードの一番左を表にする。
- 新しいショゴスが出現する。
- 召喚カードの捨て札をシャッフルし、山の上に戻す。
与力まあ、「パンデミック」で言うところのエピデミックですから……
奉行そうなんだが、オールドワンの能力次第で阿鼻叫喚の事態になる予感がするな。
手札の補充がすんだら、召喚カードの上から「召喚レート」と同じ枚数だけ表にし、新たに邪教徒が出現する位置を決定します。また、召喚カードにショゴスマークが描かれていた場合、ショゴスが最も近いゲートへ向かって1マス移動します。
奉行ん? 召喚レートとは?
与力「パンデミック」の「感染率」と同じですね。ボード上のオールドワンカードを配置する場所には、1つずつ数字が書かれています。で、表になっている中で、最も右側のカードの下の数字が召喚レートになります。
奉行なるほどな。で、邪教徒はアウトブレイクして拡散するのか?
与力いえ、邪教徒にアウトブレイクはありません。そのかわり、3人の邪教徒がいるマスに更に邪教徒が出現することになった場合には、“覚醒の儀式”が行われたことになり、新たなグレートオールドワンが出現します。
奉行はあ? なんじゃと?
与力ちなみに、ショゴスの移動も同じです。最終的にゲートにたどり着いたショゴスは、覚醒の儀式を引き起こしてしまいます。
奉行むむむむむ。説明書に「アウトブレイクもアウトブレイクの連鎖もない」とか書いてあったから、やや油断した。とんでもないぞ。
与力そうなんですよ。病原体同様、とにかく排除するに越したことはないです。
以上の手番を繰り返し、4つのゲートを全て封印すれば、プレイヤーの勝利となります。
与力まだ紹介していない敗北条件は「パンデミック」以来、わりとお馴染み感のあるやつで、「プレイヤーカードが尽きた」「邪教徒・ショゴスコマが足りなくなった」「一番最後のオールドワン、クトゥルフが覚醒した」というところですね。
奉行お、クトゥルフ御大は必ず一番最後なのか。そしてそこでゲーム敗北が決まるということは、オールドワンの覚醒=アウトブレイク、と捉えておいても良さそうじゃな。
やっぱりクトゥルー世界は絶望感に満ちている
*1ゲーム目*
与力では早速初手は私から。……、……あれ、いきなり邪悪の胎動……あれ、あれれ、あれれれれ?
奉行なんじゃなんじゃ? わしの手番になったと思うたら、すでにオールドワンが3体も覚醒しておるではないか。これはしたり。
与力ま、まさかこんなに運の悪さを発揮してしまうとは…
奉行いやもう、見事な引き運の悪さを見た。山札のカードはセットアップの時に決まるわけだから致し方ないとはいえ、すごかった。
与力ううううう。
初戦はいきなりオールドワン“イグ”の能力(封印に必要なカード5枚⇒6枚)に翻弄され、奮戦むなしくカードを消耗しつくして敗北。
*2ゲーム目*
奉行今度こそ勝つぞ。元々これは『パンデミック』じゃ。我ら歴戦のパンデミック戦士が、クトゥルフが相手になった程度で臆してどうする。
与力そうは言われましてもね、結構手札の回りが厳しいんですよ。上限7枚ずつ、2人で14枚持っておけるけど、なかなかカードが上手く揃わない。
奉行む、覚醒の儀式……しかもまたイグか!?
与力うへー。
手札の回りが悪く、どれを捨てるべきか悩んでいるうちに再びイグが登場。ゲート封印に必要なカード6枚を上手く集中させることができず、そのうち2人ともに狂気に陥って2連敗。
*3ゲーム目*
奉行勝つぞ。その方、探索者を変えてみよ!
与力はっ。では……移動手段にすぐれた「新聞記者」で参ります。
奉行むっ、最初の邪悪の胎動だが……おのれ、推参な!
与力えーっ、またイグですか!?
奉行好かれてるのかわしら……?
カード6枚のハンデにもめげず、3つまでゲートは封印したものの…
奉行ああ、いかん、御大が目覚めてしまった。
与力3連敗ですよ……。
奉行しかも全部イグにしてやられている……。
*4ゲーム目*
与力、再び探索者を変え、5アクションが可能な「医者」を投入するも、早々に狂気に陥り、4アクションできるだけのメタボおじさんと化す。そしてお決まりのイグが登場し、山札が尽きて4連敗。
*5ゲーム目*
奉行いかん……これがJリーグだったら、そろそろサポーターがゴール裏で抗議の座り込みを始める頃合いじゃ……。
与力釈明と話し合いは、お奉行が行ってくださいよ。
奉行もう絶対に勝つ。勝たねばならん! というわけでがっつりキャラクターを変えて、心機一転で挑むぞ!
奉行わしの「探偵」は、5枚のところ4枚でゲートの封印が可能となる。『パンデミック』の科学者じゃな。
与力わたしの「ドライバー」は、移動アクションで2マスまで移動することが可能となります。この機動力で駆け回れれば、邪教徒処理とカードの受け渡しにかなり力を発揮できそうです。
奉行うはああ……か、勝った!
与力どうにか勝てましたね……今回の勝因はなんだったんでしょう? 慣れてきた、カード運、色々あるかと思いますが。
奉行うん、まあ、イグが現れなかったことじゃないかな。
与力そこですか?!
奉行もう、わしあいつ嫌い。
『パンデミック:クトゥルフの呼び声』【ここがイカス!】
奉行上手いこと両方のよい所を混ぜられている、と思う。
与力そうですね、病原体ではなく、邪教徒の増殖はどう処理されるのかと思っていましたが……
奉行オールドワンの覚醒につながっていく、というのは面白いアイデアだった。あんなに連鎖的に開くとは思わなんだがな。また、いってみれば強力な病原体コマとしてのショゴスもいい味を出していたな。すごい動くし。
与力ゲートがほとんど封印されているときに、一番近いルートを探してトコトコ歩いていくショゴスに、若干のほほえましさを感じてしまったのは不覚でしたが。
奉行あんなテケリ・リとか鳴く生命体を愛玩するのはやめてくれ。あとはそうだな、カードによるバス移動が強力であったが、あれのおかげでスピーディかつだれずにゲームを進行できたように思う。
与力そうですねえ。逆にゲート移動はあまり使いませんでしたね?
奉行ダイス運しだいというところもあるが、邪悪の胎動のことを考えると、4点しかない正気度を危険に晒してまで使う移動かどうか、判断に迷ってしまってなあ。
与力なるほど、お考えが深い。
奉行褒めても何もでんぞ。自分たちのダイス運が信じられないだけだし。そういえば、オールドワンが現れるごとに様々な影響が及ぼされたが、あれらは全部で何体なんだ?
与力クトゥルフ込みで12枚ですね。
奉行ふむふむ。使用されるのは7枚で、最後のクトゥルフは確定。11枚中の6枚が無作為に置かれる訳だから……
与力組み合わせは色々と変わりますから、毎回違った展開が楽しめますね。こいつらのカードが開くときは、やっぱりドキドキしますから。
奉行まあ展開次第で癒し系になるやつも、おらんではないがな。うちはイグ封印しよう。
与力駄目ですよ。
『パンデミック:クトゥルフの呼び声』【ここはちょっと…】
奉行正直、イグとハスター次第で難易度が激変する。
与力名指しですね。
奉行うーん、少なくとも、2人プレイではな。特に封印のための必要カード数が上がるイグがいると、相当につらかった。3人ならば21枚保持できるから、まだやりくりできるかもしれんが、バス移動を要だと考えた今回のプレイでは、自由に使えるカード枠の不足は、顕著に移動の鈍化を招いた。
与力バスを使わない……のは辛そうですね。
奉行どうなるのかな、できるだけ徒歩移動のプレイをしてみたらわかるのかも。後はわしらがヘタクソという可能性も否定はできないが、とにかくきつかった。ハスターに関しては、状況次第でショゴスコマが足りなくなって即死を引き起こしかねん、ということだ。これは2人でなくても危険なポイントだろう。
与力さすがクトゥルフのライバルですね。しかし5戦して毎回イグが潜んでいた、ってのも、結構な確率でしたね。なんでこんなに好かれたのでしょう…。いや、むしろ“イグの呪い”か。
奉行うむ、『エルドリッチホラー』で彼奴を倒してくれば、その呪いも解けるやもしれぬぞ。
与力ほんとですか、じゃあ早速やりましょう。
奉行他日にな。しばらくこいつらの顔見たくない。で、他に気になったことといえば、正気度の回復手段はこんなものなのだろうか。遺物カードの中に正気度を回復できるものがあることを期待していたが……
与力全く見ませんでしたね。
奉行とはいえ、狂気に陥っての敗北は5戦中1戦。プレイ人数を増やして、狂気に陥る順を上手くローテーションすれば、さほど回復に気を遣わんでも良いのかもしれん。
与力やなローテーションだなあ。
奉行まあそんなところだ。あと、クトゥルフものにありがちな要素の説明、いわゆるフレーバーテキストというやつは大半省かれていて、そこに期待はできないぞ。
与力そういう要素はないですね。クトゥルー好き特有の、「カードを読んで楽しむ」1人プレイができないです。
奉行残念そうだな?
与力若干は。
奉行テキストに味があるもんなあ。あ、そういえば「オールドワンの扱いが微妙じゃないか」という話だが。
与力そうなんですよ。アザトースがクトゥルフよりも下位扱いな感じだったり、クトゥグァを差し置いてダゴンがいるのが、ちょっと不思議に思えただけで。細かい話です。ダゴン&ハイドラで1枚でもいいと思うんですけどねえ。
奉行聞いといてなんだが、細かかった。クトゥルーに精通している者同士で議論を交わしてくれ。
奉行この細かい中仕切りはなんだろう?
与力フィギュアを詰め込む……のでしょうか?
奉行謎だなあ。何か別ゲームの使いまわしなのか、それともこれが埋まるくらい拡張でも出るのか。