アイル・オブ・スカイ:族長から王へ 日本語版(ボードゲーム開封編)
【登場人物】
与力藩の買掛担当。ウィスキー? アルコールは飲めないのですよ……
奉行藩の決裁担当。日本酒と焼酎は大好きですが、洋酒はちょっと苦手。
なんか不安げな族長さんたち
奉行なにやらこう、凛々しさとかよりも悲壮感の方が先立つご尊顔だが、やはりどこでも武家の棟梁というのはつらいのであろうなあ……。
与力いや、それはどうかは分かりませんけども。
『アイル・オブ・スカイ』は、各プレイヤーはアイル・オブ・スカイの王となることを目指し、より価値のある領地を作り上げていくことが目的のゲームです。まず、ゲーム前に、プレイヤーごとに「城」が書いてある地形タイル(スタートタイル)、得点マーカー、捨てマーカー、ついたてを受け取ります。
ゲームボードをテーブル中央に置き、所定の4か所に、得点タイルを1枚ずつ配置します。ラウンドの進行を示すラウンドマーカー、各プレイヤーの得点マーカーも同じく配置をします。そしてコインをゲームボードの横にまとめて置き、地形タイルは付属の袋の中に入れ、よく混ぜます。これで準備は終了です。
奉行準備がサッと終わるのは楽ちんだな。しかし、この残りの得点タイルはどうするのだ?
与力今回はそれは使いません、ということです。ここら辺については、また後で。
好みの領土は手元に残し……
ゲームは基本的には6ラウンドで行われ、最も多くの得点を獲得できたプレイヤーが勝利します。各ラウンドは「収入」「タイルの獲得と配置」「得点計算」といった流れで進行します。
奉行聞いている分には単純じゃな。
与力実際、遊んでみてもそんなに難しい所は無いと思います。
―収入―
「収入」は、各プレイヤーごとに必ず5金発生します。その他に、「城」の書いてあるタイルから道でつながっているウィスキー樽のあるタイル1枚につき、1金の追加収入が得られます。
奉行つまりこの領土だと、樽が1つあるから、6金の収入、ということになるのだな。
与力それに加えて、ラウンドが進むと、「自分より勝利点を多く稼いでいるプレイヤー1人につき幾らか」の追加収入が発生します。
奉行ほほう、つまりゲームが先に進むと、苦しい立場に置かれているプレイヤーには、国からの補償が発生する訳であるか。
与力まあ、そんな感じですね。国からかどうかは知りませんけども。
―タイルの獲得―
各プレイヤーが領地を広げ、発展させるための地形タイルを獲得する手順です。まず、スタートプレイヤーから順に、全プレイヤーが袋の中から地形タイルをランダムに3枚引きます。その後、相手に見せないままタイルをついたての後に並べ、どれか1枚のタイルに「捨てマーカー」、残り2枚のタイルに手持ちのコインを使って値付けを行います。
奉行値付けだと?
与力はい。値付けと捨てマーカーの割り振りが終わったら、ついたてを外し、全員から見えるようにします。そして、全プレイヤーの「捨てマーカー」が割り振られているタイルを袋に戻します。
奉行ふむ……
値付けされたタイルだけが残った状態になったら、スタートプレイヤーから順に、他のプレイヤーが値付けしているタイルを購入するかどうか、宣言します。購入する場合には、値付けされている分のコインをそのプレイヤーに払い、タイルを受け取ります。もちろん、購入せずパスをしても構いません。
与力購入できるのは1枚だけなので、買い占めとかはできないんですけどもね。
奉行なるほどなあ。値付けするのは色々と意味が出てくるわけか。例えば「あいつ、絶対これ欲しがるから強気に値付けしとこう」とか、「これは渡したくないから高値にしておこう」とか、逆に「誰も欲しがりそうにないから、安くしておこう」とか……
与力そんな感じの駆け引きになりますかねえ。ただ、注意すべき点が1つ。誰も購入しなかったタイルは自分のものになる訳ですが、その際、値付けに使っていたコインはすべてストックに戻すことになります。
奉行ぬっ。となると、やたらと高額の値付けをするわけにもいかん、ということなのか?
与力そうです。ここは頭を捻るポイントですよねえ。
獲得したタイルは、ルールに従って自分の領地に置いていきます。ルールは、
- 既に置いてあるタイルと一辺以上接すること。
- 接する辺は同じ地形であること。
の2つです。もし置けなかったら、そのタイルは袋に戻します。
奉行これはあれだな、『カルカソンヌ』なんかと同じような、タイル配置ではよくあるルールだけに、分かりやすいな。
与力そうですね。ただ、一つだけポイントが。「道はつなげなくてもいい」ってことです。
奉行なぬ。道がつながっていないと、気持ち悪いではないか。あと、ウィスキー樽の得点が発生せぬぞ?
与力それはそれ、です。そこにこだわるか、置くことにこだわるか。その選択も重要になってくるんでしょう。
―得点計算―
ラウンドの最後に、各プレイヤーが保有している領地の現状に応じて、得点が入ります。
得点ボード上には、4枚の得点タイルが並べてあり、各ラウンドごとに、どのタイルの条件に当てはまっていると、得点が貰えるかが示されています。
奉行つまり、どのラウンドにどういう状態になっていれば得点が貰えるのか、実はゲームの最初の準備の時に分かっていた、ということなのだな?
与力そうです。つまり、それを考慮しつつ領地を広げていくといい、ってことになる訳ですよ。
奉行うーむ。つまり、出来上がりの美しい、理想の王国をつくっているだけでは、王にはなれない訳だ。
与力好みや引いたタイルだけでなく、必要に応じてヒツジやらウシやらが闊歩する土地にしていかないとだめ、ってことですね。
奉行ははあ。ラウンドごとに得点の条件が変わることも、よく考えていかんと、だなあ。
巻き物とチクワは間違えない
この手順を6ラウンド繰り返します。6ラウンドが終了したら、最後に自分の領地の中に置いてある巻き物タイルの条件が満たされていれば、ボーナス点を獲得できます。また、使わなかったコイン5金ごとに、同様にボーナス点を獲得します。
奉行巻き物タイル?
与力例えばですね……
与力領地の中に「船が2隻あったら1点」とか「灯台が1つあったら1点」とか、そんな感じの指示が描かれているのが巻き物です。
奉行ふむふむ。
与力で、その巻き物が「完成したエリア」の中にあった場合、ボーナス点は2倍になります。
奉行完成したエリア、というのは、『カルカソンヌ』でいうところの完成した都市みたいなもんであるか?
与力そうですね。説明書の定義的には、「他の地形に完全に囲まれている状態」になっていれば、ということらしいです。
奉行湖なら草原や山、山なら草原や湖に囲まれていれば、ということか。まあ見ればわかる……かな?
与力きれいにつなげたつもりですが……
奉行ウィスキーにこだわったのが、なんとなく見て取れるな。
得点になりそうなタイルがさっぱり引けない与力に対し、順調に得点を伸ばす奉行、といったおなじみの光景も繰り広げられました。
『アイル・オブ・スカイ』【ここがイカス!】
与力タイル配置に若干のひねりが加わったゲームでしたが、どうでしたか。
奉行うん、期待通りに面白いと思った。特に、タイルの値付けによるやり取りが秀逸だなあ。
与力そうですね、そこでプレイヤー間の駆け引きを入れてくるとは!って感じです。
奉行出来上がる領地もなかなか綺麗に出来たりする一方で、タイルの引き次第ではひたすら湖、みたいなこともあるしな。
与力……暗に私の引き運のことを仰ってますね。
奉行むふふ。あとはそうだな、得点のパターンが変化するのがよいな。
与力今回は説明書に乗っていた『初回推奨のタイル』で遊んでみましたけども……
奉行16枚のタイルからランダムに4枚並ぶ。毎回得点のパターンは変化する。……ということは、毎度毎度同じように領地を作っていては勝てぬ。繰り返しのゲームに耐えうる工夫だな。
与力結構簡単に遊べるルールであるところも、ポイントが高いですね。
奉行そうじゃな。誰でも見通し良く遊べるであろう。難点は、得点タイルのパターンを覚えるまでは、説明書が手放せない、ということかな。
与力遊び方次第では、大分経ってから使われる得点タイルとかありそうですよね。
『アイル・オブ・スカイ』【ここはちょっと……】
奉行流石に賞を取るようなゲームだけあって、すごく気になるようなポイントは無いわけだが、ちょっと気になるポイントなら無くも無い。
与力えらいお茶を濁しますね。
奉行いや……少し引っかかるというか、「軟弱な意見だ」と言われてしまいそうなんだがな。タイルの値付けの時に、どのくらいの価値をつけたもんか、基準がよく分からんかった。
与力はあ、なるほど。相場感というか、そういったものがつかめなかったという訳ですか。
奉行遊んでおる者の様子をよう見て、それで価格を振っていけば良いのであろうが、なかなか難しゅうてなあ。無駄に高額な値付けにしてしまったと感じたことも何度か。
与力遊んでいるうちに慣れるんじゃないですかね。
奉行そうであると願いたい。値付けミスによって、コインの保有量で大きな差をつけられてしまうと、辛い……。
与力他にはどうですか?
奉行そうさなあ。このゲーム、「エキスパートゲーム大賞」の作品にしては、結構スッキリしたゲームだった、と思うが、お主はどう思う?
与力へ? 「エキスパート」というほど要素が詰まっていない、と、そういうことですか?
奉行いやいや、そういう訳ではない。ただ、見通しが非常によくてのど越しスッキリ爽やかなゲームなので、ちょっと賞の名前とは印象が違うなあ、とな。
与力ああ、「エキスパート」とか言われちゃうと、超ヘビーな2時間以上かかるゲームとか想像しがちですもんね、我々。
奉行時間をかけてどっぷりワンプレイというより、ついつい「も、もう一回!」と言い出したくなるタイプのゲームだな。
奉行しかし、領土云々と聞いていたかならあ。『ブレイブハート』のように、血生臭く王位をめぐって争うのではなくてよかった安心したぞ。
与力あれをタイル配置ゲームで再現するのは、難しいでしょうに。