リゴレのレポート≪リゴレぽ≫ 第6回 店長と『パンデミック』 presented by 聚英 

ボードゲーム愛好

「お腹いっぱい満足になるゲームです。この海鮮そばのように」

【リゴレのレポートって?】
「一生遊べるボードゲームをお客様にご提案したい」リゴレ店長と、「一生ボードゲームで遊んでいたい」ほ~らく奉行所の与力が、横浜中華街の有名レストランの一角で、ランチタイムにそっと繰り広げるボードゲームトークの様子をつづったレポート、略して「リゴレぽ」です。
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※掲載情報は2018年9月時点のものです。
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与力ほ~らく奉行所ボードゲーム方の買掛担当。わりと頻繁に風邪をひくタイプです。

店長横浜のボードゲームショップ・リゴレの伸居店長。ボードゲームと横浜中華街のお店選びならお任せ! ボードゲームの魅力を感染拡大させていきたい!

本日のテーマ『パンデミック』 その1. 協力ゲームの金字塔、と言わねばならない。

店長えっと今日は『パンデミック』で行きたいと思います。

与力おお、それは私の心のゲームですよ! いいですね、いいですね!

店長しかし、飲食店で『パンデミック』の話をするってのも、どうなんだろうね(笑)。

与力世界を救うゲームということでご容赦いただきましょう。(笑)

パンデミック:新たなる試練 リゴレ リゴれぽ
『パンデミック:新たなる試練』

デザイナーはM・リーコック。2008年に発売され、多くのファンを獲得、世界中で賞に輝いた。プレイヤー全員が恐るべき病原菌から世界を救うため、協力してシステムと戦う“協力型ゲーム”であることが最大の特徴。2013年に新版として『新たなる試練』が発売され、2018年には10周年記念として缶入りの特別モデルが発売される。また、拡張、派生ゲームも数多く発売されており、超メジャータイトルの1つに成長した。

与力『パンデミック』は、協力ゲームとしてはまさに金字塔という表現がぴったりくるゲームだと思うんですが、どういった経緯で遊ばれたんでしょうか。

店長えっと、2008年の発売当初から……2008年でしたっけ、発売。

与力そうですね、2008年です。

店長そうかあ、僕、ボードゲーム10年やってるんだね。そうか(しみじみ)。

与力もう、「ひと昔前」になってしまいましたねえ。と、年の経過を感じさせてくれる『パンデミック』との出会いなんですが。

店長ああ、はい。ジョーコデルモントですね、僕はやっぱり。

与力店長にとってボードゲームの入り口ですね、ジョーコは。

店長2008年くらいの時期は、ジョーコで見て面白そうなゲームを買い漁っていたんですけども、評価が高くて、それでネット通販で購入したと思います。初版の、木製キューブで、ペタッとした絵のやつですね。

パンデミック:新たなる試練 リゴレ リゴれぽ
初版のペタッとした絵(英語版)

店長その時、このゲームはホビージャパンがもう日本語版出してて。すごいなあ、と思いました。日本語化の波みたいなものも、『パンデミック』からだったんじゃないかなあ。

与力ああ、確かに日本語化は早かったですね。

店長今は、どういう流れでやってきたゲームか、っていうのが分かるんですが、当時は日本語版見て、「日本で出してるゲームなのかなあ」なんて、よく分からないこと考えてましたね。

本日のテーマ『パンデミック』 その2. 貴重な“2人から”ゲーム

与力『パンデミック』は、ウイルスがどんどん拡大していくメカニズムであるとか、カードの使い方とか、遊んでてドキドキする要素が非常に多いと思うんですが、そういう感じありますか。

店長ありますね、やっぱりシステムが斬新ですよね。

与力では、特徴的な部分を一つずつ見ていきましょうか。まず、協力ゲームという最大のポイントですね。ちなみに、協力ゲームを『パンデミック』以前に遊んだことはありましたか?

店長ないです。これ以前だと、何がありましたっけ?

与力『アーカムホラー』とか、『キャメロットを覆う影』なんかはこの数年前のゲームだった気がします。裏切者が混ざりますけど。

店長なるほど。『パンデミック』は、今でも人に話すときに「協力型ゲームの最高峰ですよ」「最初にして最高峰のゲームですよ」って勧めるんですが……意外と夫婦に勧めていける。

与力おっ、2人プレイですか。

店長2人でもとても面白いですよね。2人用っていうと、『コリドール』『クアルト』『ガイスター』って、いかにも2人用のゲームがあるじゃないですか。そういうのじゃないんだけど、多人数対応のボードゲームで、かつ2人で遊んでも面白いゲームって、僕の中で貴重なんですよ。『ルーンバウンド』なんかもいけると思いますけど。

与力“2人からできるボードゲーム”ですね。確かに、「2人用」と「2人から遊べる」って、同じように思えてちょっと違うんですよね。

店長そうです、違います。

与力ルール上は2人から遊べるゲームと言うだけでなく、2人で楽しいと思える調整が効いているゲーム。ありそうで無いんですよねえ。

店長先日も「カードゲームは沢山遊んでいるけど、ボードゲームが欲しい」っていうお客様がいらっしゃって、『カタン』を手に取って、「あともう1つ欲しい」っておっしゃってたんですね。で、『パンデミック』を推しました。ご購入いただけたんですが、個人的にすごく満足感のある仕事ができたと感じてます。絶対大丈夫、安泰なゲームをお勧めできた、って。

パンデミック:新たなる試練 リゴレ リゴれぽ
「もちろん新婚家庭である我が家でも楽しいゲームです」と照れずに語る店長。

本日のテーマ『パンデミック』 その3. 雰囲気が没入感を生む

与力次は、カードのメカニズムいってみましょうか。特にエピデミック関係の処理とかですけど、いかがでしょう。私は非常に気に入っている部分なんですが。

店長はい、素晴らしいですね。エピデミックカードを何等分化したプレイヤーカードに混ぜて、っていう発想。

与力治療を進めていっても、根絶しない限り、エピデミックがくるとまた同じところで病気が発生する。あの根絶できそうと思ったらバーンとカウンター食らう感じが、すごく病気っぽいというか、映画っぽいというか。

店長そういうところもいいゲームですよね。実際、インストは結構時間かかっちゃうんですが、頑張ってインストすべきゲームだと思っています。

与力ふむふむ?

店長まず、「とにかく忙しく世界を飛び回ることになります」っていう、フレーバーとゲームの雰囲気の中間ぐらいの言葉を言いますね。

与力なるほど。大体のイメージを掴ませると。

店長それから、エピデミックカードがプレイヤーカードの中に挟まれている、というのをセットアップの時に見てもらって、「ここにイヤなものが入ってるのを覚えてください。等分したカードの山の中に、すごくイヤなものが入っています」、「で、これを切ります。さっきのがどこにあるか分からないですけど、ある程度定期的……というほどではないですが、絶対に皆さんにとって不利なことが起こるようになっています」「そして世界中忙しく回ることになります」という説明を挟みながら、システムの話をしますね。この辺の説明は言ってて好きなんですけど。

与力ははあ、そういう感じで導入していくんですか。

パンデミック:新たなる試練 リゴレ リゴれぽ
実際の地名が記されたボード。

店長僕は皆さんにしっかりしたボードのあるゲームを勧めていきたいと思っていますが、『パンデミック』はかなりお勧めしています。ただ、ゲーム的な処理があるから、テレビゲームの経験がある人で、ボードゲーム初心者の方に安心してお勧めできるかな。

与力ボードは世界地図、あとはキューブとポーンだけなんですが、すごい没入感があって、実際に世界を駆けまわっている感じは強いですよね。

店長そこからくる会話がまた素晴らしいですよね。「次、ちょっと香港行ってくれないかな」とか、「ムンバイ行くから香港のヤツなんとかして」とかの会話が、ボードの中に没入して、それを話しているから、すごくいいです。

与力分かります。自然と会話にリアル感が追加されるというか。

店長世界がボードになっていて、かつその上を移動するゲームって、結構それだけでいいゲームっていう気がします。

与力世界地図って、ある程度の年齢になるとみんな知っている要素ですから、それで遊べるというのがポイントなのかもしれません。ゲームに入っていきやすいですよね。

店長あと、そこにやっぱり日本が入っていて欲しいです。大阪も入ってると嬉しいですよね。

与力そうですね、大阪あると「おっ」って気がします。

店長あと、繰り返しですけど、ボード上を移動するゲームってやっぱり楽しいです。すごくボードゲームしている実感があるというか……。

与力ただゲームしているだけじゃなくて、その世界で何かやってる感じが強くなりますよね。

本日のテーマ『パンデミック』 その4. プレイヤーはヒーロー

店長『パンデミック』は刻一刻と状況が悪くなりますから。そういう中で、初プレイがすごく楽しい。

与力初回から楽しい、と?

店長ええ。初プレイはみんなウイルスキューブ取りに走ると思うんですよね、特に衛生兵なんか担当したら楽しいし。で、移動にどんどんカード使って、感染レベルが高まっていって「あーこれもうだめだ、カードそろわない!」みたいな。

与力見てる方が、もっと楽しい展開であるような(笑)。

店長なので、インスト時にちょっとアドバイスはしちゃうかもしれない。少し無理してでもカード渡した方がいいよ、って。

与力あ、それは確かにそうかもしれません。

店長そして負けてしまった時。顔を見るとわかりますよね、興奮しているプレイヤー。

与力もう一回やりたいって顔になってますよね。

店長「あー、あと一歩だったのになあ」みたいになっていて。悔しいからもう一回ってなった時、役職が変わると全然ゲームが変わって、勝ち方を探っていくのもまた楽しくなる。

与力役職で全然動きが変わりますよね。それがまた楽しい。

店長個人的には『通信司令員』が強いと思うんだけど。役職ごとに誰がいると便利か、そんな話はしちゃうかもしれないです。

与力面白いのは、「今回のゲームではこいつがいれば勝てたのに」というのがある一方で、また別のゲームでは「そいつじゃなくてやっぱあいつだった」みたいなことが起きるところだと思うんです。全部の役職が上手く補完し合っているようで、絶妙にちょっと足りなくなるっていうのが、うまいですよね。

店長なるほどですね。

与力没入感については既に触れていますが、『パンデミック』の役職も絶妙だと思います。全員で戦う、壮大な映画なような。

店長ヒロイックですよね。一般よりは廃スキルな人たちなんだけれども、みんな協力して世界を救おうとしている必死感があって。あ、ちなみに初版は持ってます?

与力持っています。

店長ああ、さすが。で、初版の衛生兵ってかっこよくないですか。僕、好きなんですよね、あのイラスト。ちょっと泥っぽい感じがグッとくる。

パンデミック:新たなる試練 リゴレ リゴれぽ
初版の衛生兵ご尊顔。

与力みんなスペシャルな、各局面で光る能力を持っているので、それを使うことを考えていくと、プレイヤー全員に活躍のタイミングが来るっていうのは素晴らしいですよね。

店長そういう部分を奉行問題でつぶさないでほしい、っていうのはありますね。せっかくキャラクターが生きてるから、その辺を上手くやってほしいな。

与力そうですねえ。

本日のテーマ『パンデミック』 その5. 奉行問題を乗り越えて

与力協力ゲームの話題になると、どうしても避けられないのが「奉行問題」という若干否定的な話題です。いわゆる「過剰に仕切る人の存在」、ということになるでしょうか。

店長難しいですね。僕が『パンデミック』の奉行問題に気付いたのは、体験的にでした。昔、「もうやりたくない」って言われたんです。

与力次の手とか全部言っちゃったからですか?

店長ええ。それ以来、「口出しすぎるのはやめよう!」と思っています。実際、『パンデミック』が流行ったおかげで、世界中のボードゲーム界隈で奉行問題の何がダメ、っていう議論が出ましたね。

与力やはり世界中に出現したんですね、奉行が。

店長で、アメリカ人の方が取り上げた文章とか読んで……口出したがる人、いわゆる奉行っていうのは「ゲームの勝ち筋を知ってるし、何やればいいかわかってるから、次のことを言ってしまう」みたいなプレイヤーなんですよね。

与力うーん、それこそ「ゲーム大好きな方、ゲームに勝ちたいって真剣に取り組む人」ほど効率的な手を模索しますから、仕方がないと言えば仕方がない。それに対して同じだけの熱意で返せる人たちのみでボードを囲んでいればいいんでしょうか。

店長難しいですね。

与力現実世界のプレイヤー間の力関係とか、性格みたいなものも絡んできますからね。

店長なるほど、そういうのもありますね。僕がよく遊ぶ仲間に、すごく頭の切れる人がいるんですよ。その人と一緒に遊んでいるときは、逆に積極的にその人に相談したりしますね。その人は色々言ってくれて、でも「最終的にはお任せします」ってスッと振ってくれる。

与力ふむふむ。

店長あるいはこれも奉行なんでしょうけど、全然イヤじゃないんですよね。むしろ楽しい。頼もしい。その人、実際頼もしいからモテるんだけど(笑)。

与力格好いいですね(笑)。すると、奉行格になる人の特性ってことになるんでしょうか。

店長有無を言わさずとか、断定的というか、そういうアドバイスが過ぎると、「ちょっと……」って感じになるのかもしれません。

与力言い方は確かにありますね。

店長「これしかない」「これやってください」とか言われちゃうと、ちょっとねえ。そう言えば、与力さんは"お奉行"と2人で遊びますよね。問題ないですか?

与力問題はないです。(編注:"お奉行"は、与力のゲーム仲間のハンドルネームです)

店長それはなぜでしょう。今、僕の中で仮定があるんだけど……。

与力えーとですね。基本、私がいろんな可能性を言います。で、その中から奉行が決断します。

店長やっぱりそうだと思いました。考える人と決断する人が別、という役割分担が普段からきちっとできているグループだと、やはりいいんでしょうね。

与力うちはボードゲーム買う時でもそうですからね。私が優柔不断気味っていうのも大きいんですが。

店長『カタン』あるじゃないですか。言葉による資源交換が欠かせない交渉ゲームだから、問題が起きやすい。

与力ふむふむ。

店長でも、"ファミリーカタン"の場合は、実は結構幸せだと思うんですよ。「パパ、麦と鉄を交換して」とか息子に言われて、明らかに不利なんだけど、息子弱いし、パパは今勝ってるし、「まあいいか」っていう感じで受け入れちゃう。

与力なるほど、対等なゲーマー同士の勝負だとあり得ない展開ですが、ファミリーならそういうこともありますね。

パンデミック:新たなる試練 リゴレ リゴれぽ
「我が家のファミリーゲームもいい感じです」と新婚家庭の事情を語る店長。

店長ということから、『パンデミック』も、そういう意味では仲がいい人同士でやれば、まず大丈夫だと思うんですよ。

与力現実世界の関係に依存してしまう感じですが。

店長昔、『モノポリー』を2人でずっと遊んでいたご夫婦にゲームを提案したことがあって。

与力えっと、『モノポリー』って絶対2人向きじゃないですよね。それ成立するのはすごい。

店長そう、逆にね、それいけるなら『パンデミック』が一番いいと思って。

与力そうですね。『パンデミック』で全然いける。

店長これは完全に憶測ですけど、ファミリー向けのゲームがオープン会とかゲームカフェで遊んでいただくと、今一つしっくりこなかったりすることって有るような気がしてます。

与力ははあ。

店長実は「しっかりとした人間関係があるところから始めた方がいいゲーム」と、「人間関係無しで始めても大丈夫なゲーム」って、区別があると思うんですよね。

与力ああ、確かに。うなずけます。そして『パンデミック』は、前者の環境で遊んだほうが、ゲームのポテンシャルを余すところなく発揮できるのかもしれませんね。

本日のテーマ『パンデミック』 その6. ぜひ一度は体験してほしい

与力話をまとめていきましょう。『パンデミック』は協力ゲームの金字塔で、かつ2人から楽しいボードゲーム。

店長しっかりしたボードがあるボードゲーム。

与力で、特にさっきの話からすると、リゴレさんが推奨しておられる、関係の近い人、家族とか恋人とか、よく気心のしれた友達とのゲームシーンだと、より一層盛り上がる、というゲームなんでしょうか。

店長そうですね。やはり、ある程度仲いい人とやりたいな、と思わせますよね。

与力あ、そうそう。アウトブレイクのシステム、どう思われました? キューブがボード上に拡散していくのが病原菌ぽくてリアルた、と僕らは思ったんですが。

店長いいですよね。だんだん手に負えなくなる感じとか。ヒーローが活躍するためにはそういう困難がなきゃいけないですけど、結構勝てないじゃないですか(笑)。

与力結構勝てないですね(笑)。

店長結構勝てないですよ。あれがまたいいですよね。ちゃんと絶望を与えてくれるからいいですよね。

与力ほどよい勝率なんですよね、たぶん。勝ち過ぎないし、かといって負けすぎない。

店長最善手ってあるんですかね、あのゲーム。

与力世界選手権とかに出場するチームのプレイを見てみたいですね。そういうテレビ番組あったらずっと見ちゃう気がしてますよ。

店長ともあれ、『パンデミック』はエポックメイキングなゲームだと思いますよ。間違いなくボードゲームの歴史を変えましたよ。

与力そうですね、協力ゲームっていうスタイルをカジュアルにしたというか、一般的にしたのが『パンデミック』かな、と思いますよね。ぜひぜひ、未プレイの方には遊んでいただきたい。

店長もしかすると最近始めた方たちは、意外と遊んでいないシリーズに入るかもしれないですが……。

与力それはもったいないです。

店長遊んだほうがいいというか、遊んだほうが幸せなゲームですよね。

パンデミック:新たなる試練 リゴレ リゴれぽ
『パンデミック』とともに、皆様に幸せが訪れますように。