リゴレのレポート≪リゴレぽ≫ 第13回 店長と2021年(2021.12.16収録)

ボードゲーム愛好

「両方ともやりたいわけです」

【リゴレのレポートって?】
「一生遊べるボードゲームをお客様にご提案したい」リゴレ店長と、「一生ボードゲームで遊んでいたい」ほ~らく奉行所の与力が、横浜中華街の片隅でそっと繰り広げるボードゲームトークの様子をつづったレポート、略して「リゴレぽ」です。
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【登場人物】

店長横浜のボードゲームショップ・リゴレの伸居店長。

与力ほ~らく奉行所ボードゲーム方の買掛担当。

2021年の出版実績など

年末繁忙期の合間を縫ってご協力いただいた店長。

与力大変久しぶりですが、本日もよろしくお願いいたします。『マウンテンキング』のお話をうかがって以来ですね。

店長そうですね、そうなりますね。

与力早速ですが、2021年のリゴレは、出版予定を出されて、結構なラインナップをしっかりアナウンスされました。それでここまで『ローゼンケーニッヒ』が出て、『スペースエクスプローラーズ』、それに『マウンテンキング』が出たと。そして間もなく『1号線で行こう!』出ます。

店長『ローゼンケーニッヒ』って今年(2021年)出したんでしたっけ?

与力たしか今年の頭だったと記憶していますが。

店長そうか、ギリ今年の頭ですね。そうですね。

(注:2021年2月13日でした)
https://twitter.com/rigoler_/status/1356120520488415233

与力さらに今後、『トラヤヌス』が控えていると。そういう状況ですね。

店長予定していた作品では、『聖杯サクセション』がありますね。アートワークをすごく信頼できる方にお願いできたので、動き出しているという感じです。それから『カフーツ』っていうカードゲームの協力ゲームがあるんですけど、これもいまアートワーク制作を始めています。

与力鋭意製作中の1つですね。

店長 結構イラストを変えなきゃいないかな?というタイプのゲームになるので、大変でしたね。言語周りの作業より圧倒的に時間かかります。

与力イラスト変えるって結構大変ですよね。

店長はい、イラスト変えると説明書の内容も必然的に変わるので、全部変わるんですよ。その大変さがありますね。

与力それで今更なんですが、出版されたタイトルは購入して遊んでおられる方も多いですけれども、それぞれの特徴と、こういうところをおススメしたかったんだよっていうポイントがあれば、ぜひ一つずつ改めてご紹介いただければと思うんですけれども。

店長まだ出てないやつも話していいですか?

与力はい、お願いいたします。

店長わかりました。まず『ローゼンケーニッヒ』ですね。これは2人用の落ち着いたゲームが出したいなっていうのがちょっとあったんですよ。

与力落ち着いたゲームですか。

店長はい。それで、運の要素と考える部分とが適度にあって、そこがとても良いと。それから、“見た目がいい”っていうのはゲーム出す時にこだわりが有りまして。

与力見た目は確かに重要ですね。

店長『ローゼンケーニッヒ』はそのこだわりにすごく合っているなっていうのがちょっとありましたね。とはいえ、これほどの有名ゲーム、そもそも出せるのかって感じだったんですけど、ちょっと行動してみた結果、話がトントントンと進んで、出せるようになったという経緯だったんですよね。

与力超有名タイトルですものね。

店長そうですね。見た目の部分では木製コマを使っているとか、ゲームでは運と思考の要素両方があって、個人的にはそこが気に入っています。

与力結構「『ローゼンケーニッヒ』はやっぱり木製コマが」っていうのは言われていましたね。

店長そうですね。次に『スペースエクスプローラーズ』の話を。もう在庫が結構なくなっちゃっているんですけど、小売店さんにはまだ少し残っていると思います。

与力大好評につき完売間近と。

スペースエクスプローラーズ(リゴレオンラインショップ)

店長このタイトルは自分としては挑戦だったんですね。要は、あまり知られていないタイトルの良さをきちんと伝えたら、果たしてどのくらい遊んでもらえるのかな、みたいなところで。

与力確かに、海外で話題のあの作品!という位置づけのタイトルでは無かったですかね。

店長そういう意味で言うと、うちみたいな小さいところが手掛けることに意味が有るのかな、とちょっと思ったんですよ。ゲーム性はすごくよくて、ちょっととがった中量級ゲームという部分がいいなあっていう気がしていました。アートワークもすごく惹かれますしね。

与力お値段的にもなかなか手ごろで。

店長そう。3,850円という価格ながら、十分よく遊べるゲームだと思いますね。それでこの作品と比較される『宝石の煌き』は、すごくよくできている…でき過ぎているんですが(笑)、あれぐらいの難易度・ボリューム感で、もうちょっと要素を増やした亜種みたいなゲームは、結構色々あってもいいんじゃないかなと思っていて、そういう作品の中で『スペースエクスプローラーズ』はご縁があって出せた訳です。

与力先日2人で遊びましたけど、結構テンポよく遊べました。

店長そう、テンポよくて、1ゲームが早い。ゲーム慣れしてる人同士で遊ぶと、特に早いですね。繰り返し遊べます。

与力さて、それで『1号線で行こう!』になります。

店長まず、そもそもなぜ『1号線で行こう!』が好きなのか?ということは色んなラジオとかブログで書いたんで、リスナー、読者の方には同じ話になるかもしれませんが…(笑)。

与力絶賛放送中ですからね、ラジオ。

店長もともとこのゲーム知ったのは、あきおさんという方が作っておられる『ジョーコデルモンド』というボードゲームのホームページなんですね。そこの影響をすごく受けていて、食い入るようにそこを読んでた時期もあったんですよ、私。

与力いつ頃の話になるでしょうか。

店長13、4年前かな。そこを見て買うゲーム決めてた時期もありまして、そこで「1号線面白いよ」って書いてあって。それで記事をよく読んでみて、ゲームのテーマにすごくひきつけられたですよ。タイル配置からスゴロクやるっていう二段方式、すごく面白そうだな、と…なんか日本人的にスゴロクってやっぱいいじゃないですか(笑)。

与力そうかもしれません(笑)。

1号線で行こう!(リゴレオンラインショップ)

店長モダンユーロゲームをやりこんでいる人からすると、スゴロクの部分がちょっと子供向けっぽく見えるかもしれませんが、スゴロクに至るまでの過程で頭脳戦やらないといけないので。そういうちょっとガッチリしつつ…抜けたところが魅力かな。

与力全体がシンプルな印象でいて、かなりしっかり計画を立てないといけないけれども、最終的にはダイス勝負というギャップですね。

店長そうですね。実のところ、タイル配置のところでだいたい決着はつきがちなんです。タイル配置を人より早く終わらせることができたら、その時点で明らかに有利になるんで。

与力それだけ早くスゴロクに入れますものね。

店長そのスゴロク、なんかあのダイス使う部分はいらないんじゃないか?なんて考え方もできるんですが…僕の解釈では、あれはビクトリーランだと思っているので(笑)。

与力あ、そうなんですね(笑)。国旗振らなきゃ…。

店長まあその、なんというか、あの種の抜けてる感じが好きですね。すごくのんきな感じ。すごく好きです。

与力二面性ですかね。

店長売り方に関していうと、少しだけミスリード的なことを含めています。「自分で自分の道を作るスゴロクですよ」というところ、スゴロクだということを強調している表現だと思うんですよね。ですが、実際遊ぶ時ははタイル配置の方がむしろ重要で。

与力ああ、しかし敢えてスゴロクを強調した。

店長そうですね。これからボードゲーム始めます、始めましたというファミリー層に遊んで欲しいんですよ、シンプルイズベストなゲームとして。で、そういう人が「スゴロクかなあ」と思って遊び始めた時に、「あれ、これなんかただ事じゃないぞ?」ということをタイル配置のところで感じて、考えてくれたらいいなあって希望がちょっとありますね。だからわざとスゴロクを強調してミスリードは誘ってみた部分があります。

与力なるほど。遊んだ時にタイル配置の部分の衝撃を大きくする仕掛けというか…。

店長タイル配置がですね、結構ヒリヒリなんですよ。相当です。なんというか、すごい刃のような、鍔迫り合いというか。

与力タイル置き換えとか、割り込んでいくルールもありますよね。

店長そうですね。確かにルールブックだと置き換えの方が一見重要に見えるんですが、先にタイルを置いていくのがまずすごく大事ですね。特に十字路が厄介なんですよね。先に十字路置かれちゃうと、あなたはここに入れませんよみたいな戦略が取れちゃうんですよ、狙えば(笑)。そういう部分を是非体感してもらえればという感じですね。

与力さて、それでは未発売タイトルですが『トラヤヌス』ですね。リゴレとしては『マウンテンキング』をヘビー級と考えると、久しぶりの重量級ゲームと言えるでしょうか。

http://www.rigoler.jp/2021/10/16/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%A4%E3%83%8C%E3%82%B9%E3%80%80%E3%80%90%E8%A9%B3%E7%B4%B0%E3%81%AA%E8%AA%AC%E6%98%8E%E3%80%91/

店長そうですね。エキスパートとしては3作目、重量級と言われるゲームとしては2作品目ですね。『トラヤヌス』はいわゆるマンカラを使っているゲームです。面白いんですよね。ただ、面白いという評価がもうあります。実際、新しいゲームではない…むしろ有名タイトルですから。

与力確かにそうですね。

店長ヨーロッパで発表されたばかりの新作の版権取ってきました!とかではないということです、念のためですが。それで、このゲームは常連のお客さんが持ってきてくれまして。それで遊んでみたらとても面白かったんです。

与力『スカルキング』とかと似たパターンですね。

店長ちょっと前のゲームではあるんですが、古さを感じないんですね。むしろ『トラヤヌス』にさらに新しい要素を入れると、今度は紐付けが増えちゃうのかなと。例えばエンジン組み始めるとかですかね。

与力なるほど。

店長あれもプレイ中にやれることは多いんだけど、それぞれの動線は短いんです。やったら戻ってくる、手に入るものがすぐ見えてくるんですよね。投資みたいなことがそんなにないですから。

与力将来的なリターンを期待して、それを見越してプレイを選ぶというのではなく、すぐリターンがあるんですね。

店長まあ仕込みは必要ではありますがね。例えば第1ラウンドからカードを集め始めて、第4ラウンドで使って大量得点とかはあるんですけど、すごくねじれたことをやるゲームではないです。そこが大きな魅力ですね。マンカラと、あと他の要素がちょっとずつですね。早い者勝ち要素が強い6つのアクションやってくっていうのが面白くて、無駄が無いゲームですね。

与力全体に見通しがよいゲームということですかね。

店長たぶんそうです。『トラヤヌス』のデザイナーのシュテファン・フェルトさんが作ったゲームって少し難しいとか、捻りが効きすぎているとか時々耳にしますね。事実そうだと思いますが(笑)、これはそうではないと思います。先入観なく遊んでもらえると嬉しいなあ。

与力独特なゲームを作られるイメージがありますけどね。言うほど遊んだことありませんが。

店長私は遊んだのは『ブルゴーニュ』と『トラヤヌス』…まあ、いいゲームを遊べています。フェルトさんの初期のゲームは、3か4タイトルが名作という評価を受けていますが、その1つにも数えられていますね、『トラヤヌス』は。本当に最近の重量級を遊べるゲーマーなら、バッチリ遊べます。過去の難易度評価は置いておいて、ぜひ一度体験してもらいたいと思っています。

古い中から何を見つけるか

与力さて、ここまでお話いただいたタイトルなのですが、どれも少し前のゲームという感じです。まず『ローゼンケーニッヒ』ですが、初版1992年のゲームですよね。

店長おお、改めて言われると、少し前というよりひと昔前かな。

与力で、『1号線で行こう!』が1995年、『トラヤヌス』がちょっと新しくなって、10年前の2011年の発売です。

店長なるほど、だいぶ前ですね。

与力さっき店長も少しおっしゃいましたが、最近はヨーロッパ、海外の新作ゲームが実に豊富で、しかも、エッセンやキックスターターなどで話題になった新作が、タイムラグなく日本語化されて入ってくるようになりました。そういう最新タイトルに目を奪われがちな環境になっている所で、あえて30年近く前のゲームから、10年前、それこそボードゲームがブームになって盛り上がり始めた2010年2011年くらい…適切な表現かは分かりませんが、いわば端境期に発売されていた重量級ゲームなどをリバイバルしようと決断された理由、意味というものについて、ここからお考えをきかせて頂けないでしょうか。

店長難しいですね…。そう、まず古いゲームって点ですが、なんか古くさいゲームと古くさくないゲームと、あと古いけど許せるゲームに分けられると思うんですよね。

与力店長式は3パターン分別ですね。

店長古くさいゲームというのは、もうちょっと今さらこれで遊ばなくてもいいんじゃないかな、と感じるゲームです。もちろんそのゲームを遊ぶ目的があれば別ですが、ゲーム選びの選択肢には入れづらいというか。

与力今ならもっといいのがあるよ、という部類ですかね。

店長一方で古いなとは思うけれども、良さが感じられるゲーム。いまやっても新鮮に感じられたり、面白い部分が色あせていないゲームですかね。

与力普遍的な面白さがある。伝統ゲームチックな。

店長そうかもしれません。時代を越えられるゲームということになるのかな。『ローゼンケーニッヒ』も古いんですよ。今だったらどうでしょうね…カード効果とか付けるかもしれないし、ボードに得点がそもそも最初からついているとか、どこかを踏むと何かもらえるとか、連続行動取れるとか、そういう要素を追加するかもしれません。

与力ありそうですね。

店長でも実際、そういうものが無くても良いです。無駄なくまとまっていて、古いけれども古くさくない…陳腐化してないというか。まだまだ大丈夫な感じでしょうかね。

与力時代においていかれていないんですね。

店長それで『1号線で行こう!』も、タイル配置のパートに関して言えば、あれで十分完成され過ぎているほど完成されているんです。しかも、タイル出すのは難しいけれども、分かりやすいんですよね。

与力難しいけど分かりやすい?

店長そうなんです。『1号線で行こう!』は、「誰よりも早く線路を完成させる」と言うタイルを置くハッキリした目的が有るんですよ。タイルを置いて、それが周りのタイルと合わさってどうにかなったら得点が取れるとかではなくて、ゴールまでの道筋を早く作れって言われているんですね。

与力ああ、なるほどなるほど。

店長なんですけど、タイルを置こうとすると全然簡単じゃないんですよ。他のプレイヤーが置いたタイルとめちゃめちゃ干渉しちゃうんですよね。北から南に行きたい時に、西から東に抜ける線路を1個抱えているだけで相当プラン変更しなきゃいけなくなりますし。タイルの置きかえというルールがあって救済措置も用意されているので、干渉しても戦略の修正しようはあるんですけれども、やっぱりやられると大変なんですよ。手数が変わってしまうので。だから「少ない手数でルートを引きたい、じゃあどこに最初のタイルを置く?」っていうところから考えていくことになる訳ですよ。

与力なるほど、そういう難しさがでてくると。

店長1手番に2手打てるんですが、それがすごくいいんですよ。1手しか打てないと、運の要素が強まるかなあと思いますが、2手打てると、「うまく挟んでおくとここ無敵地帯になる」みたいなプレイができるんですね(笑)。

与力意外に仕掛けられるんですね。

店長ええ、そういうことが結構できるんですよ。そういう部分に気づけるとまた面白みというか、プレイの新しさという部分も味わえるので、いいと思います。

与力なるほど。

店長この感覚は『ローゼンケーニッヒ』と『1号線で行こう!』は特に面白くハッキリしているかもしれません。だからそれが意識している部分と言えるかもしれませんね。

ツリーは複数存在している。

店長古さが厳しくなるのは……例えば単純なスゴロクとか、単純なボウズめくりとか、100%運だけというようなゲームは流石に出版の選択肢には入れづらいですよね。あとは判断基準としてですが、自分でお店やっているので如実に感じられた部分なんですけど、『マウンテンキング』ってお店よりも通販で売れたんですよね。

与力売れるルートがちがったと?

店長リゴレに直接来店するお客さんで『マウンテンキング』を買ってくださる方はほとんどいなかったです。逆に通販では本当にいっぱい売れました。

与力なぜでしょうか?

店長リゴレに何度も足を運んでくださるリピーターのお客さんは、もちろんコアゲーマーという方もいらっしゃいますけど、家族で遊ぶファミリー層の方がやっぱり多いんですね。そういった、『ワードスナイパー』でリゴレを好きになってくださったファミリー層の方は、『スペースエクスプローラーズ』は遊べない訳ですよ。ゲームのタイプが全然違うので。

与力ははあ、なるほど。

店長でも、『1号線で行こう!』はたぶん遊べると思います。ちょっとステップアップにはなると思いますけど、上れるステップだと思ってますね。

与力求めるゲームの方向性が違ってるわけですね、お客さんによって。

店長そうですね。お店にいらっしゃったお客さんが、「リゴレさんが今度出したゲーム、わたしにもできる?」って質問をいただいたりしますが、これ、売る方としてはなかなか難しい質問。全部が全部誰でも遊べるゲームだったらいいんだけど、遊びづらいものも出している訳で。もちろんその逆パターンもありますよね、「難しいゲームが欲しい」という。ですので、どっちが大事とかは言えないんですよ。ゲーマー向け、ファミリー向け、どっちも大事になる訳です。

与力やはり実店舗ならではの目線ですね。

店長あと、ゲームを沢山遊んで、経験値・習熟度が成長していった度合いのツリーの先に、例えばエンジンビルドのリソース管理の激しいゲームで、勝利点を獲得して、何ラウンド後に終わって点数が高い人が勝ち、っていうゲームがある、と思いがちになりますが、そういうゲーマーズゲームは一生遊べない人がやはりいると思うんですよね。

与力誰でも同じ方向、ライトなゲームからヘビーに進んでいく訳ではないとお考えです?

店長絶対遊ばない人いると思います。「ゲームが好きになったらこれを好きになるだろう」っていうツリーの外にあるんですよ、そういうゲームは。仕事柄「このゲームを遊べていたら、次はこのゲームを楽しめるだろう」というツリーを、自分の中で十何個か持っているんですね。つまり、そういう分岐、ツリーは1本じゃなくて、たぶん数十本くらいあるんです。で、それを分けるのは“ライトとヘビー”では多分ないだろうと現在は思っています。

与力ははあ。

店長ゲームには性質のようなものが有ってですね。“2次方程式をいじってどうこうすると…”みたいなゲームは、一生選ばない、遊ばない人がいます。ゲーム慣れしたらやるようになるとかではなくて、そもそも面白いとは思わないから遊ばないという人がいるんですね。

与力そこは決定的なんですね。

店長その性質がゲームのどこで決まるのかというのは結構また難しくてですね、どうしても総論ではなく各論になりがちではありますが…そんな感じです。分かりづらいですね。

与力そういう区別ができるから、リゴレではエキスパート部門とファミリー部門のロゴを使い分けるようになったというようなことになるでしょうか。

店長そうですね。それでこの話をなぜしたかというと、リゴレが最新のボードゲームだから必ずそっちにいく訳ではない、という理由が多分そこなんですね。エッセンの新作とか、最近の作品を見ていると、ゲーマーとしての僕は遊びたいですけど、マニアックよりなものが話題になりやすいのかなと。やる人やらない人がハッキリしている…ゲームのテーマに因るのかなあ。ちょっと整理がついていないかな。

与力少しまとめますと、「ゲームを始めた人に次にお勧めするゲーム」というのはよく話題になりますが、そもそもその俎上に上げられない、最初からコアゲーマー層をターゲットにしたフリーク向けゲームが存在していて、ゲームを遊びながらステップアップしていく人が選択する範疇に必ずしも入らないということですよね。

店長だろうと思うんです。コアゲーマー向けというのは最新の工夫が施されたゲームだから、情報感度が高くてコアな人は遊びたい。ただ、その方向と実店舗でゲームを探すお客さんに薦められるゲームというのはまた違う。これは『マウンテンキング』でよく分かりました。ただその、僕は両方を見ているし、見たいと思うので、両方の方向性のゲームを手掛けたいですね。

与力そうすると、お店でお客さんと話しながらゲームをお薦めするという方向を見た時に、今まで積み上げられてきた大量のゲームの中を探したら、少し前の年代から発見されたという感じの流れで出版作品が選ばれたということなんでしょうか。

店長それはあるかもしれません。あとは、自分の目利きを試しているところもあるかな(笑)。

与力ゲームの鑑定眼のような?

店長これは少し独善的な考え方ですかね? やはり最新、話題作となるとみんな欲しいのでしっかり準備すれば期待通り売れると思うのですが、僕自身のゲームを選ぶ基準というか、価値観みたいなものを反映できていないというか。僕のゲーム屋としての経験値とかを考えると、最新作一辺倒というのももったいないかなと。それで、あえてそこに行き過ぎるのは自重している感じでしょうかね。

与力ポリシーというか、こだわりというかですか。

店長理想としては自分たちで話題を作って自分たちでゲームを作っていくし、どこかで出てきた話題を見逃さずにそれに乗っかってゲームを出していく、この両方ができるといいですよね。

与力店舗に来てくれるお客さんを大事にしつつ、ゲーマー層に届けたいゲームもあるよということで、ラインを分けて両にらみの状況にしているのですね。

店長両方やることで、長い目でリゴレのファンが増えてくれたら、なってもらえたらいいなあという願望はありますね…。脱線してきましたね?(笑)

与力結構シリアスな話になってきたなというのはあります(笑)

ゲームの進化と複雑化

与力先ほどまとめたように、店長が考えているような楽しめる要素を持っていて、それがダイレクトに伝わるゲームが、たまたま出版年で見れば古かったという感覚になるんでしょうか?

店長そうですね。

与力そうしますと、以前仰っていた“ずっと遊べるゲーム”、1個家にあると一生遊んでいられるよというゲームをお勧めしたいという基準ですね、そういう普遍的なゲームになりうる要素が2021年から22年に手掛けたゲーム、タイトルの中にはあった、と考えられるでしょうか?

店長そうですね、ありますね。そう思います。

与力そういう年代、世代を超えられるゲームに共通する要素とはなんでしょうか。難しい話ですが。

店長きつい質問ですね(苦笑)。僕もゲームデザイナーではないので、そこまでは考えられないです。

与力考えられないですか。

店長と、1回マルを打っておいて、ここからはどちらかといえば1人のゲーマーとしての私見ですが…1つは、シンプルイズベストみたいなゲームは出尽くしているのではないかと考えておりまして。そういうゲームは1990年代後半から2000年代、まあおおむね90年代ですね。そこで結構出尽くしているのではないかなあと思うんです

与力なるほど。

店長当然そこから色々と発展をしている訳ですが、特に新しいシステムが搭載されるゲームというのは、やはりヘビーゲームになっていきますよね。

与力新しさを求めると要素が追加されてダイレクトさが失われる、というような流れですかね。

店長あとは何か課題の解決という方向性が強いのではないかなと。たとえば昨今のゲームデザイナーさんで重量級ゲーム作る方というのは、多分結構な割合で『カタン』が抱える問題点を解決してきたという部分があるのではないか?と思っています。

与力金字塔ですね。

店長例えば「ゲームの中に政治を持ち込まない」とかですね。この政治というのは、1位を狙い撃ちして足を引っ張るやつです。あれを嫌うゲームデザイナーが、どうやってそれを外していこうかとか、個人攻撃をなくそうとか、そういう工夫ですね。あと、プレイングが自分の成果にちゃんと結びつくゲームを作ろうとか。一線で活躍しているデザイナーさんは、そういうところを意識して作っておられるというのはしばしば感じられますね。

与力荒っぽかった部分をならしていくというか、そんな作業ですね。

店長ただ、その作業でゲームが複雑化していく側面もあるのだろうと思います。もちろん複雑化することで、確かにこれまでになかった新しい面白さが生まれるということはあるんですが、複雑化の度合いによっては、異なるゾーン、次元に行ってしまっている気がしなくもないですね。そんな気がします。

与力新たな地平へ到達していると。

店長若くて元気な人は新しいモノにチャレンジして、どんどん取り込んでいけるので、その次元へもついていけるかもしれない。ですが、そこまで狙っていない、言ってみればもうちょっと古めのゲームでも、十分楽しめる。例えば家族向けとしては面白いなあと思うんですね。

与力複雑化の段階ですか。新しければ、古ければと一概には言えない話というところですね…。

店長例えばですね、僕は『ティカル』を「大好き、大好き!」とずっと言っていて、『ティカル』を強く推しています。いいゲームだって。ですが、今現在の最新のユーロゲームに親しんでいるゲーマーが『ティカル』を遊んでも、正直もう面白いと感じてもらうのはきついかなと思っています。残念ながら。

与力それは予想外のご発言ですね。

店長理由は簡単で、最新のゲームと比較すると、やはりシンプル過ぎて新しい体験や感動といったものが薄くなってしまうんですよ。なんですけれども、「最近ボードゲームを始めて『カタン』を遊びました。次のゲームなにかおススメ教えてください!」というファミリー層には『ティカル』を勧めるのはすごくいいと思うんです。ちょうどよい度合いになると思うんですよ。ただ、さらにそこからファミリーが最新ユーロゲームまで進んでいくかというと、必ずとは言えません。

与力うーん…。

店長たぶんよく言われている“ステップアップ”と違う話なんですよね。ステップアップ風に話しましたけど、ステップアップではないですね、これは。

与力進歩していけばいつかたどり着くって話じゃなくて、なにかしらコペルニクス的転回があって、別の志向に進化しないと、複雑化したヘビーゲームまでは行かないってことですか。

店長うーん。最近のゲームは別軸のところにいっている感じがちょっとするんですよね。遊んでみると面白いですし、僕も好きです。ですが、これもやってみませんか、と勧められる人となると、やはり限られるなあ、とも感じますね。よく言われる「『カタン』の次」という話題にもつながりますかね。

与力新規性を打ち出し、コアゲーマー向けになればなるほど、細かい状況に対応するためのルールが増えて複雑化するし、偉大な先駆者を超えるために、そこに含まれていた問題を解決しようとすると、やはり色々複雑化してくると…。

店長分からないですね、これは(笑)。ちょっと中途半端な話になるから、止めておきましょうか(笑)。

与力難しいですか(笑)。

店長一概に古いゲームがいいんだ、古ければいいとは思っていないですけれど、これぐらいで十分だなと感じるルール量で終わってくれているゲームがあったりするのは、確かですね。

与力ちょうどいいボードゲームですね。

店長そう考えると『スカルキング』やれたのは、僕のボードゲーム仕事ライフの中では幸せな体験でしたね。やれてよかった。あれは『カタン』くらい売れていいんじゃないかと本気で思ってますよ、うん(笑)。一見面倒くさいけど、丁度いい。なんかそういうところですね。

与力個々人の体感にもかなり左右されてきますね。

店長そうですね、でも最終的にはそこなんだと思いますよ。で、ここまで言っておいて、無茶苦茶プレイが面倒くさいゲームのローカライズとかやりたいなあとか矛盾したことを考えていたり(笑)。

与力ここまでの話が台無しになってきますね(笑)。ゲーマーとしての「これ、日本語版出たらすごい楽なのにな」みたいな願望を現実化しようと?

店長そうかもしれません。ただ、実際問題として、やはり古いゲームに手を出すと、何かしら変えないといけないところが出てくるから、手間がかかっちゃうんですよ。

与力手間がかかる。

店長UIを変えたい!とかですね。テーマやゲームが良くても、そのままでは出せないなというのはあります。

与力そういうところが問題になるんですね。

店長一見地味ですけども、手直しする、しないで大きくゲームの評価が変わる。ですので、手直ししてから出さなければいけないものに触れちゃうと、色々と労力が増えますので、素直にローカライズして出せる新しいゲームは魅力的ではありますよね。これは純粋に商売目線になってきますけど。

ゲームとしてのシンプルさ

与力要は、これぐらいがちょうどいいなというようなゲームを探してみると、年代的にちょっと前のゲームからゴロゴロ出てくるみたいな感じですね。

店長そうですね。それで今でも受け入れてもらえるかどうかの判断をします。さっきもいいましたけど、古いけど許せるゲームと、古くてダメだなってゲームがあるんですよね。

与力その判断基準はどのあたりに置かれるのでしょうか。今でも現役で稼働しているシステムであるかどうかとか、あるいは逆に同じシステムで今だともっといいゲームがあるから今更感が出てしまうとか、そういう物差しになってきますか?

店長そうですね、そういうのもあります。どうだろう…コアゲーマー目線からの目新しさは必須では無くて、ボードゲームを始めて色々遊んでいきたいという層が、「すごく新しいモノを遊んだ!」と感じてもらえるようなところですね。シンプルでも切れ味があるというか。経験値豊富な方からすると「ちょっと足りないな」と思うくらいのルールの方が楽しめる層はファミリー層中心に拡大していますからね。

与力シンプルさですか。

店長新作という点では、そういうゲームはこの先はどうなるか。最新トレンドを作る海外メーカーが、熱心なファンから支持されづらいシンプル寄りのゲームをこれからも出版できるかどうか。

与力難しいとなると、やはり古めのゲームを視野に入れることになる訳ですね。

店長そういう点ではさとーふぁみりあのさとーさんとか、すごく貴重な存在になるデザイナーさんじゃないですかね。『ハピエストタウン』とか遊んでみると、よくここまで削ったな、削れたなと思いますよ。あれはいいゲームですね。してみると、ルール量の問題がやはり判断基準になってきているのかもしれませんね。

与力ルール量の問題なのか、遊んでみた時の感覚なのか…。

店長ね。なんでしょうね。

与力しかしここまでお話をうかがっておりますと、経営者目線とボードゲーム系インフルエンサーとコアゲーマーとしての立場と、全部同居しているような感じですね。

店長あ、そうですね。

与力それがこう押し合ってる感じで、いいと思うゲームが多岐に亘るというのが非常に興味深いですね。

店長それで苦しんでいるのかもしれませんね。それはそれでいいとも思っているんですが。

与力そういった感覚の発露が、リゴレ商品のライン分け、エキスパートシリーズの新設だったのだろうかと想像するのですが、いかがでしょう。

店長ああ、それはあるかもしれませんね。すごく心情的に落ち着きました、ライン分けをして。実はいま、もう1つブランド建てたいんですよね。とてつもなく品のないゲーム出したい(笑)。

与力品のないゲーム?(笑)

店長しっかりしたゲームでちゃんと面白いけど、品のないゲームだなというのが何個かありましてね。これはうちでは出せないけど、でも存在としてはいい存在なんだよなあというのが。本当に品がないんですけど。そういうのをなんとかしたい。

与力これはジャニーズとしてデビューさせるのはちょっとどうかな、みたいな。

店長そう、どうやってデビューさせるか(笑)

与力別会社でデビューさせようかなというところですね(笑)。

店長出したいという点だけで言えば、古くて出したいゲームはいっぱいあるんですよね、本当に。

与力最新のゲームの情報はどんどん入って来ますが、それを見ていて、「そういえば前に似たようなゲームやったこと有るな」とか、ゲーム実際プレイした時に、「面白い所が同じようなゲームがあったな」というような、ゲーマーとしてのご自分の経験とかも関係しておられます?

店長発想に至るまでの理由という点ではありますね。実際、時代が合わなかったから売れなかっただけで、今出せば売れるよなみたいなゲーム、かなり色々思い当たりますからね。ただ、今のゲーム環境に合わせて遊びやすくする、ルールとかをどうこうではなく、UIとかそういう部分は意識的に変えた方がいいです。その作業を考えると手を出せる数、範囲はどうしても限定されてきますね。

フットワークの軽さを活かして

店長しかし商売という観点では、売れる見込みの強いゲームも当然手掛けたいですしね。古い所を掘り出していくだけではそこは達成できません。悩ましい所です。ずっと悩ましい。

与力では、その悩ましさをどう解決していくかという方策が詰まった今後の出版ラインナップについて是非コメントを頂ければ(笑)。

店長強引な突破をしてきましたね(笑)。

与力『聖杯サクセション』と『カフーツ』ですか。『聖杯サクセション』は、同人で頒布されていたゲームですね?

https://boardgamegeek.com/boardgame/216497/throne-and-grail

店長そうです。大気圏内ゲームズさんの作品ですね。

与力海外で展開されておられましたよね?

店長ポーランドで『チョコレート工場』というリメイク作品が出ましたね。2人用の非常に良いカードゲームですよ。

与力なるほど。『カフーツ』はどのようなゲームでしょうか。

店長これ、全然知らなかったんじゃないですか?

与力はい、知らなかったです。

https://boardgamegeek.com/boardgame/246761/cahoots

店長そうですよね。一口で言えば、協力型の『UNO』なんですよ。

与力『UNO』を協力で遊ぶ感じなんですか。

店長そうですね。簡単に説明すると、場札、プレイできる場が4つあって、手札から色か数字が合うカードを、4つの山のどこかに出します。例えば“青の4”という場札があったら、“青”か“4”が出せます。それで、カードを出す場所が4つ有るんですけど、カード出すのが目的ではなくて、お題が4つあるんですよ。例えば「場札の合計を10以下にしろ」とか、「青と赤だけにしろ」とか。

与力なるほど、面白そうですね。

店長そのお題をみんなで達成できるように『UNO』をやるということですね。『UNO』は場が1つしかないですけど、4つあるので、うまくコンビネーションを決めながらカードを出していって、目標を13個なり14個なりクリアしていきましょう、というようなゲームですね。

与力協力型トリックテイキングの次は協力型UNOの時代が来るかもしれませんね。

店長元々の版からアートワーク変えて出したいなということで、いま頑張っています。

与力楽しみですね。

店長今はこの辺りに全力を注いでいます。いいなあ、と思うゲームはくどいようですがまだ沢山有るんですけれどもね。

与力古めのゲームですね。

店長ちょっと前で埋もれてしまったゲームを。

与力忘れ去られるのは惜しいゲームを掘り起こして日の目を見させたいという気概を感じますね。

店長いえ、「自分ならできる!」という自信があるからではなくて、どちらかというと、小さい出版社が手掛けた方がいいゲームって有る気がするんですよ。そんなに沢山のタイトルを出せない分、1つ1つのゲームをすごく丁寧にやっていこうぜ、というような。こだわりとかも詰められるというか。

与力そういう感じだからこそ出せるゲームもあるとか。

店長そうですね。うちで言えば、絵柄があまりキャッチ―とは言えないような、言葉は悪いですが少し垢抜けていない…そんなゲームは得意かもしれません。ちょっとくらいダサい方が逆にお母さん方はお子さんに買い与えやすいというか。

与力若干洗練されきっていない、子供向け感が強いというか。

店長そうそう、そうです。ちょっと絵本みたいな、なんかシャープではないといか、そういう最新のゲームらしさ、イメージからは少し遠いような。そういうゲームがいいですね。

与力スーツで足元スニーカーみたいな感じですか。

店長そこまでひどくないんじゃないですかね(笑)子供の運動会にトレーナー着てくるお父さんみたいな感じじゃないですか。

与力頑張っているお父さんですね。

店長うん、そんな感じだと思います。ポロシャツをズボンにしまって、ベルトしめてるお父さん。

与力ストーンウォッシュのジーパンはいて。

店長そうそう。それで借り物競争とか一生懸命走ってくれるんですね。

与力かっちり七三分けで。だいぶ昭和中期のお父さん像ですよ、これ。

店長(笑)。ともあれ、その感じが逆に子供によさげな玩具に見えるみたいなんですよね。洗練されてる印象は受けなくても。

与力なるほど。玩具への安心感はそういうところから生まれたりするんですね。先ほどUIの現代化という風な話をされていましたが、イラストも今風にアレンジしていった方が良いものだと思っていました。

店長古いゲームはそういうところの塩梅が難しいですね。UIデザインは僕の感覚で大体良し悪しが判断できると思っていますが、イラストは分からないです。変えた方がいいのか、そうではないのか、すごく難しい。例を挙げればシュミットとかアミーゴのカードを日本風に直していいのかどうかとかですよね。

与力それが味になってるというか、象徴になってる部分もあるということでしょうか?

店長そうですね。ドイツのゲームにはそういうのが多いイメージですね。見た瞬間に「あ、海外ゲームだ」って分かる絵柄。それを日本でいいと思ってもらえるかどうかです。すごく丁寧に作ってあるんですよ。日本人の趣味嗜好をターゲットにはしていないんですが。

与力ですが、昨今のボードゲーム面白いよ、というブームの胎動は2008年頃からだと記憶していますが、そのころはそういった輸入ゲームが主軸だったのではないでしょうか。『ゴキブリポーカー』などはその最たる例だと思うのですが。

店長ああ、テーマがそもそもゴキブリですしね。でも確かに売れていますね。

与力「おすすめゲームは?」なんて聞くと、だいたいあのあたりからゲームを初めて…。

店長そうですね、そういうところを信じたい気持ちも有るんですよね。『ゴキブリポーカー』の絵は非常にいいですから。

与力なるほど。やった方がいい作業があるのは確かですが、やってしまうと持ち味が無くなるという言うゲーム、部分もあったりして、そこのさじ加減も有ったりするわけですね。

店長そうなんですよ。よく見るとすごくこだわっていて、お洒落な部分が隠れていたりして。見ていて飽きない絵も多かったりするんです。時流にマッチしているかとは別の話なんですけどね、本当に。

与力出版するとなると頭の痛い問題ですね。

店長こだわり過ぎて“老害”にならないようにしないといけないということもある。これは自戒ですが。

追求するゲームの形

与力昨今、ボードゲームの消化が非常に早いと思います。面白かった、じゃあ次のゲーム、これも面白いという感じで、どんどん新作が出て売り切れで手に入らなくなって、そして次が出てまた売り切れ、というサイクルですね。

店長はい。

与力そうしますと、ここ5年以内くらいにボードゲームに興味を持って始められた方々は、そもそも触れられなかったゲーム、通り過ぎてしまったゲームってたくさんあると思うんですね。そういうゲームをもう一度拾いなおして、もう一度舞台に上げてあげるというのが大切な作業になってくるのかな、とここまでお話をうかがっていて感じたのですが。

店長ああ、その意識はあるかもしれないですね。だって、『1号線で行こう!』なんかは、今のボードゲーマー人口からすれば知らない人の方が絶対多いですから。

与力そうですよね。

店長でも、かつてを懐かしむ人に届けるのはもちろん、これからの人、初めて知った人にもきちんと届けるということをやらないといけないですね。それはたぶんできるゲームだと思うんですよ。

与力なるほど。

店長あとは、どれくらいできるかになりますけどね。やはり純粋にお金の問題も出てきますので。古いゲームですし、発売と同時にバーッと売れるというのは無理だと思いますが、しっかり2年なり3年かけてそれなりの数が出れば…それは僕としては素晴らしい成功になると思うんです。そういう成功の種類もあるでしょうし、そういう方向性だと自分も頑張れるんじゃないかな、やりようがあるんじゃないかな、と。そういう風に売れるタイトルを見つけても行きたいと思います。

与力1個ずつのタイトルを大事に長く売っていくというスタイルですね。

店長そうなんです。根底にあるのはロングセラーへの憧れですね。ベストセラーよりもロングセラーを手掛けたいですね。長く売れるゲームがいいです。

与力長く売れるということは、それだけ多くの人に受け入れられて愛される下地、要素があるゲームということになりますか。

店長そういう方向性は常に考えています。

与力分かりました。ありがとうございました。