常にスカウトを怠らず
(ある宣教師の手紙)
―伊予・湯築城―
河野通宣(元伊予の大名)「……断腸の思いで大友に降った途端、三好勢が攻め寄せてまいるとは……」
平岡房実(元河野家家臣)「んゥー、まァ、大友に降ったと言ってもォー、ここらの城はすぐにはアレですからねェー、そりゃそうなっても不思議ではないですねェー」
河野「三好から見れば、大友の将兵が九州より参る前ならば城の守りは手薄、これ以上の大友の西進を防ぐためにも、最前線の我らが叩かれるは必定、と申すのだな……」
平岡「まあ、そういうことですなァ」
府内館 ―1562年から1563年の戦略―
はい、ではミーティング始めますよ。今日は一部武家の当主の諸君にも参加してもらってますが、いつも通り意見出し合ってやっていきましょう。まずは現状の報告から。
木脇祐守「はっ、まず一萬田鑑実、吉岡妙林、納富信景、鍋島直茂といった面々は既に四国に上陸し、湯築城より各方面へ進出。平岡房実、大野直昌、土居宗珊などと合流し、三好・長宗我部の軍勢を防いでおります」
甲斐親直「ただし、三好勢の勢い侮るべからざるものあり、早急に増援を送る必要があるかと、存じまするな」
角隈石宗「島津攻めはまだ思うに任せませぬ。時折、土持家が数千の軍勢で大隅へちょっかいを出しておりますが……まあなかなか」
なるほどね。鑑連、四国のキャズムを超えるために、どうしていこうか。何かプランは無いかな?
戸次鑑連「……拙者に出陣をお命じ下されば、三好・長宗我部がどれほどにても、思うようにはさせませぬ」
フフフ、心強いな。では四国方面の増援は、戸次家と……そうだな、兵に余裕がありそうな蒲池家に出てもらおうか。
蒲池鑑盛「ハハッ、ただちに兵を整え、四国へ送りまする」
戸次「(……元々、御屋形様はそのおつもりであったのだろう。わしが申し出たかのようにして言質を取るとは。さすが、恐れ入ったものだ)」
さて、九州方面なんだが。例の彼、そろそろクロージングかけられる?
角隈「彼? あ、ああ……いかにも、まだ心を決めかねておるようですが、そろそろ拙僧が参って、はっきりと決着をつけてきます」
頼むよ。ではこの先、四国は各城の整備が整い、特に湯築城、中村御所の開発が進んで必要なソースが現地で得られるようになるまで、兵力がショートしないように、九州から継続的に援軍を送ります。コンペティターの実力を過小評価せず、しっかりやっていきましょう。島津は、内部から切り崩していきます。ヘッドハンティングを仕掛けているので、それが成功次第、各武家にミッションをアサインします。ですので、軍備は怠りないよう。今日来てない武家にも、そのことはメールします。では、よろしく!
一同「ハハーッ」
さてさて、また忙しくなってきたね。ん、何か進展があったかな?
角隈「平佐城主の川上忠克めが、ようやく決断いたしました。武家を挙げて大友に降るとのことにございます」
甲斐「好機にございますな。早速、出陣のお下知をお出しなされませ」
よし、”例の彼”が動いたか。それじゃあ、戸次、蒲池、高橋、吉弘に出陣を促すメールを。特に蒲池、吉弘は海路を上手く使って、西側から上陸を展開するように伝えてくれ。目標は出水城でいこう。
龍造寺隆信「なぁおい、確かに好機といえばそうだけどよ、島津の方は自分の領地で守れるんだ。援軍を出すにも、近場から兵を送れるから都合がいい。こっちが一段備えで大包囲をしても、食い破ってくるかもしれんぜ。後詰はあるったけ用意しときなよ。あいつらを最後まで舐めちゃいけねぇよ」
おっ、さすがは猛将・龍造寺隆信。そういう君の軍歴から来るナレッジは、是非今後の後進のためにも蓄積しておきたいねえ。だが今はとにかく、その忠告に従おう。
島津勢の対応が早い! 川上勢は平佐城で包囲下に置かれ、我が軍勢は陸続とやってくる敵との戦いで出水城から引きはがされてしまう。
龍造寺「おいおい、兵の数だけはあちらさんよりも勝ってんだ。ビビらずにどんどん突っ込んでいきなって。それから日向の土持にもっと働かせろ。東から揺さぶってけ」
うーん、ここは自ら出ていくのも選択肢の一つだが。
龍造寺「まあ、やめときな。まだ焦るとこじゃねぇ。四国は戸次の雷オヤジが何とかしてるが、それでも予断は許さねぇんだ。あんたはまだ両方にらんでねぇと」
木脇「御屋形様、新たに元服した高橋鎮種殿、出仕の挨拶に参られました」
おお、待っておったぞ!
高橋姓を名乗っているとはいえ、君は吉弘鑑理の次男。父に負けない立派な武士になって欲しい。君のような優秀な武将は、我が家の貴重なアセットなんだ。
高橋鎮種(以下、紹運)「お任せください。必ず、お役に立ってご覧に入れます」
よし、では早速に兵を率いて四国へ渡ってもらおうか。この状況、とにかく我慢だ。我慢すれば必ず物量に勝る我々にオポチュニティが来る。
―薩摩・出水城―
蒲池「わっはっは、陸続と兵を送り続けた甲斐があったというものじゃな。どうやら我が手の者どもが攻め懸かり、加治木城をも落としたようであるし、これで島津の防御は崩れたであろう。早速に御屋形様に申し上げ、後詰を送っていただくとするか!」
高橋鑑種「ははは、わしの後詰など必要ではなかったかな」
蒲池「ああいやいや、高橋殿もご苦労でござった。うん、ご苦労!」
高橋「(……このところ御屋形様は蒲池をやたらと重用され、やつもいい気になっておる。まさか、我が高橋家を軽んじておられるのではあるまいな。……やむを得ぬ。どうやらわしが本気を出す時が来たようだ)」
三田井親武「あっ、殿。いけません、いけませんぞ。また何か考えてますな。どうせ大半は殿の被害妄想だから、あんまり色々思いつめない方がいいのです」
高橋「うっさいわ!」
―伊予・湯築城―
一萬田鑑実「御屋形様、高橋勢が島津の本拠・内城を落としたそうにございます。他に伊作城、知覧城、都之城も落とし、いよいよ島津は大隅一国に押し込めた形となりました」
龍造寺「おう、やったじゃねぇか。これでもう、あとは坂を転がるように始末がつくぜ」
……長かった気もするが、物量で圧倒するために島津以外を併合していく方針がようやく結実したか。ともかくこれで四国に取り掛かることができる。さて、状況を整理しようか。
鍋島直茂「はい、三好の軍勢はしきりと鷺ノ森城へ攻めてきます。伊予のリソースは正直しょっぱいレベルなんで、常時増援が必要ですね。この辺は予測できたことです」
そうね。「うちが取れば四国が安全になるよ」って形で、毛利をステークホルダーとして引っ張り込んだ結果、連中が余計な所を攻撃し始めたからね。まあまあ厄介なことになったから、基本兵力は自前で賄いたい。
鍋島「あとはM&Aを続行してます。この先の事を考えて、備中の三村、備前の浦上といったあたりに話を持ち掛け、既に浦上からはアグリーされてますんで」
オッケー、仕事早くて助かるわ。んじゃ、いよいよ東進作戦について詰めていこう思うんだが、基本は二頭立て形式で行きたい。つまり、私の直属軍と、戸次家の軍勢だ。私が伊予から阿波を目指し、戸次家は……ん?
吉岡長増「お取込み中、恐れ入ります。三好家が反大友の大同盟を諸大名に呼びかけ、多くが同意したとの報せが参っておりまするぞ」
三好長慶「大友による九州・四国統一など許さん!」
主だった参加大名は、たぶん長宗我部、島津辺りでしょ。
長増「他に本願寺、織田なども参加した由にござりまするが」
ええ、面倒くさい! ……まあいいか、慌てる必要はないね。厄介な織田・本願寺とはまだ領地は接していないし、島津は悪いがもう死に体に追い込んでる。長宗我部は小競り合いを繰り返してもう露見してるよね。彼らには悪いけれど、我々とはキャパが違い過ぎる。ふふふ、同盟に参加したことを、後悔してもらおう。
吉岡妙林「逆境にも動じない心の強さ、素敵ですわ、義鎮様!」
そう褒めるなってば。よし、四国はまず長宗我部から攻略していこうか!
長宗我部元親「大友め、たかが九州の一大名の分際で、俺たち同盟軍に勝てると思うなよ」
香宗我部親泰「兄上、それをフラグと申しまする」