第5節 チームは好調、自分は?
- DATE
- 4月12日 ルヴァンカップ予選リーグ
- VS
- ヴィッセル神戸
- SCORE
- 2-0
- GOAL
- 10′リンス(甲)
- 63′内藤(甲)
後ろからついてきていたリンスが無人のゴールへ蹴り込んでくれたらしい。こ、これがいわゆる潰れ役の面目躍如というやつか……。だがやはり自分で先制点を決めたかった!
御勅使南公園 ―試合翌日―
黒田官兵衛(エージェント)「(スポーツ新聞を眺めて)まあ、見事に転がされましたな。しかしこれもFWの定め。よい選手であればあるほど、敵の守りも厳しくなりますので」
山本勘助(個人トレーナー)「しかしながら、神戸にはドイツ代表やケルンにその人有りと謳われたポドルスキやら、オランダで存在感を発揮したハーフナー・マイクやら、強烈なFWが出場しておりましたが、彼等よりよう目立っておりました。マン・オブ・ザ・マッチは当然かと」
うん、有難い話なんだが、試合後のここで前回の話が蒸し返される。中3日で次のリーグ戦が来るのよ。アルビレックス新潟戦。事前の下調べでは、我が甲府と実力的には接近しているチームだと思うので、すごく苦しい試合になるとは思わないけども、体力が心配。
官兵衛「そこをうまくやりくりなさい。試合出場が望めぬほど消耗しておれば、監督がきちんと気を使ってくれます」
勘助「左様ですな。できればどの試合も出場したいところですが、重要度の低い試合は、控えに任せてしまうことも、長期的に見ればまた得策」
そうかあ。ただ、大宮戦のこともある。せっかく波に乗ってきたところで流れが止まるのは避けたいから、なんとか出場したいぞ。で、出場したならば、体力の温存を頭に入れたプレーをしてみよう。あまり走らず、的確なプレーを……。
官兵衛「やりつけぬことをしようとすると、大体後悔しか残りませぬがな」
勘助「まあ体力のコントロールは大切にございますが、気にし過ぎではプレーが消極的ともなり申す。その心得こそ肝要ですぞ」
- DATE
- 4月16日 第7節
- VS
- アルビレックス新潟
- SCORE
- 2-0
- GOAL
- 9′リンス(甲)
- 69′ウィルソン(甲)
練習場 ―試合翌日―
いかんいかん、体力のことを気にし過ぎたのか、今一つ動きがのっそりしておった。“疾きこと風の如く”が私の第一のモットーなのに、ドリブルも動き出しも全然遅い。これじゃ微風だよ。
官兵衛「微風で良いのは温泉上がりの脱衣場の扇風機……試合後の評点5.6はチーム最低点ですな。チームは勝てたが、自分は反省、という典型的な試合です」
勘助「意識が悪い方向に出てしまいましたな。ま、これも経験というやつです」
うん、やはり気にし過ぎは良くない。まずは目の前の試合を大事に。そして練習で体力改善を図りつつ、試合中の動きの質を高めて、無駄な消耗を抑える。こういう方向で考えていけばよかろう。
勘助「そうですな、何ごとも前向きに参りましょう」
官兵衛「さて、新たな方針が決まったところで、次の相手はこれまた強敵、セレッソ大阪でございます。新旧日本代表が多数在籍する好チーム、くれぐれも油断のないように」
よーし、相手にとって不足はない。我が風林火山のフットボールを、思う存分披露して見せるぞ。
- DATE
- 4月22日 第8節
- VS
- セレッソ大阪
- SCORE
- 4-0
- GOAL
- 17′・39′・78′内藤(甲)
- 90′新井(甲)
ここまで予想を裏切る快進撃でJ1を盛り上げる甲府は、ホームに強敵セレッソ大阪を迎えての一戦へ。この試合の結果が今後のチームの勢いを左右しそうな雰囲気といったところ。
甲府はいつも通りの5-3-2で、2トップは完全にポジションを手に入れた内藤とリンス。中盤では黒木が真ん中で左にボザニッチ、右は新井。一方のセレッソは攻撃的な4-5-1。1トップをつとめる日本代表杉本健勇の後ろには、日本代表の清武弘嗣。ただ、同じく代表の山口蛍はお休みで、中盤の底はソウザと山村の大型コンビ。水沼宏太とヨニッチの新加入組も、そろってメンバー入り。
強力な攻撃陣を誇るセレッソが、ホームチームを押し込んでいくはず。そんな予想が早々に外れたのが17分、決めたのは好調のチームを引っ張るこの男。
新人ストライカーはこの一撃で完全に調子に乗ったか、39分にはリンスとのパス交換から2点目。セレッソディフェンス陣はなす術無し。
まさにエンジン全開といったこの試合の内藤、これで終わりではありません。3つ目のチャンスをうかがっていました。それが巡って来たのは79分のこのシーン。
これで内藤はハットトリック達成。さらに試合終了間際には新井がミドルシュートをズバリと決めてダメ押し。試合前の予想とは反対の結果が出て、甲府の勢いはどうやら本物、しばらく首位を快走しそうな様子です。それにしても8試合で10ゴール、19歳の内藤が好調の原動力であることは疑いようがありません。
―試合ダイジェスト―
- DATE
- 4月26日 ルヴァンカップ予選リーグ
- VS
- サンフレッチェ広島
- SCORE
- 4-0
- GOAL
- 19′ボザニッチ(甲)
- 36′リンス(甲)
- 88′ドゥドゥ(甲)
- 90′バホス(甲)
- DATE
- 4月30日 第9節
- VS
- ヴィッセル神戸
- SCORE
- 3-0
- GOAL
- 16′リンス(甲)
- 22′エデル・リマ(甲)
- 78′渡部(OG)
練習場 ―神戸戦翌日―
官兵衛「継続できませんね」
勘助「ですな」
ちょっと評価辛すぎやしませんかね? 大活躍のセレッソ戦はMoMだったし、週間ベストイレブンも取りましたよ。続く2試合は……
官兵衛「運が悪かった?」
勘助「やや、無理に過ぎたプレーも多かったやに思いますが、いかがです」
ま、まあね……怖いなあ、ただでさえ顔怖いのに。広島戦はなんかチームメイトが頑張っていたので、まあいいかな、と。神戸戦は、なんだかんだ6本もシュート打って、うち1本がポスト、1本がバー、そしてようやく決まったと思ったら……
官兵衛「オウンゴール判定でしたな。ちょっと我々も耳を疑いましたが」
でしょ!? ちょっと足の甲だか膝頭だかをかすったかかすってないかというような当たり方よ。あれをオウンゴール判定するんだもの、恐ろしいとしか言いようがないよ。これがゴールラインテクノロジー導入による判定の弊害ってやつ?
勘助「全く、見当はずれなご発言ですな」
官兵衛「とにかく、神戸戦はゴールに絡めなかった広島戦の反動から、強引にゴールを狙い過ぎていたきらいが有りますな。難易度的にも能力的にも“打ったら入る”という感覚をつかまれたように思いますが、だからといって前にディフェンスがいたり、シュートコースが制限されている所で強引にシュートを打っても、思うようにはなかなか決まりますまい」
勘助「左様です。性急にゴールを求めてはなりませぬ、ゴール前では確実に決められる場面を求めて、常に冷静でいなさるがよろしい」
分かったよう、認めますってば。やはり短気を起こした方が、勝負事の駆け引きではしくじりをするものだな。ではここからは落ち着いて、つとめて冷静に、確実にゴールを攻略していくことを心がけていこう。
孫子が説いた「敵の機先を制して、有利に戦うための心得」の一文。武田信玄の軍旗に書かれていた、として一般に知られています。詳しくはwikipediaとかを見てね。内藤さんは前世の記憶に引っ張られてモットーなどと言っていますが、この文章はどちらかと言えば「軍隊を指揮する者の心得」ですので、サッカー選手に適切かどうか、疑問の余地があります。