『アンユージュアル・サスペクツ』を遊んでみた
アンユージュアル・サスペクツ(ボードゲーム開封編)
【登場人物】
与力藩の買掛担当。憧れの刑事と言えば?「マイアミデイド署のホレイショ・ケイン警部補ですね」
奉行藩の決裁担当。憧れの刑事と言えば?「港署の鷹山刑事」
同心与力の手下……などではなくボードゲーム仲間の一人。今回のゲームは3人以上プレイなので、一緒に遊んでもらいました。
要は『面通し』です。
奉行で、我らが捕縛すべきお尋ね者は、いかなる罪を犯したのだ。
与力どうやら泥棒らしいです。説明書によると。
奉行ふーむ、凶賊なのかどうなのか……しかしなんともはや、不可思議な捜査をするものだな。もっとこう、科学捜査とかで犯人確定をちゃちゃっとできぬものか。
与力ないです、DNA鑑定も弾道検査もないです。頼れるのは目撃者の証言だけですから。
奉行厄介な話だのう……。
まずはゲームの準備です。質問カードをよくシャッフルし、裏向きの山をつくります。同じく犯人カードをよくシャッフルしてから12枚をとり、横3×縦4枚の長方形になるように並べます。この12人が容疑者です。続いて、プレイヤーの中から目撃者を選び、YesカードとNoカード、そして犯人カードを渡します。目撃者を務めるプレイヤーは、犯人カードを見て、容疑者たちの誰が真犯人であるかを確認しておきます。これで準備は終了です。
与力あとは、正しいルールで遊ぶなら、得点計算のために付属のシートを準備する感じです。
奉行ほう、目撃者はプレイヤーが持ち回りか。で、わしがまずは目撃者である、と。この犯人カードには真犯人の情報が書かれているのじゃな?
与力はい、さっき並べた12人の容疑者のうち、どの位置に並んでいるのが犯人か、カード位置の指定が書いてあります。
奉行ふむふむ、ではこやつが真犯人か。ふーむ……。
与力では、詮議を始めますぞ。
奉行ぬ、急に奉行所感を出してきよったな。ここはお白洲か?
刑事役のプレイヤーは、順番に山札から質問カードを1枚取り、その内容を読み上げます。これに対し、目撃者プレイヤーは、その質問カードをYseカードかNoカードの下に置いて、「はい」「いいえ」で解答します。
奉行……あのだな。
与力なんですか?
奉行刑事ならもう少しまともな質問をせんのか。なんじゃ、「その人は家に花を飾っていますか?」とかいうのは!?
与力しょうがないんです、目撃者は一番有効な「体格」「服装」「性別」みたいな情報は頭から抜けちゃってるみたいですから。だからこういう迂遠な質問をしておるのですよ。
奉行ぬぬぬ、それで真犯人が花を飾るような手合いの人間かどうかを答える訳か……いや、どうかな。飾らぬ。
与力ほほう、飾りませんか。あ、かつ丼食べます?
奉行わしは捜査協力をしているのであって、取り調べを受けておるのではないわ!
続いて、刑事役のプレイヤーたちは、目撃者の解答に当てはまらない(つまり、真犯人ではない)と思われる容疑者を、最低1人以上指定して、除外します。
与力うーん、この人とこの人は違うような……。
同心あるいはこの人も……。
与力あー、確かに、この人はしなさそうです。
同心魔法より物理攻撃って感じですよね。
与力そうそう。
奉行お、おいおいおい、左様に大勢の疑いを解いてよいのか?
与力ええ。刑事同士の話し合いがつけば、何人除外しても大丈夫です。ただ、最低1人、というのは守らないと、ですね。誰も除外しないのはダメですよ。
除外作業が完了したら、次の手順に進みます。目撃者は除外された容疑者の中に真犯人が含まれているかいないかを伝えます。もしも真犯人が含まれていたら、そこでゲームは終了してしまいます。刑事が除外を終え、真犯人がまだ含まれていなければ、次の質問に移ります。この手順を最大で11回繰り返し、刑事はその間に真犯人を当てなければなりません。得点を付ける場合には、できるだけ少ない質問回数で正解するほど高得点となります。
奉行ほう、なるほど。1人だけになったな。……いかにもそやつが下手人じゃ、ようやったな。
同心やった!
与力やりましたねぇ、フフフ。では、目撃者役を交替しましょうか。
与力いや、それはNoですね。
奉行では、こやつとこやつと……。
同心この人もそうじゃないですかね。どうでしょう?
与力いえ、ダメです。真犯人、入ってます。
同心えっ。
奉行……こやつが? そうなのか? お主の考えでは?
与力えっ、ダメですか?
奉行いや、ダメではないが……ちと分からんなあ。なあ?
同心う、うーん。まあ、そういうユニークな考え方もありますよ。
与力やっぱりダメなんじゃないですか!
『アンユージュアル・サスペクツ』【ここはイカス!】
奉行ふむ、テーマから想像しやすい「犯罪捜査」というよりは、「感性が試されるゲーム」の方じゃな。『ディクシット』であるとか、最近遊んだゲームで言えば、『ヒト+イロ』に近いか。
与力つまり、お互いの感性をすり合わせつつ、逆にずれも楽しんでいく、というところですか。
奉行左様じゃな。正直に言って、システマチックなゲームではない。だが、その理屈では測れぬところが面白い。ということだ。
与力ふむふむ。
奉行で、これは『私の世界の見方』と同じで、最初からしっかり質問内容が用意されておる。従って、無理に何かを意図せずとも、自然と面白い展開にはなる。
与力まあ、「バスタイムは長いか」とか「ゾンビが大量発生したら最初に死ぬか」とか、刑事が聞く質問ではないような問題も入ってますしね。
奉行その無茶な質問を、目撃者も刑事も容疑者の顔だけで判断していく、という、まあひどく主観的な行動のぶつけ合いだが、それを導き出すために無理して何かを考える必要が無いのは、非常に良いと思うのだ。言っていればパーティーゲームだからな。悩んでしまうより、どんどんと勢いとノリで遊べた方が楽しいと思うのじゃが、どうだ。
与力いかにも、左様にございまするな。
奉行あと、容疑者の顔がみんな絶妙だよな。なんとなく背景設定を想像していってしまって、話が脱線する……。
『アンユージュアル・サスペクツ』【ここはちょっと……】
奉行まあ質問と容疑者カードが一回りすれば、飽きるかもしれんな。プレイヤーの発想力に頼る部分が少ないゆえに、ゲームのボリュームは如実にカード枚数に反映されようか。
与力なるほど、飽きはくる、ということですか。
奉行同じプレイヤー同士で遊んでいると、おそらく容疑者の顔に対して固定観念が産まれてきそうな気もするしな。展開が固定されていくのではないか。
与力どのくらい遊べばそうなりますかね……。
奉行うむ、なによりそこまで遊べば、このゲームも本望といったところであろう。
与力そう言えば、質問カードが有る分、プレイヤーが工夫しないで済む訳ですが、それを自由度が低いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。
奉行そうじゃな。だが、わしはこういった感性とか言葉遊びのゲームでは、遊びやすさとトレードオフになるのだ、と思う。急に面白いことを言ったりやったりするのは、実際なかなか骨が折れるものだ。
奉行たしか海外版では拡張セットが出ておるとか?
与力はい、容疑者と質問のカードが増える、という非常に単純な拡張のようですが。
奉行そういうのが有り難いのじゃよ。