本日の名店「鳳林」
鳳林【ここがイチオシ】
今回の収録場所をご提供いただいたのは、關帝廟通りで赤い大きな看板が目を引く「鳳林」さんでした。道を歩いていると、カラフルなメニュー看板と来店した有名人の写真が、お店の入口にズラッと並べ立てられていて、おっ、人気店だな、と、つい足を止めるお店です。店内に入ると、中規模な中華料理店かなと思いますが、席についてグランドメニューや黒板メニューに目をやるとびっくり。膨大な品数と、見たことのない品目に気づかされます。
訪問時はもちろんランチタイム真っ只中。お客さんがひっきりなしに訪れて大変忙しいにもかかわらず、オーナーシェフの李清勇社長に時間を割いていただき、お店のコンセプトや自慢の料理について、お話を聞かせてもらいました。
①四大料理をフルカバー
中華料理の四大系統といえば、北京・上海・広東・四川。鳳林さんは北京料理系のお店なのですが、メニューを見るとそれ以外の料理もずらり。その理由は李さんのお父様が北京・上海・四川の料理を修得され、李さんご自身は広東料理の名門「菜香新館」で修業をされてきたので、全ての系統の料理がバッチリ提供できるから、ということでした。看板に書いてある「中国料理」の文言は伊達ではない、というわけですね。
ちなみに、中華街では北京料理のお店は少ないそうですので、その点で大変貴重なお店でもあります。北京料理は元の大都以来、皇帝が君臨した首都の名を冠する料理らしく、かつては紫禁城から外に出なかった宮廷料理がそのベース。基本は上海料理と同様に油通しが主体だそうですが、煮込む上海に対して北京は炒め。食材は皇帝の食事らしく何でも使う、という特徴があります。
②手作り&食材への徹底したこだわり
「お店のコンセプトは?」という質問に、まず「全部手作りをモットーにやってます」と答えてくれた李さん。それに加え、秀でた食材の知識と目利きの力で選ぶ食材は、「それほどか」と驚くような、徹底したこだわりに基づいています。
例えば、イチオシの「海老の甘辛炒め」をはじめ、多数の海老を使った料理がお店の看板メニューですが、使用している海老は全て、「看板ですから妥協はしません」と、中華街でもごく限られたお店でしか見られないような大きなサイズ。このこだわりは、手作り点心「海老焼売」に使う海老でも小さな海老は使わない、という徹底ぶりです。
さらに、旬の時期におススメの「あさりそば」は一日限定20食。これは美味しいものの、持ち越しの難しい活あさりを使う上で、一日に提供できるぎりぎりの数を出してやっておられるそう。
また、お話の最中にリゴレ店長がしきりと勧められていたのが、乾燥尾びれをじっくり慎重にもどした「毛鹿鮫(モウカザメ)の姿煮」。中華街の他店では見ない希少な食材であるということと、高額なお値段に目が行きがちですが、これも、ふかひれの定番・ヨシキリザメよりもサイズが大きく、ゼラチン質の豊富さでは、より希少なアオザメを上回っているから、というこだわりから。財政上の問題でいただくことが厳しかったので、いつかリゴレが二号店を出店するときに、祝賀パーティーで食べさせてもらいたいとひそかに期待しています。
③他では味わえない料理が食べられる
ランチタイム、あちこちのテーブルから美味しそうな音を立てていた「石焼きメニュー」。焼肉屋ではお馴染みの石焼鍋ですが、これを横浜中華街で初めて中華料理に使い、 “石焼ブーム”を起こしたのは、李さんなのだそうです。焼肉を食べに行った時に思いつき、最初は白飯を入れてみたけどパンチに欠けたので……と試行錯誤の結果、現在「石焼きフカヒレチャーハン」「石焼き海鮮チャーハン」「石焼きXO醤焼きそば」などが楽しめるようになりました。
この逸話を始め、「ちょっと変わったやつをやるのが好きで」という李さんは、常にオリジナリティあふれるメニューの開発に取り組んでいます。ですので、他所ではできない食事が楽しめるのも、鳳林さんならでは。他店も参考にするという「海老の巻揚げ」、「ライスペーパー春巻」、果肉たっぷりの「マンゴープリン」、中華街の第8回「美食節」で銅賞に輝いた「ハイビスカスのなめらかな杏仁豆腐」など、数々のメニューが待っています。
なお、宴会の席で獅子舞を踊ってくれるのも、中華街では鳳林さんだけ。「他のお店には無いものをやりたいな、と思って僕はやってるんで」という、李さんのアイデアとこだわりは、そんなサービスにも昇華していました。
④ひそかな人気? 裏メニューのカレー
メニューには載っていないのにランチタイムに次々と注文される、いわゆる“裏メニュー”のカレー。中華街でカレーを食べる。なんかちょっと不思議ですが、お客さんはみんな嬉しそうに注文をするそうです。
ちなみに、「鳳林さんのカレーは量が多い!」という情報がインターネット上を飛び交っていますが、量が多いのはその発祥に由来しているとか。そもそも、カレーはまかない食で、スタッフさんが食べるものだったのですが、その食事の場にたまたまやってきた体格のいい方が「あ、そのカレー食べたい」と言って大盛りのカレーを食べていったそうです。その様子を見ていた別のお客さんが「それ、いいねぇ!」といって恐らくSNSに写真をアップした。そこから紐づいて噂が噂を呼び、今や定番?の裏メニュー、大盛りのカレーが提供されるようになったそうですよ。
鳳林【この日にいただいたもの】
お話の後は、ランチで頼みやすい麺や飯でお食事です。1人か2人でランチにしよう、という時のおススメメニューでもありますね。という訳で「食べたいもの・麺」「食べたいもの・飯」と『ワードスナイパー』的に昼食を発注です。
麺もお店できちんと削っているという、山西発祥の麺料理。
もっちりの麺と優しい胡麻の風味が絡む。超美味しいです。
海老もそうですが、イカのサイズもすごい。
辛いだけではない、コクがあってクセになる味。「時間なかったから切ったけど、ほんとは豆腐一丁そのまま入れるんですよ」という李さん。それも食べてみたい。
野心的なオーナーシェフの野心的メニュー
「僕、野心がすごいんですよ。手相も野心線がすごい」と笑顔で語ってくれた李さん。どうしたら新しくて美味しいメニューが作れるか、常に研究と情報収集を精力的にこなしておられるからこそ、豊富なオリジナルメニューが揃っているのだろうと思います。一方で、多くのアイデアをしっかりと形にして落とし込めるのは、伝統的な料理の基盤をしっかりと継承し、一流店で磨いた腕がある李さんであればこそ。社長として店の経営をしつつも、お客さんに最高の一品を提供するために、あくまで料理人として厨房に立つ。お話と食事の中から、まさに“オーナーシェフのお店”の矜持と実力がはっきりと感じられる、貴重かつ楽しい体験ができました。
貴重といえば、11月から3月までの限定販売で、中華街では鳳林さんだけしかやっていない、という「カシューナッツの甘炊き」は大変美味しそうなので、時期になったら是非購入しに行きたいと思います。なお、製造工程を収めた動画はまるでドキュメンタリーでしたので、これ、テレビ番組とかにならないかしら。
*バリアフリーの設備ではありませんが、スタッフさんが親切に手助けしてくれます。
*お子様連れ歓迎。ベビーカー等でも入りやすいと思います。気になる点は入店時にスタッフさんへぜひご相談を。
- 店名
- 鳳林
- 郵便番号
- 〒231-0023
- 住所
- 神奈川県横浜市中区山下町187
- TEL
- 045-662-2225
- 営業時間
- 11:00-21:00(料理、ドリンクともラストオーダー20:30)
- 定休日
- 水曜日
- WEB
- 公式ホームページ