八人の魔術師(ボードゲームプレイ感想編)

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『八人の魔術師』を遊んでみた

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【登場人物】

奉行藩の決裁担当。印象深い魔術師と言えば?「うーむ、詳しいわけではないが、すぐ思い浮かぶのは魔術師マーリンか」

与力藩の買掛担当。印象深い魔術師と言えば?「魔術師…と言えるかどうか分かりませんが、『水滸伝』の公孫勝かな?」

『手札に差は無い』のがポイントの一つ

奉行ほほう。これは「ゲーム中にカードを手に入れて、自分の山札を育てていこう!」とか、自分専用の山札を組み立てるゲームではなくて、「お互い同じ内容のカードで勝負!」ってゲームなのね。

与力そうですね。前者に該当する『サンダーストーン』とか遊びましたが、ああいうデッキビルディングゲームとは違います。

奉行ここで『ドミニオン』と言わない辺りが、我らの傍流っぷりよな。ともあれ、お互い同じ条件なのであれば、ゲームとしては将棋やチェスみたいなものだな、言ってみれば。

与力なるほど、それは言い得て妙ですな。

奉行てことは、実力がガッツリ反映されるゲームなのかもしれんな。よし、準備をしてくれ。

与力かしこまりました。

初めて『八人の魔術師』を遊ぶ時は、両プレイヤーは基本のカードセット20枚(魔術師8枚、モンスター12枚)と、魔石チップ8枚を受け取ります。カードをよく混ぜ、ひとまとめにして山札を作り、チップとともに裏向きに置いておきます。これで準備は完了です。

ボードゲーム 八人の魔術師
拡張カードセット12枚(右)は、この新版で追加された新要素となる。このセットのデザインは『ワーデミック』デザイナーの万丈功さん。

奉行ふむ、カードも魔石も色分け、小袋分けがされておるから、それを受け取ればよいという訳だ。

与力準備は簡単です。ゲームが進行するにつれて捨て札の山や、獲得した、あるいはできなかった魔石の置き場などがそれぞれできてきますが、説明書のイメージ図を参照してください。

奉行説明書はpdfファイルで公開されておるという、有難い心遣いだ。

与力下手な説明文を書かずとも伝わりやすくて……。

奉行それはそれでお前、自分の仕事を放棄しているとも言えるぞ。

与力オホン。大切なことは、えーと、両プレイヤーの真ん中にカードを出していきますから、その部分のスペースは広めにとっておいた方がいいでしょうね。ええ。

奉行あ、なんか役に立ちそうなことを言って誤魔化しよった。

戦いは『5回戦を4度』で決まる

『八人の魔術師』は、全部で4ラウンドで構成されています。両プレイヤーは最大5枚のカードを出して優劣を競い、各ラウンドの勝敗を決します。

奉行ふむ? イメージとしては『先鋒・次鋒・中堅・副将・大将』の5人を出して勝負を争うのを4度繰り返す、ということか?

与力そうですね。我々世代的には王位争奪編のチーム戦みたいな戦いを4回やる、と思っていただければ。

奉行もっと『柔道の5人制団体戦』とか、分かりやすい表現が有ろうに。

ラウンド開始時、両プレイヤーは山札の上から10枚のカードを引き、そこから5枚を選んでそのラウンドで使用する手札とします。残りの5枚は山札に戻し、よく切り混ぜます。

与力ここで若干の運は絡みます。全4ラウンドで5枚ずつですから、20枚使い切りです。このため、トータルで見れば両プレイヤーともに同じカードを使っていることになるのですが、任意のタイミングで自由に使うことはできない、ということです。

奉行ランダムに手元に召喚した10枚から、自分の狙いを叶えてくれるであろう5枚を選抜する、と。

与力そしてラウンドを重ねるごとに、互いの残り札が見えてきて、勝負が収束していく形ですね。

奉行あー、「あいつこのカードはまだ出してないよな」「多分、次はこの感じでくるはず?」とか読み合いが激しくなるのか。

手札が決まったら、このラウンドに賭ける魔石チップを2枚選んで分かるように伏せておきます。ラウンドに勝利したプレイヤーは自分の賭けたチップを獲得し、得点化することができます。

奉行ようするにこのラウンドで自分が使用する手札と、相手が使用してくるであろう手札を読んで比較し、勝てるかどうかを考えてチップを賭けよう、ということじゃな。

与力はい。シンプルに勝てそう、と思えば高めに賭け、怪しいと思えば低めの賭け、ということになるでしょう。

奉行チップの内訳は0点2枚、1点4枚、2点2枚。これをどう得点化するか考えていかねばな。

与力0点2枚で捨てラウンド…とかも、できるのかもしれませんね。

バトル開始!

ボードゲーム 八人の魔術師
勝負は単純な数字比べ。しかし…。

バトルは、まず先攻のプレイヤーが手札から1枚カードを場に表向きで“召喚”します。後攻のプレイヤーはそれを確認した後、同様に手札から1枚カードを召喚します。その後、互いに召喚したカードの攻撃力の数値を確認し、勝敗を決定します。敗北した側のカードを横向きにして“敗北状態”とし、次のバトルへ進みます。

与力原則的にはこれだけ。非常に簡単ですね。攻撃力は0から4、場合によってそれ以上になることもありますが、基本は『大きい方が強い』ということです。

奉行ふうん、これだけだと極めて単純な後攻有利の数字比べになるが……そうは問屋が卸さんよな?

与力はい、重要なポイントは2つは有ります。

奉行説明してくれるか。

与力まず、バトルで勝った側は、次のバトルでは先攻になるということですね。

ボードゲーム 八人の魔術師
つまり、ずっと後の先を取ることはできない。

奉行うむ、妥当だな。もう1つは?

与力各カードの特殊能力がからんでくるということです。特殊能力は発動のタイミングが「召喚時」「バトル開始時」「バトル時」「バトル終了時」「バトル勝利時」「ラウンド勝利時」と設定されていますが、それらの効果を上手く使ってラウンド中の5戦、さらには全4ラウンドの勝負をコントロールできると、勝利をグッと引き寄せられます。

奉行なるほどな。例えば最初のバトルでは、わしはお主の手札を確認するため、「召喚時」に相手の手札を2枚まで確認できる「ダークエルフ」を出した。これでこの後の4つのバトルの予想が少し楽になる。

与力対して、私はラウンド勝利を引き寄せるため、「バトル勝利時」に2バトル分の勝利を得る魔術師「好機」を出したわけです。

奉行で、次のバトルはお主が初手のわしと同じような考えでダークエルフを出し、わしはダークエルフの次に召喚すれば攻撃力が1上がる「ユニコーン」を召喚した。

与力と、このようにカード同士の特殊能力をかみ合わせ、うまく使いこなせるように、5枚のカードを選び、出す順番を組み立ててバトルに臨む必要が有るのですね。

奉行どのラウンド、どのバトルにどのカードを出していくか、よくよく考えていかねばなあ。

ボードゲーム 八人の魔術師
ラウンド例その1。

奉行ふっふっふ。予想通りに進んだぞ。

与力3バトル目が引き分け。4バトル目で私が「特権」を攻撃力3にしたものの、お奉行に「腕利き」でこれを封じられました。

奉行そしてラストバトルは引き分け……と思いきや! 2バトル目で敗北したヒュドラの効果で、わしのドラゴンが+1の5となり、勝利!

与力上手くかみ合うとこのようにキレイな組み立てで勝利が決まり、実に気分が良い例です。く、悔しい。

ボードゲーム 八人の魔術師
ラウンド例その2。

与力このラウンドでは、私のヒュドラがお奉行のサイクロプスに特殊効果で勝利したものの……全体として、ヒュドラを上手く生かしているとは言えません。またまた悔しい。

奉行最大限に力をふるえなかったかもしれんが、ラストはお主の「無効化」がわしの「ドラゴン化」を封じたろ? あれはやられた。モンスター同士の相性、強力な魔術師の能力はしっかり狙いを定めて使いたいな。

与力関係性のハッキリしている組み合わせはありますからね。

奉行で、基本的には勝利状態のカードが多いプレイヤーがラウンドの勝者となるのだな?

与力そうです。もしも勝ち数が同じであれば、魔術師カードを出した枚数が少ない方が勝者です。それも同じなら引き分けになります。

奉行へえ、魔術師は少なめの投入が吉か。

与力まあ、引き分けを嫌うなら、ですね。あと、例外処理として、ラウンド中にどちらかのプレイヤーが“3バトル分の勝利”を得たら即座にラウンドの勝者となります。この場合には、自分の賭けていた魔石チップに加えて、相手が賭けていた魔石チップのどちらか1枚をランダムに奪って得点化することができますね。

奉行ははあ、じっくり見ていくのもいいが、速攻で3つ勝ってしまうことにも意味があるということか。悩ましいな。

ボードゲーム 八人の魔術師
4ラウンドを戦い終えて…

4ラウンドが終了したら得点計算です。得点化した魔石チップの数字を合計して、多い方が勝者となります。

奉行これ……より多くのラウンドで勝利した側が勝つ、ではないのがミソだな。

与力そうなんですよ。極端な話、1ラウンドしか勝てずとも、そこで高めチップをごっそり確保し、逆に相手の高めチップを捨てさせていれば、勝てるかもしれないですからね。

奉行チップの賭け方は、よく考えねばのう。というわけでもう一戦!

『八人の魔術師』【ここがイカス!】

奉行特殊効果バリバリのカードバトルゲームだ。正直に言って、このタイプのゲームには少なからず苦手意識があるんだが……このゲームは非常に遊びやすいな。

与力と、おっしゃいますと?

奉行第一に、基本的には20枚しかカードが無いので、内容を覚えやすい。「これをこう使うとこうなるか」という組み合わせを考えやすくなる。

与力効果も分かりやすいですよね。「このカード、どうやれば有効に使えるの?」みたいな、変化球過ぎる効果はありませんでしたしね。

奉行そうそう。それが第二のポイント。複雑な効果は、慣れてる人にとっては選択肢の幅が増えていいかもしれないが、不慣れな人にとっては効果が不十分な組み合わせを作ってしまいがち。あんまり難しいと「楽しい」よりも「覚えきれない」が先に来るんで、ありがたい。

与力しかも、このゲームでは相手と自分が同じカードを持っている訳ですからね。バトルの趨勢(すうせい)というか、相手の戦略も想像しやすいです。

奉行これらの要素が相まって、カードを出す順番、相手の行動の読み合いに集中できる。それが遊びやすさになっているんじゃないかな。

与力全体として「お手軽対戦ゲーム!」みたいな『プレイ感の軽さ』という感じではなくて、「じっくりしっかりとした遊びやすさ」ですよね。

奉行そうなんだよな。効果がシンプルと言ったが、簡単って意味では全くない。洗練されたすっきりさ、というやつか? 勝つためにはしっかりとした策を考え、相手の行動を把握したい。その上で「それがストレスなくできるゲーム」というのが魅力なんだよな。

与力シャッフルした山札から10枚引いて……という部分にランダム性が有るとはいえ、トータルのカード構成は常に一定な訳ですからねえ。

奉行だな。例えばよりランダムに牌が回ってくる麻雀なんかも、強い人弱い人がハッキリ分かれるし。そんな感じでランダム性もうまくコントロールできるくらい遊び慣れたり、研究していくと、どんどん強くなれるんじゃないか。

与力確かに上級者同士の戦いは、より激しいでしょうね。

奉行なので、まとめると「間口は広く、奥行きは深いゲーム」という感想だ。誰でも遊べるが、突き詰めた時の競技性は高い。そういう意味での遊びやすさを感じ取ったのではないか、という気がする。

『八人の魔術師』【ここはちょっと…】

奉行ま、そんな訳なので、実力差が開いた相手とのガチバトルは、果たして勝負になるのだろうか?

与力どうなんでしょうかねえ。ちょっと、厳しいかもしれませんねえ。

奉行なので恐らくだが、プレイ経験が似通った同士で遊ぶのが一番いいんだろうなあ、と思う。どんなゲームでもそうなんだが、今回は一対一の真剣勝負で、実に明確な勝敗がつくゲームだしな。

与力ハッキリと負けを突き付けられるのを嫌う人もいなくはないですからね。ハマる人はドハマりするのと同じような感じで。

奉行あとは研究が進んで、最善手というものが生まれてくるのかどうか。だが、そこまで辿り着けるか、わしらは?

与力拡張カードセットも有りますしね。果てしない道のりだと思いますよ。

奉行と言うわけで、そういう凄いプレイは凄い人にお任せしてわしらはもっかい遊ぼう。

与力ちょっと、まとめ終わってからにしましょうよ。個人的には3ラウンド目が終わると互いの残りの5枚がハッキリしますから、4ラウンド目の答え合わせ感が好きです。これは「ここはちょっと……」な話ではないですが。

奉行ああ、そういえば些細な部分だが、例外的な処理や特殊効果で時々発生する、「相手の魔石チップを獲得する」という手順は、わりと忘れやすかった。注意しよう。

与力効果の処理は1つずつ丁寧に、ですね。

奉行特に勝った後は、ついつい浮かれて忘れがちなんだよなあ。気を付けたい。

ボードゲーム 八人の魔術師
「逆転」に「逆転」がかかった場合、カードの強弱は元通り?

与力初版では、プレイヤーは「魔界の貴族として、魔王亡き後の魔界の覇者を目指す」というストーリーだったそうです。

奉行ふうん、ずいぶんと違った立場になったのだな。それにしても随分と見た目が違うな。

与力あちらは全体的に、無機質でドライなデザインで、実にスタイリッシュな仕上がりでしたね。

奉行ちょっと驚くぐらい雰囲気が変わっているぞ。新版はたかみさんのキャラが色々と想像をかき立ててくれる。

与力あと、初版の8本の魔術師の杖が浮いているパッケージイラストは、『風魔の小次郎』の聖剣戦争篇を思い出しますね。

奉行おぬしは、何がどうあってもジャンプ漫画方向へ話を持っていきたいのか?