『ツォルキン:マヤ神聖暦(原題『Tzolk’in: The Mayan Calendar』)』を遊んでみた
ルールを確認しつつ、とりあえず手探りで遊んでみます
さあ、実際に遊んでみます。改めて説明書をよく読んでみると、幾つかの要素が絡まりあって得点を獲得していく、というゲームです。「Aをしたら得点」ではなく、「Aで獲得したものを使ってBの数値を高めてCのタイミングで得点」といった塩梅のようですから、初回プレイでは確実な戦略をもってプレイすることはおそらく不可能でしょう。今回はゲームになれることを目的に、進めていくこととしました。
奉行いやしかし、本当に大きな歯車だな。
与力これが最大の特徴ですからねえ。早く回しましょうよ。
奉行うむ。ところで、大きな歯車に山積みされたものはなんだ?
与力コーンです。マヤ人の活力の源ですな。
プレイ準備開始。なお、スタートプレイヤーを得たいなら生贄をささげておくべし。
まず、各プレイヤーはゲーム開始時の財産として、3個の労働者コマと、配布される“初期財産タイル”の内容と同じだけの物資を持ちます。それからスタートプレイヤーを決定します。ゲームの進行は、「スタートプレイヤーから時計回りに各プレイヤーが手番を行なう」ということになっています。ただし、ゲーム中にスタートプレイヤーの権利を他のプレイヤーが手に入れるためには、意図して奪い取りにいかなければならない、というのが面白いところです。
奉行しかし、『最近なにかをいけにえに捧げた人がスタートプレイヤーになる』ってなあ。こういう指定は好きだが、実際に居たら怖いよな。
与力出世を犠牲にして家族を守る、とかなら格好いいと思いません?
奉行うまいことを言ったつもりか、どや顔で……。
手番ですがコマを置きますか?(y/n)
自分の手番が回ってきたプレイヤーは、「手元にある労働者コマを、中央の巨大な歯車をのぞく、いずれかの歯車の上に置く」か、「既に置かれている自分の労働者コマを、手元に回収する」か、どちらかを選んで実行しなければなりません。
労働者コマを置くには、歯車上のコマを配置する“アクションスペース”を確認します。アクションスペースには、0から7までの数字が割り振られていますが、必ず“まだコマが置かれていないアクションスペースのうち、最も小さい数字が割り振られている”ところに置かなければなりません。この時、1以上の数字が割り振られている箇所に置くことになったら、その数字とおなじだけのコーンを支払う必要があります。
与力つまりは地獄の沙汰もコーン次第、という訳ですね。
奉行なぜ地獄前提か。
与力ちなみに、コマ数とコーンが許す限り、1手番中に何個コマを置いても構いませんよ。
奉行なんと。コーンは物凄く大事だなこりゃ。
与力ただし、複数個のコマを同時に置く場合には、その分の対価として、また別に決められた数のコーンを支払う必要がありますし、ほかの要素でコーンが不足すると困ることもあるので注意してください。
出したコマを戻すことで資産を獲得できます
コマを回収すると、プレイヤーは何らかの見返りを入手できます。というのも、「回収するコマがあった場所のアクションを実行する」ことができるのです。コマが配置されるアクションスペース上には、数字の他に、「そのアクションスペースでどんなアクションができるか」というアイコンが書かれています。「物資を入手する」「物資を別の物資と交換する」「物資を支払って技術レベルを上げる」「物資を支払って建物を建てる」などが主な内容です。
つまりプレイヤーは、自分が行ないたいアクションができるところにいるコマを回収していくことで、自分の計画を進めていく訳です。そして、アクションは「大きな数字が割り振られているアクションスペースに対応したものほど大きな効果」となっているものがほとんどです。
奉行うーむ、配置のルールと合わせて考えると、沢山コマを置かれている歯車ほど、数字の大きなアクションスペースに置くことができる。
与力ですね。
奉行しかし、数字が大きければコーンの払いも大きくなるので、コーン不足……はて、どうしたものか?
与力まだ大切な説明が終わっていませんからねえ、次の説明を聞いてください。
日が沈み、やがて夜があけ、時代は巡る
全員の手番が済んだら、ボード中央の巨大な歯車「ツォルキンの暦歯車」を、反時計回りに歯一つ分(1日分)回転させます。これにより、その他の歯車も一緒に回転します。ですので、歯車上に置かれている労働者コマも一緒に1アクションスペースだけ前へ移動できることになります。
ちなみに、スタートプレイヤーの権利を持っているプレイヤーは、ゲーム中(原則)1回だけ、歯車を2つ分進めることができます。自分以外全員のあてが外れるので、これを上手く使うことも大切そうです。
奉行回った回った! そして進んだ!
与力凄いですよね、これ。
奉行なるほどなあ! 小さい数字に駒を置いて歯車が回るのを待てば、いずれ大きなアクションができるところへたどりつく。待てば海路のなんとやら、という訳か。
与力ということなんですねえ。
歯車の回転によって、もう1つ大きな効果がもたらされます。それが「食糧供給日」です。
食糧供給日は、全26ラウンド中に4回やってきます。この時、プレイヤーが保有している労働者コマ1つにつき、コーン2個を支払う必要があります。支払えない場合には、神様の怒りを買い、ペナルティを受けることになります。
なお、1、3回目の食糧供給日には、神様への信仰心によって物資を受け取ることができ、2、4回目の食糧供給日は中間決算が行われ、勝利点を獲得することができます。
奉行うへえ、食料として支払うのか。かつかつコーン生活をしていたら、ここで手痛いダメージになりかねんな。
与力何せ「神の怒り」ですからね。
奉行ゲーム的には、この食糧供給日を区切りと考え、うまくコマを置いたり戻したりして勝利点を稼げ、という指針になるな。
与力プレイ人数が多いと、うっかり計算間違えてドボンしやすくなりそうですよね。
マヤ文明をめぐる旅へ
奉行で、折角だ。どこにコマを置くと何が起きるか、ひとつ見ていこうではないか。
与力そうですね、行ってみましょう。
ジャングルが密生しているらしいパレンケにコマを置くと、コーンや木材といった物資を獲得することができます。コーンが無ければコマを養えないので、大変重要な歯車です。
(参考:メキシコのジャングルの中から突然ぬっと現れるパレンケ遺跡に行ってきた -- Gigazine)
与力パレンケは今のメキシコ国にある、世界遺産のひとつでございます。7世紀ころのマヤ文明の王たちの墓があることで、よく知られていますよ。
奉行ふむ、これはなんとも奇妙かつ巨大な墓だ。
ヤシュチランの歯車では、ゲーム中に入手できる物資を全て手に入れることができます。
(参考:ヤシュチラン -- wikipedia)
与力ヤシュチランも、メキシコ国の有名な遺跡でございますが、特筆すべきは丘やら川やらに囲まれた場所の悪さでしょうか。
奉行その山やら川やらから恩恵が受けられる場所ではあるようだな。資源大事。
ティカルでは各種の技術の向上と、建物の建築を行うことができます。必要なだけの物資を支払うことで、技術レベルを上げたり、建物/記念碑を建設することができます。
(参考:ティカル -- wikipedia)
与力ティカルは今のグアテマラ国にある、世界遺産。“大ジャガーの神殿”を中心とした、観光名所です。
奉行ふむ。優れた建築技術が身を滅ぼした大都市か。盛者必衰の理を感じさせる。後は創作がはかどりそう。ところで、「技術」とか「建物」というのはなんだ?
与力後で説明する要素ですね。
奉行まだあるのか。なんとも、盛りだくさんなゲームだなあ……。
ウズマルは商業が栄えており、手持ちの物資を他の物資と交換したり、新しいコマを獲得したりすることができます。
(参考:古代都市ウシュマル/メキシコ -- All About)
与力説明書ではウズマルですが、ウシュマルという読みでも知られます。“魔法使いのピラミッド”とやらが有名な古代都市で、これもメキシコの世界遺産ですね。
奉行ふむ、歴史に“うずまる”ことなく今だに威容を保っておるとは、なかなか大したものだ。
与力えー……。
チチェン・イツァでは、物資を獲得することはできませんが、物資“水晶ドクロ”を神に捧げることで、神々への信仰度を上げ、同時に報酬(物資や勝利点)を獲得します。
(参考:チチェン・イッツァ/メキシコ -- AllAbout)
与力ここは大神殿や天文台の遺跡で有名で、マヤ人と彼らの神が強く結びつく大切な場所であったようですな。やはりメキシコ国の世界遺産です。
奉行メキシコ凄いな。日本で言うなら、叡山や伊勢のような信仰の場所かな。
どうやって勝利に近づくか、その筋道は幾らでもありそう
奉行ここまでの流れはなんとなくわかった。基本的には水晶ドクロを手に入れて神殿へ詣でる、ということなのか?
与力それは間違いではありませんが、それだけではないですね。
奉行そうなのか……。
与力とにかく勝利点を得るための筋道が多いゲームなんですよ。
物資を集めたら神殿のマーカーを上へ進ませて、信仰心を向上させる(多分)ことで、中間決算時に神様から勝利点を多く与えられるようにすることが大切です。
神様は茶色の「チャク」、黄色の「ケツァルコアトル」、緑色の「ククルカン」という三柱が存在しており、チチェン・イツァで水晶ドクロをそれぞれの神様に捧げて、神殿のマーカーをより高い位置に進ませることができます。より高い位置を占めたプレイヤーは、中間決算時に勝利点が与えられます。この時、同じ高さに複数のプレイヤーがいると、全員に「本来貰える勝利点の半分」の勝利点が配給されてしまうため、人より一段でも高い位置に進んでおくことが大切です。
与力また、普請も重要な一手ですね。
奉行土木工事? 寺社仏閣でも建てるというのか?
ティカルのアクションを使い、プレイヤーは要求される物資と引き換えにして、建物あるいは記念碑を建設することができます。建物は大きく2つに分けられます。
まず「使い捨ての建物」は、即座に物資や神殿、技術マーカーの移動、あるいは勝利点といったボーナスを獲得できます。一方、「農場」は、建設することで、食糧供給日に支払うコーンの数を減らすことができます。「記念碑」は、様々な条件を満たすことで、ゲーム終了時にボーナス勝利点をもたらしてくれます。
奉行集めた物資で建物を建てると、それぞれ何やらよいことがある、ということなのか。
与力そうしたことも計画に入れていくと、より有利にゲームが運ぶかもしれません。
奉行ははあ……夢が広がるが、これは何をしてよいか迷ってしまうなあ。
与力しかしあと一つ、考える要素がありますよ。
奉行ほう。
プレイヤーは、ティカルの歯車で技術レベルを向上させることができます。技術は「農業」「資源採取」「建設」「神学」の4つがあり、レベルが向上すると、それぞれ対応するアクションを行なった時に、追加ボーナスを得ることができるようになります。
奉行うへえ。例えば「農業」の技術が高ければコーンの収穫量が全く変わってくるぞ。これは大きい。
与力そうなんです。それ以外も特典満載です。これは上げぬ手はないですよねえ。
奉行ぐぬぬぬ、悩ませよるわ。技術が高い方が、おのずと一つのコマができるアクションの効果が全く有利になる。が、なんでもかんでも得られるとは限らんし。
プレイヤーができることはおおむね以上です。あとはこれらを組み合わせ、人より多くの勝利点を稼ぐことを目指します。ということで遊んでみました。
奉行コーンを稼ぎ、技術を上げ、物資を得て、神に祈り、建物を立て……
与力あ、私はここで歯車を2つ回します。
奉行うぬぬぬ!
奉行……うひい、なんとか一点差でわしの勝った。
与力お見事です。
ツォルキン【ここがイカス!】
奉行なるほど、よくできておる。最初は歯車が回転する様子にばかり目を奪われておったが、ゲームの要素も同じく見事に連動しているのが凄い。
与力小さい数字で置いたものをそのままにして、上手く大きいところで回収できると最高ですね。
奉行毎回そううまく行くとは限らないのが辛いところだが、うまく手を広げていくのも良し、専念していくのも良し、ととにかく選択肢が多いな。
与力勝ち筋はいくつもあるんでしょうね。プレイ人数が増えればまた違ってきますでしょうし。
奉行最初にお主の説明を聞いたかぎりでは、ルールの分量がちと多すぎて困るのではないか、とも思った。が、あにはからんや。実際にゲームを始めてみると、それほどでもなかったのも驚いた。
与力そうですね。「どこの歯車で何ができるか」さえ分かれば、有利なタイミングでコマを戻したり出したりできるように調整していくことに集中すれば、実はそう複雑ではないという。
奉行そういった点では、かなりすっきりしたゲームじゃな。要素は多いが、ルール自体は難しくない。勝つための妙手を考えるのは難しいが、それがまた面白いんだよな。
与力個人的には、歯車を回しているだけで楽しくなりますね。
奉行視覚的にも感覚的にも楽しいよなあ。回せば回すだけ、ゴールが近づいてくるのが少し寂しいが。
ツォルキン【ここはちょっと…】
奉行何をどう組み合わせていくとよいのか、遊んだ者ほど把握できていくゲームであるから、気をつけねばいかんのはアレ……だな。
与力ええ、プレイ回数の差ですね。
奉行よほど透徹した戦略眼を持つ者でない限り、初心者が経験者に勝つのはまず困難と見た。他のプレイヤーの行動で、自分の手が狂うことも多いからなあ。何度か遊んで慣れることが必要だろう。
与力悲しい話ですが、経験に差のある者同士が一緒に遊ぶと、勝負にならずに『二度とやるか!』と思われてしまう可能性も大かと思いますよ。
奉行接待プレイとは言いすぎだが、初プレイの人には優しくレクチャーしながら遊ぶことが肝要だろうなあ。
与力二度と遊んで貰えないなんて、本当にもったいないですからね。好敵手たる碁敵は得難いとよく申しますが、得難いツォルキン敵となり得る遊び仲間は、大事にしたいですよ。
奉行そうだなあ。これ、見ただけで「大きいボードだし色々あって難しそう」と思ってしまう人も少なからずいるだろうし。
与力そういう点に苦手意識を持ってしまう人は、どうしてもいますからね。こんな面白いゲームなんですから、興味があるという人がいたら、がんばってツォルキン中毒にすべきです。
奉行歯車欠乏症とか言い換えたらなんか怖いな。あ、苦手意識といえば、プレイ時間はさすがに長いな。これも人によっては辛いかも。
与力ルールを確認しつつやったら、二時間たっぷりかかりました。これをどう見るかですね。
奉行上限の4人プレイならもっとかかるんじゃないか。それを許容してくれる者と遊んだ方がよさそうだ。遊び途中で投げ出されては残念だしなあ。そういうところを踏まえて、ぜひマヤに染まってほしいところだ。
ゲーム内容物の中で、歯車と並んで評価の高い(?)水晶ドクロ。マヤ文明の象徴とも言えるオーパーツですが、最近ではもっと後代になってから、ヨーロッパで作られた贋作という話も。(参考:世界中に存在する謎のクリスタルスカル -- naverまとめ)
『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』は、このゲームをやる前に観ておいた方がいいんでしょうか?